【沖縄電力 本永社長】総合エネルギー事業で新しい価値の創造目指しグループ全体の成長へ

2022年7月1日

燃調で負担追い付かず 打開へ緊急委員会設置

志賀 一方で21年度の決算を見ると、経常利益は前年度に比べ76%減となりました。減益の理由はなんでしょうか。

本永 やはり燃料価格の高騰が大きいです。第4四半期の急激な価格高騰や円安の進展による燃料費の増加等を受け、利益が減少した形となりました。

志賀 今回の決算についてどれくらいの影響が出ていると試算していますか。

本永 燃料費調整制度の期ズレの影響もあり、65億円のマイナスが出たとみています。この影響が無ければ経常利益は前年並み、単体では70億円ほど、グループ連結でも90億円から100億円の利益が達成できていたはずです。

志賀 今後の石炭、石油価格の見通しはいかがですか。

本永 ウクライナ情勢の長期化、円安等、外部環境の不透明感もあり、資源価格の高騰が長期化するという認識です。足元においても、燃料の調達コストが、電気料金で回収できていない状況です。

志賀 燃調も上限に達している状況ですが、需要側の理解はどう考えていますか。

本永 燃調の上限を超えた分を電力会社が負担していることは、一般のお客さまはあまりご存じないと思います。
 上限到達の影響は、自由料金と規制料金の両方にありますが、当社の場合、規制料金の割合が大きく、今後、負担が大きくなるとみられます。

志賀 キャッシュフローは各電力会社とも悪く、決算は黒字でも、かかるコストが料金で回収されず会社が棄損しています。「大会社は経営合理化で吸収できる」という認識もみられます。会社を棄損させないというのは経営者として最大の仕事だと思います。

本永 おっしゃる通りです。当社もこの状況を打開するべく、4月12日に緊急経営対策委員会を設置しました。

志賀 緊急経営対策委員会では今後、どのような取り組みを行いますか。

本永 安定供給と安全を大前提に、緊急的な収支対策をあらゆる面から検討し、実行します。手始めに役員報酬の最大10%削減など、緊急的にできる収支対策を行います。社員に向けても「大変厳しい状況」というメッセージを出しています。これまで以上に、修繕費などのコストを抑制する工夫が必要になります。そのほか7月の組織改正で、支店の統廃合を含めた効率化を進めていきます。
 費用面だけでなく収益面の対策も重要です。6月以降、特高・高圧自由料金の新規お客さまへの燃調の上限を撤廃しました。それ以外にもいろいろな対策を検討し、取り組んでいく必要があります。

志賀 こういった取り組みが県経済へ与える影響は。

本永 沖縄は中小規模の企業が多く、電気料金高騰は経営に打撃を与えます。これまでも、本土並みの料金水準を目指し、できる限り低廉な電気料金を意識してきました。引き続き、県経済やお客さまへ十分配慮しながら、さまざまな対策に取り組んでまいります。

志賀 他の電力会社と燃料調達方法に特異性があるとみています。

本永 水力、原子力を持たない当社ですが、LNGに関しては単独で調達するには量が少なく、取扱量の多い大阪ガスさんから長期契約に基づき購入しており、必要量を確保しています。石炭は市況連動価格と年間固定価格を組み合わせて調達していますが、市況が大きく変動していることから、価格交渉が難航しています。

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