【特集2 ライフライン強靭化事情】コスモ石油が製油所の点検にロボット活用 異常の早期検知で保全高度化

2026年9月3日

コスモ石油は、製油所の保全業務にロボットを活用する検証を開始した。製油所には、稼働から50年以上経つ設備も少なくない。故障を未然に防ぐことは大きな課題だ。ロボットを活用することで、人の五感では捉えにくい初期の異常を早期に検知し、予兆保全につなげて安定操業を支える狙いがある。
同社は5月下旬、堺製油所でロボットを使ったPoC(概念実証)を実施した。使用したのは、米Boston Dynamics社製の四足歩行ロボット「SPOT」だ。カメラやマイク、各種センサーなどを搭載し、排水処理設備エリアの点検や運転状況の状態確認を行った。実証には、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業にSPOTを導入・活用した実績を持つ東北エンタープライズ(福島県いわき市)も協力した。


点検項目の一つが、ガス漏れの検知だ。今回の実証では、配管を超音波カメラで撮影した結果、微量の空気漏れを確認できた。今回は空気の漏れだったため、安全性に問題はなかったが、水素などの危険なガスについても、極めて早期に漏えいを検知できることが期待される。もう一つが、サーマルカメラによる設備の劣化状況の確認だ。保温配管で高温部を検知し、断熱材の劣化状況を把握。また、液体を圧送するポンプの軸受けでも温度上昇が見つかり、劣化が懸念される箇所が確認できた。


一方、従来は人が巡回して点検している圧力計や電流計などの計器類、油槽については、取得した画像をAIで解析し、過去との差分を検知する仕組みも検証した。例えば、1年前と現在の画像を比較することで、さびの進行状況を把握できる。また、数日前の画像との差異から、トラブルの原因究明にもつなげることも可能になる。

「SPOT」は大型犬ほどの大きさだ

全所展開を視野に運用検証 複数台の本格導入も検討へ

今後は、同社が使用しているデータ統合基盤と取得したデータを連携させ、保全業務への活用を進める予定だ。「人をロボットに置き換えるのではなく、ロボットの検知を加えることで安定操業や稼働率の向上につなげたい。その結果が競争力強化にもなると考えている」。工務部の吉井清英・保全戦略グループ長はこう話す。


今回の実証の成果を踏まえ、今後は堺、千葉、四日市の3製油所のいずれかにSPOT1台を本格導入し、ノウハウのさらなる蓄積を目指す。将来的には全製油所に複数台を稼働させ、予兆保全の高度化を図る構えだ。台数はこれから精査するが、「製油所1カ所当たり、10台で網羅できる可能性がある」(吉井氏)という。
コスモエネルギーグループは、第8次連結中期経営計画の中で、製油所の競争力と販売力の強化に向け、AIの活用に取り組んでおり、今回のロボット活用もその一環に位置付けられる。人による従来の点検業務にロボットとAIによる検知を組み合わせ、新たな保全体制の構築を目指す同社の挑戦が続いている。