【特集2】初期投資ゼロで大型設備群を構成 高度医療機関への安定供給支える

【東京ガスエンジニアリングソリューションズ 沖縄ガス】

在日米軍から返還された沖縄県宜野湾市のキャンプ瑞慶覧地区。このエリアの一部である西普天間住宅地区内では再開発が進行中だ。その第一弾が、沖縄健康医療拠点ゾーンへの琉球大学医学部と大学病院の移転。この西普天間キャンパスでは、新たなエネルギー供給スキームが構築されている。

公募入札の結果、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)や地元の沖縄ガスなどの事業者によって、大型の分散型コージェネを核とした大規模なエネルギーサービスプロバイダー(ESP)事業が展開されているのだ。

620の病床数を持つ大学病院

国立大学法人初のESP 一部設備にデュアル燃料式

本件はTGESがシステム設計、施工、エネルギー調達、メンテナンス、監視、オペレーションまでを一括で担う。システムとしてガスエンジンコージェネ(1200kW×2)、吸収式冷温水機(560RT×2)、蒸気ボイラー(1t/時×2)、ターボ冷凍機(500RT×1)などを採用。加えて非常用発電機(2500kVA×2)、特別高圧・高圧受変電設備といった大規模なエネルギー設備群で構成している。

「ESP事業の公募に対して、最適な提案であったためにこのシステムを採用するに至った。国立大学法人としてESP方式を採用するのは全国で初めての事例。イニシャルレスで設備導入し、設備の維持管理を民間に担ってもらうこの方式は、他の大学も興味を示していて見学にも来ている。他機関に対しても本事業における事例や効果など伝えていければと思っている」。琉球大学施設運営部施設整備課の中塚和成課長は話す。

一方、エネルギーサービスを担うTGESにとって、県内の医療機関への提供は、これが初めての事例だ。「島しょ部における大型コージェネの導入は、ピークカットなどに貢献できると考えている。その際、一連の設備群に対して、海岸にも近いことから塩害をはじめ、台風や停電対策に熟慮を重ねた。気候も内地とは違うため、供給安定性、高効率な運用を実現するために検討すべきポイントがたくさんあった」。TGESソリューション推進本部沖縄営業所の大城優也課長は経緯を説明する。

また、病院向けという点において供給安定性にも配慮している。ボイラーや吸収式設備は石油とガスのデュアル燃料に対応するなど、BCPの機能を高めていることも特徴だ。琉球大学施設保全課電気保全係の金城敦係長は「県から基幹災害拠点病院や高度救命救急センターの指定を受けられるハード面のスペックを持っている」と、盤石なエネルギーシステムに期待する。

琉球大学の金城氏(左)と中塚氏

【特集2】構築進むマイクログリッド CO2削減と災害対策強化に寄与

小規模な需要向けに再エネ主体で地域電力網を構築するマイクログリッド。再エネ利用の推進や地域防災において、各地で威力を発揮している。

昨年4月25日の夜明け前、沖縄電力管轄の宮古島市で、周辺島しょ部を巻き込んだ大規模停電が起きたことは記憶に新しい。毎年、台風による停電対応を余儀なくされる沖電だが、季節外れの被害からの復旧には、主に再生可能エネルギーと蓄電池によるマイクログリッド(MG)の威力が存分に発揮された。

宮古島の電力需給は、主にディーゼル発電が支えている。需要の変動に合わせて発電出力を調整する離島ならではの特徴だ。停電当日は、このディーゼル発電が接続する電力母線の経年劣化による不具合で、宮古島の全域停電が発生。それに伴い、宮古島から電力ケーブルでつながっている伊良部島、池間島、来間島など他の周辺離島も、停電を余儀なくされた。

全域停電から蓄電池を稼働 初の実運用が無事に成功

全域停電からの復旧時間の目途が立たない中で、いち早く復旧した島があった。人口約150人の来間島だ。

「国の補助を受け宮古島市で唯一の地域MGを構築していたおかげで、他の地域より約2時間早く停電を解消した。これまで住民の方々と協力しながら、停電からの復旧訓練を実施したケースはあったが、有事の際に本当に機能するのか分からなかった。実際に早期復旧できてほっとした」。沖電研究開発部技術開発グループの塩浜智洋マネージャーはこう振り返る。

来間島では沖電と同社関連会社のネクステムズ社が中心となり、再エネ発電事業者の宮古島未来エネルギー、地元自治体の宮古島市が連携して地域MGの運用実証を行っている。

宮古島未来エネルギーが島内の半数程度に当たる40件強の一般家庭とPPA(電力購入契約)を結び、太陽光発電や蓄電池、エコキュートといったエネルギー設備を導入した。これらの需要側のエネルギーマネジメント(EMS)をネクステムズが担っている。

沖電は、来間島全体のEMSを担うほか、中規模蓄電池(800kW時)と補充電用ディーゼル発電(100kW)などを組み合わせて運用している。平常時は再エネによる自家消費を進め、余剰時にはエネルギーを貯める。再エネ主体の地産地消を進めることが基本方針だ。

沖電はこのコンセプトのもと、自社のEMSとネクステムズの需要側のEMSを統合管理して制御している。主体は蓄電池運用だ。ただ、再エネ発電が期待できず、需給バランスも確保できない場合は宮古島のディーゼル発電からの電気で補っている。

【特集2】デジタル技術で低圧DERを制御 消費最適化へソリューション展開

【ニチガス】

ニチガスが低圧DERの拡販に乗り出している。電力・ガスの消費最適化を進め、スマートシティ構築を目指す。

ニチガスは分散型を軸としたエネルギーソリューション事業を展開する。2018年11月に電力小売り事業を開始以降、現在の契約数は約38万件で、その多くが電気とガスのセット契約だ。今後は、これを顧客基盤に太陽光発電や蓄電池などの低圧分散型エネルギーリソース(DER)の拡販を目指す。

注力する商材が電気ヒートポンプとガス給湯器で稼働するハイブリッド給湯器だ。例えば、ニチガスが開発中のスマートリモコンと組み合わせ、通常は電気でお湯を沸かし、高需要時にはガス式に切り替えることで電力ピークカットが可能になる。また、余剰電力がある時には電気でお湯を作りタンクにためる。そのお湯は蓄電池の電気と同様、今後のエネルギーインフラに欠かせない調整力であり、ハイブリッド給湯器はいわば「エネルギーのダム」とも言える。さらに、太陽光発電や蓄電池、照明やエアコンなどの家電機器をネットワーク化して制御し、宅内のエネルギー消費の最適化も可能だ。電力事業部の清水靖博部長は「お客さまが我慢せずに電気とガスを最適に利用できるスマートハウスの普及につなげたい」と説明する。

需要家のエネ利用を最適化 供給力・調整力として活用

将来、スマートシティの規模になると、DER運用の最適化で生んだエネルギーは供給力や調整力にもなり得る。その制御の一つがデマンドレスポンス(DR)だ。電力需要のピーク時での「下げDR」で系統を安定化できる。加えて、スマートメーターの30分値をリアルタイムで採録し、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術で、需要家同士が太陽光の余剰電力などを直接売買する「ピアツーピア取引」も可能になる。

一連の取り組みは電力ビジネス上での利点もある。下げDRでピーク値を抑えた分、容量拠出金の負担額の削減も期待できる。「例えば、負担額が減った分を料金割引へ還元するプランなど、お客さまと削減効果を共有するスキームを検討中だ」(清水部長)。魅力的なプランであれば顧客は増え、需要家DERからの供給力や調整力はさらに増加する―。この好循環の創出がニチガス戦略だ。

同社は電力とガスの供給を担い、DERの販売も手掛ける点を強みとする。来年度にはスマートリモコンの一般販売を予定する。デジタル技術も活用し、市場開拓を進めていく。

開発中のスマートリモコン

【特集2】過疎地の配電網維持に課題 マイクログリッドの好例必要

分散型リソースの活用が各地で進んでいる。再エネ主力化に果たす役割などについて聞いた。

インタビュー/飯岡大輔(中部大学工学部電気電子システム工学科教授)

―分散型リソースに調整力を担わせる取り組みが進んでいます。

飯岡 調整力を担う火力の完璧な代替は難しいと思います。ですが、VPP(仮想発電所)のように需要を統合したり、蓄電池を駆使したりすることで、その役割に近づけることはできると思います。

―太陽光発電でもその一部を担えますか。

飯岡 スマートインバータの機能を使えば、可能性はあります。その一つが周波数の上下変動に合わせて、太陽光発電の出力を下げたり上げたりする「Frequency-Watt機能」です。また、電圧変動を適正範囲に維持するために無効電力を出し入れする「Volt-Var機能」もあります。

―無効電力について解説をお願いします。

飯岡 直流には有効電力しかありませんが、交流には無効電力もあります。有効電力とはモーターを回したり、光に変えたりと、他の用途に変換可能なものです。支払う電気料金は有効電力の使用量で決まります。

 一方、無効電力は電圧と電流の位相がずれると生じます。実際、電力系統のさまざまな場所で生じています。そのため電力系統ではコンデンサやコイルを設置して無効電力を調整し、電圧を適正範囲に制御しています。

―マイクログリッド(MG)の取り組みが進んでいますが、コスト面で課題があります。

飯岡 経済性を前提に話すと、MGは規模が小さいので投資に見合うメリットが得にくい。同様に今後、一般送配電事業者が過疎地の配電網を維持管理していく上でも同じ課題を抱えることになります。

 配電ライセンスという新しい制度ができたので、今後はその好例を生むことが大切です。ライセンスの事例ではありませんが、例えば昨年4月、宮古島市の来間島で停電が発生しましたが、早期に復旧できました。こうした事例を世間に広める必要があります。

―システム改革への意見はありますか。

飯岡 制度の複雑さが指摘されていますが、多くの議論を重ねた上での現状の仕組みなので否定はしません。ただ、今後、電力の安定供給を支えるシステムが複雑化すると思います。将来的にその複雑さを理解する人材が存在し続けるための仕組みが必要になるでしょう。今の日本の電力系統は非常に良く整備されています。電力会社の設計思想とそれに対応してきたメーカーの技術力は素晴らしいものです。私も電力を安定的に供給することの難しさを皆さんに伝えていきたいと思っています。

いいおか・だいすけ 2000年名古屋大学工学部卒。04年同大学院工学研究科博士後期課程修了。名城大学准教授、東北大学大学院准教授などを経て23年4月から現職。

【特集2】地産地消エネを最大限に活用 官民の役割分担で事業性確保

【新地スマートエナジー】

東日本大震災からの復興によるまちづくりで、福島県新地町にスマートコミュニティが誕生した。町と11社の民間企業が出資する地域エネルギー会社「新地スマートエナジー」が2019年春から電気と熱の供給を開始し、今も順調な事業運営が行われている。

スマコミの拠点は、津波によって壊滅的な被害を受けたJR新地駅の周辺エリア。エリア内に建設した新地エネルギーセンターが電気と熱の供給を担う。5台のガスエンジンコージェネレーションシステム(出力35 kW×5基)で発電し、その排熱は熱交換機や排熱投入型吸収冷温水発生機(422kW)に活用。ガス吸収冷温水発生機(422kW)や電動スクリュー冷凍機(冷房能力60 kW)、温水ボイラー(加熱能力581kW)3台で冷水・温水を製造する。センターの壁面や屋根、需要家の施設には太陽光発電システム(計85 kW)を設置した。エリア内でつくられた電気や熱は、自営線と熱導管を通して公共施設や民間の温浴施設などで使われている。

また、コージェネの燃料には、石油資源開発の相馬LNG基地からパイプラインで供給される天然ガスを使用。災害時にも持続可能な供給体制を構築している。さらに、蓄電池(50 kW時)やBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を使い、CEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)による最適制御を実施中。まさに、地域のエネルギーを地域内で最大限に活用する「地産地消の分散型エネルギーシステム」が確立されているというわけだ。

町がエネ設備を所有 採算性ある供給目指す

事業の運営方法にも大きな特長がある。町が自らエネルギー施設を所有し、運用は新地スマートエナジーに委託している。新地スマートエナジーは電気と熱の販売で収益を上げ、運用費のみを賄えば収支が成り立つスキームだ。

民間企業が持つ実績とノウハウを活用できる点も強みだ。出資企業の一社である日本環境技研は、加藤憲郎・前新地町長がスマコミ事業の実施を決断し、検討を始めた当初から事業に参画。国の補助事業の活用に向けた調査をはじめ、エネルギーセンターやエネルギーマネジメントシステムなどの実施設計を行い、事業の具現化を叶えてきた。同社は「事業採算性はまだまだ厳しいが地方自治体主体の安定供給を支えていきたい」としている。新地町では今後、農業施設などに対し、電気と熱とともに排ガスから回収したCO2を供給し、作物の生育に活用するトリジェネレーションの導入を計画中だ。官民連携が奏功したスマコミの次なる展開が注目される。

「新地スマートエナジー」のエリア全体風景

【訂正とお詫び】6月号特集2の記事について

エネルギーフォーラム6月号「特集2」(73頁)の電力館とガスパビリオンのインタビュー記事の見出しに誤りがありました。正しくは、電力館が「『可能性のタマゴ』がコンセプト 次世代エネ技術を面白く体験」、ガスパビリオンが「CNに向け『化けて』変容を 地球温暖化を考える機会に」です。なお電子版ではすでに修正しています。関係者の方々にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫びし、訂正いたします。またウェブ上での「お詫びと訂正」が遅れたことを重ねてお詫びいたします。

バス営業所内の水素ステーション 国内初整備で大型車普及に弾み

FE岩谷コスモ水素ステーション

水素自動車向けの供給インフラ整備と運用を手掛ける岩谷コスモ水素ステーション(喜村博代表)が、バス営業所内としては国内初となる水素充填所(液体水素式)を開設した。都営バスの車庫である東京都交通局の有明自動車営業所(東京・江東)内に開設し、4月から都バス向けに供給している。

一般の燃料電池自動車(FCV)と異なり大型バスなどの商用車は、決められた時間に決められた量の水素を充填するため一定の需要を見通すことができる。FCVの普及が不透明な中、こうしたバス向けの供給インフラ整備は、水素社会の実現に向けた大きな一歩となる。

加えて都は、国内バス事業者として最も多くのFCバスを運行しており、その数は80台にのぼる。さらに2027年度までに、100台に増やす方針を掲げている。公共交通機関として、都が水素利用を推進していくことに大きな意義がある。バス向けの「大口需要」の対応には、短時間に大容量の水素を充填する必要がある。そのために今回、ある工夫が施された。それは「液体水素昇圧ポンプ」(三菱重工業製)を採用したことだ。

大容量の水素を充填 液水ポンプで短時間供給

液体水素を活用する一般的なステーション運用では、まずタンクローリーによって運び込まれた液体水素をタンクに常圧貯留。気化後に水素を蓄圧器に移し、そこから必要量に応じてディスペンサーを通じて車両に供給する。今回は、貯留タンクと気化器の間に液体水素ポンプを新たに設置した。このポンプで液体水素を液体のまま82MPaまで昇圧する。その後は「一般式」と同じだが、「ポンプをはさむことで蓄圧器を最小化し、設備全体がコンパクトに設計できる。加えてランニングコストを大幅に削減するほか、ボイルオフガスの発生を従来以上に抑えることができる」(三菱重工関係者)。

これまで多様な方式のステーションを運用してきた岩谷。コスモエネルギーホールディングスとの合弁で23年に水素ステーションを運用する新会社・岩谷コスモ水素ステーションを立ち上げた後も、液体水素ポンプという新たなアイテムを活用して、最適な供給インフラの運用を模索している。

【キャプション】

国内初のバス営業所内ステーション(提供:岩谷産業)

燃料を貯める液体水素タンク

【特集2】日本発の技術でCNを訴求 会場内で地産地消モデルを確立

大阪ガス】

大阪ガスは地産地消型スキーム構築に向けたメタネーションを実証中だ。さらに、グリーン水素との合成による脱炭素化にも取り組んでいる。

大手都市ガス事業者を中心に、ガス業界が押し進める未来の都市ガス「e―メタン」。今回の「大阪・関西万博」では、この日本発の次世代型エネルギーの意義や展望を世界へ発信しようとDaigasグループが中心となって動いている。

大阪ガスは万博で「化けるLABO」を運営している。環境省委託事業「既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業」のもと、会場内で発生する生ごみやCO2を利用し、e―メタンを現場で生産し、その現場で消費する地産地消型のスキームを構築している。

4つの方法でCO2回収 会場のバイオマス資源活用

化けるLABOでは、四つのリソースによるCO2を活用してe―メタンを生産する技術に挑戦している。

一つ目のリソースは循環型のCO2だ。会場内から出る生ごみ(バイオマス資源)を廃棄物としてバイオガスプラントに貯める。それを発酵させて発生するバイオガス内のCO2とともに、同時に発生するメタン(CH4)も活用する。

残り三つのリソースが回収型のCO2だ。DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)技術によって空気中から直接回収されるCO2と、オンサイトのボイラー排ガスから回収されるCO2、さらに日本館で得られるバイオガスから回収されるCO2が挙げられる。

回収型の一つ目で活用するDAC装置は、地球環境産業技術研究機構(RITE)がムーンショット型研究開発事業で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託のもと、実証装置として運用している。また、二つ目の排ガスからのCO2回収では産業ガスの製造販売を手掛けるエア・ウォーター(AW)と連携。AWは、このCO2を冷却用のドライアイスにも活用する。三つ目のバイオガスからのCO2回収では、経済産業省が出展する日本館と連携。同館内のバイオガスプラントで発生したバイオガス精製後のCO2を活用する。

㊧空気中から直接回収するDAC装置 ㊨回収したCO2はドライアイスにも活用する

一方、CO2の反応相手となる水素は、固体高分子型(PEFC)技術を利用した水電解装置で発生させる。化けるLABOでは再生可能エネルギー由来の電気を使って水電解するため、CO2を発生しないグリーン水素を活用していることになる。こうした循環型・回収型のCO2やグリーン水素を活用することでe―メタンの環境性も担保される仕組みだ。

これらの水素とCO2は、e―メタン生成を促すメタネーション装置へ投入される。ここで使用されるのが、微生物の力を用いるバイオメタネーション装置と、触媒を用いるサバティエメタネーション装置の2種類の設備だ。

メタネーション実証設備

【特集2まとめ】おかげさまで本誌創刊70年 松永安左エ門翁生誕150周年、昭和100年、戦後80年

国民の福祉の増進―。この理念の下、1955年5月に前身の「電力新報」が創刊した。

高度成長、公害問題、オイルショック、自由化、東日本大震災、脱炭素化と、戦後から現在までエネルギー産業を巡る課題は大きく変わってきた。

今号は創刊70年を迎えるに当たりエネルギーフォーラムの足跡を振り返ると同時に、

山地憲治・RITE理事長によるエネルギー政策の変遷と将来像についての寄稿、エネルギー業界6団体からのメッセージを掲載する特別編とした。

不偏不党の編集方針を堅持 「国益と福祉の増進」のため報道(志賀正利/エネルギーフォーラム取締役社長)

【寄稿】激動の歴史をたどった電力政策 戦後80年の変遷を振り返る(山地憲治/地球環境産業技術研究機構理事長)

【寄稿】正面からエネ問題に向き合う 国民一人ひとりの理解を醸成(林欣吾/電気事業連合会会長)

【寄稿】知見を基に公平・中立を維持 鋭い視点を合わせた誌面作成を(木藤俊一/石油連盟会長)

【寄稿】長期的視点での主張と問題提起 識見の高い編集姿勢を貫く(内田高史/日本ガス協会会長)

【寄稿】戦後から有益な情報提供に尽力 エネ・環境・経済の発展に貢献(田中惠次/日本LPガス協会会長)

【寄稿】総合専門誌として多角的に分析 今後も一層深い掘り下げに期待(山田耕司/全国LPガス協会会長)

【寄稿】国内外の情勢・動向発信に功績 さらに進化したオピニオン誌へ(森 洋/全国石油業共済協同組合連合会会長)

【特集2】 不偏不党の編集方針を堅持 「国益と福祉の増進」のため報道

志賀正利/エネルギーフォーラム取締役社長編集人兼発行人

本誌「エネルギーフォーラム」の前身である「電力新報」の創刊は、9電力体制が発足して4年後の原子力基本法が公布された1955(昭和30)年です。今年で70周年を迎えますが、ちょうど今年は電気事業再編成を主導した電力の鬼・松永安左エ門翁の生誕150年であり、昭和100年、戦後80年という節目にも当たります。

「日本の復興は電力から」 議連の理念を引き継ぎ創刊

創業者・酒井節雄は、創刊に当たり著した電力新報創刊趣意書で「電力は国民生活や全ての産業活動に直結しており、その電力を供給する電気事業の健全な発展を通じて国民の福祉の増進に寄与することを目的とする」と述べています。

酒井は戦後、自由党所属の国会議員秘書となり、「日本の復興は電力から」をモットーとして発足した電源開発議員連盟の事務局を担いました。ところが、佐藤栄作自由党幹事長が会長を務める海運議員連盟に絡んだ造船疑獄事件が起き、同議連は解散となり、そのあおりで電源開発議員連盟も活動を停止しました。しかし、「日本の復興は電力から」という電源開発議員連盟の理念を引き継ぐ形の専門誌の発刊を強く勧められたことから、電力新報の発刊を決意したものです。

戦後間もない創業当初は経営難が続く中にあって、当時の東京電力常務の木川田一隆氏、関西電力副社長の芦原義重氏、中部電力副社長の横山通夫氏などからご支援をいただき、経営を軌道に乗せることができたと述懐しています。

創刊から25年を経た80年には誌名を電力新報から「エネルギーフォーラム」に改題し、電力のほか石油、ガスなどを包含したエネルギーベストミックス時代に相応しいわが国唯一の総合エネルギー専門誌として生まれ変わりましたが、創業以来の編集方針である「本誌の報道を通じて国益と国民の福祉の増進にいささかでも寄与したい」という思いは、今も変わりはありません。「フォーラム」の言葉に込めた思いは、エネルギー政策には国民的合意形成が欠かせないものであり、そのためには国民の情報の共有と総合的な論争の展開を図ることが必要というものです。従って本誌は創刊以来、不偏不党の編集方針を堅持しており、その姿勢が誌面での幅広い自由なエネルギー政策論議を可能にしているものと確信しております。

また、エネルギー政策論争の活性化のために創業25周年を記念してエネルギー政策の合意形成や積極的政策提言に資する著作を顕彰する目的で1980年には「エネルギーフォーラム賞」を創設し、今年で45回目を迎えております。歴代の受賞作は斯界の権威から新進気鋭の若手による優れた政策提言など充実したものとなっております。

さらに創立60周年記念として2015年にエネルギー政策の合意形成の一助を目的とした『エネルギー小説賞』を創設しました。これは「エネルギー・環境(エコ)・科学」に関わる未発表のフィクション・ノンフィクションの優れて面白い著作を顕彰・出版するものです。

創業者 酒井節雄

厳しさを増すエネ情勢 初心に帰り真剣な議論を

ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギーを巡る情勢は再び激動の時代に突入しました。国際燃料価格の乱高下を招く地政学リスクへの警戒感が高まる中、資源・燃料の全てを輸入に頼る日本としていかに安定供給を堅持するのか。データセンターや半導体といった様変わりの電力需要の拡大に対応する供給力の維持・確保の在り方も含めて、初心に帰り真剣に議論する時が来ています。本誌は「国民の福祉の増進」という編集方針を些かも変えることなく情報発信していく所存です。

戦後の激動のエネルギー政策につきましては、RITE理事長の山地憲治先生に寄稿いただいておりますのでご一読賜りますようお願い申し上げます。

最後にこうした本誌の70年の歩みは多くの読者の皆さまの支えがあって成し遂げられたものであり、ここに深甚よりお礼申し上げます。

【特集2】激動の歴史をたどった電力政策 戦後80年の変遷を振り返る

高い見地から日本の電力政策議論に深く関わってきた山地憲治氏。その変遷を振り返り、将来の電力の在るべき姿について提言を寄せた。

山地憲治/地球環境産業技術研究機構(RITE)理事長

エネルギーフォーラムと私の関わりは長い。私が「電力新報」(月刊エネルギーフォーラムの前身)に初めて寄稿したのは1978年8月号で、題目は「核燃料サイクルからみた炉型戦略:シミュレーション分析にみる長期展望」だった。

当時は原子力への期待が極めて大きく、シミュレーションで想定した2000年のわが国の原子力発電規模は7000万~1・5億kW、25年については1億~3・5億kWだった。炉型は軽水炉から高速増殖炉(FBR)への移行が基本で、21世紀はFBRの時代になると想定されていた。当時の炉型戦略の課題は軽水炉からFBRへつなぐ原子炉型の選択で、軽水炉でプルトニウムを使うプルサーマル、国産重水炉(沸騰軽水冷却)ATR、そして天然ウランを燃料とするカナダの重水炉CANDUが候補だった。私の年代の人には懐かしい話だが、結果を見届けた今では夢の痕跡である。

ところで、今年は昭和100年、戦後80年、そして私自身にとっても後期高齢者となる75歳を迎えた区切りの年である。私の誕生年は電気事業にとっては、発電から送配電・販売まで一貫して行う戦後体制が決まった年(発足は翌年5月)である。この機会に電力を中心に戦後80年のエネルギー政策を振り返ってみたい。

高度成長を支えた電気事業 原子力は独自政策で展開

戦後と言っても52年4月に独立するまでの日本は占領下にあり、電力体制整備は占領下で行われた。50年の電気事業再編成令と公益事業令(いずれも国会議決のない占領下におけるポツダム政令)によって、電気事業は地域独占を認められた公益事業となり、発送電と配電を一貫して行う9電力体制が51年に発足した。

その後、曲折はあったが、戦後のわが国の電気事業は軌道に乗り、高度経済成長を支えた。電気料金は原価に適正利潤を加えた規制の下で形成されたので電気事業経営は安定した。原子力発電の導入、大気汚染対策として始まった液化天然ガス(LNG)火力の導入などは、安定した電気事業制度が存在したからこそ可能であったと言える。

70年代には2度にわたって石油危機が発生し、第一次危機の時には石油火力に75%を依存していた電気事業は値上げを余儀なくされた。だが、原子力やLNG、そして輸入石炭によって石油代替を図り電力の安定供給は維持された。その後は、原子力、LNG、石炭が発電の主力を担うようになり、石油火力の比率は急減し、安定供給を担う電源の多様化が実現した。

電力に限らず、高度経済成長が本格的に始まるまでのエネルギー政策は産業政策の一部であった。エネルギー政策を担う審議会(総合エネルギー調査会)が設置されたのは65年である。総合エネルギー調査会(現在の総合資源エネルギー調査会)の起源は、産業構造調査会(現在の産業構造審議会)の下にあった総合エネルギー部会である。第一次石油危機を経てエネルギー政策の重要性は増大し、70年代からは長期エネルギー需給見通しが公表されるようになった。今世紀に入りエネルギー政策基本法が成立すると、エネルギー政策はエネルギー基本計画に集約され、今日に至っている。

なお、原子力については、基盤となる科学技術開発から始める必要があったことと核兵器との関係があったため、独自の政策が進められた。54年に最初の原子力予算が計上され、56年には原子力委員会と科学技術庁が設置された。原子力委員会は、ほぼ5年ごとに原子力開発利用長期計画を策定し、わが国の原子力開発の基本政策を定めた。総合資源エネルギー調査会によるエネルギー政策の策定においても、原子力開発利用長期計画が尊重された。05年には「原子力政策大綱」と名称を変えたが、福島事故発生時まで、基本的にはこの政策決定プロセスは維持された。

温暖化対策と自由化が加速 電力ビジネスモデルが変容

90年代に入ると地球温暖化対策がエネルギー政策の重要課題として浮上してきた。また、分散型電源の意義も強調されるようになり、英国から始まった電力自由化の動きも勢いを増してきた。戦後の電力再編成以来、長く安定していたわが国の電気事業制度にも見直しの機運が高まりつつあった。このような時代の変化に対して、電気事業者は保守的で機動性に欠いていたと言わざるを得ない。少なくとも社会との対話が乏しかったことは確かである。現実には、住宅の太陽電池の余剰電力を家庭料金の水準で買い取るなど、再生可能エネルギー導入推進にも対応していた。だが、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の事故対応や六ヶ所再処理推進など原子力の課題対応に追われ、受け身の対応が目立った。

21世紀に入ると、化石燃料を大量消費する電気事業への風当たりが強まった。一方、11年の福島事故によって原子力推進には急ブレーキがかかり、再エネによる発電に大きな期待が寄せられた。そのため固定価格買い取り制度(FIT)が導入され、今や再エネ発電が電力供給量の22%となり、水力以外の再エネ発電が水力を上回るようになった。太陽光や風力のような自然変動電源を電力系統に統合するために需給調整や電力貯蔵、電力系統整備に多大なコストがかかるようになってきた。

電力システム改革は電気事業のビジネスモデルに大きな変容を要求することになるが、この背景にはエネルギー関連技術の大きなイノベーションがある。太陽光発電や風力発電、燃料電池などは熱の動力への変換を実現した動力革命とは無縁である。熱機関では規模の経済が働くが、太陽光などの分散型電源は小規模・大量生産によって経済競争力を持ち始めている。ならば、需要を束ねて大規模中央発電所から供給する方式で成長してきた電気事業の形態も変わらざるを得ない。

ただし、太陽光や風力のエネルギー源は国産であるものの、需給調整に必要な蓄電池を含む電力設備は輸入に頼る部分が多く、特にリチウムやコバルトなどの重要鉱物は供給国が偏っている。電力の安定供給には、従来のような燃料確保だけではなく、視野を広げて対応する必要がある。

FIT の導入で再エネが急増した

【特集2】知見を基に公平・中立を維持 鋭い視点を合わせた誌面作成を

木藤俊一/石油連盟会長

このたび、「エネルギーフォーラム」が、創刊70周年を迎えられましたことを心よりお喜び申し上げます。

貴誌の前身である「電力新報」が、創刊25周年を機にエネルギーフォーラムに改題されてから半世紀近くが経ちます。この間、人々の生活に欠かせない石油を含めたエネルギー全般について的確に報じられたことに敬意を表します。

平時・有事問わず安定供給 変わらぬ液体燃料の重要性

奇しくも、私ども石油連盟も、貴誌とともに歩み続け、今年で創立70周年を迎えます。この間、平時・有事を問わず、一貫して消費者の皆様にとって必要とされるエネルギーの安定供給に努めてまいりました。可搬性・貯蔵性に優れ、エネルギー密度が高い液体燃料である石油の重要性・有用性は、今後も変わることはありません。石油業界は、エネルギー供給の担い手として、液体燃料が将来の長きにわたって消費者の皆様に選ばれるよう、既存の製油所を、カーボンニュートラル燃料を製造する拠点に転換していくことなどを目指しています。貴誌には、このような石油業界の取り組みについて繰り返し報道いただき、改めて深謝しております。

今年は、2月に「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」「第7次エネルギー基本計画」といったエネルギーの重要政策が閣議決定されました。

エネルギー基本計画にも記載されている通り、無資源国である日本にとっては「S+3E」がエネルギー政策の基本です。第7次計画の策定にあたり、エネルギーのベストミックスなど様々な議論が尽くされました。石油は一次エネルギー供給の3割以上を占めていますが、2040年度においても一定のシェアを維持する見通しが示されました。一方、50年カーボンニュートラル社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの多様化、国際的な資源獲得競争、革新的な技術開発など、エネルギー分野に影響を及ぼすさまざまな不確定要素があり、事業者側の投資予見性を高めることや、国民理解を醸成することが必要です。国民にとっての関心も一段と高まることが想定される中、これらを調査・分析し、的確に情報発信する報道機関としての「エネルギーフォーラム」の役割は、より一層強まるものと拝察いたします。

引き続き、エネルギー全般の専門誌の先駆者として、70年にわたり築き上げられた知見を基に、メディアとして公平・中立な報道と、貴誌ならではの鋭い視点がベストミックスされた誌面作成を大いに期待しています。

今後の貴誌のますますのご発展を祈念申し上げますとともに、エネルギー産業のさらなる発展に向けて今後ともご尽力賜りますようお願い申し上げます。

【特集2】総合専門誌として多角的に分析 今後も一層深い掘り下げに期待

山田耕司/全国LPガス協会会長

創刊70周年を迎えられたことを心よりお喜び申し上げます。当協会も前身組織の設立から70周年で感慨深く思います。貴誌は日本のエネルギー・環境分野の総合専門誌としてエネルギーに関する最新情報、多角的な視点からの分析を提供し続け、業界の発展に大きく貢献されてきたことに心より敬意を表します。

分散性・可搬性のLPガスは家庭業務用のみならず産業用や自動車燃料用としても利用され、わが国の経済社会の発展と国民生活の向上に極めて重要な役割を果たしています。また、近年は自然災害が多発している中、災害にも強いLPガスの重要性は高まっており、エネルギー基本計画(2025年2月)では、LPガスはエネルギー供給の「最後の砦」と記述され、また、国土強靭化基本計画(23年7月)では、「各家庭や被災時に避難所となる公共施設、学校、災害拠点病院等の重要な施設における自家発電設備の導入、LPガス燃料の備蓄等を促進等する」と明記され、LPガスに対し大きな評価を頂いています。こうした中、当協会では以下の活動を重点的に展開しています。

液石法の省令改正に対応 選ばれるエネルギー目指す

需要拡大については、50年カーボンニュートラルの実現、S+3Eの達成の一環としてCO2削減に有効な高効率機器のエネファーム・エコジョーズ・ハイブリッド給湯器・GHPなどの販売を推進しています。

また、避難所となる公立小中学校の体育館などへ停電時にも稼働可能なLPガスによるGHPエアコン(冷暖房)の普及や公的避難所・医療施設・福祉施設といった防災拠点などに常設・常用を推進しています。

加えて取引の適正化については、国において液石法省令改正が実施され、昨年7月より過大な営業行為の制限と賃貸住宅への入居希望者に対するLPガス料金の事前情報提供制度が施行されました。今年4月には三部料金制の徹底とともに、賃貸住宅の料金には、消費設備料金の計上が禁止されました。こうした変化を踏まえ、取引適正化・料金透明化への取り組みをさらに推進し、選ばれるエネルギーとなるよう目指していきます。

保安に関しては全国目標の年平均で死亡事故1件未満及び人身事故25件未満の達成に向け、自主保安運動「LPガス安心サポート推進運動」を推進し、LPガスを安全・安心に使ってもらえるよう一層努めていきます。

貴誌は、これまでもLPガスに関するさまざまな情報を発信していますが、これからもLPガスの可能性、そしてエネルギーミックスにおける役割について、一層深く掘り下げた情報発信を期待しています。

最後に、貴社の今後ますますのご発展を祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。

【特集2】国内外の情勢・動向発信に功績 さらに進化したオピニオン誌へ

森 洋/全国石油業共済協同組合連合会全国石油商業組合連合会会長

創刊70周年を心よりお祝い申し上げます。創刊の1955年は、戦後の復旧・復興からわが国が高度経済成長へと向かう過渡期であり、国民生活や経済活動に不可欠なエネルギーの需要の拡大期に差し掛かる先行き不透明な時期でした。そうした中、月刊電力新報として創刊され、以来70年の長きにわたり、電力・エネルギー業界の発展に向け、国内外のエネルギー情勢や業界動向を取材し情報発信してきた功績は、誠に顕著なものがございます。

当会は53年の創立以来、全国47都道府県の石油組合とともに、石油製品の安定供給という社会的使命を全うするため、石油製品販売業者の健全かつ持続的な発展に取り組んで参りました。50年代の戦後の荒廃した国土の復旧、そして産業経済の復興から、60年代の高度経済成長を支え、70年代の二度にわたるオイルショック、80年代から90年代にかけての規制緩和・自由化という激動の時代を乗り越えてきました。さらに、2000年代に入り、内需の減少・販売競争の激化、2011年3月の東日本大震災など相次ぐ大規模災害の発生、そして19年からの新型コロナウイルス感染拡大の中でも、エッセンシャルワーカーとして石油の安定供給に貢献してきました。

「最後の砦」の役割果たす 新たなビジネスモデル模索

しかし、石油製品販売業者は、少子高齢化の進展や人口減少といった社会構造の変化や50年カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みが進む中、引き続き、平時・災害時を問わずエネルギー供給の最後の砦としての社会的使命を果たさなければならないという、大きな課題に直面しています。一方、50年CNに向けたエネルギーのトランジション期でも、石油の重要性は変わりません。

当会では、石油販売業界の7割を占める小規模事業者の視点に立った組織活動を推進し、地域社会に根差した石油製品の安定供給拠点としてのサービス・ステーション(SS)としての役割に加え、CN時代に対応した事業再構築を図り、多様化する消費者ニーズに対応した多機能化、多角化などを積極的に後押ししていくなど、SSの新たなビジネスモデルの構築に引き続き取り組んでいきます。

エネルギー需給体制がぜい弱なわが国では、政策の要諦である、S+3Eの徹底を図りつつ、石油など化石燃料をはじめ原子力、再生可能エネルギーなどの多様な選択肢の追求が求められるなど、エネルギーを巡る国内外情勢は混沌としています。

今後とも、エネルギーの安定供給とエネルギー業界の発展を支えるオピニオン誌として、さらに進化されることを期待し、当会からのお祝いの言葉とさせていただきます。

【特集2】戦後から有益な情報提供に尽力 エネ・環境・経済の発展に貢献

田中惠次/日本LPガス協会会長

このたびは、「エネルギーフォーラム」が70周年を迎えられましたこと、心よりお慶び申し上げます。貴誌は戦後から今日まで70年間の長きにわたり、われわれエネルギー業界関係者に有益な情報提供に尽力されてきました。

創刊時の「電力新報」に始まり、今日では、電力、ガス、石油、石炭、火力、新エネ、デジタル、環境、政策までのエネルギー全般の幅広い分野まで網羅されております。わが国の経済成長とエネルギーの変革とともに進化されており、わが国のエネルギー・環境・経済全般の発展に大きく貢献されましたことに改めて敬意を表します。

過去70年を振り返りますと、高度経済成長期に入り急増する電力需要の中、エネルギーの主役は石炭から石油に交代し、二度の石油危機を経て脱石油に向かいました。その後、原子力、LPガスが普及。次に天然ガスが加わり、地球温暖化と電力自由化を迎えました。2011年には東日本大震災による電力の供給危機、再生可能エネルギーという選択肢が登場。エネルギーの転換期に入り社会構造が変化する中、エネルギー業界は技術の進歩、供給体制の変革などにより、わが国の産業、社会、国民生活向上に大きく寄与してきました。

3つの新政策が閣議決定 化石燃料のCN化進行へ

折しも環境問題でいえば、昨年は世界の平均気温15・1℃と観測史上最も高い1年となり、産業革命前の水準より1・6℃も高くなりました。初めて1・5℃を超過し、温暖化対策の一段の強化を求める声が国際的にも広がりつつあります。

そのような中、わが国は、今年2月に「GX2040ビジョン」と「第7次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」を閣議決定しました。

言い換えると、エネルギーの安定供給を行いながら、エネルギーと産業構造を脱炭素型に転換させ、経済成長を目指すものであります。当協会のLPガスを含めた化石燃料(石油・都市ガス・LPガス)のカーボンニュートラル(CN)化に向けた対応を一段のスピード感を持って進めることが喫緊の課題ともなっております。

エネルギー問題は、わが国内外の政治・経済・外交にも直接関係するものでもあります。こうした中、貴誌の長年の経験と蓄積に裏打ちされたさまざまなエネルギー全般に関する広範な報道は、今後さらにエネルギー業界の発展に欠くべからざるものになると思います。貴社におかれましては、今後とも国内外はもとより、エネルギー政策までも含めた誌面の充実を図られ、エネルギー業界全般の発展にますますご尽力いただきますようお願いして、日本LPガス協会の祝辞とさせていただきます。