A 今回は環境省プロパーと財務省により、水面下で調整が行われたといわれている。防衛省次官の留任を巡り、官邸が任期2年の慣例を理由に交代させたと話題になった。次官を2年務めた中井氏もその余波を受けたという声もあるが、そうではない。組織で仕事をする財務省が、鑓水洋官房長(1987年大蔵省)を確実に次官にするために話をつけた。和田氏も任期は1年と覚悟している。
中井氏留任か交代か 水面下で調整難航
B 中井氏が退任するか否かで最後までもつれていた。1年前から中井氏本人が留任に強くこだわり始め、環境省内やOB、永田町を含め、周辺が翻意させようと強く働きかけてきた。昨年末ごろには、中井氏もいったん納得したかに見えたが、諦めきれずに山口壮環境相に働きかけ、留任工作をしてきた。省内では春ごろに「中井氏続投」とのうわさも立ったくらいだ。中井氏は官邸に直談判までしたが、結局はノーを突き付けられた。
C 中井氏が財務省、山口環境相が外務省役人時代に仕事での関係もあり、そのときからのつながりがあるとのことだ。中井氏はカーボンプライシング(CP)、特に炭素税という「戦勝記念碑」を建てないうちは退任できない、との思いが強かったと聞く。
―では後任に和田氏という人事はすんなり決まったのだろうか。
B それもひと悶着あった。和田氏は技官で88年環境庁入庁。一方、鑓水氏は年次が和田氏より上だが、和田氏の方が年上だ。慣例では年次で考えて鑓水氏となるが、それでは和田氏が次官になる際に定年延長が必要になるし、2年連続次官が財務省出身という点も引っ掛かる。結局は中井氏が和田氏を後任に指名し、決着した。
C 「鑓水氏は財務省から来て今のポストでまだ1年。さすがに次官は早い」との判断もあったようだ。ただ、鑓水氏が控える中、和田氏の任期が1年となってしまうのであれば残念なこと。和田氏が地球環境審議官を経て次官、というルートもあり得たが、Bさんの指摘通り60歳を超えての次官就任が懸念された。実力派で知られた森本英香元環境次官も、再度定年延長しての3年目は選択しなかった。また修士で88年入庁の和田氏は、民間では86年入社扱いだが、霞が関では異なる。修士が多い技官が次官になり得る環境省などでは、今後も年齢問題が出るだろう。
環境省の事務官不足 今後に続く問題に
B ただ、元をただせば中井氏の前任・鎌形浩史氏がわずか1年で退任を申し出たことで歯車が狂った。鎌形氏が2年勤め上げていれば、鑓水氏を財務省から呼び寄せる必要もなく、ここまでこじれはしなかった。本当の問題は和田氏、鑓水氏の後だ。オーソドックスに考えれば今回総合環境政策統括官に就いた上田康治氏(89年環境庁)だが「上に立つタイプではない」といった評判だ。
A 今回の人事は、上田氏を後々次官にするためのメッセージだとも言える。だが、和田氏も上田氏を指名しているものの、やや不安を感じてもいると聞く。
B 対抗馬の松澤裕地球環境局長(89年厚生省)も技官だし、白石隆夫地域脱炭素推進審議官(90年大蔵省)はまだ局長でもない。環境省の適齢期の事務官が相次いで審議官までで辞めてしまい、穴あき状態がしばらく続く。他省庁から呼び寄せても、財務出身者ばかりでは経産省が「環境省は炭素税一般財源派か」と警戒する。
―その点、和田次官体制は経産省にとってはウェルカムだろう。
A 和田氏には環境省プロパーの代表として、後に残るような足跡を築いてほしい。意外としたたかに動くのではないか。他方、中井氏はわが道を行くタイプ。省内であまり頼れる人がいなかったのか、周りが止めたにもかかわらず小泉進次郎前環境相に入れ込み過ぎた。
C 小泉氏とタッグを組んで炭素税で実績を残そうとの思いが、結果的に裏目に出た。
B 和田氏のことは官邸も評価しているようだ。小泉大臣時代、和田氏とともに水面下で事態を収めてきた秦康之氏(90年厚生省)が水・大気環境局長に、西村治彦氏(94年環境庁)が総合政策課長に就いた。今後は経産省との協調路線が強固になったと言える。
C 日下部聡元資源エネルギー庁長官との良好な関係を築いた森本元次官、そして和田氏の意思を継ぐのが、秦、西村両氏。ただ、年次が空いている点がやはり気掛かりだ。
A いずれにせよ、今は環境省が原理主義から融和型に脱皮する過渡期。環境省プロパーを大事にしつつ、3年後には環境省の庁舎が経産省の隣に移転することだし、経産省とはより綿密に調整して現実路線に進んでほしい。経産省が間違えることもあり得るのだから、産業界にとっても環境省が強くなりバランスが取れるようになるのは良いことだ。
B その文脈で言えば、ほかの幹部人事でも、数少ない原理派の局長の芽をつぶしている。あとはレンジャー(自然保護官)を中心に原理主義者が多い自然環境局の改革が必要。ただ、これまでも試みたもののうまくゆかなかった。根気よく取り組むことが必要になる。
歴史的な早さでの梅雨明けを迎え、今年もまた雷の季節がやってきた。雷はなぜ発生し、どのように落ちるのか、いまだに解明されていないことが多い。その謎を解き明かす端緒をつかむべく、電力中央研究所は、新型落雷位置標定システム「LENTR(Lightning parameters Estimation Network for Total Risk Assessment:レントラー)」の実証を進行中だ。