【原子力】原潜の保有を検討せよ 核兵器と原子動力は別物

【業界スクランブル/原子力】

日本の周辺には隣国の防衛力が自国の軍事力より低いと見れば、平然と侵略するような国連安保理の常任理事国がある。国民を守るには抑止力として世界の最先端防衛力を持つことが必須だ。

自民・維新の連立政権合意書には「次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」とある。既に米英豪の軍事同盟「AUKUS」では米英から豪への原子力潜水艦の提供が決まっており、さらに米大統領は韓国の原潜保有を認めた。北朝鮮が原潜の開発に乗り出す中、わが国も保有を検討すべきである。

被爆国日本は核拡散防止条約を批准し、国際原子力機関(IAEA)に加盟しているため核兵器の保有は厳禁だ。しかし、位置を特定されにくい原潜で通常兵器による反撃能力を保有することは、防衛力として極めて効果的である。日本の原潜は米露のように世界中を相手にする必要はない。守備範囲は日本周辺だけだから高濃縮ウランは不要。低濃縮ウランで数年持てば十分だ。原子力船「むつ」も低濃縮ウランだった。

同船の失敗は原子力開発初期に背伸びし過ぎた検討不足にあったが、その経験はその後の全ての原子力・放射線関連施設に反映されている。舶用に使える小型炉の研究は原子炉メーカが続けており、繰り返し製造してコストダウンに結び付けば、海上運輸の脱炭素化も目指せる。原子力技術と人材の確保にもつながる。原子力基本法、日米原子力協定、IAEA保障措置協定などとの関係は精査・検討が必要だが、手続きや整理の問題に過ぎない。過去の政府見解など気にせず、時代の流れに対応することが重要だ。(T)

【シン・メディア放談】さまざまあった2025年 揺れる世界で試される日本

〈業界人編〉電力・石油・ガス

今年も国内外で大きな変化があった。日本のエネルギー政策は荒波を乗り越えられるか。

─初の女性首相誕生から1カ月が経過した。安全保障や財政を巡る国会答弁が話題を呼んだが、エネルギー政策はどう見ているか。

石油 正直、まだよく分からない。原子力は再稼働と次世代炉開発の推進、メガソーラーは規制すると言っているが、具体的な方策はまだ出てきていない。

電力 原子力には前向きなので、大手電力会社は期待しているだろう。一方、自前の再生可能エネルギーを展開する新電力などは、どんな規制になるのかと懸念を抱いている。いま表に出ている話は、核融合やSMR(小型モジュール炉)、再エネ国産化、メタンハイドレート開発といった中長期的な話ばかり。どれも重要だが、任期中にどんな成果を上げられるかは未知数だ。ガソリン税の旧暫定税率の廃止や電気・ガス料金補助を実施するが、これは「物価高対策」としての位置付けだ。

石油 暫定税率の財源問題はどうなるのか。今年は埼玉県八潮市で痛ましい道路陥没事故があった。インフラの修繕費用は足りていない。恒久財源を赤字国債で賄うのはあまりに無責任だ。

ガス 赤沢亮正経済産業相はエネルギーの専門家ではないが、政策の飲み込みがかなり早いらしい。それにアメリカのラトニック商務長官との関係性を見て分かるが、冗談を言って場を和ませるのも得意だ。まずは原発再稼働をしっかりと進めてほしい。それが物価高対策にもなる。

石油 柏崎刈羽原発の再稼働が秒読み段階に入ったが、朝日が11月7日に1面で県民意識調査の結果を報じた。3面には「柏崎刈羽、県民意思とは 30キロ圏内、『拒否感が強い』」とあったが、この見出しはおかしい。確かに野党系県議は再稼働に「拒否感が強いことが分かった」と言っているが、調査結果は拮抗している。再稼働に反対という「意思」を強く感じさせる見出しだ。毎度言っているが、再稼働させない場合にどう安定供給を実現するのか、現実的な対案を出してほしいね。


サハリン2は大丈夫か NOと言える日本

─2025年度上期の中間決算が出そろった。皆さんの業界はどうだった?

石油 堅調だが先行きの不透明さは増している。ENEOSは合成燃料(eフュエル)の商業化計画を一時的に見合わせた。1ℓ当たり700円では採算が合わないからだ。『選択』11月号の記事で話題の宮田知秀社長はその辺りの判断がシビアだ。

ガス 電力・ガスは為替や期ずれの影響で好決算が目立つ。ただ、余力が生まれたところで、投資先がなかなか見当たらない。水素もアンモニアも収益化が見えてこない。

【石油】政治的必要性が優先 暫定税率の年内廃止

【業界スクランブル/石油】

12月31日に暫定税率が廃止される。財源を巡って抵抗してきた自民党も、総裁・税調会長の交代で、あっさり年内廃止に同意した。国会対策もあるから野党への譲歩は必要だし、高市トレードで円安も進んだから輸入物価対策は必要なのだろう。首相が財政規律を重視しないこともあるかもしれない。1バレル当たり65ドルの原油は、1ドル=100円なら1ℓ当たり41円、150円なら同61円だから、円安で自動的に約20円値上がりした。政治的必要性は全てに優先する。

しかし、暫定税率・道路特定財源は、田中角栄の国土建設の「夢」であり、「知恵」であった。また日本の自動車社会成長の原動力であり、同時に金権政治と〝土建屋国家〟の基礎だっただけに、そのガソリン税を半減するというのは感慨深い。それだけに、国土インフラの維持管理のための安定財源を見つけることは大変だろう。

軽油引取税は地方税・地方財源で、知事会から暫定廃止に反対する声も強かった。野党も沈黙してきた。なぜか高市首相は総裁選から廃止を主張し、来年4月の廃止となった。確かに、物流コストの引き下げ効果はあろう。地方財政への影響から、新年度実施ということなのだろう。

ただ、ガソリン税の減税分である1ℓ当たり25・1円が値下がりするわけではない。補助金10円の同時廃止で差し引き15・1円と、二重課税分2・5円の値下がりにとどまる。さらに混乱防止のため、補助金は12月11日まで3回にわたり約5円ずつ段階的に増額、実質的な減税分の値下げは年内には実施される。逆に、減税による値下がり感は、薄まるかもしれない(H)

ロシアと関係深める中国 敵失が経済強靭化に貢献

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

トランプ米政権による高率関税政策や、ウクライナ侵攻に伴うG7、EU(欧州連合)の対ロシア制裁により、中国は恩恵を受け、政治・経済的なパワーを増している。

ウクライナ侵攻以降、中国のロシア産原油の輸入量は、2023年にサウジアラビア産を抜いて首位となり、初めて1億tを突破した。さらに、制裁の影響で、中国は露産原油を国際価格よりも割安で大量に調達できる。

一方、輸入第2位のインドとロシアの関係は、先行きに不透明感が漂う。インドの露産原油輸入は、20年の日量約5万バレルから23年には164万バレルへと急増し、ロシアが最大の輸入先となった。インドは原油輸入国であると同時に、世界第2位の石油製品輸出国でもあり、モディ政権の「Make in India」政策の下、リライアンスやナヤラ・エナジーなどが製油所の精製能力を強化してきた。しかし、今年10月にはトランプ政権がロスネフチやルークオイルなど露石油大手との取引に対する追加制裁を発動。これを受けインド政府もロシア産原油の輸入停止方針を打ち出した。

このためロシアは中国への依存を強めている。人民元での取引に応じるロシアの姿勢は、石炭に代わる安価で安定的なエネルギーを求め、人民元の国際化を目指す中国の利益にかなっている。

14年のクリミア併合に伴う経済制裁を契機に、中露は30年間、最大380億m³のガス供給契約を締結し、これを運ぶパイプライン「シベリアの力」が19年に稼働した。そして、ウクライナ侵攻後の制裁を受けて、現在は「シベリアの力2」へと進んでおり、欧米の制裁圧力が加わるたびに、両国は長期的にコミットを深めてきた。ロシアからの安定供給を背景に、中国は米国からの原油輸入を激減させ、LNG輸入も今夏までには実質ゼロとなった。中国の弱点だったエネルギー安全保障は、ロシア制裁やインドへの外交圧力によるいくつもの「棚ぼた」で格段に進展した。

さらに産業政策においても、中国は技術やサプライチェーンの米国依存脱却を図っている。特に26~30年に向けては、米国への依存度が高かったAI・半導体分野で「自主可控(Independent & Controllable)」を目標とする。トランプ政権による中国向け半導体輸出規制や高関税政策は、中国の戦略的サプライチェーン確立を後押しし、同国を製造大国から製造強国へと押し上げる要因となっている。

こうした動きを踏まえると、トランプ外交やロシア制裁は、皮肉にも中国経済の強靭化に貢献してきたと言える。棚ぼたの連続、いわば利敵行為である。これをありがたく受け取る中国のエネルギー安全保障とサプライチェーンの確立は、トランプ政権以降も続く中国の基盤として日本に不可逆的な影響を与え続ける。日本はトランプ大統領との関係構築だけでなく、ポストトランプ政権を見据えた根本的な対策が求められている。

(平田竹男/早稲田大学教授・早稲田大学資源戦略研究所所長)

海上封鎖による台湾全停電の脅威

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

去る10月7日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、台湾の海上封鎖を意図した最近の中国の軍事演習を紹介した。この作戦は、全面侵攻よりも小さなリスクで、この島を支配下に置けることを示したという。

米国のシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によると、海上封鎖が行われれば、この島のLNGは2週間以内、石炭は7週間で枯渇するとのこと。台湾では、かつて原子力が発電量の52%を占めていたが、安全性への懸念や民進党の政策によって発電所の廃止が進み、5月に最後のユニットが停止。以来、発電はLNGが5割、石炭が4割、再生可能エネルギーが1割となっている。輪番停電などを実施しても、全停電までの期間は、多少引き延ばせる程度のようだ。

政府は現在、安全保障政策として燃料在庫の増加と、エネルギー構成の見直しを進める。原子力に関しては、8月に再稼働を問う国民投票が行われた。所定の投票率には未達であったが、賛成多数であった事実も踏まえ、民進党出身ながら「中国への抵抗力」を唱える頼清徳総統は、原子力安全委員会に再稼働要件の検討を指示した。一方、自給自足電源として期待する再エネの普及は目標には程遠い。足元の政策の焦点は、米国のLNG輸入を増やして中国をけん制することらしい。

さて、日本の電力供給においても発電量の7割は火力であり、燃料は海外依存である。在庫はLNGで2~3週間、石炭は4週間ぐらいであろうか。ちなみに、石油は、約50年前のオイルショックに懲りて、国家90日、民間70日の備蓄を保有する。当時の石油に代わり、発電用燃料の主力を担うLNGや石炭の備蓄がこのままでは「平和ぼけ」と言われまいか。

(水上裕康/ヒロ・ミズカミ代表)

【ガス】日米エネ交渉の妙 サハリン2の行方は?

【業界スクランブル/ガス】

トランプ大統領の一挙手一投足が世界の注目を集める中、日本の大手エネルギー企業は米国とのLNG長期契約を次々と締結している。JERAは米国産LNGを新たに年間550万t調達する方針を発表し、九州電力は年間100万tの新規契約を締結。東京ガスも正式な契約ではないものの、アラスカLNGプロジェクトへの「関心表明」を行い、条件次第では年間100万t規模を調達する可能性がある。これらの民間の対米向け投資は、貿易交渉の中で日本が米国に約束した5500億ドル(約80兆円)の対米投資の内数になると見られる。日本のLNG取扱量の上位企業が前向きな姿勢を示したことは、米国側も好意的に受け止めているだろう。

一方、日本のエネ企業にとって対米交渉のもう一つの「悩みの種」は、米国がロシア産エネルギーへの制裁姿勢を強め、日本にもロシア産LNGの輸入停止を求めている点だ。10月末のトランプ氏来日時も当件が強く求められるのではないかとの懸念もあったが、高市早苗首相はトランプ氏に対しサハリン2からの撤退は困難だとの立場を伝えた上で、「日本が手を引けば(代わりに権益取得に動く)中国やロシアが喜ぶだけだ」と毅然と説得したそうだ。

現在の米国とのエネルギー交渉では、米国産LNGの輸入拡大という前向きな対応を示す一方で、サハリン2の輸入継続を主張するなど、政府はメリハリの利いた交渉を行なっている。サハリン2への制裁除外措置の期限が12月19日に迫り、予断は許されないが、日本のエネルギー安全保障を確保するべく、引き続き政府には粘り強い交渉を期待している。(Y)

G20分断で共同声明採択されず トランプ米政権の存在感鮮明に

【ワールドワイド/環境】

10月に南アフリカでG20エネルギー転換ワーキンググループ(WG)大臣会合が開催されたが、共同声明を採択するに至らず、議長サマリーの発出にとどまった。全会一致で採択された唯一の合意文書は「クリーン調理普及のための自発的インフラ投資行動計画」である。

背景には、ウクライナ戦争やG20経済圏間の貿易摩擦などの地政学的対立がある。さらにエネルギー転換を巡る表現に関しても意見が対立した。EU(欧州連合)、日本などの先進国は、地球温暖化防止国際会議・COP28のグローバル・ストックテイクの結果に沿って化石燃料からの移行を求めた一方、中国、インドなどは、CCS(CO2回収・貯留)などの排出削減技術と組み合わせた化石燃料の継続使用を認めるべきだと主張した。米国も化石燃料の段階的廃止に反対した。また米国、フランス、日本などは、原子力と水素をクリーンな選択肢として強調したが、ドイツなどは、原子力を「グリーン」に分類することに抵抗を示した。結局、議長サマリーには「全エネルギー源アプローチ(再生可能エネルギー・原子力・ガス・CCUSを包含)」が強調された。

気候資金と公平性に関しても意見が収斂しなかった。インドやアフリカ諸国は、先進国による優遇融資と技術移転の強化を要求し、国内財政制約に苦しむ先進国は既存メカニズムを超える新たな拠出に消極的だった。

こうした対立構図は今始まったものではないが、ブラジルが議長国を務めた昨年には共同声明が採択できている。やはりトランプ政権の存在が大きかったというべきだろう。米代表団はパリ協定に関連する新たな国際的約束、特に気候資金と再エネ目標、さらにはクリーンエネルギー転換、脱炭素、気候変動といったキーワードへの言及に反対した。エネルギー政策における「国家主権」を重視し、2023年のグローバル・ストックテイクで合意された化石燃料からの移行に関する文言への支持も拒んでいる。6月のG7サミットでは重要鉱物の供給安全保障を除き、エネルギー・温暖化についてのG7の共同歩調をとれなかったのはこれが理由だ。このような状況ではロシア、産油国、中国、インドなども固有の事情を強調し、合意が一層難しくなることは不可避である。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院客員教授)

【新電力】蓄電池事業に打撃か 需給調整市場巡る制度改正

【業界スクランブル/新電力】

先月末の制度検討作業部会で、需給調整市場の募集量削減および一次・二次市場の上限価格の大幅な引き下げが提言された。FIT制度導入時以来の一獲千金を狙い、系統用蓄電所の用地および系統を確保していた新電力含む開発業者には、衝撃が走っていることであろう。

一方で、今回の提言は唐突なものではない。需給調整市場の募集量および応札価格の適正水準に関する議論をフォローしていれば、十分に想定し得た。そもそも、電力業界の投資案件の一般的な収益率に鑑みれば、早晩、上限価格引き下げ提言が発表されることは十分予見できたはずだ。

ただ、開発を進めてきた側にも言い分はあろう。確かに今回の上限価格引き下げ後も、日々需給調整市場において、それなりのコマに落札できれば、適正利潤は確保できる。厄介なのは、募集量の削減である。募集量が3σから1σに削減されたことで、各エリアの一次市場の募集量は6割以上減少となる見通しである。もし、これまでの上限価格・募集量の想定下での開発が進み継続され、過剰な系統用蓄電所が操業することになれば、多くの蓄電所が投下資金回収不能となる恐れがある。稼働することなく放置される蓄電所が頻出となる事態は避けるべきである。

こうした事態を避けるためには、当局および送配電事業者は、系統用蓄電所の接続契約量をリアルタイムで情報発信する必要があろう。また、蓄電所を開発・運用する側としても、今後、激増する再エネ発電所の出力抑制対策のために系統用蓄電所を活用するなど、蓄電所の持続可能なビジネスモデルの構築に努めるべきである。(S)

原発再稼働への民意に変化 不安定さ続く台湾のエネ政策

【ワールドワイド/市場】

8月23日、台湾では第3原子力発電所の再稼働の是非を問う公民投票が実施された。再稼働に賛成する意見が圧倒的多数を占めたものの、投票率がわずか約30‌%と低迷し、規定された票数に達しなかったため、不成立に終わった。これにより、蔡英文前政権から続く脱原子力政策は継続されることとなったが、頼清徳総統は投票結果を受け、民意を尊重する姿勢を示す談話を発表し台湾電力公司に対し、法規の基準を満たせば審査申請を行うよう求めた。さらに、将来的に「安全性」「放射性廃棄物の解決策」「社会的合意」といった条件を満たす先進的な原子力エネルギーは排除しないという柔軟な姿勢も示している。

しかし、脱原子力は与党民進党の党是であり政治的ハードルがあるほか、実際に第3原発の再稼働には三つの課題が存在する。第一に、台湾は日本と同様に活断層が多く存在し、第3原発の敷地付近、あるいは直下には「恒春断層」が存在する。2011年の福島事故以降、地震対策は重要視されており、再稼働の申請には新たに耐震安全評価が追加され、大きな課題となる可能性がある。第二に、使用済燃料の問題がある。第1、第2原発では使用済燃料プールの使用率が99%を超え、第3原発でも90%近くに達しており、容量がひっ迫している。台湾電力公司は乾式貯蔵施設の建設を進めているが、第3原発での運転開始予定は早くても32年だ。第三に、地元の理解を得ることが課題となる。第3原発が位置する屏東県では、公民投票で賛成票が過半数を獲得したものの、反対派の割合が台湾で最も高い地域となっており、県長の周春米氏も反対を訴えていた。

21年に実施された第4原発の建設に関する公民投票では反対票が賛成票を上回っていたことを踏まえると、今回の公民投票では台湾における原子力に対する民意が大きく変化したことが示された。政治的な面では、公民投票は不成立となり頼政権の脱原子力政策は守られた。一方で、2月に始まった政治運動「大罷免」は不発に終わり、今後も立法院は野党が主導権を握ることになる。そのため、頼政権の影響力はさらに低下するものと予想され、台湾のエネルギー政策は不安定な状況が続く。国際的にはエネルギー安全保障の不安が高まる中で、台湾がどのように民意と安全性、そして脱原子力政策の継続との間で均衡を図るのかが今後の大きな焦点となるであろう。

(南 毅/海外電力調査会・調査第一部)

【電力】高市政権発足 原子力政策の加速を期待

【業界スクランブル/電力】

自民党総裁選挙、与野党各党による連立協議を経て高市政権が発足した。女性総理が率いる日本初の政権誕生はもちろん画期的なことであるが、加えて、26年間自民党と連立与党を組んできた公明党が政権から離脱するという大きな出来事もあった。

日本維新の会を新たなパートナーとした連立政権のその後の動きを見ると、自公連立の時代にはなかなか進展しなかった懸案が次々と動き始めていることを感じる。スパイ防止法しかり、防衛費増強しかりである。昨今の国際情勢を鑑みれば、これらはこれからのわが国の安全保障確保のために必須の論点だ。今後の展開に期待が高まるとともに、遅きに失した結果にならないよう、検討の加速を望む。

原子力政策もそうだ。福島原子力事故から14年が経過し、進展はしているものの、歩みは遅かった。国政選挙に連戦連勝し長期政権となった第二次安倍政権でも、エネルギー政策は民主党政権のそれから大きく変わることはなく、電力システム改革はほぼそのまま踏襲され、原子力政策はピクリとも動かなかったといってよい。

福島第一原子力サイトの処理水の海洋放出は菅政権まで、エネルギー基本計画に長らく残っていた「原子力依存度を可能な限り低減」という文言の削除には、岸田政権まで待たねばならなかった。

先の国会の代表質問で、維進の藤田文武共同代表が、現実的なベースロード電源としての原子力の意義、再評価の必要性を訴えたのは、大げさでなく隔世の感がある。あとは、今までのあまりに遅い歩みのために、こちらも遅きに失した結果にならないことを切に願うところだ。(V)

今年のガス市場動向を振り返る 二度の高騰を抑えた要因とは

【ワールドワイド/資源】

LNGのスポット価格(JKM)は、11月上旬時点で100万BTU(英国熱量単位)当たり11ドル前後と、昨年同時期を2ドルほど下回り、この水準で安定した状態が続きそうだ。では、この1年はどうだったか。

今年は欧州の寒波、再生可能エネルギー発電の不調による需要急増で始まった。寒波で暖房需要が増す一方、ドゥンケルフラウテ(暗い凪)の発生により風力発電が激減し、欧州ガス需要は第1四半期に前年比9%増加。これに昨年末のウクライナ経由のロシア産ガス供給契約失効が重なりLNG調達が増加、JKMは2月上旬に同17ドルを超えて高騰した。

これに対して欧州各国は地下ガス貯蔵を活用して対応、また中国がロシア産パイプラインガスの輸入増と自国産ガスの増産でLNG調達を抑え、取引価格はこの水準にとどまった。また、米国の関税政策がマクロ経済を減速させ、特にアジアのガス需要を抑制したことで、欧州・アジアのLNG争奪が激化しなかったことも大きい。

春になると、アジアの需要低迷の継続、4月の米国による新たな関税政策が景気後退懸念を招き、JKMは一時10ドル台まで下落。以降は、ロシア・ウクライナの和平交渉などを背景に小幅な動きを繰り返したが、6月下旬のイスラエル・イランの武力衝突で地政学的リスクが急上昇し、一時14ドルを大きく超え、今年2回目のピークを迎えた。ただし武力衝突は短期で収束し、価格は再び下落、その後は夏季需要の増加で一時的な上昇は見られたが、夏以降は11ドル前後で安定している。

夏前にはアジアの需要も回復傾向にあり、欧州地下ガス貯蔵への再充填などで需要は増加したが、プラクミンズLNGの稼働開始など米国の供給力増が需要増に対応、価格安定に寄与し市場の安定化に貢献した。

通年で見ると、中国が世界の調整役として機能し、また米国の供給力が欧州へのロシア産ガスの供給停止や世界需要の増加に対応、価格安定に貢献したことが強く印象に残る。

来年は米国やカタールなど供給力増強が続くが、今年1%程度だった世界のガス需要の成長率はアジア景気の回復から再び増加の見込みだ。欧米の対ロシア制裁の影響、米中関係、中東情勢など注視すべき点は多い。日本も安定調達に向け調達多様化や長期契約強化など戦略的対応が求められる。来年もLNG市場から目を離せない。

(篠澤康彦/エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

「悪の権化」扱いの石炭 供給網に崩壊の兆し

【今そこにある危機】水上裕康/ヒロ・ミズカミ代表

石炭火力は日本の発電電力量の3割を占める重要な電源だ。

しかし急激な脱炭素政策の反動で、供給網は危機にひんしている。

石炭火力の燃料の消費には、多様なサプライチェーン(SC)関係者が存在する。炭鉱、鉄道、港、輸送船、港湾荷役、灰処理、硫黄酸化物や窒素酸化物処理の原材料供給、副産物処理などである。LNG火力の場合は、生産者、船、荷役くらいである。これまでベースロードであった石炭火力のSCは、長期に安定数量が流れる前提でお金が回り、維持されてきた。

2015年のパリ協定採択とともに、炭鉱をはじめ発電用石炭SCは、国際社会から「悪の権化」として扱われる。今も果たしている社会的貢献は、顧みられることもなく、各地で反対運動や訴訟が起こり、炭鉱からは金融機関や機関投資家が資金を引き揚げた。需要国の政府や発電事業者の計画には「再エネ」の文字が踊り、転換期の燃料として市民権を得たLNGはともかく、石炭の安定調達など、忘れ去られたようであった。こうした環境下、各SCでは崩壊の兆しが現れ始めているのだ。今回はその主なものに触れたい。


採掘権が認められず 炭鉱経営悪化で早期閉山も

まずは炭鉱を取り上げる。日本の石炭火力の生命線は豪州・ニューサウスウエールズ州の高品位炭である。実は日本の発電所に制約なく投入できるのは、概ねこの地域の石炭だけなのだ。その生命線の危機の事例を二つ紹介したい。

一つ目は、炭鉱の採掘権の許認可の厳格化である。今年、同州マウント・プレザント炭鉱は、3年前に州から得た26年以降の採掘権を無効とする判決を受けた。衝撃的だったのは、スコープ3(本事例では輸出先でのCO2排出)への配慮が不足とされたことである。産炭国ながら、

30年代までに電力網の脱石炭火力を目指す豪州では、これに矛盾する大規模な石炭輸出への批判が年々高まっている。気候変動対策に自国も輸出先もないという、まさに「正論」である。炭鉱は定期的に採掘権の更新が必要だ。今回は拡張が問題視されたようだが、単純な更新も含めて、今後の許認可の行方が極めて不透明になったことは間違いない。

二つ目は、石炭価格下落による炭鉱の経営悪化である。同州最大の輸出事業者グレンコアは、主力の石炭事業の収支悪化で、昨年から税引後利益が赤字に転落。今年初め、ブルームバーグなどが、他資源大手との合併と、それに伴う炭鉱の売却の可能性を報じた。石炭業界の事業環境が悪化するなか、買い手が付くかどうかは不透明だ。他の資源大手や日本の商社の多くは、既に炭鉱投資から手を引いている。現に、資源大手BHPが脱石炭を目指して売りに出していた同州の大規模炭鉱は、買い手がつかず、早期の閉山を決めた。買い手があるとすれば、巨大な国内市場を抱えるインド・中国資本が有力と言われるが、そうなると、供給は自国向けが最優先となろう。日本電力の生命線は、随分と細くなるのである。

グレンコアの石炭事業は赤字に
幅広船は急減か

大詰め迎える日本版ETS キャップなき制度設計に憂慮

【オピニオン】山岸尚之/世界自然保護基金「WWF」ジャパン自然保護室長

GX-ETSと呼ばれる日本版の排出量取引制度が、2026年度から開始される。日本において排出量取引制度が導入されるのは初であり、大規模事業者に対する規制措置として同制度が入る意義は大きい。経済産業省の排出量取引制度小委員会を中心として、同制度の詳細設計が進められているところであるが、実効性のある制度確立に向けての課題についての私見を述べてみたい。

それは、対象部門全体についての排出量上限値、いわゆるキャップの不在である。排出量取引制度は、しばしばキャップ・アンド・トレードと英語では称されるが、この「キャップ」とは、規制対象となった部門全体の排出量上限を指す。通常、同制度では、このキャップ、つまり排出枠を配ることができる総量を、国の削減目標と整合する形でまず設定し、その中で排出枠を個別の事業者・事業所に割り当てる。これにより、必要な削減量を設計時点で確保しつつ、排出枠の取引を通じて各事業者の義務履行の柔軟性・効率性を確保できる点が同制度の最大の特徴と言っていい。しかし、現在日本では、キャップの設定はあえてせずに、排出枠の割り当て部分のみを中心に設計が行われている。この形式だと、「どれくらいの削減が達成されるか」は事後的にしか決まらず、排出量取引制度の利点を損なってしまう。

こうした設計があえてされる理由は、炭素価格による負担に対する事業者からの反発への配慮がある。例えば、GXに関連した研究開発を行った事業者に対して追加の排出枠割り当てを行うという、他国の取引制度は見られない特殊な設計方針にも表れている。

しかし、忘れてはならないのは、仮にこれで排出枠の過剰割当が起きて炭素価格が上昇しなかった場合、損をするのは、脱炭素対策に投資を行った事業者になる、という点である。大幅削減を達成する脱炭素対策に向けては、今後も、技術、対策、設備、プロジェクトそれぞれに対して投資が必要になる。GX-ETSを通じて形成される炭素価格のシグナルは、そうした投資が行われるか、行われないかの指針として重要な役割を果たすと期待されているが、そのシグナルが弱くなるリスクがある。加えて、それは日本の脱炭素ビジネスの減速にもつながる。

年末にかけて制度設計は大詰めを迎えていくが、せめて、現在行われている排出枠の割り当てに関する個別分野の詳細ルール案を積み重ねて、制度対象部門全体でみた場合に、どのようなインパクトを持ち得るのか、そして、それは、日本のNDC(国別目標)に含まれる削減目標や、パリ協定の1.5度目標と整合しているのか、確認をする必要がある。加えて、もし明らかに足りていなければ振り返る勇気が必要である。

やまぎし・なおゆき 2001年立命館大学国際関係学部卒。ボストン大学大学院国際関係論・環境政策修了。03年WWFジャパン入職。20年から現職。

中古EVの国内流通活性化へ 「日本版電池パスポート」とは

【脱炭素時代の経済評論 Vol.21】関口博之 /経済ジャーナリスト

日本総合研究所は10月に出したレポートで国産の中古EVの83%が海外に流出しているとみられるという推計を発表した。累計台数9万4000台、電池に使われるリチウム、コバルトなどレアメタルの流出は175億円相当に上ると見ている。輸出先は、2023年はロシア、ニュージーランドが突出、24年は韓国、UAE(アラブ首長国連邦)などが上位だ。実は自動車関連業界でも従来から「中古EVの約8割が海外に流れている」と見ていて、推計はこの実感とも一致している。裏返せばそれだけ国内市場では中古EVが人気薄ということになる。

国内の中古EVの多くが輸出されている

EV価格の3分の1はバッテリーとされる。中古車のバッテリー性能や価値が客観的に分かりにくいことがユーザーに購入をためらわせる理由になっている。国内の中古市場を活性化して輸出を抑えることが、バッテリーや希少資源の国内リサイクルを成立させ、国富の流出を防ぐことになる。

そこで官民の取り組みが始まっている。バッテリーをはじめ部品・材料から完成車メーカーまでが加わる電池サプライチェーン協議会(BASC)は昨年、経済産業省の補助を受け実証事業を行った。中古車オークションで落札した車の現在のバッテリー性能を評価した上で「保証」を付け再出品した。すると海外勢を大きく上回って国内ディーラーからの買いが増加。価格も約18万円、24%高くなったという。「保証」により明らかに人気度が上がったのである。

EVのバッテリー性能はOBDと呼ばれる車載式故障診断装置のデータを読み取ることで得られる。新品の何%の電池容量があるか、過去の充放電回数は何回か、そこから電池の残存性能や寿命を推計する。ビジネス化の動きもある。実証に参加したSOMPOホールディングスの関連会社は、中古EV(新車から3~7年のもの)のうち自社が認定した車には10年または走行20万㎞までの保証を付けるサービスを開始した。その間に性能低下があればバッテリー交換などに応じるという。この先、重要なのは信頼できるバッテリー情報が円滑に流通することだ。その制度設計にBASCは取り組んでいる。「日本版電池パスポート」だ。個々の電池ごとに識別番号、製造年月、レアメタルの含有量などを登録する。

BASCの森島龍太業務執行理事は「電池の残存容量や充放電回数などの情報は、利用する保険会社などユーザー側が有償でも買うかもしれない。逆に中古EVの市場価値が上がるなら自動車メーカー側が無償で提供することもあるだろう。全てをルール化するのでなくデータの売買も可能にし、ビジネスが回るようにしたい」と話す。独自のデータ解析による残存寿命の予測や、それに基づく新サービスも生まれてくるだろう。

「日本版」というのは23年に発効した欧州電池規制を意識してのことだ。欧州では環境対応として電池のライフサイクルを通じたカーボンフットプリントの開示も重視する。国際的な連携も見据えつつ、日本が中古EV・バッテリーの健全な流通促進に先導的な役割を果たすことを期待したい。

開発力生かし電源構成を最適化 国内No.1のGX推進企業へ

【エネルギービジネスのリーダー達】一倉健悟/JERA Cross代表取締役社長

最適な電源構成の提案に加え、再エネの調達、運用まで、企業のGXを包括的に支援する。

365日・24時間カーボンフリーな電力の供給も視野に入れ、国内GX市場を拓いていく。

いちくら・けんご 神奈川県川崎市出身。慶応義塾大学理工学研究科を卒業後、東京電力に入社し、国内外の火力発電事業に従事。18年よりJERAでDX室長としてデジタル戦略構築および実行を経てデジタル発電所プロジェクトを推進。23年4月にJERA Crossを設立し、本格運営を牽引。

「国内ナンバー1のGX(グリーントランスフォーメーション)推進企業を目指す」―。企業のGX戦略の立案を支援する「コンサルティング事業」と再生可能エネルギーの調達・運用を担う「マネジメント事業」を展開するJERA Crossの一倉健悟社長は、自社の将来像をこう語る。

同社はJERAグループ全体の脱炭素化を加速させるべく2023年の4月に設立され、翌年の6月より本格始動した。この1年間で映画配給大手の東宝とオフサイトPPA(電力販売契約)を締結し、さらにヤマトグループと再エネ設備の連携・最適活用などに関する基本合意を結ぶなど短期間で実績を積み上げ、企業のGXを一気通貫で支援する体制を着実に築きつつある。


再エネのノウハウ乏しく 拡大見据え新会社を発案

次フェーズの目標として掲げるのが、365日・24時間どの時間帯でもカーボンフリー電力を100%供給する「24/7カーボンフリー」の実現だ。グリーン証書やJクレジットを活用したオフセットが企業の脱炭素戦略の中で一般化しているが、これには、「実際の排出削減効果が限定的」との見方が広がっている。ただ、同社が目指す24/7カーボンフリー電力の供給が実現すれば、単なる帳尻合わせではなく、真に効果のある脱炭素化を進めることができる。現在、ヤマトグループには各拠点に設置した太陽光発電設備の電力を供給しているが、将来的にはこれに加え、24/7カーボンフリー電力を供給する計画だ。

一倉氏は、JERAグループの強みを「大規模電源の開発力・販売力」にあるとしながらも、「再エネなど小規模・分散型電源を顧客ごとに最適な組み合わせを模索して供給するとなると、これまでのやり方が通用しないケースも出てくる」と指摘する。実際、22年にJERAが太陽光発電設備の開発に強みを持つウエストホールディングス(HD)と提携した際は、「再エネ電源の開発はできても、それをどう売り、どう運用していくかといったノウハウが社内に乏しかった」という。   

そこで一倉氏は市場調査から商品開発・オペレーションまでを統括し、グループとして再エネ領域に進出する足がかりを築いた。その過程で、再エネ事業の拡大にはよりスピーディに意思決定できる組織作りが不可欠だと痛感し、経営陣に新会社設立を提案。これが23年のJERA Cross設立のきっかけとなった。

これらの一連の実績が評価され、一倉氏は今年7月に代表取締役社長に抜擢された。若干43歳での社長就任となり、グループ内で厚い信頼を得ていることがうかがえる。こうした信頼を積み上げてきた背景には、一倉氏自身の多岐に渡るキャリアがある。大学で熱力学を学んだ後、東京電力HDに入社。火力発電所の現場業務を経て、15年のJERA設立時には東京・中部電力の両社の事業・資産価値の評価を取りまとめた。18年にJERAに入社してからはDX推進、再エネ分野への進出などを主導してきた。未経験の分野でのプロジェクトの立ち上げを任されることも多かったが、徹底的に先行事例を調べ、そのエッセンスを目の前のプロジェクトに落とし込むことで結果を出してきた。新会社設立時も、海外の事業者の事例を参考にしたという。


コミット力で難局打開 国内初のスキームを実現

座右の銘は「明日死ぬかのように生きろ、永遠に生きるのかのように学べ」で、実際、各プロジェクトにアサインして間もないころは、「空いている時間の全てを学習に費やした」という。これまでに幾度なく壁に当たってきたが、「修正点を探りながら、兆しが見えるまで前進し続けてきた」と振り返る。

その姿勢が端的に表れたのが、前述の東宝とのオフサイトPPAの締結だ。袖ケ浦火力発電所(千葉県袖ヶ浦市)構内に設置した水素専焼火力発電設備からゼロエミッション火力による電力を供給するという国内初のスキームを実現させたわけだが、この際も、水素専焼の発電設備の開発、燃料調達先の選定、太陽光設備と組み合わせるためのオペレーションシステムの構築など、課題が山積みだった。それでも暗中模索しながら、目の前の課題を一つひとつ確実にクリアしてきた。

「真にカーボンフリーな電力を供給し、企業のGXを最適化していくための市場はまだ未成熟だ。企業の脱炭素化への技術的課題を解消するのはもちろん、それが企業戦略の最適化につながるようなパッケージを提供し、こちらから相手を突き動かしていく必要がある」と一倉氏は強調する。国内産業のGX市場をけん引する唯一無二の存在となることを目指す同社の挑戦は、まだ始まったばかりだ。