A 見るべき内容がほぼない、というのが第一印象。従前の延長線上で積み上げた数字がそのまま残る一方、柏崎刈羽の運開時期は見直しのたびに先送りとなり、今は2022年度運開が前提になっているが、できると思っている人はいない。また、国が保有する東電の株式売却や、事業の売却による資金調達もやはりもくろみ通りに進みそうもない。市場から見て総特の手詰まり感は明らかだが、有効な策は今回も全く盛り込まれなかった。
B 昨年の段階で第四次総特の素案を読んだが、正式発表の内容はそこから変わりがなかった。この間に起きた実質ゼロ対応や不祥事対応を少し盛り込んだという印象だ。ただ、驚いたのは「不採算の事業については撤退・縮小する」という一文だ。これは東電内からはあまり出てこない表現で、小林喜光・新会長や、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の嶋田隆・特別顧問の意向が感じられる。
B そもそも東電を残した意味は、公式には福島のためだが、裏の目的は電力再編だった。原賠機構の発足当初からの狙いが、完成に近づいていると感じている。しかしそれで福島の責任が果たせるのかというと、クエスチョンだ。
C 事故を起こしてしまったことが全て。かつての東電は、日々数百億円のキャッシュが入ってきていたが、こんな企業は極めてまれだ。東電に金や情報が集まるから、かつては経産省の方からアポを取りに来ていたこともある。しかし今はその立場が逆転。事故を起こし、官僚の発想による経営を許したのは東電自身だ。後は福島のために生きていくほかない。東芝は、キヤノンに優良な医療関連事業を売り払ってしまった。東電はそれよりはましだろう。
A 事故を起こしたことに加え、東電が当事者責任を認めたことで勝負はついた。事故直後、東電幹部と、嶋田氏、当時の官房副長官の仙谷由人氏(故人)の会議で、東電は押し切られてしまった。