【特集2】事業者が抱える遊休地を活用 「自家消費型」に熱い視線

2022年1月3日

また横浜市内の学校に再エネ導入を図る同市の委託事業にもソラアドは採用されている。この取り組みでは、横浜市立の小中学65校にTGESが自家消費用太陽光と蓄電池を設置。余剰電力は蓄電池に充電するほか、他の市内公共施設に自己託送を行うことで、再エネの地産地消を実現するシステムを構築する。

同部ES基盤技術グループの塚田龍也マネージャーは「横浜市ではCO2削減に加えてBCP対策のニーズも高かった。学校で作った電気を地元で融通する地産地消のシステムが、大きな評価を得た」と話す。事業全体での年間CO2削減量は1700tを見込み、環境と防災対策を両立した事業を進めていく。

太陽光遠隔管理事業も開始 稼働率と収益向上に貢献

TGESはソラアドに加え、太陽光の運用管理を手助けする取り組みも新たに始めた。21年4月、東京センチュリー、京セラコミュニケーションシステムと共同で、太陽光発電事業におけるアセットマネジメント業務の高度化を図る実証事業を開始した。

実証では、発電量や気象センサーなどで太陽光の稼働状況を取得し統計的なデータ分析を行うことで、各発電所がどのような状態にあるのかを可視化するシステムの開発を進めている。

特に無人で遠隔地に置かれているメガソーラーの場合、設備故障などの警報が出ない限り、性能劣化が発生していても変動電源であるため劣化を察知できないケースが少なくない。劣化を可視化できるシステムによって、発電所の事業性を大幅に改善できる可能性があるのだ。

また、設備の故障情報をデータベース化することで、稼働に必須な部品の事前確保など稼働率向上させるシステムも開発中である。

「これまでエネルギー設備の維持管理で培ってきた当社の設備診断技術を再エネ分野でも生かすことで、技術の面からもポストFIT時代の再エネ導入拡大を支えていきたい」

再生可能エネルギー事業化プロジェクト兼発電エンジニアリング部の宮本昌幸担当部長は、こう話す。高度なO&M技術を取り入れたアセットマネジメント会社の設立も視野に入れながら、太陽光最適運用のサービス化を図っていく方針だ。

今後は工場屋根だけではなく、駐輪場や駐車場屋根に太陽光を設置するソーラーカーポートなど、遊休地の活用事例が増加すると予想される。TGESのソラアドや開発を進めるアセットマネジメントシステムは、日本に秘められた再エネポテンシャルを最大限発揮するのに大きく役立ちそうだ。

データ分析で設備の稼働状況を監視する

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