暴走続ける小泉氏 自民重鎮が一喝
菅政権になってから、地球温暖化対策で存在感が増す一方の小泉進次郎環境相。米国主催の気候サミットに合わせて4月に発表された2030年度温暖化ガス削減目標の46%減への大幅引き上げを巡っては、「欧米と肩を並べるには50%」といった主張を繰り広げ、梶山弘志経済産業相らと衝突した。
ただ、小泉氏を苦々しく思っているのは梶山氏ばかりではない。再生可能エネルギーを偏重し、原子力の役割を否定する姿勢に、党内ではエネルギー関係議員を中心に、「調子に乗るな」との雰囲気が充満し始めている。
経産相、経済再生・財政相などを歴任した党の重鎮議員A氏の元に、小泉氏が環境次官をはじめ新幹部とともにあいさつに出向いた際もひと悶着あった。小泉氏は「かつてのA氏がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉に尽力し、功績を残したように、地球環境問題に関する国際交渉は私が一手に担う」と意気込みを伝えた。
この発言を聞いたA氏は激怒。「私は国益を背負って交渉したが、あなたは自分の功績のために外国の利益に寄っているだけだ。一緒にしないでもらいたい」と幹部の眼前で一喝したという。A氏はこの話を、業界関係者が集まる会合などで披歴している。
安倍政権下では、経産省出身のI・T首相秘書官、小泉純一郎元首相の秘書官を務めたI・I内閣官房参与などの「大物」が首相側近にいた。彼らは環境省など各省庁に情報網を持ち、小泉氏などに対しお目付け役を付け、暴走しないようにコントロールしていた。
しかし菅政権で彼らは去った。そのため、官邸のグリップ力が弱まり、小泉氏などは自由な発言を繰り返している。将来の首相候補ともいわれる小泉氏。このままではますます孤立を深めるばかりだ。
太陽光乱開発の懸念で 再エネ規制委待望論
「こんなに危険な開発ばかりしていたのでは、太陽光に主力電源化を期待することなど到底無理だよ」
7月3日に土石流が発生した、静岡県熱海市伊豆山地区の現場の様子を中継するテレビを前にこう語るのは、再エネ事業関係者のX氏だ。土石流の起点のすぐ横の山肌には、太陽光発電設備が見える。今のところ県は、このソーラーと土石流との因果関係を否定しているが、関係者が見ればずさんかつ危険な工事で設置されたものであることは一目瞭然だという。
太陽光の乱開発が止まらない
FIT開始以降、さまざまな企業、個人が相次いで太陽光発電事業に乗り出したが、あくまでも投資目的であり、電気事業という公益事業に携わっているという意識が希薄な事業者も少なくない。その場合、立地の適性など二の次で、いかに安く施工し効率よく投資回収できるかが優先されがちだ。
特に山林を切り開いて設置される大規模な設備に対しては、自然環境破壊や水質汚染、土砂災害などの危険があるとして、全国各地で住民反対運動が巻き起こっている。
こうした状況に危機感を募らせる学識者のY氏は、「原発は、数万年に一度発生するかもしれない地震のために再稼働を止められている。政府が本当に再エネを主力電源化しようというのであれば、再エネ規制委員会を立ち上げて安全規制を強化するべきではないか」と主張する。
「太陽光事業者も実は、政府の再エネ主力電源化の方針を歓迎していない」と明かすのは、新電力関係者のZ氏。「設備容量が増えれば、出力抑制の回数が増えかねない」と考えているようだ。
政府は、第6次エネルギー基本計画で30年度の再エネ比率30%台後半を打ち出したが、その道のりは前途多難と言わざるを得ない。
吹き荒れた反原発デモ 主役の「市民」はいま?
21年の夏。新型コロナウイルスと東京五輪・パラリンピックの話題がメディアを独占しているが、10年前は、福島事故後に起きた原発反対デモが世間をにぎわしていた。関心を集めたのは、左翼系労組など従来型の組織ではなく、SNSなどを活用して、フリーターや個人事業主などがデモの中心になったことだ。
例えば、入れ墨の肌をあらわにハンドマイクで反原発を訴えたМ・R氏。デモとは縁遠い風体からマスコミの注目を浴びたが、反対運動の鎮静化とともに、メディアが取り上げることもなくなった。
しかし、昨年1月に開かれた日本共産党の党大会に来賓として招かれあいさつ。「(原発が止まらない状況を)次の選挙で、野党共闘で一緒に頑張って止めていきたい」と健在ぶりをアピールしている。
東京・高円寺で若者が集まり、ゲリラ的に生まれた反原発デモ。トラックの荷台にスピーカーを積み、大音量の音楽を流して大通りを練り歩いた。中心となったのはリサイクルショップを経営していたМ・H氏。その後も区議選に出馬するなど話題を集めたが、「最近の関心は原発から別のテーマに移っている」(マスコミ関係者)という。
10年前の熱気はいまどこに
旧来型の運動家たちは元気がない。反原発活動のシンボル的存在だった高木仁三郎氏が設立した原子力資料情報室は活動を続けているが、「Y・Y氏、N・B氏、B・H氏など幹部の高齢化が進み、存在感が低下している」(同)。龍谷大学のO・K氏が座長を務める原子力市民委員会などが活動を続けているが、世間の認知度は高くない。
一方、反原発がビジネスに結びついている面々は意気軒高としている。静岡県熱海市の土石流被害でも名前が出た弁護士のK・H氏、同じく弁護士で政党党首と事実婚関係にあるK・Y氏などは、各地での原発訴訟や福島事故の賠償問題などを扱っている。弁護費用などで、生活は左うちわのようだ。
再エネ牛耳るI勢力 既存事業介入で利権狙う
50年カーボンニュートラル社会の実現や30年度に温暖化ガスを13年度比46%削減する国の目標達成に向け、再エネ業界が盛り上がりを見せている。そんな中、不穏なうわさが絶えないのが、有力再エネ推進組織のIだ。土石流災害と太陽光発電の関連問題に揺れる静岡県でも、Iの影響力がひたひたと浸透している。再エネ事業者の幹部Z氏が、こう打ち明ける。
「Iの支援を受けたX氏が実態上、静岡の再エネビジネスを仕切っている格好だ。川勝平太知事や県幹部との結び付きが深く、地域の有力エネルギー企業A社ともがっつり手を組んでいる。その影響を被った事業者も少なくない。例えば、N社は県内H市の某地点で再エネ事業を計画していたところ、X氏やA社などのグループに邪魔をされたと怒り心頭だった」
Iグループを巡っては、太陽光事業が全国的に飽和状態となりつつあることから、現在は小水力や地熱、バイオマスなどの事業にも積極的に手を出しつつあるもよう。その際の常とう手段が、別の事業者が手掛けている既存事業に地域金融などを通じて横から割り込むことで、利権獲得を狙っていく手法なのだとか。とりわけ、福島や長野での動きが活発だという。
「再エネビジネスでは、業界団体Cによる国の補助金の私物化問題、再エネファンドOによる資金流用問題、環境省の環境技術実証事業に絡む利益相反問題など、さまざまな疑惑がてんこ盛りの状態。何とかならないものか」(Z氏)
表向きは地球環境に貢献するビジネスも、ひとたび裏側に回れば、ドロドロとした利権や思惑が渦巻く世界。闇は深そうだ。
太陽光の弱点を解説 日経の論説に変化が
日経新聞のエネルギー論説に変化の兆しがある。今まで、温暖化の解決策は再エネの普及拡大のみで、原発は眼中にない論調が目立っていた。
しかし、経産省が「30年に太陽光発電が原発よりも安くなる」と発表した翌日の7月13日の記事では、「(太陽光の)供給不足に火力や揚水発電で備える必要がある。バックアップを担う発電所は効率が悪く、コスト要因になるが試算には織り込んでいない」と解説している。
日経の論説については、「エネルギー担当のM論説委員が、財界の会合などで直接、批判されることがあった」(業界関係者)。そういった苦情が重なって、ようやく変わったのか。