【業界紙の目】山形優斗/石油化学新報 編集部記者
石油化学業界で石化の分離・再編の機運が高まっている。
これまで多角化で事業を強靭化してきた石化が、なぜ今独立する必要があるのかを分析する。
石油化学業界に大きな再編の波が押し寄せている。この業界の再編自体は珍しくなく、古くはオイルショック後の再編から、2010年代のクラッカー統合までさまざまな動きがあり、またその時期かと見る目もあるだろう。しかし、これまでが〝経済性〟を理由とした再編であったのに対し、今回は〝環境性〟という視点が追加されている点が異なる。
まず、業界を知らない方のために説明すると、石化とは石油から化学品を製造する産業である。もう少し踏み込むと、石油から分離したナフサと呼ばれる原料を、エチレンやプロピレンなどに分離する。そこからポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック、あるいはアセトアルデヒドやアセトンといった化学品へと誘導させる産業である。つまり、プラスチックのみならず接着剤や塗料、繊維や合成ゴム、さらには半導体製造や金属加工まで幅広く広がっており、これがエッセンシャル産業と呼ばれるゆえんである。

経済重視なら分離は悪手 韓国勢の苦境が示す教訓
石化はエッセンシャル産業としての安定需要でキャッシュフローは大きいが、エッセンシャルであるが故の難点もある。それは、原油価格に連動して商品価格までもがフォーミュラで決まり、受払差によって利益が数十億円単位で上下することだ。原料購入から化学品の出荷までに数カ月というのもざらで、その間に市況が急落すればスプレッドは消し飛ぶ。一方で、急騰した場合には利ざやを得るが、その後は価格交渉が待っている。つまり石化産業とは、お金は流れるが手元に残る利益は不安定、という宿命を背負った産業だ。
この不安定なビジネスモデルから脱却するべく努力を重ねてきたのが、今日の総合石化企業である。エッセンシャルな汎用化学品に加えて、スペシャリティケミカルと呼ばれる高付加価値製品を組み合わせたポートフォリオ経営によって、経営の強靱化を進めてきた。その結果、失われた30年の間に〝失われた産業〟となることを回避し、むしろ半導体材料など超高付加価値領域で世界トップクラスの地位を築いたのである。
一方で、この間に汎用化学品のシェア拡大を図ったのが韓国勢だ。もちろん韓国にもスペシャリティ品を持った企業は存在する。しかし、各種統計を見れば分かるように、韓国石化は汎用化学品を中国・東南アジアに輸出することで成り立っており、生産したエチレンの半分を輸出している。そうした中、化学品の自給にかじを切った中国が輸出ポジションへと立場を変え、より安価な化学品を東南アジアへ輸出し始めた。これにより韓国石化は苦境に立たされ、政府高官が再編は「死即生の覚悟で」行うべきと発言するまでに追い込まれている。そしてさらにはその中国でさえも、スペシャリティケミカルの重要性を説いているという。
このように石化事業の単独運営は困難というのが経済界の常識であり、20年代初頭の三菱ケミカルの石化事業のカーブアウト撤回はその証左だ。にもかかわらず、石化事業を分離する動きは活発化しており、レゾナックや三井化学が事業分離を推し進めている。この行動は、これまでの常識であれば最悪の一手である。














