「2025石化再編」を考える 経済と環境の両立で最適化を

【業界紙の目】山形優斗/石油化学新報 編集部記者

石油化学業界で石化の分離・再編の機運が高まっている。

これまで多角化で事業を強靭化してきた石化が、なぜ今独立する必要があるのかを分析する。

石油化学業界に大きな再編の波が押し寄せている。この業界の再編自体は珍しくなく、古くはオイルショック後の再編から、2010年代のクラッカー統合までさまざまな動きがあり、またその時期かと見る目もあるだろう。しかし、これまでが〝経済性〟を理由とした再編であったのに対し、今回は〝環境性〟という視点が追加されている点が異なる。

まず、業界を知らない方のために説明すると、石化とは石油から化学品を製造する産業である。もう少し踏み込むと、石油から分離したナフサと呼ばれる原料を、エチレンやプロピレンなどに分離する。そこからポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック、あるいはアセトアルデヒドやアセトンといった化学品へと誘導させる産業である。つまり、プラスチックのみならず接着剤や塗料、繊維や合成ゴム、さらには半導体製造や金属加工まで幅広く広がっており、これがエッセンシャル産業と呼ばれるゆえんである。

ナフサクラッカーのイメージ


経済重視なら分離は悪手 韓国勢の苦境が示す教訓

石化はエッセンシャル産業としての安定需要でキャッシュフローは大きいが、エッセンシャルであるが故の難点もある。それは、原油価格に連動して商品価格までもがフォーミュラで決まり、受払差によって利益が数十億円単位で上下することだ。原料購入から化学品の出荷までに数カ月というのもざらで、その間に市況が急落すればスプレッドは消し飛ぶ。一方で、急騰した場合には利ざやを得るが、その後は価格交渉が待っている。つまり石化産業とは、お金は流れるが手元に残る利益は不安定、という宿命を背負った産業だ。

この不安定なビジネスモデルから脱却するべく努力を重ねてきたのが、今日の総合石化企業である。エッセンシャルな汎用化学品に加えて、スペシャリティケミカルと呼ばれる高付加価値製品を組み合わせたポートフォリオ経営によって、経営の強靱化を進めてきた。その結果、失われた30年の間に〝失われた産業〟となることを回避し、むしろ半導体材料など超高付加価値領域で世界トップクラスの地位を築いたのである。

一方で、この間に汎用化学品のシェア拡大を図ったのが韓国勢だ。もちろん韓国にもスペシャリティ品を持った企業は存在する。しかし、各種統計を見れば分かるように、韓国石化は汎用化学品を中国・東南アジアに輸出することで成り立っており、生産したエチレンの半分を輸出している。そうした中、化学品の自給にかじを切った中国が輸出ポジションへと立場を変え、より安価な化学品を東南アジアへ輸出し始めた。これにより韓国石化は苦境に立たされ、政府高官が再編は「死即生の覚悟で」行うべきと発言するまでに追い込まれている。そしてさらにはその中国でさえも、スペシャリティケミカルの重要性を説いているという。

このように石化事業の単独運営は困難というのが経済界の常識であり、20年代初頭の三菱ケミカルの石化事業のカーブアウト撤回はその証左だ。にもかかわらず、石化事業を分離する動きは活発化しており、レゾナックや三井化学が事業分離を推し進めている。この行動は、これまでの常識であれば最悪の一手である。

争点は原子力から再エネに 総裁選候補者のエネルギー観は

10月4日に投開票を迎える自民党総裁選には高市早苗、小泉進次郎、林芳正、小林鷹之、茂木敏充の5氏が立候補した。石破茂首相が約1年で退任となり、「昨年の敗者復活戦」(立憲民主党の野田佳彦代表)という様相だ。

思い返せば、石破氏は昨年の出馬会見で反原発に触れ、エネルギー関係者を驚かせた。ただ、首相就任後は建て替えを容認した第7次エネルギー基本計画を閣議決定。その後の国政選挙でも再稼働推進派の国民民主党や参政党が躍進するなど、原発活用はすでに「日本の常識」となった。

出馬会見で過剰な太陽光開発への反対を表明した高市氏 提供:時事

代わりに争点となるのが、再エネ政策だ。メガソーラーや洋上風力などへの疑念が高まる中で、再エネに対する姿勢は候補者ごとに温度差がある。高市氏は出馬会見で「これ以上、私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対」と訴え、エネ自給率向上や安価で安定的な電力供給に言及した。小林氏は「太陽光パネルは限界に達している」と述べ、再エネ政策の見直しを主張。両者は経済安全保障相を経験し、核融合に強い関心を寄せる点でも共通している。茂木氏は電力供給地の近くに戦略事業を立地し、雇用を創出するビジョンを描く。小泉氏と林氏は、高市・小林両氏ほどエネ政策の優先度は高くなさそうだ。

連立候補と目される国民民主党の玉木雄一郎代表は「エネルギーではどの党とも全面的に協力する」と語っており、新総裁との連携に期待する声がある。新政権でエネ政策のさらなる前進はあるのだろうか。

エリア間の分断進む電力市場 恒常化するリスクに打つ手とは

【マーケットの潮流】佐藤祐輔/enechainリサーチ&データデスクディレクター

テーマ:電力スポット市場

電力スポット市場は近年、さまざまな要因を背景にエリア間の分断が鮮明化している。

市場参加者である事業者は、リスクを可視化し適切に管理する必要がある。

日本の電力スポット市場では、かつて北海道や九州と本州を隔てるエリア間、あるいは西日本と東日本といった大きなブロック間で顕著な価格差が見られてきた。しかし近年、その構図は大きく変わりつつある。これまで分断がほとんど生じていなかったエリア間、例えば東北―東京、中部―関西、中国―関西といった本州主要エリア同士でも値差が顕在化している。


恒常的な値差につながる エリア間の電源構成の違い

従来は一体的に動くと考えられてきたエリア間で新たに乖離が見られるようになったことは、市場構造が変化していることを示しており、今後の電力事業運営においても重要な論点となると考えられる。

本稿では、この変化の背景にある要因を整理するとともに、エリア値差により生じるリスク、および対応としてどのような手法が必要かを考察する。

エリア値差を拡大させる最大の要因は、再生可能エネルギーや原子力の偏在による電源構成の地域差である。太陽光発電の導入が進んでいる九州、四国、中国など西日本のエリアでは、出力抑制が生じるほど再エネ比率が高まっており、他エリアとの価格差を生む一因となっている。また、東北エリアなど東日本の一部地域においても、再エネ比率の上昇が価格の下押し圧力となり、周辺エリアとの値差の一因となっている。

一方、関西を中心とした西日本、九州では原子力が再稼働しており、ベースロード電源として市場価格を下支えている。対して東京や北海道では原子力が再稼働しておらず、ベースロード電源を欠く分、需給ひっ迫の際には価格が高騰しやすい。こうした再エネの偏在と原子力の有無が複合的に作用することで、エリア間の恒常的な値差につながっている。

もう一つの要因は、送電網の制約である。北海道―本州や九州―本州の連系線は依然として容量が限られており、余剰電力を十分に送電することができず分断の要因となっている。

さらに近年では、電源構成の変化に伴い、従来は分断が限定的であった東北―東京、中部―関西、関西―中国といった主要連系線においても容量が十分ではなく、混雑が発生している。結果、「安いエリア」と「高いエリア」が慢性的に分断されやすい構図が形成されている。

加えて火力電源、特にガス火力の入札における限界費用の考え方がエリアごとに異なることも、値差発生の一因となっている。例えば関西や九州エリアなどでは、長期契約LNGや保有在庫の実コストが反映されやすい。一方で、東京をはじめとする他エリアでは、ガススポット価格による追加調達コストが入札価格に織り込まれる。結果、同じガス火力発電であっても、エリアごとにスポット入札価格が乖離する。

以上の要因から、各エリアでスポット価格の傾向が異なるため、値差が発生している。 例えば、原子力比率が低く、かつ燃料の追加調達が考慮される東京、中部、北海道といったエリアでは、需給状況や燃料市況の変化に応じて価格が大きく変動しボラティリティが高まる傾向があり、特に需給ひっ迫時には非連続な価格上昇が起こりやすい。一方で、関西や九州のように原子力が稼働しており、燃料スポット価格の影響が相対的に小さいエリアでは、価格は低位で安定しやすい。結果として、各エリアの天候や需給バランス、燃料価格の変化に応じて値差が生じやすい市場構造となっている。

東京/関西と各地域のスプレッド価格
出典:電力データサービス「eCompass」

次世代エネルギーの受託分析を強化 水素・アンモニア実用化を促進

【JFEテクノリサーチ】

JFEテクノリサーチは、親会社であるJFEスチールの品質保証部門から独立する形で設立された分析・評価・解析・調査を行う受託会社だ。従業員約1400人のうち博士号取得者が約70人。材料・化学・機械の各分野で高い専門性を発揮している。2004年の設立時は鉄鋼製品の成分分析や強度試験が中心だったが、10年以降は他分野にも進出。近年、エネルギー分野では、水素・アンモニア関連やリチウムイオン、硫化物系全固体電池など最先端の研究をサポートしている。

次世代エネの液体アンモニアを試験できる

発電設備では、鉄鋼の知見を生かし、コンバインドサイクル発電のタービン・ブレードなどの重要機器の耐久性・余寿命の解析評価、高温・耐熱・雰囲気下での試験・評価などを長年手掛けてきた。瀬戸一洋社長は「高温耐久性能の向上によって、発電効率の向上に加え、発電所を長寿命化しリプレース時期の延長などにも貢献する」と語る。このほか、原子力発電のシビアアクシデントを想定した機器などの試験を請け負ってきた。


分析で実用レベルに引き上げ 材料挙動など適切に評価

次世代エネルギーでは水素・アンモニア関連の受託研究に注力する。電気と水から水素を製造する水分解装置は実用化に向けて開発が進んでいるが、依然課題が多い。「実用レベルまで引き上げるには、長期安定稼働など解決が必要な面がある」とのことだ。

今年7月には、福山地区(広島県福山市)に「液体アンモニア環境材料評価試験設備」を導入し、液体アンモニア環境下における評価試験サービスの受託を開始した。アンモニアは、燃焼時にCO2を排出せず、液化しやすく高いエネルギー密度を持つため、次世代のエネルギーキャリアとして火力発電所での混焼・専焼燃料、水素キャリアとしての輸送・貯蔵媒体、各種産業用プラントの熱源などの用途で利用拡大が見込まれている。

その半面、アンモニアは強い腐食性を有し、特に液体状態では鉄鋼、銅合金などの材料に対し、応力腐食割れのリスクが懸念される。「液体アンモニア環境下での材料の挙動を適切に評価する技術を確立した。ぜひ、エネルギー関連企業に試してもらいたい」と瀬戸社長。

50年カーボンニュートラル実現に向け、JFEテクノリサーチの「研究支援力」ニーズがより一層高まってきそうだ。

停滞する暫定税率廃止協議の死角 運送業界が注視する軽油問題の行方

自民党政局でガソリン税の暫定税率廃止を巡る与野党協議が停滞している。

野党が求める11月1日廃止は実現するのか。そして軽油の暫定税率の行方は……。

11月1日の廃止を求める野党、恒久財源の確保が先だと譲らない与党─。8月1日に始まったガソリン税のいわゆる「暫定税率」廃止に伴う与野党協議は、石破茂首相の辞意表明を受けた自民党総裁選で休戦状態だ。

いっそのこと、年末に腰を据えて自動車関係税制や代替財源の整理をした後、来年4月1日の廃止でよいのではないか……。このようなことを言うと、「物価高に苦しむ国民の気持ちが分かっていない」と野党議員の批判を買いそうだが、少数与党下でなかなか結論が出ないのは事実だ。

9月まで立憲民主党で政調会長を務めた重徳和彦衆議院議員は、早期廃止を求める理由についてこう説明する。

「現に廃止時期については、与野党が『今年中のできるだけ早い時期』で合意している。物価高対策として必要だし、課税根拠を失っているからだ。自公と国民民主は昨年末に廃止を決めた。いつまで引きずるのか」

課税根拠を失っている点は否定しようがない。暫定税率を導入したのは1974年のこと。道路整備の財源を確保するための臨時措置だったが、2009年に一般財源化した。この時点で「道路整備のため」という目的が消えたにもかかわらず、税率は維持され続けた。だからこそ、自動車・石油業界も廃止に異論はない。

問題は廃止の時期だ。石油業界からはこんな声が聞こえる。「税制なんだから、基本的には年度で切り替わるのが事務負担は最も少なくて済む。ましてや、1・5兆円という巨額が動く話だ。消費税のように4月1日に廃止を決め、実施は10月1日にするくらいの猶予期間があってもいい」(業界関係者)

軽油価格の上昇は物流コストに直結する


取り残される軽油 補助金増額で対応か

もう一つ気掛かりなのは、ガソリン税ばかりが取り沙汰され、軽油引取税が〝無視〟され続けたことだ。軽油は主にトラックやバスなど業務用車両の燃料として用いられ、軽油引取税には17・1円の暫定税率がかかっている。

当然、軽油価格の上昇は物流コストを押し上げる。全日本トラック協会の試算では、軽油価格が1円上がると業界全体のコストは150億円近く上昇するという。野党が「物価高対策」の名の下にガソリン税の暫定税率廃止を訴えるなら、軽油も対象にするのが筋ではなかったか。

だが、自公国の幹事長合意でも、野党7党が今年の通常国会と8月上旬の臨時国会に提出した廃止法案でも、対象となっていたのはガソリン税だけだった。なぜなのか。

太陽光拡大に立ちふさがる壁 地域共生やリサイクル制度で足踏み

8月29日の浅尾慶一郎環境相の会見では、太陽光発電の導入拡大に伴う二つの弊害への言及があった。

一つ目は、太陽光パネルのリサイクル義務化断念だ。今後パネルの大量廃棄が見込まれる中、同省は経済産業省と合同でリサイクル制度の在り方を取りまとめ、先の国会で法案を提出する予定だった。しかし費用負担など主要論点を巡り、内閣法制局が他のリサイクル関連法との整合性から検討が必要と指摘し、5月に提出を見送っていた。

釧路湿原周辺のメガソーラー(8月20日撮影)。さらなる開発が物議を醸している
提供:共同

それから3カ月あまりで結局断念へ。浅尾環境相は内閣法制局の指摘について「現時点では合理的な説明が困難」「制度案の見直しを視野に入れて検討作業を進める」と説明。また、次年度概算要求でリサイクルの技術実証や設備補助の予算を計上し、注力する方針を強調した。

ただ、これに環境9団体が即座に反応。「リサイクル義務化が遅れることは再エネ導入拡大の大きな阻害要因」として、義務化を求める共同声明を出した。

二つ目は地域トラブルだ。最近、北海道釧路市のメガソーラー開発が耳目を集めている。タンチョウをはじめとする希少生物への影響などの懸念が高まり、6月には市が全国2例目の「ノーモア・メガソーラー宣言」を行った。浅尾環境相は、本省職員を現地に派遣した上で、「関係する法律を所管する省庁が多岐にわたることから、当該省庁とも緊密に連携し取り組む」とコメント。他省庁との連絡会を設置する方針だ。

固定価格買い取り(FIT)制度導入から13年を経てなお、導入拡大への障壁は高いままだ。

リユースパネルで再エネ発電 新たな資源循環モデルを目指す

【中部電力ミライズ】

IGアリーナは名古屋のシンボル、名古屋城を臨む名城公園の一角に位置する多目的施設だ。特徴的な木組みの外観は、現代日本を代表する建築家・隈研吾氏の設計に特徴的なもので、温かみのある都市と自然の融合をテーマにしている。こけら落としとなった今年7月の大相撲名古屋場所に続き、来年は世界的な一大スポーツイベント・アジア大会の舞台にもなる。活気あふれる名古屋の新たなランドマークとして、今まさに注目されているスポットだ。

今年7月にオープンしたIGアリーナ

中部電力ミライズは、このIGアリーナのファウンディングパートナーとして、オープン当初よりCO2フリー電気を供給してきた。9月8日には、さらなるカーボンニュートラル(CN)への取り組みとして、リユースパネルを用いた再エネ電気の供給を発表した。

パネルの合計出力は約90‌kWで、年間発電量約7・5万kWを見込む。これはアリーナ内のデジタルサイネージおよそ1年分の消費電力に相当する。


30年以降の大量破棄見据え 環境負荷軽減に貢献

太陽光発電パネルの一般的な寿命は20年程度と言われ、法定耐用年数は17年だ。30年以降、大量の太陽光パネルが廃棄されることが想定されているが、処理場の不足、有害物質の流出などの懸念に加え、パネルの廃棄や新たな製造に関しても環境配慮の観点から大きな課題となっている。

実物のリユースパネル

今回の取り組みでは、自然災害の被災などにより利用できなくなった太陽光パネルを点検し、リユース可能なパネルのみを調達。今年度中にIGアリーナ専用のオフサイト太陽光発電所の運開を目指す。

IGアリーナで開催された記者発表会で挨拶した同社の三谷建介名古屋営業本部長は、「今回の取り組みにより、パネルの廃棄、新たな製造に伴う環境負荷軽減に貢献できる」と述べた。脱炭素の一歩先を行く、資源循環の新たなモデルとして今後の展開が期待される。

期待集めた3海域が宙ぶらりんに 洋上風力撤退劇の顛末と教訓

洋上風力公募R1を総取りした三菱商事が決定から3年半後、撤退を決断した。

政策や地域経済を揺るがす事態なだけに、同社の判断や公募決定プロセスの徹底検証が欠かせない。

三菱商事が秋田・千葉の洋上風力3事業の減損損失計上を表明してから半年。うわさ通り同社は撤退を決断した。それもラウンド1(R1)の3海域全て断念という最悪の形で―。これで2030年までに10‌GW(1GW=100万kW)、40年までに30~45‌GWの案件形成という政府目標の達成は相当難しくなった。

「入札時に見込んだ金額と比較して建設費用は2倍以上の水準まで膨らんでいる」。8月27日の会見で中西勝也社長はこう弁明した。インフレや金利・為替など世界的に洋上風力の事業環境が激変し、関係者は皆苦心している。そうした中、同社はサプライチェーン見直しなどを検討の上、政府が投資完遂に向けた制度措置案として示した事業期間の延長や、固定価格買い取り(FIT)から市場連動買い取り(FIP)に転換しても、挽回は不可能と説明した。

武藤経産相と面談する中西社長(左)と岡藤常務


政府や地元の期待裏切る 中西氏は続投明言

同日、中西社長らから報告を受けた武藤容治・経済産業相は「信じられないというのが正直な気持ち。洋上風力の導入に後れをもたらすもので大変遺憾」「撤退は地元の期待を裏切るもの。洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と批判した。また、9月3日に専門紙記者団の取材に応じた村瀬佳史・資源エネルギー庁長官は「やり切ってもらえるとの期待があったが裏切られる結果となった」としつつ、「第7次エネルギー基本計画で示した方針は揺らぐことなく進めていきたい」と強調した。

地元関係者からも「県も地元も準備していて振り回された形。会社としてどう責任を果たしていくのか」(熊谷俊人・千葉県知事)、「国家肝いりのプロジェクトで、よもや撤退はないだろうと思っていたので大変な衝撃」(鈴木健太・秋田県知事)と、追及・戸惑いの声が上がる。

3海域は着床式の中でも特に有望な海域であり、その開発期間を大きくロスした責任は重い。一民間企業の撤退がエネルギーや産業政策の根幹を揺るがす事態となり、さらに地域経済への影響も避けられず、「エネルギー企業であれば当然経営責任を問われる」(大手電力OBのA氏)案件といえる。

だが、会見で中西氏は後続企業につなげる対応を行うとして「引き続き社長としての責務を全うする」と明言した。記者からも、中西氏や、共に公募参加を主導したとされる岡藤裕治常務の責任を問う質問はほとんど出なかった。これほど注目された案件にも関わらず、会見での質問は1人1問限定で、予定通り1時間であっさり終了したことには違和感を覚える。

では、R2以降の事業にはどう波及していくのか。今のところ各事業者は表向き、当初運開予定の旗を降ろしてはいない。政府は三菱商事の二の舞を避けるべく、さらなる制度措置の検討の詰めに入る。「さまざまなアイデアが俎上に載るが、とにかく予見可能性が重要。最低限の利潤が確保できるよう、現在FIP電源は対象外である長期脱炭素電源オークションの対象としてほしい。ハードルは高くともぜひ実現を」(洋上風力事業関係者B氏)といった声は根強い。

他方、そもそも予見可能性が低く、民間の経営努力で吸収できるようなものではないとの見解もある。「競争促進や規制緩和を重視するエネ庁内は、電気事業への公益性の意識が薄れつつある。このままでは原子力新増設や水素や送電インフラ整備なども同様の事態になりかねない。国の関与こそが重要だ」前出の(A氏)

GX強化を継続する概算要求 産業立地や水素支援は事項要求で

2026年度概算要求で、経済産業省のエネルギー関連は今年度当初予算から2400億円ほど増額となった。今回もGX(グリーントランスフォーメーション)の増額と事業の継続性が目立つ。洋上風力や水素などの不振を横目に、まだ政策を見直す段階ではないとの考えが伝わってくる。

エネルギー対策特別会計は1兆4551億円(25年度当初予算比20%増)で、特にGX推進対策費は7671億円(52%増)と増額幅が大きい。経産省全体では今回も2兆円の大台を超えた。別途事項要求として、GX産業立地の具体化、水素などの値差支援や拠点化の予算は年末ごろに示す予定だ。

浮体式洋上風力やペロブスカイトなど再エネへの重点投資方針は変わらず(提供:朝日新聞社)

GX分野では新規はさほどなく、引き続き水電解装置や浮体式洋上風力、ペロブスカイト、燃料電池などの関連部素材や製造設備への大規模投資、省エネやクリーンエネ拡大などに注力する。GX推進費は国庫債務負担行為を活用し複数年度にわたる事業があり、それらのフェーズが進み一層額が積み上がった。

例えば、GXサプライチェーン構築支援が792億円(30%増)、排出削減が困難な産業のエネ・製造プロセス転換支援が485億円(89%増)、省エネ投資促進・需要構造転換支援に1810億円(138%増)、系統用蓄電池など電力貯蔵システム導入支援に472億円(215%増)、次世代革新炉の技術開発・産業基盤強化支援に1273億円(43%増)などだ。

GX推進費を除いたエネ特関係では、省エネ投資促進支援が175億円(94%増)、中小企業等エネ利用最適化推進に40億円(556%増)、分散型エネリソース導入支援が85億円(673%増)、洋上風力の導入促進に向けた採算性分析のための基礎調査が120億円(32%増)、先進的CCS(CO2回収・貯留)支援が130億円(665%増)など。GXと似通った事業が散見されつつも予算規模が少ない印象だ。

他方、減額が目立つものでは、カーボンリサイクル・次世代火力の技術開発(71億円)、次世代燃料の生産・利用技術開発(34億円)、持続可能な航空燃料の製造・供給体制構築支援(100億円)などがある。


地域脱炭素を一層強化 新規でDCや人口光合成も

環境省は、エネ特とGXで3130億円、合計で7097億円(19%増)を計上した。同省肝いりの地域脱炭素推進交付金は701億円(82%増)。脱炭素先行地域の選定数が90弱となりさらに増額する裏では、9月中旬に長野県松本市が3例目の辞退を届け出た。各計画の完走に向けた一層の支援強化が欠かせない状況となっている。

他にモビリティや住宅・建築物の脱炭素化、ペロブスカイト関連などを手厚くした。新規としてはデータセンターの脱炭素化の開発・実証(18億円)、人口光合成などCCUS実装・基盤構築(29億円)などがある。

【九州電力 西山代表取締役社長執行役員】安定・低廉な電気で九州の魅力を高め 地域経済と共に発展する

さまざまな社会変化を背景に電力事業が転換点を迎える中、6月26日に九州電力社長に就任した。

再エネ、原子力による脱炭素化された低廉な電力で地域経済の発展に貢献するとともに、人材戦略を強化することで企業としての魅力を高める。

【インタビュー:西山 勝/九州電力代表取締役社長執行役員】

にしやま・まさる 1986年東京大学経済学部卒、九州電力入社。22年常務執行役員コーポレート戦略部門長、23年取締役常務執行役員エネルギーサービス事業統括本部長などを経て25年6月から現職。

井関 6月に社長に就任されました。これまでをどう振り返りますか。

西山 2000~03年に当時の鎌田迪貞社長の秘書を務め、社長としての振る舞いを見て大変な仕事だなという印象を持っていました。私自身が実際に就任してみて、やはり責任の重さを実感しています。スケジュール上の忙しさもありますが、さまざまな経営判断を最終的には自ら下さなければならない、そこに社員の生活がかかっているということの責任の大きさ、重さを日々感じながら、仕事に向き合っています。

井関 九州電力に入社して以降、最も印象に残っていることは何でしょうか。

西山 最初の赴任地である熊本でのことですが、当時は社員が各家庭を回って未収金を回収していたんですね。私も1カ月に400~500軒を回っていて、その中には、経済的な理由でどうしても払えないご家庭もありました。電気が止まれば生活が成り立ちません。そうした皆さんが、できるだけ安心して電気を使っていただけるようにしていかなければならないと強く感じたことが、私の原体験です。

もちろん、事業はサステナブブルでなければならず、収益を上げて社員や株主、地域の皆さまに還元していかなければなりません。九州エリアは、半導体工場の集積やデータセンターの建設などにより、今後、電力需要の増加が見込まれています。こうした動きは、当社が原子力の安全・安定運転、再生可能エネルギーの積極的な開発・導入などにより、業界トップレベルの非化石電源比率を誇っていることに加え、全国的に見て低廉な料金水準であることなどから、企業にとって九州での立地が魅力的であるためと考えています。  

これからも、電力の安定供給を堅持するとともに、環境価値の高い電気といった九州の強みを生かして企業の立地を促し、地域経済が潤いながら当社も利益を上げる―そのような循環を創り上げていきたいと考えています。

5月に公表した「九電グループ経営ビジョン2035」

陸上式のリスク要因を排除 過酷事故に対応可能な電源へ

【技術革新の扉】浮体式原発/アドバンスドフロート

原発活用への動きが活発になる中で、事故リスクへの対応も重要な視点となる。

津波による影響を受けにくい浮体式原発は、安全性の面から注目を集めている。

地震や津波による事故リスクを排除した原子力発電所を実現する─。そんな挑戦が改めて本格化している。原発は安価で安定的なベースロード電源として機能し、脱炭素化にも寄与するが、重大事故が起これば被害は甚大だ。実際、2011年の東日本大震災では想定を大きく超える津波が全交流電源を奪い、事故の直接原因となった。これを機に、原子力規制委員会による審査が厳格化され、安全性は格段に向上したわけだが、想定を超える巨大な地震や津波に再び見舞われないとも限らない。

沖合30km以遠に設置することで、周辺住人の避難は不要だ

こうしたリスクを回避するための新たな発想が、原子炉を陸地ではなく沖合の洋上に設置する「浮体式原発」だ。原子炉を搭載した浮体式構造物を沿岸から数十㎞離れた海域に係留することで、津波の直接的な影響を避け、被害を最小化できる。構想自体は近年始まったものではなく、日本では1992年に原子力船「むつ」による4回の試験航海が行われ、原子炉出力1

00%で地球2周分に相当する航行を達成した。この経験は、洋上での原子炉運用の技術的基盤となっている。 その後しばらく開発の機運は落ち着いたが、福島第一原発事故を契機に、安全性をさらに高める手段として再び注目が集まった。2020年には産業競争力懇談会(COCN)の下に「浮体式原子力発電研究会」が発足。東京電力ホールディングス(HD)で30年以上原子力分野に携わり、福島第一原発事故後の原子力部門における責任者も務めた姉川尚史氏をリーダーに、事業者、メーカー、研究機関が参加した。研究会は3年間にわたり、陸上原発との比較を通じて技術的課題や優位性を精査。その成果を社会実装するため、24年にはスタートアップ「アドバンスドフロート」が設立され、姉川氏がCEO(最高経営責任者)を務めている。


懸念の崩壊熱処理にも有効 不測事態でも被害最小に

同社は現在、海洋エンジニアリング大手の三井海洋開発と協力し、浮体部分の構造設計を進めている。

これは円筒型の浮体に原子炉を搭載し、沖合30㎞以上に係留する設計で、最大の特長は①津波影響の大幅な緩和、②周囲の海水を動力なしで冷却水として利用できること、③UPZ(半径30㎞圏)内に定住者が存在せず事故時の避難が不要になること―だ。姉川氏は「原子炉事故のリスク対応は、核分裂反応停止後も残る『崩壊熱』をいかに冷やすかが鍵。浮体式なら、万一電源が途絶しても海水で冷却を継続できる」と説明する。続けて、津波などの災害は予測の不確実性が高く、過去データを超える規模の事態にも備える必要があるとし、「浮体式はそうした不測の事態でもクリフエッジ的な被害を受けにくい」と強調する。

経済性の面でも利点は大きい。陸上式では製造拠点と建設地が分かれるが、浮体式は工業地帯などの製造拠点で完成させたものを係留地に移送できるため、品質の均一化が可能になる。さらに、陸上式よりも建設費を抑えられ、工期も短縮できるとされる。大量建造によるスケールメリットや、建設遅延やコスト超過のリスク低減にもつながる。

海水と熱交換することで非常時にも炉心を冷却できる


法整備や資金確保が課題 設計の詳細詰め早期実現へ

ただし、実用化には課題が残る。設置許可や設計指針など現行の規制は陸上原発を前提としており、浮体式に適用するには法制度の整備が必要だ。また洋上での長期保守管理技術の確立、遮蔽物のない海域でのテロ対策強化も避けて通れない。同社は今年6月にみらい創造インベストメンツ(東京都港区)から1億円の出資を受けたが、実現のためには今後も継続的な資金確保が不可欠だ。姉川氏は「安全性と可能性を積極的にPRし、投資を呼び込みたい」と語る。

今後は浮体式での原子炉レイアウトを詰め、33年に建設を開始し、36年の発電開始を目指す。浮体式は地理条件に左右されず、審査や建設の効率化に必要な「型式認定制度」が一度適用されれば、許認可期間の短縮や量産化が可能になる。姉川氏は「日本の原発建設技術が風化する前に実用化を急ぎたい」と述べ、低コスト・低環境負荷かつ高い安全性を備えた電力供給の実現に向けて、着実に歩みを進める構えだ。

中長期のkW時確保義務付けで 制度化に向け整理すべき課題とは

【多事争論】話題:kW時の調達義務化

資源エネルギー庁は7月、小売事業者に量的な供給力確保義務を課す方向性を示した。

事業者の負担増や既存制度との整合性などが懸念される中、課題を整理する。

〈 義務化で拡大する相対契約 「上げDR」が合理化の鍵 〉

視点A:市村 健/エナジープールジャパン代表取締役社長兼CEO

そもそもの話で恐縮だが、電力自由化の目的とは、「安定供給の実現」と「低廉な電力コスト実現」であり、「そのための競争環境実現」であった。事実、小売事業者は770社以上を数える。消費者目線では選択肢は予想以上に広がった。これは思惑通りと言える。その一方、前2項目は厳しい状況にある。2020年度、21年度冬の電力需給ひっ迫と、それに伴う「電力難民」問題は記憶に新しい。電気料金に至っては言うまでもない。

資源エネルギー庁の方針は、小売事業者に中長期的視野でkW時の調達を義務付け、結果的に安定供給の実現を誘導するもので、その方向性は賛同したい。一般的に電力制度は、一般送配電事業者、発電事業者、小売事業者おのおのの立ち位置で検討すべきだが、本稿では小売事業者目線、特にアグリゲーターの果たすべき役割を例示しながら論を進める。

肝は、小売事業者に対し、実需給年度3年前に想定需要5割分の電力供給力(kW時)の確保、同様に1年前での7割確保を義務付けるもので、未達時の罰則規定も鋭意検討する内容となっている。小売事業者にとっては、容量拠出金負担に加えての措置となるわけで、新電力を中心に相応の合従連衡が進むことは想像に難くない。同時に、スポット市場での約定量は増加の一途をたどっているとはいえ、3~4割の間であることから、発電事業者との相対取引が加速することも間違いない。その場合、小売事業者目線での合理的な相対取引契約とはどのようなものであろうか。

1年間の電力需要を、縦軸に需要量(kW時)・横軸に8760時間(つまり1年間)をプロットしたものをデュレーションカーブと言う。小売事業者にとって、このカーブが描く積分領域を、極力長方形に近い形で調達することが合理的だと言われている。それは発電事業者目線でも同様だ。一定の時間軸で定格容量を発電する方が一層効率的で、結果的にウィンウィンの関係になる。 電力需要は、小売事業者の希望通りに動かない。そこでアグリゲーターの手腕が期待されるわけだが、需要サイドの現場の声は切実だ。以下は、今夏の容量市場・実効性テストの1コマである。ある鋳造業いわく「生産状況が好調で今は電力を下げる余地がない」。冷凍倉庫事業者は「北海道も外気温が高く、しかも今は収穫期。ある程度、前もって言ってもらわないと対応できない」など。実効性テストは当日の3時間前通告である。それでも、こうした逸脱事案も一定程度は織り込み済みで、事業者もビックデータを駆使してポートフォリオを構築しリスクヘッジしている。


需要喚起スキームは未整備 季節跨いだ需要シフトの検証を

今回検討されている措置は、中長期視点であることがポイントだ。3年前や1年前の時点で、より長方形に近い需要をつくることで一層合理的に電源調達を可能にするならば、季節ごとに異なる電力需要パターンを逆に活用する手法は考えられないであろうか。一般的に、端境期の春秋は夏冬と比較すると低需要であるから、夏冬の需要を春秋にシフトできれば年間で一定程度「長方形」に近い需要を「つくる」ことができる。これをseasonal flexibility(季節跨ぎのDR)と呼ぶが、今回の措置は、そのような事業モデルが具現化し得る可能性を秘めている。例えば、数カ月前に夏冬の需要をあらかじめ春秋にシフトする契約が締結できれば、発電・小売事業者双方にメリットがある。現行制度では、厳気象時の需要削減を目的とした発動指令電源があるが、逆に需要喚起を促すスキームはない。下げ調整力、つまり上げDRは民民契約の経済DRに委ねているのが現状だ。

中長期的視野でkW時調達を義務付ける場合、例えば上げDR年間公募の導入は、より長方形に近い需要をつくるための有効な手段となる。需給調整市場の場合は上げ調整力のみが取引対象であり、下げ調整力については、優先給電ルールを前提とするため募集されていない。従って、まずは国の実証レベルで、数週間から数カ月先の上げDR(下げ調整力)実施に対してkW価値を有償付与する事業モデルを検討すべきだ。結果として、中長期取引市場(仮称)導入の妥当性も可視化される。

中長期取引市場の導入に当たって、解決すべき課題は多い。例えば、先物取引を活性化させる動きがある中で別の市場を作る意味は、流動性の観点から妥当なのか。送配電事業目線では、連系線制約との関係で中長期取引になるほど市場分断のリスクは高まり、そのヘッジとしての間接送電権をどう扱うのか―。大切なのは、事業者の創意工夫や進取の気性を阻害することのない制度にすることだ。

いちむら・たけし 1987年慶応大学商学部卒、東京電力入社。米ジョージタウン大学院MBA修了。原子燃料部、総務部マネージャーなどを歴任。15年6月から現職。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年9月号)

加速する核融合炉の開発競争/米国による二次関税

Q なぜ近年、世界各国で核融合発電の実証に向けた取り組みが加速しているのでしょうか。

A この背景には、地球規模のエネルギー問題と気候変動への対応、国際情勢に依存しないエネルギー安全保障の重要性の高まり、核融合を含む最新の技術進歩による期待値の高まりなど複数の要因が関係しています。

核融合発電は、太陽と同じように軽い原子核同士を融合させて莫大なエネルギーを得る技術です。燃料1gから石油8tに相当する大量のエネルギーを生み出し、CO2を排出せず、燃料は海水から得られるため無尽蔵な上に特定地域に依存しないなど、エネルギー問題と環境問題を同時に解決する究極のエネルギーです。

核融合発電に向けた最近の状況として、世界7極が協力してフランスに建設中のイーターでは、数々の課題を乗り越えて機器製作が進展し、人類初の核融合実験炉の組み立てが始まりました。また、日欧の協力で茨城県那珂市にて改修した試験装置JT-60SAは、世界中の期待を受けて2023年にプラズマ運転を開始しました。さらに、米国のレーザー核融合実験でも新たな成果が得られています。核融合のこれらの技術進歩に加えて、量子コンピュータ、AIなど将来の技術が実用化されつつある環境を機に、米英を中心に核融合を新たな産業と捉えたスタートアップが次々に立ち上がり、データセンターなど大規模電力のニーズも投資の呼び水となり、投資額の増加とともに新たな人材が集まり、活動を加速しています。

これらの状況を踏まえ、日本を含む各国政府は、核融合発電を早期に実証してエネルギー自立を目指すとともに自国の産業競争力を確保するため、国家戦略を策定して官民投資をさらに加速し、戦略的に取り組み始めています。

回答者:小島有志/量子科学技術研究開発機構先進プラズマ計画調整グループリーダー


Q 米トランプ政権が「二次関税」を実施した場合、日本に影響する可能性はありますか。

A トランプ大統領が対ロシア制裁の一環として導入を示唆する二次関税とは、「ロシア産エネルギーを直接・間接的に輸入する第三国に対し、米国領に輸出される『全ての製品』に追加関税を課す仕組み」です。

8月6日付米大統領令によって、ロシア産原油・石油製品を輸入するインドに対し25%の関税上乗せ(即日発効、21日後から適用)を発表しました。ロシアの原油・石油製品輸出額は天然ガス・LNG輸出額の約3倍あり、ロシアの経済・財政への一定のインパクトが期待できること、国際エネルギー市場への影響に対する配慮、パイプラインによる輸出量の捕捉の難しさなど、総合的に判断し、対象は原油・石油製品の海上輸送に絞り込まれたと言われています。米国の示唆を受けインドは非ロシア産原油の調達に動いたものの、かねてからのOPECプラスによる減産幅緩和措置もあり、原油価格は比較的安定的に推移しています。

ウクライナ戦争以降、インド・中国・トルコなどはロシア産原油・石油製品を割安に購入してきましたが、中国はレアアース禁輸など想定され得る米国への報復措置の影響が甚大なこと、トルコはロシア産石油の輸入量が小規模なことなどが考慮され二次関税適用は見送られたと考えられます。

なお、サハリン2 LNG副産物(原油)の海上輸送に関する全ての取引は日本による輸入を条件に、米国は期限付きで一般許可を定め、随時更新しています。これはわが国の企業が参画し、エネルギー安全保障上重要な役割を担ってきたサハリン2 LNGの生産・供給継続に必要な措置であり、インドなどによる割安での原油・石油製品の大量輸入とは意味合いが異なる点に留意が必要です。  

回答者:栗田抄苗/日本エネルギー経済研究所資源・燃料・エネルギー安全保障ユニット

【コラム/9月26日】地熱発電を考える~開発障碍克服の半世紀から未来に

飯倉 穣/エコノミスト

1、再脚光の動きも

主力の再生可能エネルギーで、期待の洋上風力は、政府執着の賃上げと物価の好循環で建設物価上昇に伴い暗雲が漂っている。その中で昔から開発に苦戦している地熱開発に再び光をあてる努力も継続している。新たな次世代型地熱領域でEGS(高温岩体)、クローズドループ、超臨界地熱等への挑戦も始まる。

報道もあった。「地熱発電立地選ばず 深層部まで掘削 三菱商事など AI需要に対応」(日経25年6月3日)、「新型地熱効果最大46兆円 経産省試算 温泉地以外でも発電」(同7月16日)
地球の中心部は、5,000~6,000度で、火山周辺のマグマだまりは多量の熱を放出し、その周辺に高温の地熱地帯を形成している。そのエネ利用である。日本(火山数111)は、世界火山数の7%に達する火山大国である。 推定地熱資源量は2340万kw(エネ庁資料:環境省推計150℃以上2400万kwに相当)と大型火力20基分である。その分布は、国立・国定公園内1840万kw(特別保護地区700万、特別地域1030万、普通地域110万で計78%)、公園外500万kwである。

地球環境・エネ供給面でみて、地熱は、再生可能エネルギー、安定的な発電特性、クリーンエネルギー、純国産エネルギーで、また実績もあり、ほぼ非の打ちどころがない。
ところが、我が国の地熱発電規模は、米国370万kwに対し、未だ50万KWにとどまっている。今後の地熱発電の展開を考える。


2、オイルショック後とFIT創設後に開発拡大

国内地熱発電開発は、1966年松川発電所2.2万kw(日本重化学工業)を嚆矢とし、翌年大岳発電所(九州電力)が続いた。72年環境庁の意向で国立・国定公園内6カ所(大沼、松川、鬼首、八丁原、大岳、滝の上)に開発制限の協定締結となった。その地点も含めてオイルショック後、八丁原、葛根田、森等13か所の開発・運開があり、48.7万kw(96年)となった。

95年以降は、バブル崩壊・経済情勢・経済環境の変化で、開発主体も、企業合理化に追われ、国のエネ政策も自由化一辺倒だった。地球環境問題もありながら、地熱への関心は、資源の賦存が自然公園内、事業リスク等もあり低下した。冬の時代と呼ばれる。ただNEDO地熱開発促進調査(80~09年)は、地道に継続した(67カ所実施)。

2009年政権交代、再エネ重視(FIT導入公約)で、2011年東日本大震災時にFIT制度創設があった。同制度は、地熱発電で1.5万kw未満40円/kwh、1.5万kw以上26円/kwhの固定買取を設定した(12年)。地熱発電開発も、新たな時代となった。

この効果もあり15年間で15地点13.4万kw(千kw以上)の開発があった。松尾八幡平、山葵沢、安比地熱発電等である。現在千kw以上の地熱発電は、25カ所49.5万kw(24年4月)である。このほか千kw未満開発は、69カ所0.84万kw(22年現在)だった。大分県49カ所、熊本県6カ所、岐阜県4カ所等である。69カ所の小規模発電地点が、より大きな発電所建設が可能であったか定かでない。NEDO地熱開発促進調査の寄与があった。

今後の開発はどうか。大型で、はこだて恵山、木地山、松川地熱更新、かたつむり山等6.8万kwが開発中で、他に掘削調査中18地点、地表調査中15地点がある。その開発時期と規模は、鮮明でない。


3、開発目標と今後の開発~資源量は豊富だが

第7次エネルギー基本計画は、地熱で40年度発電電力量見込み(1.1~1.2兆Kwh)の1~2%を供給目標としている(22年度実績1兆Kwhの0.3%)。電源規模は、150~300万kw(現在50万kw)となる。目標実現は、前述のプロジェクトや今後の調査如何である。
このため経産省・JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)は、従来の地熱資源ポテンシャル調査支援に加えて、新規開発地域でJOGMECが自ら探査・掘削(噴気試験含む。)し、情報提供する体制を整えた。

さらに地熱の開発可能資源量拡大も打ち出した。従来型地熱資源(浅部熱水系地下数100~2000m地熱貯留槽)に加えて、高温岩体(地下6000m内350℃程度の資源量66百万KWと超臨界地熱発電400~600℃で11百万kw)の利用技術開発を目指す。次世代型地熱推進官民協議会は、技術開発のロードマップの作成を議論している(エネ庁25年7月15日)。EGS(水圧入・人工造成蒸気発電)、クローズドループ(高温地熱層の流体循環発電)、超臨界地熱(マグマ上部超臨界水利用発電)等の実現(2040年)を目指す。 

高温岩体利用は、サンシャイン計画以降、半世紀に及ぶ試行錯誤を継続している。「九重山2100年噴火予測と噴火回避」(江原幸雄著)は、DCHE(坑井内同軸熱交換)方式のマグマ冷却の未来を描く。人類の夢であり、地下資源の理解の難しさの克服が課題である。

【森 洋介 国民民主党 衆議院議員】「社会保険料を下げたい」

もり・ようすけ 1994年大阪府茨木市生まれ。上智大学経済学部経済学科卒業、一橋大学国際・公共政策大学院修了。環境省、ローランド・ベルガーなどを経て、農機具買取・販売会社を創業。昨年10月の衆議院議員選挙で初当選(東京13区)。

環境省からコンサルを経て独立し、昨年10月の衆院選で初当選を果たした。

経営者としての経験から、現役世代の手取り増と現実路線のエネルギー政策を訴える。

大阪府茨木市出身。3人兄弟の末っ子、従兄弟の中でも一番下、年上から可愛がられて育った。洛星中学・高校時代は、クラスの端っこにいる目立たない存在だったと振り返る。高校卒業後は東京に憧れて上京。上智大学経済学部に進学した。サークル活動に夢中で、遊びっぱなしの大学生活だった。就職も考えたが、もう少し勉強しようと思い、一橋大学国際・公共政策大学院に進んだ。

卒業後は環境省に入省した。「ビジネスの世界で活躍したいと思っていたが、まずは官公庁に入り、経済全体を俯瞰した仕事をしたかった」。数ある官公庁の中で同省を選んだのは、テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏の影響があった。同氏は21世紀に成功するビジネス分野として、①気候変動、②IT、③宇宙─の三つを挙げている。「この中で、どれか一つの専門性を身につけたかった。当時の日本は気候変動への社会的関心が今以上に低かったので、ブルーオーシャンだと思って飛び込んだ」

地球環境局の地球温暖化対策課市場メカニズム室などで、カーボンプライシングを扱った。その一環で、電力分野の温暖化対策の進捗をフォローする「電気事業レビュー」を担当したが、「市場がいろいろあって事業環境を理解するのに苦労した」と述懐する。

官僚として働く中で痛感したのが、役人と政治家の違いだった。印象的だったのは、2020年の50年カーボンニュートラル(CN)宣言だ。「それまでは『今世紀後半のできるだけ早期にCNを実現する』と歯切れの悪い答弁を書いていたが、宣言で物事が一気に動いた。政治のダイナミズムを感じた」

役人としての限界を感じたことで、環境省は3年半で退省した。ただ、辞めたのは政治家になるためではなく、もともとの目的の通り、マスク氏のようにビジネスの世界に進むためだった。