節電ポイントに残る疑問 効果不明で「不適切」


8月3日、政府が取り組む「節電ポイント」事業の詳細が明らかになった。電力会社の節電プログラムに参加する家庭に2000円、法人に20万円を支給する。政府が7月に節電ポイントを打ち出した際に噴出した疑問はぬぐい切れていない。各社のデマンドレスポンス(DR)のベースラインがバラバラなうえ、どれほどの節電効果が見込まれるのか。節電プログラムに参加表明しても、実際に節電を行う保証はあるのか―。

翌4日、紀尾井町戦略研究所が発表した意識調査の結果には、節電ポイントに対する国民の感情がにじみ出る。「節電ポイントに参加したいか」との問いに対し、「参加したい」と回答したのは40%、「参加したくない」は30%。同ポイントの仕組みについては、「適切」の35%に対し、「不適切」が46%と上回った。お金がもらえるなら参加してもいいが、仕組み自体は不適切――というわけだ。

一方、「原発再稼働を進めるべきか」には、半数を超える51%が「進めるべき」と回答。国民は小手先の対応ではなく、岸田政権の英断を待っている。

なじみのない「節ガス」 欠かせない国民へのPR


【脱炭素時代の経済探訪 Vol.6】関口博之 /経済ジャーナリスト

経済産業省は都市ガスの需給ひっ迫に備え、ガスの節約を呼び掛ける「節ガス」の議論を始めている。ロシアのサハリン2からのLNG供給に支障が出る事態を念頭に置いてのことで、都市ガスのひっ迫対策の検討は初だ。なじみのない節ガス、電力との違いを踏まえて考えたい。

一番の違いは、節電では電力使用量が増える時間帯のピークシフトが目的になるのに対し、ガスの場合は使用総量を抑えるのが課題になる。つまり瞬間的な「山」の高さではなく、電力のkW時にあたる「面積」を抑制しなければ、原料のLNG在庫は着実に減っていく。

また家庭で考えると、節電はLED電球に切り替える、エアコンの温度設定を調整する、省エネ性能の高い家電製品に買い替えるなど、ライフスタイルに根づいてきた面もあるが、節ガスでは何をすべきか、即座には思いつかない。ガス業界では、例えば①シャワーの時間を一人1分短縮すると4人家族なら4.2%の削減、②ガスコンロの炎はなべ底からはみ出さないようにすると1.2%の削減になる―などとアドバイスしているが、多くの方は「へえそう」という程度の反応だろう。今後のPRが欠かせない。

炎はなべ底からはみ出さないようにする

節ガスを要請する基準をどうするかも課題だ。電力ではいわゆる「予備率」が使われていて、「でんき予報」では予備率3%を切ると厳しいなどとされる。ガスの場合は何で見るか。例えばエリアごとにLNGの在庫状況を目安にする方法はある。 ただし、在庫状況を公表すればLNGの売り手に足元を見られ、価格がつり上げられかねないとガス事業者は危惧する。分かりやすく、緊迫度が分かる指標を作り、国民へ情報提供する必要がある。

DR(デマンドレスポンス)も議論されている。企業向けに節ガス要請に応えた場合のインセンティブを用意することは考えられる。ただ家庭についてはスマートメーターがある電力と違い、月一回の検針でどれだけタイムリーなDRができるか、設計はかなり難しい。

さらに電力とガスの大きな違いは、電力は沖縄を除き、全国で送電網がつながっているため、電力の融通が可能になっている。ところがガス導管網は都市部中心で、つながっていない。エリアを超えてガスを融通するのは難しく、結局対策は原料をLNG船で回すというやり方しかない。

しかも、国全体のエネルギーセキュリティーからいえば、都市ガス需給がひっ迫している時には、火力発電のLNGも調達が困難になっている可能性は高い。電力・ガスの業界の垣根を超えた融通も検討課題だが、その際どう優先順位をつけるのか、それこそ国が大局的に判断しなければならない場面になる。

経済産業省は足元では安定供給は確保されていると強調するが、それもロシアの出方次第だ。サハリン2の事実上の接収、供給も停止となれば「万が一」の事態はこの冬どころか、すぐにでも起こり得る。

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.1】ロシア軍のウクライナ侵攻 呼び覚まされた「エネルギー安保」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.2】首都圏・東北で電力ひっ迫 改めて注目される連系線増強

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.3】日本半導体の「復権」なるか 天野・名大教授の挑戦

・【脱炭素時代の経済探訪 Vol.4】海外からの大量調達に対応 海上輸送にも「水素の時代」

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.5】物価高対策の「本筋」 賃上げで人に投資へ

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せきぐち・ひろゆき
経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

苦悩しながら決断し調整に汗を流す 政治家・西村経産相への期待


【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

 第二次岸田改造内閣が発足し、萩生田光一氏に代わり西村康稔氏が経済産業大臣に就任した。

政治家が大臣として官庁に入って果たすべき役割は、斬新な政策を打ち出したり、それを格好よく国民に語り掛けることだけではない。政治家として大臣にとって一番大事な役割は、決断し調整をすることである。

いくら良い政策を「決断」しても、それを実現するために政府内をとりまとめ、ステークホルダーを巻き込み、反対する勢力を説得し、政策によってマイナスになることに対応するなどといった「調整」ができなければ、その政策は実現しない。この地道な、労を要する仕事こそが、選挙によって国民から負託をされた政治家のやるべきことなのだ。

西村大臣は、原子力発電所の再稼働について会見で「原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合にはその判断を尊重し、地元の理解を得ながら進める」と話した。これは、岸田文雄首相の発言と軌を一にするものだが、政治家としては何も言っていないに等しい。原発の新増設や建て替えについても「現時点では想定していない」と今の段階では当たり前だが、何も決断はしていない。

官邸や他省を説得し 業界との調整に汗

これからの将来に向けた日本のエネルギー需給を考えた場合に原子力の役割が必要とするなら、原子力規制委員会の規制基準を所与のものとするのではなく、「世界で最も厳しい水準の規制基準」と言っている現在の規制が果たして科学的に見て合理的なものなのか、「世界で最も厳しい」ということが本当に安全を担保するものになっているのか、という規制体系自体を見直すことに取り組むべきだろう。原子力規制委員会は国家行政組織法第三条の定める独立の基幹として政治から独立して規制の執行に携わるべきだが、規制のあり方そのものはまさに国民の負託を受けた政治が決断すべきことだからだ。

一般的に官僚出身の政治家が出身省の大臣に就任することは、稀である。それは、先に述べたような大臣と官僚の役割の分担を踏まえた時に、同じようなDNAを持った大臣と官僚組織では、近親相姦的な「食い合い」が起こってしまうからである。しかも若い西村大臣は、多田明弘事務次官と年次が一つ上にすぎない。私も西村氏と同じ経産省出身だが、多士済々の優秀な政策マンを抱える経産省が求める大臣は、「よっしゃ、よっしゃ」と言って官邸や他省を説得したり、業界との調整に汗をかく人物である。

西村大臣には、出身省の後輩たちに政策議論を挑むのではなく、選挙を何度も経た政治家として、苦悩しながら決断し調整に汗を流す姿を見せて省を盛り立ててほしい。現在の日本のエネルギーを巡る歴史的な困難な状況を突破する、リーダーシップを発揮することを期待したい。

ふくしま・のぶゆき
1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

家庭向けDRサービスを開始 再エネの利用拡大目指す


【中部電力ミライズ】

 カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの開発が進んでいる。一方で、太陽光発電や風力発電などの再エネは、天候や季節、時間帯によって発電量が大きく変動するため、電気を安定的に供給するには「使う量」(需要)と「つくる量」(供給)のバランスを保つことが重要になる。そこで、再エネの利用拡大に向けて、「再エネの発電量に合わせて電気を使う」という〝新しい電気の使い方〟を体験できるサービスが開発された。

専用サイトで貢献量が確認できる

メールでアクションを依頼 結果に応じてポイント進呈

7月1日、中部電力ミライズが開始した「NACHARGE(ネイチャージ)」は、新しい電気の使い方をサポートする家庭向けDR(デマンドレスポンス)サービスだ。

参加者に向け、再エネの発電状況や電力の需給状況に応じて、「節電」や「電気の使用時間の変更」といった〝お願いメール〟が配信される。依頼内容に従い「エアコンの設定温度を変更する」「家事の時間をずらす」といったアクションを起こすと、その結果を翌日以降に専用サイトで確認できる。アクション結果に応じて電気料金の支払いや、提携先企業の他のポイントと交換可能な「カテエネポイント」を付与。特に需給が厳しい7~8月は節電量1kW時につき10ポイント、さらにこの期間内で節電に成功した全員に100ポイントを追加で進呈する。

参加者全員の貢献量からCO2排出削減量を算出し、環境への貢献度を知ることもできる。

担当者によると、申込件数は約5万4000件(8月5日時点)となり、総貢献量も約5万kW時(7月末時点)に達したという。

NACHARGEは、「自然(Nature)由来の再エネで社会を満たしていきたい(Charge)」という思いから命名された。中部電力ミライズは「電力の安定供給および2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて最大限貢献していく」としている。

託送料金上昇は不可避 送配電各社が収入見通し


一般送配電事業者10社は7月25日、2023年度に新たな託送料金制度へと移行するのを前に、同年から5年間の平均収入見通しを経済産業省に提出した。電力・ガス取引監視等委員会の専門会合の査定を経て、承認されれば来年度の託送料金に反映されることになる。

これは、レベニュー(収入)キャップ制度の導入に伴うもの。送配電事業者は事前に5年間(第一次規制期間)の計画を示し、その実施に必要な費用を見積もった収入上限について国の承認を受け、その範囲内で柔軟に託送料金を設定することになる。

今回示された見通しによると、経営効率化によるコスト削減を織り込む一方、再生可能エネルギー拡大に伴う送配電網の増強や強靭性向上、調整力確保のための費用などがかさみ、各社の収入は現行よりも軒並み上昇することになるため、託送料金の値上げにつながる公算は大きい。

大手電力関係者は、「中長期にわたって託送料金の大幅上昇を抑止するには、電気自動車など顧客側の機器を活用して設備全体をどうスリム化するか。そういう意味でも、5年後に始まる第二次規制期間が非常に重要だ」と強調する。

【コラム/9月9日】「新冷戦」勃発 安全保障と経済重視へ政策転換を急げ


杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

地球温暖化問題が国際社会の注目を浴びたのは1992年の地球サミットのころからであり、これが91年のソ連崩壊の翌年であることは偶然ではない。冷戦が終わり、地球規模の問題に世界全体で協調して対処することが初めて可能になった。世界平和が訪れたというユートピア的な高揚感の下で、地球温暖化問題が世界的な議題になったのだ。

だが今、ロシアとG7(先進7カ国)諸国の間で、新冷戦が始まった。ロシアの後ろには中国も控えている。ウクライナでの戦争はその代理戦争だ。新冷戦の下では、自らの国力を伸長すること、そして敵の勢力を削ぐことが重要な目標になる。これまでG7が信奉してきた経済自殺型の再生可能エネルギー偏重型の脱炭素政策は、この目標に全く反する。自国経済を痛めつけるのみならず、ロシアや中国の勢力拡大を招くからだ。

破綻した欧州の戦略 資源を持たざる途上国が巻き添えに

脱炭素一本槍の欧州のエネルギー政策は完全に破綻した。日本でも信奉者の多かったドイツの「エネルギーベンデ(=エネルギー転換)政策」は、恐るべき災厄をもたらした。

ドイツは脱原子力と脱炭素を同時に進め、再エネへ移行するとした。だが実際にはそれではエネルギーが足らず、ガス輸入をロシアのパイプラインに大きく依存することになった。この弱みを握ったプーチンは、欧州はロシアに強い態度を取れないと読んでウクライナへ侵攻した。

ドイツだけではない。他の欧州諸国も脱炭素を進めた結果ロシア依存を深めてきた。戦争になると経済制裁としてエネルギー輸入の段階的停止を宣言したものの、あべこべにロシアからガスの供給を止められつつあり、エネルギーの不足と価格暴騰が起きた。

英国ではこの冬に家庭の光熱費が倍増して年間60万円に達する見込みで、暖房が使えず寒さで亡くなる人々が出るかもしれない。ガスを原料とする肥料製造業はすでに欧州全域で操業が低下している。他の産業も崩壊するかもしれない。

追い詰められた欧州は、あらゆる化石燃料の調達に奔走している。英国は新規炭鉱を開発する。ドイツは石炭火力のフル稼働を準備している。天然ガスの採掘もする。イタリアも石炭火力の再稼働を検討中だ。欧州は輸入も増やしている。南アフリカ、ボツワナ、コロンビア、米国など世界中から石炭を購入している。LNGを米国から大量に買い付けている。

この爆買いのせいで、エネルギー危機は全世界に伝播した。途上国も化石燃料の調達に必死だ。

インド政府は燃料輸入に補助金をつけた上で、石炭火力発電所にフル稼働を命じた。さらに100以上の炭鉱を再稼働し、今後2~3年で1億tの石炭増産を見込む。炭鉱の環境規制も緩和した。ベトナムも国内の石炭生産を拡大する。中国は今年だけで年間3億t、石炭生産能力を増強する。これは日本の年間石炭消費量の倍近くだ。

だが増産できる国はまだ良い。最も気の毒なのは資源を持たない貧しい国々だ。スリランカでは経済が破綻して大統領が国外逃亡した。これは数々の失政の帰結だが、止めの一撃は自動車用の燃料の払底だった。

脱炭素の世界協調頓挫か 次は「エネルギー・ドミナンス」へ

先進国はロシアへの経済制裁を呼び掛けているが、途上国はこれにほとんど参加していない。G7の権威は失墜した。

ロシアの原油輸出は仕向け先が変わり、先進国ではなく、中国、インド、ブラジル、エジプトなどになった。サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)もロシアから購入し、代わりに自国の石油を輸出することで、産地ロンダリングをしている。

大量の燃料が肥料の製造に必要であり、肥料は食料の生産に欠かせないが、ロシアはこの燃料、食料、肥料の全ての一大輸出国である。これら全てが世界的に不足する状況が起きつつある今、途上国はロシアからの輸入を止める訳にはいかない。

もはや脱炭素に関する世界協調など望むべくもない。ロシア・中国は、世界中の途上国と化石燃料はもとよりあらゆる資源を共有し、G7との政治システム闘争を続ける。そこではグリーンな贅沢はどうでもよくなる。

対抗するG7のエネルギー政策も、再エネや電気自動車偏重のイデオロギー的なものであることを止め、原子力と化石燃料の利用など、安全保障と経済を重視したものに移らざるを得ない。

まもなく11月に米国では中間選挙がある。共和党が勝てば、米国のエネルギー政策は、「エネルギー・ドミナンス(優越)」の実現に変わってゆくだろう。これはエネルギーの大量供給によって自国を繁栄させ、敵を圧倒することを意味する。 日本のエネルギー政策はどうか。岸田文雄首相が原子力の再稼働にようやく言及したものの、まだ高価で経済負担の大きいグリーン政策の色彩が強い。これは欧州で完全に失敗した政策だ。そして世界は今、化石燃料に回帰している。この教訓を学び、日本は、原子力と化石燃料を重視し、「再エネ最優先」を止めるよう、早々に政策転換をすべきだ。

【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「中露の環境問題工作に騙されるな! 」(共著)、「脱炭素は嘘だらけ」、「15歳からの地球温暖化」など著書多数。

規制と自由の逆転鮮明に 燃調上限突破で見直し急務


10月分の電気料金(経過措置規制料金)で、中部電力の燃料費が調整上限に達し、これにより大手電力全社が「燃料費持ち出し」の状況となった。

とりわけ、深刻なのは北陸電力だ。他電力に先駆けて平均燃料価格が2月に上限を超えて以降、自社負担の拡大が継続。9月分の平均燃料価格は6万4200円となり、上限価格3万2900円の2倍近くに達しているのだ。

「同じ低圧でも、自由料金メニューは上限が撤廃されていて、燃料費調整単価を見ると規制料金の約4倍。自宅の使用形態でシミュレーションをしてみたら、規制料金のほうが単純に1~2割も安く、完全に逆転現象だ。ユーザーにしてみれば、今は規制料金に戻ったほうがどう考えてもお得になるのでは」(北陸管内の需要家)

こうした逆転現象は北陸に限らず、上限突破が続く他電力でも多かれ少なかれ発生している。「割安な規制料金に戻る需要家が続出すれば、収支への悪影響は拡大する一方だ。料金改定による基準価格の見直しが急務なのは間違いない」(電力関係者)。各社の対応に関心が集まる。

地域課題解決の重要プレーヤー ガス会社の強み生かし脱炭素化へ


【業界紙の目】黒羽美貴/ガスエネルギー新聞 編集部記者

2050年カーボンニュートラル実現に向け、自治体も具体的に歩みを進める段階に入った。

そして都市ガス会社は、供給エリアの脱炭素化などを導く重要プレーヤーとして活躍し始めている。

 環境省が4月、「脱炭素先行地域」に全国から26件の計画提案を選定したと発表した。これは2030年度までに民生部門でのCO2排出をゼロにする先進的エリアの構築を目指すもの。主体となる地方自治体の共同提案者として名を連ねた都市ガス会社は東邦ガスのみだったが、直接・間接的にこの枠組みに参加する都市ガス事業者は多い。

まず、名古屋市と東邦ガスの取り組みを紹介する。東邦ガスの港明工場跡地(同市港区)の再開発により誕生した街区「みなとアクルス」は、18年9月に街開きをした商業・スポーツ施設、集合住宅などが集まる街区で、東邦ガスが「総合エネルギー事業のモデル地区」として力を入れている。すでにガスコージェネレーションなどを利用してガス、電気、熱を一括供給するエネルギーセンターが稼働し、太陽光発電設備や大型蓄電池なども備えている。街区内のエネルギーを最適管理するシステムも導入済みだ。

今回、同地域に選ばれたことで、太陽光の追加設置や小型風力発電、蓄電池を新増設する。また、同街区に市所有のゴミ焼却工場などから余剰電力を供給する。さらにエリア内で水素を製造し、既存のガスコージェネやボイラーの燃料を水素やカーボンニュートラル(CN)ガスに燃料転換する。製造した水素をカーシェアリングするFCVなどへ供給することも計画されている。なお、東邦ガスはアグリゲーターとして、ゴミ焼却工場などの分散型再生可能エネルギー電源を束ね、広域再エネグリッドを構築する。

提案者として直接社名は出てこないが、自治体や他企業などとタッグを組み、地域の脱炭素化を進める都市ガス会社もいる。

「みなとアクルス」のエネルギーセンターとNAS電池

水面下で続々と進行 ガス会社と自治体がタッグ

大阪ガスが参加する大阪府堺市の泉北ニュータウンエリアなどで行う「堺エネルギー地産地消プロジェクト」は、泉北ニュータウンのスマートシティ化などを目指す産学官民組織「SENBOKUスマートシティコンソーシアム」の試みとリンクする。同組織では、大阪ガスがエネルギー分野のワーキンググループのリーダーとなり、同エリアでの効率的なエネルギー利用を検討していく。

エリアの中心にある泉北高速鉄道・泉ケ丘駅周辺の地域冷暖房を行う大阪ガスグループのエネルギーセンターにCO2実質排出ゼロの電力やガスを導入し、高効率な空調設備に更新。ガスコージェネシステムなどの導入で停電時の電源を確保し、地域の強じん化を進める。また、同エリアの府営住宅の建て替えにより創出される活用地に、高性能ネットゼロエネルギー住宅「次世代ZEH+」180戸を建設する。

静岡ガスは新会社を作り、自治体の提案を後押しする。静岡市の「脱炭素を通じて新たな価値と賑わいを生む『みなとまちしみず』からはじまるリノベーション」は、JR清水駅東口の製油所跡地などのエリアや物流倉庫立地エリア、区画整理が進む工業物流エリアからなり、建物の屋根に太陽光発電設備を設置するPPA(電力購入契約)などの事業を展開、当該エリアの脱炭素化を図る。静岡ガスは準大手ゼネコンのフジタと新会社「S&F地域マネジメント合同会社」を7月に設立し、JR東静岡駅から直線距離で約2km離れた工業物流エリアでPPA事業を推進する。

そのほか、北海道ガスが出資する地域商社・karchの事業部門の一つ「かみしほろ電力」が、北海道上士幌町全域を脱炭素化する「未来へつなぐ持続可能なまちづくり―ゼロカーボン上士幌の実現とスマートタウン構築を目指して」に参加する。

さらに、米子ガスが出資する新電力「ローカルエナジー」と山陰合同銀行が、鳥取県米子市、境港市と「地域課題解決を目指した非FIT再エネの地産地消と自治体が連携したCO2排出管理によるゼロカーボンシティの早期実現」を展開。両市の608の公共施設などの使用電力を再エネ由来にする。ローカルエナジーと山陰合同銀行はPPA事業のための新会社を設立しており、公共施設や荒廃した農地などに設置する太陽光発電を電源にする。

地域に根差す存在感を発揮 災害以外の包括連携が増加

地下に張り巡らせたガス導管のように、まさに地域に根差したビジネスを展開する都市ガス会社の運命は地域と共に在る。ここ最近は、従来の災害時連携協定だけでなく、エネルギーや環境なども連携項目に加えた包括的な連携を自治体と締結する会社が規模を問わず増えた。

東京ガスは、関東圏の都市ガス会社(秦野ガス、大東ガス、武州ガス、太田都市ガスなど)と、50年CNを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言している自治体との3者協定を相次いで締結している。CNな街づくり、防災力強化、学校での環境・エネルギー教育の展開など各社の強みを結集し、ゼロカーボンシティ実現を目指す。

東海ガスや京葉ガス、金沢エナジーなども、供給エリアの自治体と包括連携を組み、公共施設へ環境クレジットなどを使った「CNガス」の供給や省エネ支援、省エネ機器の導入促進、環境・エネルギーに関連した情報発信などに力を入れる。自治体単体では難しい地域のCN化をサポートする。

また、静岡ガスは地元の金融機関と連携し、中小企業を支援する。具体的には、静岡ガスが省エネ診断や太陽光発電設備によるPPAなどを中小企業に提案、金融機関は省エネや脱炭素化に取り組む企業向けの融資新商品を販売し、地域社会全体へCN施策の浸透を図っている。

都市ガス事業者は今後も、省エネやCNの方策など得意分野で地域をサポートする機会が増えていくだろう。ZEBプランナーの登録をするなど、支援内容をアップデートしている会社もある。今秋発表予定の脱炭素先行地域の第二回選定でも、都市ガス事業者が活躍できる提案が選ばれることを期待したい。

〈ガスエネルギー新聞〉○1959年設立○購読者数:3万1000部○読者層:都市ガス事業者、関連メーカー、官公庁など

海洋放出に中韓が猛反発 透けて見える「敵対心」


東京電力は8月4日、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に必要な海底トンネルなどの工事を開始した。2023年春までの完成を目指す。

処理水は100倍に希釈され、トリチウム濃度は世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1に低下する。地元の漁業関係者は反対の姿勢を崩していないが、安全性について国民の理解は得られたといえるだろう。

処理水が貯蔵されている保管タンク

一方、猛反発しているのが中国、韓国だ。そのかたくな姿勢からは、台湾情勢や防衛費増額、徴用工問題などを巡る日本への敵対心が透けて見える。

中国の趙立堅報道官は昨年4月、日本人記者から中国の原発も放射性物質のトリチウムを放出していることを問われ、事故が起きた原発と正常に稼働している原発の処理水は別物である―と科学的根拠のない回答をした。

韓国では前政権から、国際海洋法裁判所への提訴が検討されている。しかし、韓国の原発のトリチウム放出量は日本よりも多いので、全く的外れである。

要するに中国、韓国は意趣返しをしているにすぎない。政府は国内外に海洋放出の安全性を繰り返し訴え、東電は粛々と工事を進めるべきであろう。

「ちりつも」で今冬のひっ迫改善へ 家庭向けDRサービスの効果と期待


【SBパワー/ファミリーネット・ジャパン】

物価高騰と電力需給ひっ迫を受け、政府は「節電ポイント」などで需要家向けDRの拡大を後押しする。

以前からDRを積極展開してきた事業者にこれまでの成果や、需給緩和への寄与の可能性を聞いた。

岸田政権が物価高騰や今冬の電力需給ひっ迫対策として節電ポイントを付与する事業を行うと発表して以降、需要家向けDR(デマンドレスポンス)への注目が高まっている。ただ、新規でDRサービスをいざ提供しようとしてもシステム構築などのハードルに直面するケースが多い。また、特に家庭向けDRについては、特高や高圧と異なり1件ごとの節電量はわずかで、需給改善効果は限定的と見る向きもあった。こうした意見に対し、以前からDRに積極的な事業者からは「ちりも積もれば山となる」とひっ迫改善への貢献に期待する声が挙がる。

専用アプリでDR通知 積極的に他社にも提供

ソフトバンク系の小売り事業者であるSBパワーは、専用のスマホアプリ「エコ電気アプリ」を使った家庭向け節電サービスを2020年夏から提供する。当時は21年初頭の市場高騰前で、周囲からは「家庭向けDRは手間暇はかかるが、積み上げても効果はそれほど期待できない」との見方が多かったが状況は変わり、参加者はサービス開始時の数万世帯から最近は50万世帯を突破。ほかの事業者でも、九州電力や東京電力エナジーパートナー、東邦ガスなど数社が「エコ電気アプリ」をベースにしたシステムの提供を始め、今後も拡大するという。

SBパワーは専用アプリのプッシュ通知でDRを要請

同サービスでは、JEPX(日本卸電力取引所)からの調達価格が提供価格を上回った際などにDRを発動し、「節電チャレンジ」として節電に参加協力してもらえるよう需要家に依頼。参加した需要家が、その時間帯の前日予測需要量=ベースラインを下回り節電に成功すると、報酬をキャッシュレス決済サービス「PayPay」で還元する。21年度の節電効果は約508万kW時だった。

当初の成功報酬は1回1~2円程度相当だったが、今の高騰局面では数十円程度のケースもあり、6月以降は毎日のようにDRを発動。さらに3月22日の需給ひっ迫警報時の実績を検証したところ、節電チャレンジ不参加に比べ、参加者の節電効果が10%高かった。ひっ迫警報や政府の呼びかけに加えての同サービスの展開で、節電効果が高まることが確認できた。

ソフトバンクは「アプリを通じて顧客が状況を理解し活動することで、ある程度の塊として節電を制御できる可能性が出てきた。ゲーム感覚で節電を楽しんでもらえるサービスにすることで継続的に協力いただけるようにすることがポイントだ」(エナジー事業推進本部事業開発部)と説明する。

同社では世帯ごとに翌日の需要を予測しベースラインを算出しており、グループ会社のエンコアードジャパンの特許技術を活用している。ただ、別の事業者が同様の仕組みを新たに自社で始めようとするハードルは高い。

「DRだけで家庭向けサービスが完結できるわけではなく、新電力各社の限られたリソースをDR開発だけに割り当てられないと思われる。かといって導入を見送るのではなく、当社のシステムを広く活用してもらうことで、全体として節電量を増やし効率的なエネルギー消費に向かうことができれば、ソフトバンクらしい取り組みとして提供の意義が示せる」(同)と強調する。

一括受電でもDR実績 デマンドを3段階で評価

マンション一括受電でも、DRの実績を培ってきた事業者がいる。ファミリーネット・ジャパン(FNJ)は、2012年から新築マンション向け一括受電でのDR型電気料金プラン「スマートプラン」を提供する。一括受電は、計画停電の経験から東日本大震災後に急増し、当時は大手電力の経過措置規制料金と比べて数%安いとのうたい文句形が主流。それと「スマートプラン」は一線を画し、当初からエネルギーマネジメント志向のプランを提供してきた。エネマネ志向に理解を示したデベロッパーに採用を続けてもらい、現在は首都圏、名古屋市、仙台市でサービスを提供している。

同プランの特徴は、デマンドを3段階に分けて料金を変動させ、節電を促す点だ。リアルタイムの節電量と、ピークが立つかどうかで、30分ごとに料金が変動する。ピークを立てないよう家電を使うタイミングを変え、ベースライン(2段階目)以下に納まるように家電を使うと、東京電力の従量電灯B、Cより5%安くなる。最も低い1段階目の範囲に収まった場合は、さらに安くなる。自社開発のインジケーターでリアルタイムの電気の利用状況を知らせ、ピークを抑制するような行動を促す。スマートメーターなどを使い30分値で料金変動するプランはほかにもあるが、リアルタイムの使用量を反映するプランは珍しいという。

FNJのインジケーターイメージ図

野村不動産と共に、14年夏、冬に千葉県船橋市の5棟約1500世帯を対象に行った実証では、スマートプランと見える化、さらに省エネアドバイスレポートの提供まで実施した場合、kWを低減するピークカット効果が約11%、kW時を削減する省エネ効果は約7%との結果が示された。今年3月の需給ひっ迫時も、顧客向けに料金確認画面や専用ホームページなどで政府からの情報を随時発信し、無理のない範囲の節電を呼び掛けた。今冬に向けては、さらに啓蒙の仕方を検討する考えだ。

同社は「スマートプランは10年目となり、その趣旨がようやく政策と合致するようになってきた。デベロッパーの関心も高まっており、DR自体が定着してきている」(草刈和俊・取締役常務執行役員)と手応えをつかんでいる。

本番の冬に向け、今後各社のDRサービスが続々発表されそうだ。緊急措置的な側面はあるにせよ、「ちりつも」DRが需給改善にどれだけ貢献できるのか、引き続き検証していくことが重要になる。

電力供給不安は「冬」が本番 求められる事業者の知恵


【論説室の窓】五郎丸 健一/朝日新聞 論説委員

繰り返される電力の供給不安を乗り切るには、発電側だけでなく、使う側の対策も欠かせない。

「節電ポイント」では政府が前面に出ているが、電力事業者が主体的に取り組むべきだ。

 夏や冬の電力の供給不安が、世の中の一大関心事になっている。記録的な猛暑に見舞われた6月下旬には、東京電力管内で「需給ひっ迫注意報」が連日出て、大きなニュースとなった。この原稿を書いている8月上旬の時点では、幸い深刻な事態は避けられているが、気は抜けない。来年1~2月は各地で供給余力が夏よりさらに乏しくなる見通しだ。「本番」への備えを急がねばならない。

6月のひっ迫は、古い火力発電と広域融通のフル活用や、節電の呼びかけで乗り切った。ただ、節電に対しては「電気を使いたい時に使えないとは、日本は先進国なのか」といった批判がネット上で散見された。また、近年の電力システム改革や、再生可能エネルギーを増やしてきた政策を「大失敗」と決めつける言説や、原発の積極活用を求める中で安全規制や再稼働に必要な手続きを軽んじるかのような主張も見受けられる。

だが、いま求められるのは短絡的な「答え」に飛びつくのではなく、需給両面を見渡して問題点や解決策を冷静に見定めることだ。電力不足が起きやすい背景には、多くの要因がある。目先でやれることと、中長期で取り組むことを整理し、時間軸を意識しながら対処していくしかない。

供給側の構造要因で大きいのは火力の休廃止の増加だ。電力システム改革で供給体制の効率化が進んだが、大手が余分な電源を減らすことにもつながった。太陽光の拡大に伴う火力の稼働率低下も、この流れを加速させた。

以前から指摘されてきた問題で、本格的な対策が急務だ。社会的に適正な供給余力の水準と費用負担の在り方を詰めた上で、予備電源の維持や新規の整備を促す仕組みを整える必要がある。経済産業省は、将来の発電能力を取引する容量市場の拡充を検討中で、これが機能するかが焦点となる。

供給側だけではコスト過大に 即効性ある需要側の対策

足元の動きで特筆すべきは、これまで遅れていた需要をならす取り組みに光が当たっている点だ。従来は供給側の対策に力点が置かれてきたが、ひっ迫時のピーク需要を満たすのに十分な供給力を確保するやり方一辺倒では、非効率な電源が増え、社会全体のコストがいたずらに膨らむ弊害がある。

緊急時に即効性があるのは需要側への働きかけであり、事業者や政府による節電要請がしばしば行われてきた。ただ、「お願い」が繰り返されると、「なれ」が生じて効果は弱まることが、経済学者の実証研究で分かっている。

依田高典・京都大教授や田中誠・政策研究大学院大学教授らが、2012年度に行った興味深い社会実験がある。翌日のピーク時間帯に電気の使用を控える要請を繰り返し受けた世帯では、最初は8%の節電効果があったが、すぐに効果は急減した。一方、ピーク時間帯に大幅に値上げする変動型料金を導入した世帯では、17%の節電効果が持続した。

また、依田教授らが最近行った別の実験では、以前より電力消費を減らした世帯に1kW時当たり100円の報酬を与えたところ、2・7~5・6%の節電効果が見られたという。

このように利用者の負担を変えることで消費抑制のインセンティブを与える手法はDR(デマンドレスポンス)と呼ばれる。最近は使用状況を随時把握できるスマートメーターが家庭に普及し、広く導入環境が整いつつある。

田中教授は「需要側の対策は、社会全体にメリットがあるもの。節電要請やDRの実験で得られたエビデンスは、電力会社がどんな方策をとるかや、政策を考えるのに役立てられる」と話す。

節電ポイントに尽きぬ疑問 官主導ではなく民間を中心に

対価支払い型のDRは、政府が6月に決めた需給ひっ迫対策でも柱の一つと位置づけられた。ただ、経産省の4月の調査では、DRの料金メニューを持つ小売り事業者は全体の15%にとどまる。

そこで政府が打ち出したのが、事業者が展開する節電プログラムへの補助だ。参加登録した人に2千円分、企業などには20万円分のポイントを支給する。投じる予算は1800億円にのぼる。また、節電実績に応じて事業者が出す分にも国が上乗せする方針だ。

DRを普及させる狙いは理解できるが、やり方は疑問が多い。節電ポイントは、物価高対策の一環で参院選前に突如打ち出された。実際に節電につながるかわからない登録段階で多額の公金を配ることには「バラマキ」との批判があり、当の電力業界からも「愚策」との声が漏れ聞こえる。

節電ポイントの効果やいかに……

お金を配るなら、節電量に応じて出す部分を手厚くする方が効果的だし、そもそも政府が前面に出ていること自体、違和感が強い。事業者側には、ピーク需要がならされれば、ひっ迫時の高い供給コストを抑えられるメリットがある。官主導ではなく、民間が中心的な役割を担うのが筋だ。

家庭への報酬額は、節電1kW時当たり5円や10円といった水準が目につくが、これで多くの人に反応してもらえるだろうか。ひっ迫時に卸市場のスポット価格が急騰すると、1kW時当たり数十円以上の「逆ざや」が発生することを踏まえれば、今の報酬は少なすぎる、という指摘が専門家から出ている。国の上乗せに多くを頼る仕組みにした場合、支援策がなくなった後に節電の機運が急速にしぼむ懸念もある。

このほか、対象がスマホを使える人に限られないか、節電量を公平に測れるのか、といった実務的な課題もある。多くの人が節電に取り組む利点を実感し、行動変容する仕組みにできるか。各事業者の知恵と本気度が問われる。

DRの普及は、利便をあまり損なわずに需給の安定や効率向上につなげられる点で、意義が大きい。関連技術も進歩しており、空調機器の自動制御などが実用化されている。脱炭素化や分散化などで電力供給と利用の形が大きく変わりつつある中、多くの企業が新しい技術と発想を取り込み、競い合いながら社会に貢献することを期待したい。

熱い視線集まるSMR 一時的と冷ややかな声も


米国ニュースケール社の小型モジュール炉(SMR)に関する米原子力規制委員会の設計認証審査が最終段階に入り、日揮、IHIなども出資していることから注目を集めた。8月には経済産業省の委員会において「小型軽水炉を2030年代後半に着工し40年代に運転を目指す」という趣旨を含む革新炉開発の技術ロードマップが提示され、あたかもSMRの将来はバラ色のごとく映る。

MRブームが起きつつある
提供:ニュースケール社ウェブサイト

この動向は「07~08年ごろの米国の原子力ルネサンスを思い出させる」(アナリスト)。当時、資源価格高騰と地球環境問題から来る原子力新設への期待は相当なものだった。融資保証などの後押しもあり、電気事業者はどこも新設の設置許可を申請した。しかし、原子力が問題解決の切り札と信じたのは原子力産業界などにとどまった。電力会社は安価なシェールガスや太陽光を選択し、社会の広い層からの支持には至らなかった。

SMRブームは「大型軽水炉プロジェクトの失敗に懲りた原子力関係者のわらにもすがりたい動機から発している」(同)。脱炭素や価格高騰の解決策として、市場と消費者の支持を取り付けた結果ではない。ある業界関係者は「原子力ルネサンスのデジャブを見ているようだ」と漏らす。

【覆面ホンネ座談会】電気料金高騰が示した現実 自由化政策の破たん露呈か


テーマ:電力価格の行方

燃料費調整制度で価格転嫁に一定の歯止めがかかる中、大手電力は料金見直しへの対応をそれぞれ発表している。電力価格の動向、そして自由化政策の先行きはどうなるのか。

〈出席者〉 A電力関係者  Bエネルギー企業関係者  C新電力関係者 

―中部電力が10月分で燃調の上限に達し、10社すべてが上限超えとなった。大手電力各社の対応をどう見ているか。

A 各社の事情は異なる。例えば北陸電力が最終保障供給料金を上げたのは、需要家の駆け込みが止まらないことへの緊急手当てだ。他方、原子力安全投資の償却が進んでいる社では規制料金を改定しても大した値上げにならず、むしろやらないという考えもある。

 今回の最終保障供給料金の見直しで、料金全体の思想が明らかに変わった。かつての議論では「電力自由化で大手電力の体力を吐き出させるべき」との思想が強調されてきたが、資源エネルギー庁は、マーケット変動のコスト増分は根拠なく小売りがすべて吸収するのではなく、どうヘッジしているかを説明すべきだとし、また規制料金以外の顧客もヘッジの代償を支払うことになる。大手電力の高圧標準約款が今後出てくるが、これもそれぞれの事情で決まってくるのだと思う。

B 中部が7月末に規制料金以外の値上げと、最終保障供給料金の値上げにもかじを切り、他社も追従するかと思ったが一部にとどまった。このままでは新電力はすりつぶされる。低圧規制料金には触りたくないのが大手電力の本音だ。制度上は、燃調の基準価格の切り上げであれば、上がりも下がりもする可能性があり、認可でなく届け出でできると聞く。しかし物価高の状況を踏まえ、エネ庁が難色を示しているようだ。節電ポイントは規制料金にも適用されるようだが、低料金措置なのに参加表明で2000円与えるのもおかしい。これでは低圧でも競争にならない。

C エネ庁が燃調の見直しを嫌がっているというが、大手数社が発表した自由料金の改定では大幅に値上げしようという中、低圧の規制料金は安いままという状況を放置することはどうなのか。自由化の果実は高圧需要にも低圧需要にも平等に配分するという当初の思想に反するとも言える。一時期、高圧の標準メニューはダンピングだと指摘されていたが、今回も同様な指摘をされてもおかしくない。

B 英国政府も本来値上げすべきところにプライスキャップをかけ、日本とよく似た構造だ。日本より半年ほど先行している英国の場合、行き詰った小売り事業者が前払い金を踏み倒すケースが問題となり、日本でも託送料金や再エネ賦課金を踏み倒す例が出ている。両国とも需給対策が小手先の断熱や節電であり、需給構造の抜本見直しには踏み込んでいない。日本は英国の先例を見て、原発再稼働や電源の手当てなどの本筋の議論をしてほしかった。結局システム改革の三つの目標は何も達成できず、総括しないからパッチワークの対応ばかりだ。節電、節ガスは国内経済を沈滞させ、国力にもマイナス。英国の悪い先例を参照して、速やかに対策を講じるべきだ。知らなかったでは済まない。

各社の料金の判断はまちまち 秋以降市場はさらに大混乱

A エネ庁も自由化の失敗を分かっているが、もう元には戻れない。最終保障供給料金を市場連動とし需要家にリスクを取らせるようにしたことも、苦渋の決断だ。そして現在のエネルギー危機下などの最後の駆け込み寺として経過措置を残している以上、解除は永遠に来ないように思えてしまう。燃調で必要な切り上げを制限なく行えるようにすれば、日本の最終保障供給に当たる、米国の市場連動のデフォルトメニューに近い形にはなる。

C 今の燃調は中途半端で、電源構成が変われば原価の変化をカバーできない。ただ、米国のようなデフォルトメニューが理想的かは分からない。日本でも21年の価格高騰時は市場連動型メニューの価格が何倍もの高値になったことを振り返れば、デフォルトメニューが真の消費者保護となるのかは疑問だ。

―ある大手電力の規制部門は黒字だと聞く。ならば規制料金を値下げ改定して実態に合わせるべきではないか。

A とにかく各社の状況による。例えばLNGの長期契約のウエイトが下がった理由は、新電力に需要を取られて長契を持てなくなった社もあれば、スポットが安いと思い込んだ社もある。それぞれの事情で料金も変わり得るし、必ずしも赤字になる訳ではない。

C 仮に自由料金を値上げする社の規制料金が十分に黒字なのであれば、そうした対応には矛盾を感じる。一方、規制料金の値下げ改定はとても無理で、するにしても値上げしかできないという声もあり、本当に事情はまちまちだ。

B いずれにせよ抜本的な原価の洗い替えは時間がかかる。よって燃調の上限切り上げはしやすいようにしていくべきだ。また、大手電力は現在、「戻り需要」の受け入れは市場連動を条件にしている。一部では戻り需要を標準メニューで受け入れることを求める意見があるが、やはり自社供給力を超えた分は市場連動とする形が自然だ。それが経済学者の好きな限界費用の理屈だろう。

A 確かに安値攻勢で破綻した新電力からの戻り需要に、これまで大手電力と契約し続けていた需要家と同じ料金を提供することは、ある意味道理に合わない。ただ別の視点として、昔からの商習慣を大事にして戻り需要を市場連動とするだけだと、電力・ガス取引監視等委員会や公正取引委員会の存在意義をなくしかねない。エネ庁はそこのバランスを取ろうとしているが難しい。これは、結局自由化はなんだったのかという本質的な話だ。

―最終保障供給料金は市場連動に見直されるが、目的通りに需要家は動くかな。

B 実装はこれからだ。需要家はこれから地獄が始まることに、まだ気がついていない。

A エネ庁は戻り需要に対して大手電力が標準約款を値上げして出すように言っているね。

C 見直し後の最終保障料金は9月から始まるが、多くのエリアでは新たな標準メニューは来年4月からしか出ない。その半年間は大変な状況になる。特に予算が決まっている自治体は料金が見通せることを重視しているから、パニックになりそう。

A 表面上はうまく進んでいるように見えるが、最終保障料金が上がり、次の料金体系が見えてくるまで、最終保障に逃げ込んだ人はまた困り、大手電力とずっと契約していた人の料金も2割増し程度になる。秋から年明けごろまではいろいろな場面で大騒ぎになる。

自由料金と規制料金の逆転現象是正に、公正取引委員会などは動かないのか

【コラム/9月6日】次の電力政策を考える~競争政策から産業政策に転換を


飯倉 穣/エコノミスト

1,電力システム改革見直しの覚束無い中、暑い夏が過ぎる。酷暑の中、停電の懸念がよぎる。

近時電力需給に関わる記事が多い。「東電、料金3割上げ 来月、「電力難民」企業向け 中部電・関電も引上げ」(日経22年8月20日)、「首相指示 原発 新増設を検討 運転期間延長も」(朝日同25日)等々。

90年代、官は、電力の地域独占の問題(新規参入困難、再エネ不熱心、適正コスト不明・総括原価、電力会社の態度)の除去を狙い、電力システム改革を始めた。発送電を分離して独占が残る送電には公平な規制を導入する。発電と配電は自由市場とする。卸売のスポットマーケットを育成する。そして長期的な視点の設備投資市場の整備を目指した。

そして20数年、東日本大震災・福島第一原発事故ショック時の政権の思惑が、電力システム改革推進に走り、続く政権も踏襲した。16年小売全面自由化、20年発送電分離で官製電力自由化が完成した。改革キャッチフレーズは、自由競争市場で安定供給強化、市場競争・効率化で料金(価格)低下、電気を選べる時代だった。競争政策は、消費者重視を謳った。その消費者が、電力需給逼迫警報等で不安を煽られている。何故だ。 

2,電力自由化は、様々な政治的・政策的・行政的・他産業不満配慮等の思惑で出発した。技術革新乏しき電力業で、自然独占・事業規制の論理を超える正しい経済論があったわけでない。

米国、EUの電力自由化をヒントに 公益事業(独禁法の適用除外)の扱いでなく米国要求消費者重視・競争政策の徹底(独禁法強化)を画策した。つまり新自由主義・市場重視の流れで電力需給を市場に委ね価格で調整することを良とした。

すべて市場が解決する。一般の商品同様需給逼迫なら価格高騰し需要減・供給増で需給均衡すると見た。停電は、品不足であり、電源は誰でも開発できる時代、供給力不足なら即時電源建設可能と装った。電源・小売りで新規参入・退出自由という競争促進が、電力の低廉安定供給に有効である。且つ効率化が進み料金も低下すると喧伝された。 

3,現状をどう評価するか。競争政策の専門家は、発電・送配電・小売りという垂直的な取引関係を内部に持つ大手電力会社を分割することが社会厚生上望ましいか一概に言えない。垂直統合は、取引コスト低減、不慮の事故生起時の安定供給確保に寄与する。他方垂直統合は、独立系の発電・小売事業者の送配電アクセス困難、競争が鈍る可能性がある。需給調整市場の整備の姿、自然災害対応の議論も重要と指摘する(大橋弘「競争政策の経済学」21年4月)。競争重視・独禁法強化の論者も現実を前に判断先送りである。

日本を前に進める官僚・自由化論者は、電力自由化万歳であった。卸電力市場開設、長期的設備投資市場整備で、安定且つ低廉な電力供給可能と見た。最近ある自由化論者の発言が流れた(NHK6月13日「ある日電気が来なくなる!?」。「電力料金は安くなると楽観していたが・・」という発言であった。耳にしたとき、吉田茂首相の南原繁東大総長批判を思い出した。

4,現状の需給逼迫状態の打開を探る動きもある。「総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会」は、22年度電力需給対策として、引き続き厳しいLNG燃料購入環境を踏まえ、点検中の発電所運転開始の確認、追加供給力(kW)の公募、燃料確保に向けたkWh公募を提示した(7月20日)。これは小手先対応である。需給逼迫は今後も継続すると示唆した。

又中期の視点から「卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の在り方に関する勉強会」は、現行制度の下で安定供給を図る対策を検討した。そして取りまとめを公表した(6月20日)。目指すべき姿として①電力の安定供給確保、②持続可能、効率的かつ公正な電力供給の実現を掲げ、日本全国で最適運用が可能な需給運用・市場システムを作ると述べる。これまでの電力システム改革(自由化)が機能してないことを明らかにした。問題は、目指す方向である。

経産省は、「あるべき卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の実現に向けた実務検討作業部会(以下作業部会という)」を立ち上げた(7月29日)。

作業部会は、需給運用上の不確実性が拡大する中で 日本全国で最適運用が可能な需給運用・市場システムを目指し、①中長期(数年~2か月前)的に確実な燃料確保の姿、短期(実需給1週間前)の安定供給の電源起動とメリットオーダーを検討する。②そして卸電力市場の先物取引拡大で燃料確保に先見性を付加するという。機能しない卸電力市場の欠点に継ぎ接ぎを試みる。そして欧米市場を参考に、先物に金融資本の活用を期待する。投資金融は、投資的性格でなく投機的性格が強い。果たして安定供給に寄与するだろうか。また先物市場で需要見通しを明確にする試みは、効果不明の思い込みで、対外的な購買力強化にならないであろう。

電力システム改革の本質を問う問題、安定供給と料金安定対策としてどのような体制が適当か、つまり競争政策(自由競争市場)か産業政策(安定供給義務と公益事業的扱い)か等の問題提起を回避している。

5,繰り言となるが、国内の電力需給安定と合理的な価格形成を図るためには、次を考慮する必要がある。電磁気学に従えば、電力産業は、電場を提供している産業である。需要家は、スイッチ一つで電場の利用を行う。電場の提供とは、電力会社が、需要家のつなぐコンセントに、常時電場(電流としての電子)を、発送配電というサーキット内で需要を見越し維持することである。

自由化で発送配電を分離すると、第一に発電事業者は、電場販売で在庫ゼロを合理的と考え、発電は利潤最大化を目指し、需要を少なめに見積もる傾向となる。第二に発電部門と送電部門は、契約関係で言えば、不完備契約となる。そこでは情報不十分で、投資は必要水準より少なくなる。第三に電力産業は、自然条件や需要の視点を含めて、不確実性が大きい。投資リスクが高いので、投資を躊躇する。また需要家に必要なベース電源の共有・負担が必要である。((南部鶴彦「電磁気学と経済分析の接合の試み」(公益事業研究72巻第1号20年9月)等の指摘)。

また対外的にエネルギー確保の方策を熟慮する必要がある。日本が持てるのは、国民(需要家)負担の計画的な購買力だけである。それを分散すれば、購買力は低下する。また一定の計画がなければ、調達量を確定できないであろう。この意味でも、電力業は、産業政策的管理が適当である。過去30年間の消費者重視・競争促進・市場任せの競争政策は、功を奏していない。再考が必要である。

6,日々電力需給逼迫問題がマスコミを賑わせ,大本営本部発表は、国民を困惑させている。ある高名な政治ジャーナリストは岸田文雄政権の課題(難題と難局)として、11項目を挙げた。コロナ感染危機、安保防衛力整備、物価高騰対策、エネルギー・電力ひっ迫、10増10減区割り法案、人口減少社会、新しい資本主義、150兆円GX投資、日銀総裁人事、憲法改正問題、外交・安全保障である。その中に電力需給逼迫を挙げた。優先課題として産業政策で今後の電力システムを見直すことを期待したい。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

培った技術・技能を次世代へ 業務効率化と人材育成の課題に挑む


【中国電力ネットワーク】

中国電力ネットワークは、設備の巡視点検を効率化するモービルマッピングシステムを導入した。

災害時に核となり配電設備の復旧に当たる部署も発足させ、技術継承と早期復旧に取り組む。

 人材の高齢化や労働人口の減少が進む中、限られた要員で効率的に業務を進め、スキルを伝承することは、送配電事業においても大きな課題になっている。

中国電力ネットワーク(NW)は、配電業務の効率化と技術・技能の継承につながる二つの取り組みを進めている。①電柱などの配電設備の画像を取得する「モービルマッピングシステム(MMS)」の導入と、②災害復旧の専門家集団「配電広域復旧課」の設置――だ。

MMSは、車両にステレオカメラやGPSなどの機器を搭載し、走行しながら設備などの画像を取得するシステムで、NTTグループが開発した。これを地上から15m程度の高さの電柱全体に対応できるようカスタマイズし、配電設備の巡視点検に活用する。

車両の前方と後方に3次元の画像データを取得できるステレオカメラを2台ずつ設置。さらに進行方向の左側を撮影する単眼カメラ2台、合計6台のカメラを搭載した車両を走らせ、道路左側の電柱や設備の画像を2mおきに撮影する。取得した画像と位置情報をPCに取り込んだ後、画像を確認することで、配電設備の正確な位置や現地の状況が把握できる。メンテナンスが必要な設備の判断を事務所で行えるというわけだ。

MMS導入で効率化に期待 AI活用でさらなる展開も

従来、配電設備の巡視点検は、技術者が現地に出向いて実施してきた。電柱全体や、電線、引き込み線、支線などを目視点検しながら、必要に応じて設備を計測することもある。MMSを活用することで、一日で100本程度の画像を事務所で計測できるとともに、そのエビデンスを画像として保存することも可能になった。例えば、たるみのありそうな電線の地上高など、計測が必要だと判断した設備の始点を画面上で触れると、鉛直方向真下の距離を瞬時に測れる。電線付近の樹木との距離や設備の奥行き、支線の角度なども画面上で簡単に計測が可能だ。

MMSの仕組み。画面上の計測値は実測とほぼ一致する精度の高さだ

配電部の上田明正部長は「設備は問題がなくて当たり前。問題のある数少ない設備を発見するために、歩いて電柱を確認していた。その労力を減らし、改修計画などに専念できるようにしたかった」と導入のきっかけを振り返る。

中国電力NWが管理する電柱は約170万本。8割近くは道路沿いに立っており、MMSで撮影が可能だ。昨年12月に導入し、22年度中に対象電柱の撮影完了を目指しており、今後は2年ごとに更新したいと考えている。

技術者が現場に出向く負担が減る一方で、後進へのノウハウの伝承機会が減るのでは? と聞いてみた。「現在検討中の重要な課題。経験の浅い社員には熟練技術者と一緒に画像の確認作業を行わせて、熟練技術者からノウハウを受け継ぐ機会としたい。短期間に多くの事例を見て、より早く覚えられるため、一定レベルまでの到達は早くなるだろう」。

不具合が発見された場合には、現地に出向く熟練技術者に同行して経験を積んでいく。

今後はAIが、錆による劣化や電線の地上高不足などを画像診断できるよう、さらに開発を進める。老朽化した電柱の立て替え時にも、必要な材料や立て替え位置を自動設計できる機能を追加するなど、さらなる効率化を目指す。

災害対応の専門部署 迅速復旧を目指す

近年、自然災害が激甚化し、災害時のレジリエンス強化の必要性が高まっている。中国電力NWは、社内の復旧体制を強化するため2022年2月、災害復旧の専門家集団「配電広域復旧課」を発足させた。

従来の災害復旧作業は、配電業務を行う社員が、月例訓練などの定期的な訓練を受け、有事の際には業務を調整しながら現場に向かっていた。同課の設置により、災害発生時の供給エリア内外への迅速な復旧応援体制が強化された。

四つの事業所に設置された同課には、計50人が所属。若手からベテラン社員まで幅広い層で構成され、配電社員の技術・技能教育の中心も担う。平時は各拠点を定期的に訪問し、復旧作業の教育・訓練を行い、スキルの向上を図る。自らの災害対応力向上のための自主的な訓練や、自衛隊や海上保安庁などの社外関係機関との連携強化に向けて、災害を想定した合同訓練などにも取り組む。

送配電会社4社で「西地域共同訓練」を実施した

「災害時に真っ先に駆け付ける配電広域復旧課は、常に高い使命感と責任感を持ち、災害時には現場の核となる。専門部署があると、ノウハウの蓄積にもつながる」と、上田部長は期待を寄せる。

業務効率化のために導入したMMSは、災害時にも活用が見込まれる。大規模災害時は、まずMMSで画像データを取得する。被害状況を把握して、被災エリア全体の復旧計画策定の迅速化に活用するなど、レジリエンス向上にも役立つと考えている。

中国電力NWは、引き続きMMSの活用や配電広域復旧課の取り組みで、効率化と技術・技能の継承による人材育成を進め、電力の安定供給に取り組んでいく。

「導入したMMSは活用性が広い」と話す上田部長