<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名
大手電力の不正閲覧で、内閣府の再エネタスクフォースが所有権分離を主張している。
ところが、エネルギー業界には他にも課題が山積し、分離の議論どころではなさそうだ。
―カルテル、不正閲覧と電力会社の不祥事が続いたが、新聞各紙を見ると報道は落ち着いている感がある。「嵐の前の静けさ」かもしれないが。
ガス 一連の電力不祥事については東京で新聞を読んでいるだけだと、ことの重大さを見間違う。不正閲覧を営業に使っていた関電は、関西地方ではメディアの強烈なバッシングを受けている。特に読売と産経は厳しい。
―読売、産経は原発には理解がある。志賀原発の「活断層疑惑」が晴れた時は、大きく紙面を割いて内容を伝えていた。
ガス ところがカルテル問題では、1面と社会面の両方で関電を批判している。不正閲覧では、大阪ガスの藤原正隆社長の記者会見での発言から「大ガス社長、重大な事案と批判」と報じた。それはこの2紙だけだ。
マスコミ 大ガスも導管部門を法的分離している。それで重大事案とは言ったが、批判はしていない。大ガスにも過去に不祥事があった。普通に考えて、ガス会社の社長が関電を批判するわけがない。
経産省は立腹だが…… 再エネTFは強硬意見
―各社が電力料金の値上げを申請した時だったから、タイミングも悪かった。
電力 不正閲覧には経産省もかなり立腹していたが、さすがに所有権分離まで発展するのはまずいと考えたようだ。だが、内閣府の再エネ規制タスクフォース(TF)がこの問題に首を突っ込んできて、所有権分離を提言した。それでややこしくなった。
TFの委員には電力ガス取引等監視委の委員長だった八田達夫さんや、エネ庁公益事業部の業務課長だった川本明さんがいる。彼らは電気事業をよく分かっているだけに、TFの会合では痛いところを突かれた。
ガス 会合に経産省からは課長補佐クラスが出ていたが、明らかに準備不足。経産省はTFを甘く見ていたね。
石油 東京新聞デジタル版がTF委員の高橋洋さんの取材記事を掲載して、「所有権分離が絶対必要」と主張していた。しかし、他にこの問題でパンチのある主張はあまり見当たらなかった。
―国会でも議論されているはずだが、あまり伝わってこない。
ガス 電力会社は放送法の解釈を巡る問題に救われている。テレビ局は自分たちのことだから、ワイドショーもこの問題を優先して取り上げている。
マスコミ 放送法といえば、安倍晋三元首相の国葬での「電通が演出」発言で謹慎したテレビ朝日の玉川徹さんを久しぶりに見た。朝のワイドショーで電気料金の高騰に絡めてこの問題を熱っぽく話していた。
―電力の問題は玉川さんの「十八番」だから。どんなことを言っていた?
マスコミ まともに聞くとイライラするから、あくまで番組を盛り上げる「ショー」の一環だと思って聞いていた。けれど、テレ朝やTBSの番組に疑問を抱いた元首相補佐官の礒崎陽輔さんの肩を持つわけではないが、報道の自由とか言う前に、この人は電力については明らかに「色眼鏡」を通した発言しかしない。「電力会社がバラバラだから、東日本で困っても西日本から電気を送れない」と平気な顔をして言っている。
―東と西とで周波数が違うことを知らないのか。知っていてとぼけているのか。
電力 知らないわけはない。自分たちに都合の悪いことは無視する。それが玉川さんとテレ朝のやり口なんだよ。
統一地方選で政治の季節到来 日経が台湾記事でチョンボ
―4月に統一地方選があり、これから「政治の季節」に入っていく。エネルギー政策も影響を受けそうだ。
マスコミ 日刊ゲンダイに辛口の記事があった。電力・都市ガス料金の負担軽減策は「総合経済対策」として行われる。だが、LPGは地方創生交付金での自治体による支援だけにしていた。
ところが3月に入り、公明党が「2200万世帯が利用しているのにおかしい。負担を軽減すべきだ」と言い出した。統一地方選対策は明らか。日刊ゲンダイは「選挙でようやく重い腰を上げた。公明党はLPG支援を主導したと訴えるはずだ」とやゆしている。
石油 実は、記事の背景には、自治体の多くが地方創生交付金を使ってしまって、LPG支援に回すお金がなくなったという事情がある。それで業界が与党に泣きついて、公明党が「渡りに船」と選挙対策に使いだしたようだ。
電力 そうやってまた、バラマキをするわけだ。
―ところで、日経新聞(3月7日)の「お知らせ」を見て「何のことか」と思った。2月28日からの連載「迫真」で、台湾軍の腐敗を伝えた記事のことだった。
マスコミ 軍OBの話として「軍幹部の9割ほどは退役後、中国に渡る。軍の情報提供を見返りに金稼ぎし、腐敗が常態化している」「いまだに中国に協力するスパイが軍に多いことが台湾最大の問題」などと伝えている。台湾では激怒した人が日経の台北支局に放尿している。
ガス 自民党の親台派の関係者が怒り心頭だったようだ。日経は国際報道でチョンボが多い。ギリシャでタンカーが原油を移し替えている写真でも、「ロシア産」とする誤報があった。
マスコミ 明らかに知識・取材不足。お知らせでは「混乱を招いて遺憾」と述べているが、それで済む話かな。外交関係もないからと、記者もデスクもたかをくくったんじゃないか。
―クオリティペーパーなんだから、しっかりしてくれよ。