〈エネルギー人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙
振り返ればさまざまなニュースがあった2024年。
続く25年を一般紙記者はどう見通すのか。
―2025年6月に新潟県の柏崎刈羽原子力発電所6号機に燃料装荷すると東京電力が発表。政府も対応を加速させている。
A紙 現地の記者に聞くと、24年2月頃から政府や県の動きが活発化し、詳細な報道が増えてきた。また、さまざまな世論調査で再稼働に賛成と反対が5分5分に近づいてきた。新潟日報の衆院選時の世論調査も興味深い。全体は反対46・5%、賛成36・2%だが、30代では賛成が46・1%となり、現役世代の方が賛成が多くなっている。
B紙 東京から見ると、花角英世知事の姿勢が明確でない。県議会も慎重姿勢で、東電や政府の焦りは感じるが、急速に物事が進むようには思えない。キーマンは知事かと思うが、衆院選の新潟小選挙区での自民候補全敗がどう影響するだろうか?
A紙 今、衆参で自民党議員は2人となり、しかも党の中枢にいる人はゼロ。花角氏は基本、自民のバックアップで選挙をやってきた。特に花角氏が官僚時代からパイプがあったのが引退した二階俊博氏。しかし状況が変わり、政府の意向が県に伝わりにくくなったと言えそうだ。しかも新潟は県議の力が強く、ベテラン中心に再稼働慎重派がいる。25年7月に任期満了となる参院選を控える中、花角氏が「県民の信を問う」方法はやはり知事選になるが、動きづらくなっていることは事実だ。
―26年6月任期満了となる次の知事選まで花角氏が判断を示さないのでは、との見方もある。
A紙 市町村長との非公開の懇談会で「県の判断はいつになるのか」との質問に対し、花角氏が「次の知事選より前には県民の意思が固まるのでは」と答えたという。つまりお尻が決まった感じだ。
ただ、私は25年春に一つの山場が来ると思っている。花角氏の指示の下、県民が判断するための議論が広範にわたり行われ、その結果が3月末に出そろう。となれば、何らかのアクションを迫られるのではないか。
いよいよ柏崎動くか 連立組み変えの行方は?
―24年も足早に過ぎ去った。印象に残ったニュースは?
B紙 女川2号機、島根2号機とBWR(沸騰水型炉)が動き出したこともあるが、一番大きかったのは敦賀2号機の基準不適合だ。また、六ヶ所再処理工場は27回目の完成延期が発表された。日本原子力発電と日本原燃、2社の在り方を真剣に議論してほしい。そして、脱炭素にブレーキをかける燃料油補助金を継続させ続けることも、いい加減にやめてほしい。
A紙 原子力を取り巻く変化は確実にあった。衆院選の公約を見ると、共産以外は再稼働に基本賛成。特に立民は野田佳彦氏が代表になったこともあり、既存原発の稼働は条件付きで容認した。そして、エネルギー基本計画では原発のリプレース方針に踏み込んだ。
C紙 メディアや市民団体のトーンも変わってきた。使用済み燃料の乾式貯蔵などに市民団体が意外と騒がなくなり、「原子力がなくても乗り切れた」報道も盛り上がらず。また、NDC(国別目標)を決める審議会で環境省側の委員のハチドリ電力社長が「欠席時に意見書を出そうとしたら止められた」と訴えたが、朝日でもかつてのようにキャンペーンを張らなかった。
B紙 25年は数十年ぶりの衆参同時選挙となるのかが焦点だ。各党連携の在り方を模索しており、立民と維新が選挙区を調整し始めたら面白いね。
C紙 少数与党ともなれば普通は多数派工作をする、あるいは石破茂首相は辞めているはずだが、森山裕幹事長は何も動いていない。いろいろなオプションがあるのに、本予算を人質に3月に政局が起きるのを待っているようにしか見えない。
―その他の注目点、あるいはニュースを大胆予想してほしい。
C紙 まず、予算がどのタイミングで通過するのか。立民の安住淳・予算委員長は今、優等生然としているが、今後暴れるのか。その後も自民をがたがたにするカードとして夫婦別姓がある。エネルギーとは無縁そうだが、閣議決定した新エネ基を動かす段階で、自民党に一悶着あると大変だ。
ズバリ予想するなら、参院選を見据えた連立組み替え。自・公・国、あるいは考えにくいが立・維主導で自民が割れるという展開もゼロではない。
A紙 大胆に予想すれば、柏崎6号機の再稼働方針が決まるのではないか。先に燃料装荷した7号機は10月に特重(特定重大事故等対処施設)の期限が来るため、東電は6月に燃料装荷予定の6号機優先に切り替えるように思える。また、先述のように議論疲れがある。花角氏はぶら下がりでも強硬な姿勢の時があり、やる時はやる人のようだ。さらに避難道に関する議論が市町村長を交え進んでおり、具体化していけば首長が「再稼働反対」とは言えないだろう。
B紙 いや、個人的には柏崎は国政に振り回され、苦しい状況が続くように思う。それより、北海道電力の泊3号機は審査がかなり前進した。また、東北は女川3号の審査をなぜ申請しないのかな。どうせ動かすなら新しい方がいい。そして先ほど指摘した原電、原燃のトップをいつまで東電が出し続けるのか―。最後に、エネ基でリプレースに踏み込んだけど、タイムリミットはもう過ぎていると思う。それでも電力会社がメリットを享受できる仕組みを作れるのか、政府の手腕が問われる。
―25年も喧々諤々のメディア放談をお届けできるよう、引き続きお付き合い願いたい。