地域と共存する再エネ開発 国内外の脱炭素事業をけん引

【レノバ】

木南陽介/レノバ代表取締役社長CEO

2000年の創業以来、環境課題の解決を目指してさまざまな事業開発に取り組むレノバ。

再エネ開発の要点と国内外の情勢に応じた新事業について、木南陽介社長に聞いた。


―再生可能エネルギー事業の方針について教えてください。

木南 再エネ開発は創業当時から構想していましたが、東日本大震災以降のエネルギー政策の転換を契機に、本格参入した形です。

当社初の太陽光発電は14年に1基目が運転を開始。これまでは大型を中心に開発してきましたが、最近は開発ポテンシャルや急速な需要の高まりを踏まえ、小規模分散型にかじを切りました。また16年にバイオマス発電所も運転を開始しており、来年にかけてさらに5カ所での運転開始を目指し、試運転や建設を進めています。

6月現在、建設中案件を含めた設備容量は、太陽光375MW(1MW=1000kW)、バイオマス445MW、陸上風力346MW、水力17MW、地熱2MW程度となります。


「再エネ+α」の価値提案 PPAで新たな強みを

―特に意識していることは。

木南 発電所の建設・運営だけでなく、地域の新たな産業創出など「再エネ+α」の価値を提案することです。再エネ+αを実現するには、まず地域ごとの歴史や文化に根差した「対話」を行わなければなりません。当社が上から目線で対峙するのではなく、「地域の方を上に置く」姿勢が大切です。対話を通じて知識差を埋め、その上で私たちが地域に対して貢献できる内容を提案します。

―最近では小売り電気事業者や需要家と再エネ電気を直接取引するフィジカルPPA(電力購入契約)、および電気は卸電力市場に供給し、別途環境価値を提供するバーチャルPPA(仮想電力供給契約)にも力を入れていますね。

木南 再エネ固定価格買い取り制度(FIT)の開始から10年が経過し、昨年4月には市場連動型のFIPがスタートしました。これを受け、当社は26年度3月期までにPPA全体(フィジカルおよびバーチャル)で合計300MWの積み上げを目指しています。これまでに東京ガス、エバーグリーン・マーケティングとそれぞれフィジカルPPAを締結し、東京ガスとの契約はすでに順次運転を開始しています。またバーチャルPPAに関しては、5月に村田製作所と締結しました。

PPA事業の迅速な拡大を可能にしたのは、当社の新旧の〝強み〟です。これまで当社は、環境・エネルギー分野の調査・コンサルティングから出発し、再エネの開発・運用を手掛けることで、エンジニアリングやファイナンス、リーガル、オペレーションの実績を積み上げ、強みとしてきました。さらに現在はPPAなど非FIT電力事業を通じて、「需要家開拓」という領域も強みの一つになりつつあります。

事業領域の拡大イメージ

水素戦略で高まる期待感 東京都も本気モードに

政府は6月6日、首相官邸で再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議を開き、「水素基本戦略」を6年ぶりに改定した。2040年までに水素供給量を足元の200万tから、現在の6倍にあたる年間1200万tとする目標を定め、官民合わせて15年間で15兆円規模の投資を呼び込む狙いがある。兵庫県立大学教授の嶺重温・水素エネルギー共同研究センター長は「水素関連技術で日本は世界に優位性を保っている。今回を機にさらに議論を進める必要がある」と、日本の水素戦略に期待感を示した。

小池百合子東京都知事も水素に本腰

国の動きに先駆け、水素の普及拡大に取り組むのは東京都だ。5月29日には「東京都エネルギー問題アドバイザリーボード」を発足。キヤノングローバル戦略研究所の今井尚哉研究主幹、国際大学の橘川武郎副学長、早稲田大学法学部の森本英香教授(元環境事務次官)ら6人が委員に選ばれ、電力需給問題の視点から水素エネルギーの活用を訴えた。「従来の再エネ原理主義路線とは一線を画す人選に驚いた。都の本気度が伝わってくる」(エネルギー関係者)

水素事業を巡っては、欧米で計画が滞るなど社会実装には課題山積の状況だが、草分けである日本の存在感を世界に示せるか。

【イニシャルニュース 】ニチガスに赤カード 競合業者は反転攻勢か

ニチガスに赤カード 競合業者は反転攻勢か

LPガス卸・販売大手のニチガスに、レッドカードが突き付けられた。消費者庁は5月25日、電気やガスの訪問営業の際、強引な勧誘や事実に反する説明など特定商取引法に違反する行為があったとして、ニチガスに対し一部業務停止命令を出した。具体的には、同日から8月24日までの3カ月間、電気やガスの訪問販売における契約の勧誘、申し込み、締結に関する業務を停止するよう命じたのだ。

消費者庁によると、今回の処分対象となったのは、ニチガスが業務委託する訪問販売業者(いわゆるブローカー)が行った「勧誘目的等の明示義務に違反する行為」など6件の営業行為だ。

これに対し、ニチガスはコンプライアンスを徹底する方針を示す一方、事実関係と処分内容については「見解の相違がある」として消費者庁と争う構えをちらつかせた。確かに6件の事例を巡っては、「訪問販売あるあるというか、誰しもが経験しているような勧誘方法もみられる。これで3カ月間の業務停止命令とは、処分が厳しすぎるのではないか」(エネルギー関係者)との声が聞こえている。

ともあれ、ニチガスへの業務停止処分で勢い付いているのが、首都圏のLPガス販売事業者だ。「これまで散々奪われてきた顧客を取り返す好機が来た。全力で営業攻勢を掛けていく」。埼玉県に拠点を構えるLPガス販売X社の幹部は、こう気炎を上げる。「切り替えられた需要家宅に消費者庁の公表資料を持っていって、『こんな事態になっていますよ』と周知して回るだけでも、効果がありそうだ」と意気込みを見せる。

ニチガスは法的措置に打って出るのか

かねてブローカーなどを活用した強固な営業力で、激しい顧客争奪戦を勝ち抜いてきたニチガス。今回の処分が、その潮目を変えることになるのだろうか。


立憲と維新が呉越同舟 電力高騰対策を提言

立憲民主党と日本維新の会は6月8日、電気料金高騰対策に関する提言を経済産業省に提出した。政府が行う電気代の激変緩和措置について、事業者による「中抜き」の懸念など問題点が多いと批判した上で、「エネルギー手当」と題した需要家への直接給付や、既存住宅の断熱化に対する補助金など4点の施策を提案している。

特にエネルギー手当については、現在の激変緩和措置が終了する10月から6カ月間、新たな対策として電力会社との契約形態に応じた一定額を需要家に直接支給することを盛り込んだ。具体的には、月額で低圧・電灯3千円、低圧・電力4千円、高圧5万円、特別高圧60億円に設定。今年度予算規模で計1・9兆円になると試算している。

「主張の合わない立憲さんとここまでよく擦り合わせができたと感心するよ」―。こう漏らすのは、日本維新の会に所属するO議員だ。両党が意見の隔たりが大きいエネルギー政策で協力したことを巡っては、霞が関でも驚きの声が上がったほど異色の提携。

提言をまとめた立憲民主党議員の一人は「これで野党としての存在感を示せれば」と意気盛んだが、O議員の考えは違う。「民主党系列お得意の国民支給で、お茶を濁すばかりの手法だ」と手厳しい。それでも立憲と維新が「呉越同舟」した理由は永田町界隈に吹く解散風に他ならない。

しかし結果的に、今国会での解散は見送られた。電力高騰対策を巡る野合は空振りに終わった格好だ。「維新には、エネルギー政策の正論で勝負してほしい」。電力関係者の声は届くか。

米国で新設原発稼働へ TMI事故後では初

1979年のスリーマイル島原発事故後としては初めて、米国で新設原発の営業運転が近づいている。

今回、臨界に達したのはサザン社がジョージア州で建設を進めてきたボーグル原発3号機。ウェスチングハウスのAP1000で、電源喪失時でも原子炉を自動で冷却できる「革新軽水炉」だ。同時期に建設を開始した4号機も7月に燃料を装填するという。

建設当時のボーグル原発
提供:朝日新聞社

サザンの子会社であるジョージア電力のキム・グリーン最高責任者(CEO)は、出力100%の達成を「エキサイティングなマイルストーン」と評し、4号機が稼働すれば国内第2位の発電容量となる。

しかし、ボーグル原発の稼働は6年以上遅れ、建設費の総額は当初予想の2倍以上となる約5兆円に膨れ上がった。原発建設の空白期間が長かったことが原因で、人材不足などが響いたという。

原発建設は人材・技術・サプライチェーンの維持に直結する。日本でも3・11以降、国内案件や海外への輸出が中止になったほか、一部企業が原子力事業から撤退。従事者も減少の一途をたどった。政府は次世代炉の開発・建設を掲げるが、着実に、スピード感を持っての推進が求められる。

「送配電の所有分離検討を」 政府からの宿題に業界反論

顧客情報の不正閲覧やカルテルなど大手電力会社で相次ぐ不祥事の再発防止策として、送配電部門の所有権分離など組織体制の見直しが、政府から大手電力への宿題として突き付けられた。

内閣府は6月16日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、「電気事業者の組織の在り方の検討」と題する項目の中で、こんな内容を提起したのだ。

〈経済産業省は、電気事業者の組織の在り方について、新電力の顧客情報の情報漏えい・不正閲覧事案やカルテル事案等を踏まえつつ、2013年の電力システム改革報告書に基づき、次のような点について引き続き検討する〉〈旧一般電気事業者の送配電部門の所有権分離についてその必要性や妥当性、長所、短所を含めて検討する〉

これに対し、電気事業連合会の池辺和弘会長は同日の定例会見で、「こうした事案があったから所有権分離をすべきとは思っていない」と真っ向から反論。「問題は配電と営業の関係なので、送配電会社の所有権分離をする方向に話がいくことには少し疑問を感じる。ほかの方法で解決しようとしているので、同様の事案が再発することはない」との考えを示した。

所有権分離に反論する池辺・電事連会長(6月16日の定例会見)

さらに「(海外では)電気事業が国営で、それを送配電も含めて分離したという例はあるが、民営でやっていたものを所有権分離した例は知らない」「財産権の問題はあり得る」「所有権を分離したからうまくいったという例も承知していない」などと述べた。

所有権分離を巡っては、新電力からも「有事の際の安定供給体制に支障をきたしかねない」(通信系事業者)との慎重論が聞こえている。提示された検討の期限は今年度中。結論はいかに。

女川2号差し止め請求棄却の意義 「主張立証責任は住民側」に回帰

【識者の視点】森川久範/TMI総合法律事務所弁護士

避難計画の実行性を争点に住民側が求めた女川2号の運転差し止め請求を、仙台地裁が棄却した。

その隠れた論点として「主張立証責任は住民側」との原点回帰の判断についても注目すべきだ。

 女川原子力発電所2号機の運転再開を目指す東北電力に対し、宮城県石巻市の住民が人格権に基づく妨害予防請求として運転差し止めを求めた事件で、仙台地裁は5月24日、住民側の請求を退けた。判決では、宮城県と石巻市が作成した避難計画について、①実効性を欠いていることをもって直ちに2号機の差し止めを求めることができるか否か、②実効性を欠いているか否か―が争点とされ、これらの判断が主ではあった。ただこの判決では、実は避難計画とは別に重要な判断も示していた。

それは、民事差し止め訴訟の主張立証責任(主張立証に失敗したときに不利益を被ること)において、「差し止めを求める原告側において、人格権侵害の具体的危険の存在について主張立証すべき責任を負うこととなり、この点は原子炉の運転差し止め請求においても異なるところはない」と明確に判断した点である。

本誌2022年2月号「羅針盤」で触れたように、東日本大震災後、民事差し止め訴訟や民事仮処分の裁判において、事実上の主張立証責任を事業者側に負わせる判断が多かった。その中で21年3月の広島高裁と同年11月の広島地裁の民事仮処分(民事保全)についての決定が、具体的危険性の主張立証責任を住民側が負うと判断した意義は大きいと述べた。

本判決は、民事保全ではなく民事差し止め訴訟の主張立証責任において、原則どおり、人格権侵害を主張する住民側がその責任を負うとした。権利主張者が主張立証責任を負担する民事訴訟の原則回帰を推し進めるものであり、その意義は大きいといえる。


事故発生の具体的危険性 避難計画の実効性と関連なし

次に、避難計画に関する判断について検討する。

原子炉等規制法の設置許可基準規則には、原発事故発生時の避難計画に関わる規定はない。当該事故に関する避難計画は、災害対策基本法および原子力災害対策特別措置法において、国が示す防災基本計画および原子力災害対策指針に基づき、都道府県、市町村などが策定するとされている。

避難計画の策定と支援体制

避難計画に関する事項を含む緊急事態に対する準備などでの役割と責任は、先述の二つの法において、国、地方公共団体、原子力事業者らにそれぞれ配分されている。つまり、避難計画の策定自体は、住民の防災に関し基本的な責務を負う地方公共団体の役割であるが、その運用に当たっては専門的知見を有する国や原子力事業者らに関与を求め、実効性を担保している。

そして判決では、争点①避難計画が実効性を欠いていることをもって直ちに2号機の差し止めを求めることができるか否か、について次のような判断を示した。

原告らの主張は、2号機において放射性物質が異常に放出される事故の発生が前提となっているが、原告らは、2号機の運転再開によって放射性物質が異常に放出される事故が発生する危険につき、具体的な主張立証をしておらず、そのような事故が発生する具体的危険があると認めるに足りる証拠はない。そうすると、原告らの主張は前提を欠くものであって、仮に避難計画が実効性を欠くものであっても、原告らの人格権が違法に侵害される具体的危険があると認めることはできない―。

つまり、避難計画の実効性の判断以前に、2号機の稼働により放射性物質が異常に放出される事故が発生する具体的危険の主張立証がないから、「人格権侵害の具体的危険性」を認識できないとするもので、主張立証責任を原告が負う基本原則の論理的帰結と言える。

分散型リソースの運用会社を設立 市場取引で電力安定供給に貢献

【関西電力】

関西電力は分散型エネルギーリソースの市場運用を担う新会社を設立した。

電気事業やVPP事業で培った知見を生かし顧客の設備を活用、需給の安定化を図る。

今年4月、国内で初めて分散型リソース(DER)の市場運用に特化した新会社「E―Flow(イーフロー)」が誕生した。関西電力のソリューション本部がVPP(仮想発電所)のアグリゲーター事業で培ってきたノウハウや実績を生かし独立した合同会社で、7月1日から30人体制で事業を開始している。

DERを所有する顧客に代わり、電力、供給力、調整力の各市場で最適な取引により収益化を図る。関西エリアにとどまらず、全国で事業を展開する。2030年度までにさまざまなDERを活用し、市場取引量250万kW、300億円の売り上げが目標だ。

関電のVPP事業を担う専門部署が立ち上がったのは18年。DERを活用した調整力公募への入札から事業をスタートした。リソース規模が拡大する中、20年に供給力を取引する容量市場のオークションが開始。21年には調整力を取引する需給調整市場が開設されるなど、DERを活用できる市場整備が進んだ。こうした中、関電はオリックスと共同で、22年から紀の川蓄電所(和歌山県)の建設を開始。24年度に蓄電所事業に参入すると発表した。さらに再生可能エネルギーについては、22年にFIT(固定価格買い取り)制度からFIP(市場連動価格買い取り)制度に移り、今後は発電事業者が自ら発電計画の策定などを行うことが求められる仕組みになった。このように、電力の市場取引の活発化が新会社設立の契機になったわけだ。

三つの事業を柱 AIを活用し収益拡大

E―Flowは、①VPP、②系統用蓄電池、③再エネアグリゲーション―の3事業が柱だ。AIを搭載した分散型サービスプラットフォーム「K―VIPs+(ケービップスプラス)」を活用して、これらリソースの市場取引を行う。

①では、企業や自治体が所有する生産設備や蓄電池、自家発電設備などを束ね一括で管理・制御することで、DR(デマンドレスポンス)として活用し、VPPを構築する。全国のDERを運用して、K―VIPs+を通じて容量市場、電力卸取引所、需給調整市場で取引する。各リソースの特徴を把握し、最大限の活用を図るとともに、今後拡大が見込まれるEVなど、小規模リソースの活用も見据える。

②では、K―VIPs+を活用し、市場入札から発電計画の提出、蓄電池の充放電制御などを行う。過去の取引実績や制度動向、アグリゲーターとしての知見を学習させたAIが日々、収益が最大になるよう入札計画を策定する。また、約定結果に基づき蓄電池を自動制御する。K―VIPs+は市場要件を満たすため、時間前市場も活用しながら、蓄電池残量が適正な水準となるように調整する。

E―Flowの川口公一社長は、「約定内容と蓄電池の残量をAIが自ら考えて、追加的に市場で取引する。それぞれの蓄電池の活用範囲や劣化を鑑みた制約を踏まえてAIが考え、運用するのはこのプラットフォームが初めてだ」と胸を張る。

蓄電池事業部の平木真野花部長は機械学習のAIは何を学習させるかが肝だとし、「今は電力事業の変革期。制度も変わっていく。AIにはさまざまな市場変動ケースなどを学習させ、最適な取引の予測が可能となるようにしている。市場参入に向けて、過去の取引実績を踏まえながら、電力事業の知見を盛り込んでいけるのが強み」と自信を見せる。

難しいのは、蓄電池はメーカーの仕様によって特性が異なる点だ。また、地域によって電力市場の約定傾向も異なる。現在、蓄電池を適切に制御できるようにシステムの仕様調整を行い、運用開始に向けた準備を着々と進めている。

③では、電気事業で培った再エネ予測技術に基づき、K―VIPs+が日々発電計画を作成し、市場入札、計画提出などもサポートする。FIP制度への移行により、市場取引をした際、発電予測と実績に誤差が生じるとインバランス料金が発生する。E―Flowはこのインバランスのリスクを負うため、いかに正確に、天候によって変動する再エネの発電量予測を行うかが重要になる。今後はAIを活用しながら、予測精度の向上を目指していく。

AIを搭載する分散型サービスプラットフォーム「K-VIPs+」

制度変更にも迅速に対応 顧客が安定供給に貢献

現行の第6次エネルギー基本計画では再エネのさらなる拡大とともに、DERの活用が掲げられている。今後増加する多種多様なDERをいかに多くつなぎ、市場取引をはじめとした活用ができるかが事業の鍵を握る。制度の変更にも迅速な対応が必須だ。

川口社長は、この対応ができるのはVPP事業に取り組んできた5年間のノウハウが大きいと強調する。「関電はいち早くVPP事業に取り組み、このところ毎年のように改正が行われる制度を熟知しているからこそ、市場取引に特化した事業ができる」

DERを市場で有効活用させることは顧客の経済的なメリットだけでなく、顧客自身がカーボンニュートラルの実現や再エネのさらなる導入、ひいては電力安定供給に貢献できる。30年代以降、卒FIT電源が増加した際の安定的な電力運用への大きな一助となっていくだろう。

E―Flowは3本柱の事業に取り組みながら、将来的にはこれらの事業から得たデータを活用した事業や、地域と連携した事業なども見据えている。

(左から)金子勝課長、平木部長、川口社長、椿本雄陽氏

宮下・青森県知事が誕生 中間貯蔵で関電奇策の影響は

6月29日、前むつ市長の宮下宗一郎氏が青森県知事に就任した。去る4日の知事選では、候補者の小野寺晃彦・前青森市長との間で自民党が推薦を決められない保守分裂選挙となったが、結果は宮下氏の圧勝だった。

知事選では「青森新時代」を掲げて圧勝した
提供:朝日新聞社

六ヶ所再処理工場やむつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設など、原子力施設が集中立地する青森県。宮下氏はむつ市長時代、電力業界による中間貯蔵施設の共同利用案に強く反対していた。

その中間貯蔵を巡って、驚きのニュースが飛び込んできた。関西電力の森望社長が12日、福井県の杉本達治知事と面談。県内の原発で保管中の使用済みMOX燃料と使用済み燃料の一部を、核燃料サイクルの実証研究で使用するためフランスに搬出する〝奇策〟を明らかにしたのだ。関電は今年末に中間貯蔵施設の候補地確定期限を迎えるが、「福井県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としている。

とはいえ、中間貯蔵施設の候補地は依然として未定で、今後も使用済み燃料は増え続ける。電気事業連合会の池辺和弘会長は6月16日の記者会見で、むつ施設の共同利用について「今回の実証研究とは全然違う問題」と述べ、実現可能性を検討したい考えに変わりはないことを強調した。この問題で、電力業界と宮下氏が再び対峙するのは避けられそうもない。

原子力業界関係者からは、宮下氏が市長時代に強く反対したのは「むつ市に筋を通さず、前知事に頼った関電への腹いせでは」との声も。果たして、立場が変わった宮下氏は態度を軟化させるのか。それとも、関電の奇策を受け、反発姿勢を強めるのか。攻防第二ラウンドの幕が開く。

最終処分場の調査は前進するか 鍵握る「文献」地点の新規拡大

高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分地選定が曲がり角を迎えている。

事業の前進には、北海道の2町村に加えて新たな自治体での「文献調査」実施が欠かせない。

高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分地選定に向けた調査事業が風雲急を告げている。

まずはこれまでの歩みをざっと振り返ろう。最終処分地は、①2年程度の文献調査(机上調査)、②4年程度の概要調査(ボーリング調査)、③14年程度の精密調査(地下施設での調査・試験)―という段階的な調査を経て選定する。いずれも、都道府県知事や市町村長の意見に反して次の段階に進むことはない。また調査を実施した自治体には、文献調査段階で最大20億円、概要調査段階で最大70億円の電源立地交付金が交付される(精密調査段階以降も法制化を検討中)。

わが国では2020年11月、北海道寿都町と神恵内村で文献調査を開始して以降、実施自治体は出ていない。先行する諸外国の選定プロセスでは、フィンランドが概要調査相当6件、スウェーデンが文献調査8件、フランスが文献・概要調査相当10件などある程度の候補地が出てから、絞り込みが行われた。日本でも2町村以外の自治体による文献調査が望まれる。

文献調査を実施した寿都町

こうした状況を受け、2月に閣議決定した「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」では、政府を挙げて処分地選定などのバックエンド問題に取り組むことを明記。4月には「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」を改定し、閣議決定した。国主導の下、地元電力と原子力発電環境整備機構(NUMO)が協働で100カ所以上の自治体を訪問する全国行脚や、文献調査の受け入れ判断前から調査の検討の申し入れるといった自治体の負担軽減策などが盛り込まれている。

文献調査の応募は報道の過熱などから、首長選で最重要争点となることもある。国策への貢献が、首長にとっては政治生命を賭けるほどの大きな決断となっていただけに、少しでも国が前面に出る姿勢を示したことは評価できる。

現在、寿都町と神恵内村が次のステップである概要調査へ進むかどうか、文献調査の評価の方向性が経済産業省の放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)で検討されている。同WGで「GOサイン」が出れば、2町村と北海道知事への意思確認へと進むことに。この際、寿都町では住民投票で意思を確認する段取りになっている。


「仲間が増えてほしい」 対馬市や本州でも動きが

住民投票に向け、寿都町の片岡春雄町長が最重視するのが、新たに文献調査を実施する自治体が現れるかどうかだ。地元で概要調査に反対する人の中には、最終処分場の問題が自分たちに押し付けられているとの思いを抱く人もいる。その不安を払しょくするためにも、全国の〝仲間〟が必要というわけだ。こうした状況もあり、放射性廃棄物WGのGOサインも文献調査の応募状況を見ながら出される可能性が高い。

そんな中、6月に動きがあった。長崎県対馬市の業界団体など12団体が、文献調査への応募を求める請願を対馬市議会に提出したのだ。請願は6月の定例会で採択される見込みとなっている。ただ最終判断は比田勝尚喜・対馬市長に委ねられ、「即応募」となるかは不透明だ。応募に前向きな地元の有力者は「仮に最終処分場ができても、HLWが運ばれるのは30年ほど先の話。それでも、対馬の将来のために応募したい」と語る。今後は勉強会などで応募の機運を高めつつ、来年3月の市長選で争点化するという見方が優勢だ。

また対馬市が応募するよりも早い段階で「〝日本地図の真ん中あたり〟で応募する自治体が出てくるのでは」との声も聞かれ、近いうちに大きな動きが表面化する可能性もある。

【コラム/7月4日】IEAネットゼロシナリオが招く災厄 大きすぎる副作用

杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

国際エネルギー機関(IEA)が発表した脱炭素シナリオ(Net Zero Scenario, NZE)。これを推進するとどのような災厄が起きるか。ルパート・ダーウオールらが「IEAネットゼロシナリオ、ESG、及び新規石油・ガス投資の停止に対する批判的分析」と言う本報告(以下、単に報告)を出したので一部を紹介しよう。原文は以下で無料公開されている。

A Critical Assessment of the IEA’s Net Zero Scenario, ESG, and the Cessation of Investment in New Oil and Gas Fields.

NZEでは石油・ガス価格低迷へ 上流投資停止で何がおきるか

下記は、左が石油需要、右が天然ガス需要。NZEでは2050年に世界全体でCO2排出実質ゼロが達成されることになっているので、石油需要もガス需要もほぼ消滅する。STEPSとはStated Policy Scenarioで、これまでに世界諸国の政府が表明した政策の積算である。

このNZEでは、「非化石エネルギーが大量導入され、省エネも進むことによって、化石燃料需要が大幅に減り、そのため石油・ガス価格は低迷する」というストーリーになっている。

しかし本報告は、それは現実的でない、とする。過去2年に起こったことを振り返ると、化石燃料の上流投資が滞った結果、化石燃料が不足し、世界的なエネルギー価格高騰が起きた。すると、今後、IEAのNZEを実現しようとして、また上流投資が滞れば、世界的なエネルギー価格高騰が起きる。化石燃料需要が減るとすれば、その価格高騰によって起きることになる、と想定するほうが現実的ではないか。

そうすると、需要がSTEPSからNZEまで価格効果によって減少することになる。ではこの莫大な需要減少を引き起こす価格水準は何かといえば、これは経験的な価格弾性値によって計算できる。

図は、価格弾性値をマイナス0.1から0.3まで振ったときの石油・ガスの価格水準の推移である。

石油価格水準(WTIスポット価格)はバレル当たり200~400ドル、天然ガス価格(ヘンリーハブスポット価格)はMMBtu(英国熱量単位)当たり15~30ドルと暴騰することになる(下図、左が石油価格、右が天然ガス価格)。

IEAはNZEを発表したときに、もう今後は脱炭素に向かうから新規の石油・ガス田への上流投資は不要、などとしたが、これが一因となって上流投資が滞り、ここ1、2年の世界エネルギー危機を招いたのだ。今後もNZE達成のためとして上流投資を止めてしまえば、またもやエネルギー危機を招いてしまう。

IEAは、もともとは石油輸出国機構(OPEC)に対抗してエネルギー安定供給を図るために設立された組織なのだが、いまやすっかり脱炭素教に染まってしまい、かえってエネルギー安定供給を破壊する先棒を担ぐようになってしまった。こんなIEAならもう要らない。

先進国だけの脱炭素 コミットの仕方まばら

脱炭素というけれど、実際には先進国しかしていない。下図は、経済協力開発機構(OECD)と非OECDに分けて、50年脱炭素という目標がどう扱われているか示すものだ。

上に行くほどコミットメントの度合いが高く、上から順に、①法制化されている、②政策文書になっている、③宣言しただけ、④提案や議論されているだけ――となっている。日本を含め多くの先進国では法制化されているが、多くの途上国では単に議論されていたり、宣言されていたりするだけだ。

主要7カ国(G7)では「50年脱炭素」が繰り返し表明され、途上国へも働きかけをすることにはなっているが、途上国がおとなしく言うことを聞くかというと、そうはなりそうにない。そもそも50年脱炭素など不可能であるし、それを実施しようとすれば莫大なコストがかかることも明白だからだ。

今、先進国が躍起になっているロシアへの経済制裁についてすら、実施しているのは先進国だけで、途上国はほとんどしていない。まして、自国の経済を痛めつける脱炭素など、途上国がおいそれと実施するとは到底思えない。

さて、IEAは、NZEを実施すると比較的高コストな先進国の石油生産が減少する結果、相対的に低コストであるOPECに世界の石油生産シェアがシフトして、現状の35%から52%に達する、としている。そして、これは石油ショックが発生した1973年に近い水準なので、問題である、としている。

しかし、本報告は「それどころでは済まない」としている。何しろ脱炭素に熱心なのは先進国だけなので、米国や英国などの先進国だけがNZEに従って石油生産を減らすことになり、OPECのシェアはもっとずっと高くなるだろう、とする。

下図は、非OPECだけがNZEに従って石油生産を減らし、OPECはNZEに従わず、現状の政策を維持する(STEPS)とした場合、OPECのシェアが82%に達する、と言う試算だ。

先進国だけが脱炭素に邁進すると、世界の石油市場は空前の水準でOPECに牛耳られるという訳だ。超ド級の石油ショックが起きるかもしれない。OPECではなく、OPECプラスならばこの比率は82%よりももっと高くなり、OPECプラスではなく非民主主義国家、とするとさらに高くなるだろう。

NZEでもう一つ困るのは、PV・風力・EVのために莫大な金属鉱物資源が必要だが、これが中国に牛耳られていることだ。下図は、化石燃料(上)と金属鉱物資源(下)について、採掘(左)と処理(右)の世界シェアを示すものだ。石油・ガスは米国などが多くなっているが、金属鉱物資源は中国のシェアが圧倒的になっている。

中国は「金属鉱物資源のOPEC」であり、PV・風力・EVを推進するとその中国への依存がますます高まることになる。

OPECプラスの多くの国は独裁国家であり、中国も共産党独裁国家である。NZEを推進することで、世界は独裁国家に資源を依存することになる。これで日本などの民主主義は維持できるのだろうか? NZEを進めることによるこの副作用はあまりにも大きすぎるのではないか?

【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「亡国のエコ 今すぐやめよう太陽光パネル」など著書多数。最近はYouTube「キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志」での情報発信にも力を入れる。

「節電ループ」から脱却できない東電 薄氷踏む安定供給の打開策は?

今夏もまた、東京エリアのみで企業や家庭に無理のない範囲での節電が求められることになった。

だが、電力業界関係者は「冬こそ本当の危機」と口をそろえる。そこにある構造的問題とは。

「東京エリアでは7、8月に限り、無理のない範囲での節電をお願いしたい」

東京電力管内における今夏の厳しい電力需給見通しを受け、西村康稔経済産業相は6月2日の記者会見で、昨年に続き、家庭や企業に対し、生活や経済活動に支障のないレベルでの節電への協力を呼び掛けた。7年ぶりの節電要請となった昨夏は全国を対象にしていたが、今夏は同エリアのみだ。

電力広域的運営推進機関が5月29日に取りまとめた7~9月の電力需給見通しによると、10年に1度の猛暑を想定した場合の予備率が、7月は北海道・東北5・2%、東京3・1%、中部・北陸・関西・中国・九州9・8%、四国11・2%。8月は北海道・東北7・6%、東京4・8%、中部11・7%、北陸・関西・中国11・9%、四国14・4%。9月は北海道・東北15・8%、東京5・3%、中部7・8%、北陸・関西・四国11・3%、九州18・5%―となる見込み。

いずれの月も、各エリアで安定供給に最低限必要とされる3%以上を確保できるものの、原子力が再稼働し10%程度を確保できる西日本に対し、東日本は7、8月が軒並み低水準。特に東京エリアは、厳気象対応の「電源′Ⅰ」や火力の増出力運転、エリア間融通に加え、「kW公募」による追加供給力(57・6万kW)の確保といった対策を講じてもなおギリギリで、ひときわ厳しいと言わざるを得ない様相だ。


供給力不足による需給危機 夏よりも冬に顕在化

こうした東京エリアの厳しい需給状況について、電力業界関係者は、「JERAの発電所の休止中火力が、中部エリアではなく東京エリアに集中している。他エリアよりも、早急に休廃止を進めてきただけに、その影響が需給のタイトさに表れている」と指摘する。

原子力発電所が停止して以降、同エリアでは追加的な供給力として期待されるLNGや石炭火力の新規投資計画が相次いで立ち上がったものの、さまざまな要因でことごとく頓挫してしまった。一方既存火力は、再生可能エネルギーの導入量拡大による稼働率低下や、卸電力価格の下落で不採算化。不良資産の廃止に迫られた結果、供給力の減少に歯止めがかけられない事態に陥っているというわけだ。

とはいえ、電力業界関係者の多くは、東京エリアも含めた今夏の需給については比較的楽観的に見ている。厳暑に対する予備率は確保できている上、夏は電力需要のピークと太陽光の発電ピークのタイミングが重なるため、地震などの不測の事態で火力が大規模脱落するような事態にでも陥らない限り、電気が不足することは想定しづらい。

むしろ、本格的な危機が到来するのはこの夏を乗り切った後だとの懸念が強く、大手電力関係者の一人は、「冬は絶望的かもしれない」と危機感を露わにする。夏とは逆に、冬は悪天候で太陽光の出力がゼロになる時間帯に需要が増大しかねず、どうしてもLNG火力頼みとなる。

いつになれば電力不足が解消されるのか

また、住宅の屋根上への太陽光設備の導入が進んだことで、太陽光の出力が減少する点灯時間帯にどれだけ需要が増えるのかを精緻に予測することが年々難しくなっている。再エネの出力抑制回避のために火力の出力を可能な限り下げていることもあり、供給力が需要に追い付かず需給バランスが崩れてしまうリスクも高まっている

冬の需給に向け、もう一つの懸念材料が燃料問題だ。昨年、世界を襲ったエネルギー高騰から一転、天然ガスや石炭などの化石燃料や電力の市場の価格はすっかり落ち着きを見せているが、6月に入って欧州のガス・電力価格が上昇に転じたのだ。

「今のトレンドは、燃料制約で需給ひっ迫が生じ、電力価格が高騰した21年の状況に似ている」と語るのは、別の大手電力関係者。21年よりも燃料の貯蔵水準は高いとはいえ、当時と比べロシアから欧州へのガス供給が大きく絞られているだけに、供給側のトラブルや中国の経済回復による買い占めなどが起きれば、一気に需給がひっ迫し、今は安定しているJKM(北東アジアのスポット価格指標)や日本の電力市場価格も、再び高騰する可能性が十分にある。

西条火力新1号機が運開 地域と共に安定供給を支え続ける

【四国電力】

コロナ禍での4年にわたる1号機のリプレース工事を終え、最新鋭の設備を備えた西条発電所。

発電開始から80年を経て、これからも地域と共に暮らし、四国の電力を支える存在としてあり続ける。

西条発電所1号機(石炭火力・出力15.6万kW)のリプレース工事が始まったのは2019年6月のこと。年末には、海外で新型コロナの検出が報道された。「工事は最後まで新型コロナに翻弄されました」。こう話すのは、西条1号リプレースプロジェクトチームの岡本保朗プロジェクトリーダーだ。世界中で新型コロナが蔓延し、海外で製造する機器が各国のロックダウンなどの影響で届かない。工事現場でも感染が広がり、作業が滞った。「予定通りの工程は難しいと、何度か思いました」

一向に収束が見えない中、設備メーカーは機器を国内製造に切り替えて対応してくれた。工事現場では作業員の感染拡大を最小限にとどめるよう工夫を凝らし、注意喚起を徹底。人員増強など関係者が一丸となって遅延を挽回し、当初の計画通り今年6月末、営業運転を開始した。出力50万kWとなった新1号機は、2号機と共に四国電力の電力需要の約13%を賄う。

6月末から営業運転を開始した新1号機

調整力を備えた発電所に 放水口を移し環境に配慮

愛媛県東予地域に位置し、瀬戸内海に面した西条発電所の歴史は戦前までさかのぼる。四国電力が誕生する前の日本発送電時代、1942年からこの地に建つ町のシンボルだ。旧1号機は65年から運転開始。2号機の25万kWと合わせ、途中、燃料転換などを経て、半世紀以上も四国の安定供給に貢献してきた。

高経年化設備となった旧1号機は、今後も長期にわたって信頼性のある供給力として活用するため、環境性や経済性を向上させた最新鋭の超々臨界圧発電設備(USC)へのリプレースを決定。既存設備の運転を継続しながら重原油タンクヤード跡地に建設を進め、タービン発電機、ボイラー、煙突などを設置した。高効率となった新1号機はCO2排出原単位で13%程度削減。ばい煙の排出量は約60%減、排出濃度も90%近く削減する。

タービン発電機。石鎚山の空と、水の都西条をイメージした色だ

新1号機の特徴の一つは、最低出力を15%まで下げ、7万5000kWで運転できることだ。太陽光発電など、再エネが主力電源になることを見据え、調整電源としての役割を担える設計にした。さらに昼間運転し夜間は停止するDSS運用も可能になっている。

工事では環境保全にも配慮した。発電所の北西部を流れる加茂川河口付近には肥沃な干潟が広がり、のりの養殖が行われている。設備が大きくなるとプラント排水が増えるため、排水処理装置を増設。さらに干潟への温排水の影響をできる限り抑制するよう、北側にあった放水口を約200m東側に移動させた。加えて放水口から沖に約450mの導流壁を作り、潮流の早い海域に放水。新しい取水口への再循環も回避した。

発電所の北側に延びる導流壁

西条発電所は、事業用発電所として全国で初めて木質バイオマスを導入した発電所でもある。2005年には四国地域の端材を利用するサプライチェーンを作り、混焼を開始。いち早くCO2排出削減に取り組んできた。新1号機でも混焼を継続し、25年には下水汚泥固形燃料化物も利用して、一層のCO2削減を図る計画だ。アンモニア混焼も視野に検討を進めている。

西条発電所は、80年にわたり培った発電技術のノウハウを生かし、競争力と調整力を兼ね備えた火力電源としてさらに重要な役割を担い、安定供給に貢献し続けていく。

NTTとJERAがタッグ GPI買収の「同床異夢」

NTTアノードエナジーとJERAがタッグを組んだグリーンパワーインベストメント(GPI)の買収劇が話題だ。このところ、ENEOSホールディングス(HD)によるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)買収、豊田通商によるユーラスエナジーHDの完全子会社化やSBエナジー(現テラスエナジー)買収と、再生可能エネルギー業界再編に向けた動きが続く。関係者は「大手資本が国内再エネ企業を買収してポジションを固める〝刈り取り期〟に入った」とみる。

国内再エネ企業の買収では最高額と見られる3000億円のうち、NTTアノードは8割、JERAは2割を出資。NTTアノードが主に陸上風力、JERAが洋上風力のアセットを引き受ける。単純計算でGPIの陸上風力は2400億円、洋上風力は600億円と評価されたことになる。

NTT側が陸上風力を欲する理由は何か。グループの中期経営計画ではグリーンソリューションを柱の一つとし、5年で約1兆円投資を掲げ、まずは自社電力のグリーン化が急務。さらにNTTアノードは環境省「脱炭素先行地域」で複数案件の共同事業者となるなど、地産地消型の電力供給にも積極姿勢だ。将来的にはグリーン電力を活用したデータセンター構想という青写真も見えてくる。

一方、JERAの狙いは、ずばりGPIの北海道・石狩湾新港での洋上風力実績だ。GPIは同港湾管理組合の公募で事業者に採択され、約10万kWの予定で2020年に着工。石狩市沖は別途、政府による洋上風力公募の候補地点として、再エネ海域利用法に基づく有望区域に指定されている。

JERAの狙いは石狩湾新港でのGPIの洋上風力実績だ(提供:JERA)

政府公募における実績評価では、①事業実施実績、②関係行政機関の長らとの調整実績(いずれも10点満点)―の2項目がある。JERAは台湾案件への参画や、ベルギー大手のパークウィンド社買収により①では満点を狙える体制が整う。他方、②では「国内実績」が必須であり、他陣営から一歩出遅れていた。この弱点を補いつつ、道外も含め同じ海域でGPIと協力できれば、頭一つ抜けられるとの思惑がありそうだ。

評価額にバブル感 売り上げ規模にそぐわず

このように「同床異夢」ながら思惑が合致したNTT側とJERAだが、高値つかみ感は否めない。GPIの陸上風力は「環境アセス中の計画の実現性を一定割り引けば、売り上げ規模は900億円程度」(前出関係者)と見られる。

なお、ENEOSはJREのほぼ同規模のアセットを1900億円で買収。利益ベースでは、好風況エリアの大規模陸上風力が主力のGPIの方がプラスの可能性がある。とはいえ、売り上げ規模900億円に対して2400億円という評価を巡っては、やはりバブル的と言うほかない。

翻ってJERAも、洋上風力公募の熾烈な競争を勝ち抜くためとはいえ、まだ運開していない一地点の「実績買い」の額として600億円はやはり莫大だ。「買い手からの指値ベースでは」(同)と見る向きもあるが、果たして。

【マーケット情報/6月30日】原油下落、需要の回復期待から上昇

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇した。欧米原油では、景気の判断材料でもみ合いが続く局面もあったが、米マクロ経済指標が市場予測を上回ったことなどから、買いが優先だった。

米国では、第1四半期の経済成長率が、年率換算で2%へ上方修正されるなど、市場関係者の予想を上回る回復基調が示された。特に個人消費は、過去2年間で最高水準に達するなど好調だった。

また、米原油在庫が、戦略備蓄とともに前週から減少が続いたことも、強材料になった。

中国では、内需喚起に向け、実質的で効果的な施策の実行が改めて発表されたことなども、限定的ながら油価の上昇に影響した。

一方、欧米の主要中央銀行が、インフレ対策として利上げを継続する姿勢を明らかにしたことから、景気の冷え込みと需要減の見通しが強まる局面もあった。ただ、米国における個人消費支出 (PCE)物価指数の伸び率が鈍化していることなどを受けて、油価の下方圧力には至らなかった。

なお、インド向けのロシア原油輸出が過去最高を記録したが、材料視されなかった。


【6月30日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=70.64ドル(前週比1.48ドル高)、ブレント先物(ICE)=74.90ドル(前週比1.05ドル高)、オマーン先物(DME)=75.59ドル(前週比1.49ドル高)、ドバイ現物(Argus)=76.05ドル(前週比2.15ドル高)

次代を創る学識者/能村貴宏・北海道大学大学院工学研究院准教授

最終的に廃棄されている熱の有効活用が、脱炭素化には欠かせない。

蓄熱技術を確立することで、その実現を目指している

日本では、投入する一次エネルギーの6割以上が最終的に熱として廃棄されており、この廃熱量の低減や未利用熱の活用が、2050年脱炭素社会実現に寄与するとの期待は高い。

「捨ててしまっている熱を効率よく回収し使い切る仕組みを構築することで、(生物学で自己恒常性維持を意味する)ホメオスタシス的なエネルギーシステムを実現していきたい」と語るのは、北海道大学大学院工学研究院エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの能村貴宏准教授だ。

そのために取り組んでいるのが、熱を高密度に貯蔵・輸送し、高効率に変換する相変化蓄熱材料(PCM)の開発であり、さまざまな分野の企業と連携しながら、技術の確立のみならず事業化を見据えた研究を進めている。

能村准教授が開発したPCMは、アルミニウムとシリコンの合金をマイクロカプセルに充填したもの。
カプセル内の合金が固体から液体に変わる際の潜熱による蓄熱と放熱を利用することで、産業などから排出された熱エネルギーを貯蔵・輸送し、エネルギーを必要とする別の場所で再利用する。「PCMは、産業や発電、家庭の冷暖房や給湯機といった異なるプロセスをつなぐハード。これに情報技術を組み合わせることで、これらのつながりをさらに有機的なものにできる」という。

さらには、再生可能エネルギー由来の電気の余剰を熱に変換して貯蔵し、電力需要の大きい時間帯にその貯蔵した熱で発電する「カルノーバッテリー」としての活用も視野に入れており、「蓄電池と同様、再エネ大量導入に伴い必要とされる蓄エネルギーの手段として熱が果たせる役割は大きい。脱炭素社会に向けたテクノロジーとして、しっかりと政策の中に位置付けられるべきだ」と強調する。

脱炭素の最前線・北海道 熱利用技術の実用化目指す

高校時代は宇宙や地球、歴史などさまざまな学問分野に興味を抱いていたが、道具が石器から鉄器に変わったことで人間の生活が劇的に変わったように、マテリアルの変革が社会に大きな影響を与えることができると、北海道大学工学部に進学し、材料科学を専攻した。研究者を志したのは、大学の図書館で読み切れないほど多くの書籍に触れ、これからも新しい情報が生み出されていく中で、「自らも世の中に新たな学術、技術を生み出す側でありたい」と考えたからだ。

洋上風力開発が進む北海道は、脱炭素社会を目指す日本にとってのエネルギー供給基地となり得る。北海道で活用できる熱利用技術は、30年、50年の北海道の姿だけではなく、日本全体のエネルギー供給の在り方をも左右する。まずは、30年までに研究中の技術が一つでも実用化され、エネルギーの問題を良い方向に変えていることが目標。その先は、「これ以上できることはない」と言えるよう、蓄熱に関する研究は自らの手で終わらせる意気込みだ。

のむら・たかひろ 1984年北海道生まれ。北海道大学大学院工学院材料科学専攻修士課程および博士課程修了。博士(工学)。北海道大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター博士研究員、特任助教を経て、2015年から現職。