【マーケット情報/11月27日】原油上昇、需給引き締まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油市場は、主要指標が軒並み上昇。需給が引き締まるとの観測が、買い戻しを促した。

新型コロナウイルスのワクチン開発が前進したことで、経済活動が再び活発化し、石油需要が上向くとの期待が台頭。そうしたなか、原油の大消費国である米国で、同製品の在庫統計が前週比で減少を示したため、買いが先行した。

また、サウジアラビアの石油施設がミサイル攻撃を受け、中東情勢が悪化したことが、供給不安を醸成。中国やインドからの需要が強まりつつあるなか、早めの確保に動く市場参加者が増えた。

ただ、新型ウイルスの感染は、引き続き拡大傾向にある。国際航空運送協会が、航空機での移動がコロナ前の水準に戻るのは早くても2024年との見通しを示したこともあり、ジェット燃料を含めた石油製品需要は当面は伸び悩むとの慎重な見方もある。このため、価格の上昇には、幾分か抑制が加わった。

【11月27日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=45.71ドル(前週比3.56ドル高)、ブレント先物(ICE)=48.18ドル(前週比3.22ドル高)、オマーン先物(DME)=48.30ドル(前週比3.79ドル高)、ドバイ現物(Argus)=47.25ドル(前週3.07ドル高)

※11/26-27は米国祝日のため、WTI先物は25日の価格を掲載。

【コラム11月30日】米大統領選にそれでも学ぶ


新井光雄/ジャーナリスト

時代区分というものがある。日本であれば、もうその意識が相当に薄れてはきているものの、敗戦を挟んでの戦中・戦後という区分がある。若い人たちにはほとんどないのだろうが、高齢者社会ということでまだまだ生きている時代区分だろう。世界を俯瞰しても、第二次世界大戦は相当に受け入れられる区分か。しかし、これは聞いた話だが、アメリカではあの大恐慌が長い間、一つの時代区分だったという。しかし、これは一世紀に近い前のこと。それでは新しい区分に第二次大戦と思いがちだが、違うらしい。今はリーマンショックを言う人が多いと聞いた。

さてこれからはどうか。世界では目下のコロナ禍が候補として当確だろうが、ラジオである評論家がアメリカでは、あるいは世界でも、今回の大統領選がそれになるかもしれないという。なるほど今回の米大統領選は異例ずくめ、選挙は終わったものの、大統領が簡単には確定しなかった。日本からみると珍現象、不思議な状況というほかないが、多分、アメリカ人にとっても異常事態なのだろうと想像する。米全国民に強烈な記憶を残すに違いない。後世、「あの時は」といって頻繁に記憶のなかに何度も反芻されていく、そんな気がする。

それにしても日本の報道ぶりも、この歴史的な珍事にいやというほどに詳しかった。知人が日本はアメリカの属国的存在であることを再認識したと皮肉ったが、そうと言えるかとも思えた。すっかり個人的に米国大統領選通になった気分だ。少し笑いたくなり、実は少しアメリカが羨ましくもなった。それは米国民の選挙への関与の仕方だ。むろん、関与過剰の暴力的な対立は論外だが、必死になって応援する民主・共和両陣営の活動をみていると政治と個人の間に一体感があり、驚くばかりだ。

日本でも選挙屋という感じの人たちがいないわけではないが、普通、政治は生活者から縁遠い存在。支持政党などを友人、知人から一度として聞いたことがない。言ってみれば非政治性が常識化している。この差は何によるのか。やはり個人の存在が日本は希薄なのかと思える。残念ながら自分のなかにも政治的な意志的立場がない。どことなく持たないように努めてきたところもある。

メディア関連の仕事をしてきたということがあるが、アメリカでは堂々と新聞社などが政治的な立場を明らかにしている。これも決定的な日米の違いだ。それにしても二大政党のアメリカ。ほとんど一党支配下にある日本。この日本では来年の総選挙でも何も変わることはないのだろう。この点だけでもアメリカが羨ましい。日本の民主党政権の失敗の後遺症は余りにも重い。

個人的にはみっともない米大統領選だと思っているが、政治への個人参加のエネルギーはやはり見習わなくてはならないとも。

【省エネ】どうする⁉ 水素の扱い


【業界スクランブル/省エネ】

二次エネルギーである水素はバイオマス由来燃料や廃プラスチックと同じ扱いで、化石燃料消費として省エネ法の報告対象に定義されていない。需要家が水素を燃料代替とするにはローリー輸送や専用配管受入となるが、その水素の元はさまざまである。国際再生可能エネルギー機関では、再エネ由来の「グリーン水素」、化石燃料由来の「グレー水素」と定義している。例えば、東京オリンピック・パラリンピックの晴海選手村は水素燃料電池などと福島の再エネ水素を活用する「水素村」となるが、大会終了後は都市ガス改質のグレー水素使用となり、実質的には都市ガス燃焼と同じCO2が排出される。この後者を省エネ法で「化石燃料起因ではない」と扱うのは本質的に間違っている。

「2050年に向けたガス事業の在り方研究会」で議論も始まっているが、事業者団体の資料では脱炭素化イノベーションが「メタネーションで完了」とされている。つまり、既存事業を永遠に維持するという主張(熱量調整したメタン主体の都市ガスを送るパイプライン事業を微塵も変える気はありません)である。メタネーションは需要家側でCO2を排出する技術であり、最終的な脱炭素社会技術ではない。脱炭素社会技術は水素社会であり、そのグリーン水素を運ぶキャリアとしてガス導管がどう活用できるかを議論し、現状と最終形態をどのようなロードマップでつなぐかを議論する必要がある。需要家に水素を届ける手段には、都市ガスへの水素混入(低熱量化)、都市ガス導管での水素混合輸送(水素分離技術)、ローリー搬送、需要箇所での再エネ電力による水素製造があり、これらのベストミックスが「あるべき姿」である。脱炭素社会での都市ガス導管の役割は需要家の燃料電池にグリーン水素を届けることであり、都市ガスをグリーン水素100%にどう移行するかの議論が不可欠である。

日本でも「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現」を目指し、国連総会では中国が「2060年のカーボンニュートラル」を宣言した。最終的な脱炭素社会を考慮しない2050年検討に意味はない。(Y)

【住宅】電力データの活用 さまざまな挑戦


【業界スクランブル/住宅】

2020年6月5日、電気事業法の改正が行われた。この改正により、施行される22年4月以降、これまで同法が禁止していた電力データの電気事業以外でのビジネス活用が可能になる。今後、電力データの適正な第三者提供を一括して担い、データ提供先の監視・監督を行う認定機関が設立されるなど、制度活用に向けた環境整備が行われる予定だ。

また、今年9月から経産省において次世代スマートメーターの制度・仕様検討が始まった。現行の家庭用(低圧)スマートメーターは14年から本格導入が始まったが、検定期間の10年を過ぎる24年度から次世代型に置き換わっていく。現行の計量頻度は30分間隔であり、幅広いビジネス活用を考えると実現できることに限界があった。次世代型ではより高頻度・高精度・多項目でリアルタイムなデータ提供が可能となる。

このように、電力データの電気事業以外の領域でのビジネス活用は、近年急速に環境が整いつつあり、以前にも増して期待が高まっている。

経産省の第1回次世代スマートメーター制度検討会の事務局資料では、期待されるサービス事例として「高齢者等の見守りサービス」「在宅時の配送サービス」の二つが挙げられているが、改正電事法施行を前に、両領域で先駆的な取り組みを行っている企業として、東京大学発ベンチャーのJDSC(日本データサイエンス研究所)がある。

同社は今年1月、中部電力とIIJ(インターネットイニシアティブ)の合同会社ネコリコ、東大と連携し、三重県東員町において要介護の前段階である「フレイル」を電力データのみを使って検知する実証実験を世界で初めて行っている。また、今秋には、佐川急便、東大、グリッドデータバンク・ラボと連携し、横須賀市において電力データを用いた不在配送削減のフィールド実証実験を行い、こちらもまた世界初の試みとして注目されている。今後、同社のような挑戦が全国に広がり、電力データを使った新たな価値が創造され、事業化していくことを期待したい。(Z)

【太陽光】分散型電源の制御 流れに遅れるな


【業界スクランブル/太陽光】

2020年6月、エネルギー供給強靭化法が参議院で可決・成立した。再エネ電源の事故時の対応、災害時などにおける電力データの活用など、緊急性の高いものは期限を待たずに施行されるが、22年4月1日施行に向け、電力事業の新制度、システムの設計について議論が進んでいる。この中で特に注目したいのが、再エネ電源の導入促進に向けた環境整備の一環として、アグリゲーターが電気事業法上、位置付けられたことである。

アグリゲーターとは、配電網に複数設置された分散型電源を統合し、小売り電気事業者と電力取引を行う事業者であり、VPP(仮想発電所)やDR(需要家側の電力需給制御)など、新しいエネルギーサービスを創出されることが期待される。しかし、現状ではアグリゲーターの実現は難しい。電気計量装置の見直し、関連装置を制御する汎用の通信網を用いた双方向通信の設計、DERMS(分散型電源制御システム)の具現化、通信に係るサイバーセキュリティーの充実など、インフラ整備が必要である。またインフラを使用するための制度設計、電力系統に接続される分散型電源の要求仕様であるグリッドコードの設定も必要不可欠だ。

現在の電力制御システムは大きく分類すると、送電の制御を給電制御システム、配電は配電自動化システム、電力系統全体を中央給電システムが把握して発電設備の出力制御、他エリアの電力融通の調整や系統事故時の対応、運営を行う体系である。この従来の電力制御システムにDERMSを組み込み、融合することでさらなるシステムとしての進化が期待できる。例えば、配電網に設置されている太陽光発電の各装置が持つデータ、機能の活用は有効だが、数が膨大なため、利用し難い。

しかし、複数のアグリゲーターがDERMSを用いて、分担して処理を行えば利用しやすくなる。現在、この分野は欧米が先行し、国際標準化も進んでいる。わが国も将来の産業育成のため、この流れに遅れることなく対応していくべきである。(T)

【再エネ】洋上風力の主力化 丁寧な説明を 


【業界スクランブル】

「数十年後の日本の電源は洋上風力発電と原子力発電がメイン。その主電源化政策の完遂は自明だ」。今春、政府高官は風力発電業界関係者を前に本音を漏らした。2040年のエネルギー像を描く政府の第6次エネルギー基本計画策定を念頭に置いた発言で、同計画は来年に策定される。このため、現行の第5次基本計画は30年の風力などの再生可能エネルギー電源構成比の目標を22~24%と定めてはいるものの、目標値の底上げは既定路線だ。そもそも世界全体の再エネによる発電量が昨年、原発を初めて追い越したため、傍観していたら日本だけが取り残されることになる。世界では再エネが急増する一方、原発については先進国で廃炉が進展しているのだ。

一方、コロナ禍の日本のエネルギー界では自然の風を利用した洋上風力発電に熱視線が注がれた。輸入資源に頼らず、陸地以上に大型化できる羽根を使って大量の電力を自前で生み出せる。しかも石炭や石油と異なりCO2を排出しないエネルギー。原発もほぼ同じ特質を持ち有用だが、事故時の放射能汚染リスクを国民が嫌悪している。だから、政府は水面下でジワジワと原発の主電源化の動きを維持するしかない。

また、日本はマスク供給の8割を中国に依存していたため、中国が国家応急備蓄物資としてマスクの輸出を制限すると、日本国内で深刻なマスク不足が起きた。海外からの化石燃料の国内流通がストップする危機もいつ起こるか分からない。国益を考えるなら、風力発電が主電源の位置に座るのは当然のことだ。

ただ、経済産業省幹部は「これ以上国民の負担を増やせない」とこぼす。実際、発電コストが高い再エネは、国民負担の賦課金が年2兆円の大台を突破。コスト削減に向けた事業者による不断の努力は必要だが、国益のために再エネが不可欠だと国民に丁寧に説明すれば、理解は深まるはずだ。政府や政治家は国民に対して再エネの有用性に関する説明を怠ってきた。そのツケが今、回ってきた。日本で芽吹く洋上風力発電を育て、成長させなければ国益は守れない。(H)

【石炭】リケジョの先駆者 保井コノの功績


【業界スクランブル/石炭】

石炭の成因としてサイクロセム説(数十層の炭層が堆積岩中に繰り返して夾在し、流れてきた流木が起源となった説)がある。堆積輪廻を考えるもので、筆者らは学校でそう習ってきた。ところが近年の研究からピートドーム説(高位泥炭説)が支持されている。このことは筆者には驚きだ。三畳紀の例でいうと、山口県美祢市大嶺の地層はサイクロセム説で十分に説明できる。今後、夕張地区の解析でどうなるか目が離せないところだ。

ここで思いだされるのが保井コノだ。1880年、現在の香川県東かがわ市に生まれ、日本女性で初めて博士号を取った女性研究者。女性が研究を続けていくことが非常に困難だった時代に、アメリカ留学も果たした。香川県が誇る「元祖リケジョ」と、郷土では今もヒロインだ。

彼女は、日本と満州の炭鉱を自ら巡って石炭を採集し、0.03㎜厚の薄片を作成して組織観察をした。第三紀の石炭がほとんどだが、木材の小片、上皮化細胞膜から構成され、大部分が針葉樹の材部と判明、微生物の影響は認め難く水面下で生成したようであること、炭化作用は物理化学的作用であるという結論を導いている。成果が「日本産石炭の構造の研究」となって理学博士号が東京帝国大学(当時)より授与されている。

戦後はお茶の水女子大学教授となり、女子学生の育成に努めた。弟子筋に当たる黒田チカ、湯浅年子と共に東京の国立科学博物館にレリーフが並んでいる。保井は1971年に91歳で亡くなるまで独身を通し、ミクロトームを扱う彼女の写真が残っているが、実に生き生きとしている。

現在では、第三紀は古第三紀と新第三紀に区分され、新第三世紀初期頃、日本海の開裂が起きたといわれている。保井の論文は地質学的側面が弱く惜しまれる。しかし、男女共同参画が叫ばれる現在からは想像もつかない女性蔑視の大正年間に生き、成果を挙げた彼女の生きざまには尊敬の念しかない。(T)

【石油】需要減少が加速 腹を決める時期


【業界スクランブル/石油】

EUでは、ポストコロナの経済復興策の目玉として、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及促進が提唱されている。「グリーンリカバリー」とか「緑の復興計画」といわれるものである。本来、再エネもEVも新型コロナとは無関係だと思うのだが、経済対策とか、コロナ禍で減ったCO2を増やすなとか言われると、誰も反対できなくなる。コロナ後の「欧州復興基金」でも気候変動対策費が含まれている。

結果的に、コロナによる経済への影響とは無関係な脱炭素化による石油需要減少が加速されるのである。おそらく、2019年の需要をピークとするBPの長期見通しの低炭素シナリオも、こうした考え方を反映しているのであろう。

EV普及促進の一環として、英国やフランスでは内燃機関自動車の販売禁止を40年から35年への前倒しを発表した。そうした中で、特に注目されるのが、ドイツのEV促進策である。6月、ドイツ政府は、EV購入補助金を1台当たり3000ユーロ(約73万円)に引き上げるとともに、EV利用者の利便性向上のために、全土1万4000軒のSS(給油所)にEV充電設備の設置を義務付けたのである。

一般に、欧米においては、EVの8割は自宅・職場における充電であり、電気代が安価であることから付加価値が少なく充電はビジネスとして自立し難いと言われてきた。その意味で、ドイツ政府が、SSに内燃機関自動車後のエネルギー供給拠点としての機能を託したことは画期的である。

確かに補助金なくしてEV普及は難しく、各国の財政を圧迫する。逆にガソリンの税収は激減する。また、普及は最終的に消費者の選択にかかっている。しかし、各国政府、特に次の市場である中国・インド両政府が、政策的にEV普及の方向性を打ち出している以上、国際競争の観点から自動車各社は追随せざるを得ないだろう。

そろそろ、わが国の石油業界も腹を決めるべき時期に来ているのかもしれない。(H)

【コラム/11月24日】日本学術会議問題と原子力


福島 伸享/元衆議院議員

 菅政権になってはじめての本格的な論戦が行われている臨時国会では、日本学術会議の問題が大きな争点となっている。私は、菅政権による6人の会員候補の任命拒否は、これまでの菅総理の国会等での説明である限りは、日本学術会議法に違反する行為であると考える。同法では、憲法に定める学問の自由を保障するため、会員の任免に関する政治や行政による裁量権を著しく制限しているからだ。

 人文社会科学であれ、自然科学であれ、特定の科学分野について、イデオロギーや政治的立場によってそれを否定することは、文明的なことではない。今回の菅政権の対応を批判する人たちの中には、原子力や遺伝子組み換えといった特定の科学分野を否定しようとするダブルスタンダードの人は果たしていないであろうか。どんな科学であっても、それが技術として人間社会に適用される時、ベネフィットとともに、リスクやハザードがある。しかし、それを克服していくことも科学であるという「学問の自由」なき社会には、新たな創造はないのだ。

 一方、私は、世論は意外と冷静で穏健であり、政治判断はノイジー・マイノリティ(声高な少数派)に惑わされるべきではないと考える。11月18日に村井宮城県知事、女川町長、石巻市長が再稼働の同意を東北電力に伝えた。その発端は、9月に女川町議会が再稼働に賛成する商工会の陳情を賛成多数で採決したのがきっかけである。11月15日投開票の柏崎市長選挙では、東京電力の柏崎刈羽原発7号機再稼働を容認する立場の現職桜井氏が、再稼働反対の近藤氏に約3倍の票差をつけて圧勝した。同日に行われた刈羽村長選挙でも、再稼働を容認する現職品田氏がつけた票差は7倍以上だ。

 反原発派から見れば、立地自治体の住民は「原発マネー」に惑わされて再稼働を容認していると言うのであろうが、それは地元住民を愚弄する話である。私も、原子力施設が多く立地する地域の住民であるが、「原発マネー」の恩恵を受けている自覚などないし、本当に原発の再稼働が身に迫った危機と感じるならば、たとえ経済的な利益が多少あったとしても再稼働に反対するであろう。思うに、原子力施設の立地地域であるほど、稼働している施設を身近に目にし、そこではたらいている人たちとリアルに接し、さまざまな情報を他の地域よりはるかに多く知り、共に暮らすことによって住民は冷静に判断しているのだろう。それが、選挙結果にも現れているのだ。

 このことは、世論調査の結果からも導かれる。日本原子力文化財団が2019年に実施した「原子力に関する世論調査」では、「原子力発電所の再稼働を進めることについて、国民の理解は得られていない」は50.3%、「新規制基準への適合確認を経たとしても、再稼働は認められない」の絶対反対派は14.5%。つまり、イデオロギー的な絶対反対派は1割ちょっとにすぎず、半数は情報不足やコミュニケーション不足による不安感が再稼働への否定的な回答につながっているのである、この層は適切な情報提供やコミュニケーションを重ねることによって、自らの冷静な判断をすることができるのだ。

 原子力発電への態度についても、「原子力発電の即時廃止」は11.2%、「徐々に廃止」が49.4%、「原子力発電を増加」と「維持」は合わせて11.3%となっており、絶対反対派、絶対賛成派はそれぞれ1割ちょっと。「徐々に廃止」派は、「原子力発電所の再稼働を進めることについて、国民の理解は得られていない」と回答した層と同様で、判断を留保しているからこそ「徐々に廃止」なのだろう。

 こうして見てみると、「原発ゼロ」を掲げる政治勢力が、それをテコに大きな政治的なムーブメントを起こすことができないのは当然である。原発ゼロにこだわる国民は1割ちょっとなのだから。一方、「東日本大震災による原発事故以降、原子力に対する世論が厳しくなった」として本質的な議論から逃げ回るのも、国民世論を見誤っている。多くの国民は、科学的知見に基づく適切な議論がなされていないからこそ、再稼働や原発自体に対して最終的な判断をすることができないでいる。原発絶対反対、原発絶対賛成の二項対立を超えた、科学的知見に基づくエネルギー政策の議論を行うことこそが、今必要なのである。

 本来、日本学術会議のようなアカデミズムの場がそうした役割を果たすべきなのであろうが、設立時の崇高な理念と比べてそのような存在感は日本学術会議にはない。原子力委員会も特定の科学技術の専門家の御用機関のように思われていて、国民の理解を得られるような権威はない。政策立案や政策決定にアカデミズムが貢献できていない構造こそが、日本の宿痾なのかもしれない。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2009年衆議院議員初当選。東日本大震災からの地元の復旧・復興に奔走。

【マーケット情報/11月24日】ブレント8ヶ月振りの高値、ワクチン普及への期待高まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

23日までの一週間の原油市場はすべての指標が前週から上昇。北海原油の指標となるブレント先物価格は23日、バレルあたり46.06ドルの終値を付け、今年3月以来8ヶ月振りとなる高値を更新した。

米製薬ファイザーは18日、来年末までに10億本の新型コロナワクチンを生産すると発表。このワクチンは臨床試験で95%の予防効果を確認済みとの報告だ。また、23日には、英製薬アストラゼネカがオックスフォード大学と共同で開発するワクチンの臨床試験結果が報告された。同ワクチンはファイザー社のワクチンに比べ、安価かつ冷蔵庫での保管が可能とのことで供給拡大への期待が高まっている。

また、アジア、特に中国での経済が回復基調にあることも買いを強めた。同国の10月工業生産は昨年同月に対し6.9%増加。

一方で、リビアでの生産が増加していることや、米国での在庫量が増加したことで幾分か上昇が抑えられた。また、ワクチンの開発は進展しているものの、感染者は引き続き増加傾向にあり、こうしたことも買いを慎重にさせる一因となっている。

【11月23日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=43.06ドル(前週比1.72ドル高)、ブレント先物(ICE)=46.06ドル(前週比2.24ドル高)、オマーン先物(DME)=45.80ドル(前週比1.71ドル高)、ドバイ現物(Argus)=45.62ドル(前週1.84ドル高)

【メディア放談】電力システム改革の報道 容量市場で露呈した勉強不足


<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ業界関係者4人

容量市場の約定価格が高値になり、「新電力がつぶれる」と新聞各紙が大きく報道している。しかし、新電力に固定費の負担を求めるのは既定路線であり、各紙の記事には勉強不足が目立つ。

―容量市場の約定価格がkW時当たり1万4137円とかなり高額になって、負担が増えて経営が厳しくなる小売り事業者が出てきそうだ。これにマスコミがかみついている。

ガス 各紙の容量市場の記事を見て、あらためてマスコミの勉強不足を痛感した。中でも朝日新聞。再エネ系の新電力を守りたいためか、容量市場の必要性などを詳しく説明しようとしない。とても日本を代表する新聞とはいえない報道だった。

電力 朝日や東京新聞は確かに世論をあおるような、一流メディアとはいえない伝え方だった。エネルギー業界の大部分の人たちは、口には出さなくても容量市場についての報道がおかしいと思っているはずだ。 

 卸電力取引所から電気を仕入れて小売りをしている新電力は、今まで発電にかかる費用のうち、固定費を払っていなかった。それでは、発電事業者は古い火力を維持できず、新しい発電所もつくれない。すると、将来の電力供給が危うくなる。それで、新電力にも固定費を負担してもらうことにした。別に、難しい話ではない。

 今回は初回ということもあって、約定価格が上限に張り付くような高額になった。経産省は新電力の反発も踏まえて、見直しを始めている。この問題は徐々に解決していくと思う。

マスコミ 一部の小売り事業者が見直しを求める要望書を出しているけれど、新電力と一般の国民への対応を分けて考えた方がいい。基本的にこの話はBtoBの話。BtoCへの影響、つまり家庭の料金負担増は限定的になる。新聞はそのことを伝えるべきだよ。

小泉環境相に失望 大手紙記者は勉強を

―小泉進次郎環境相が約定価格が高値になったことに文句を付けて、それをマスコミが大きく報道している。

電力 再エネの普及にブレーキがかかりかねないと思って、小泉さんは敏感に反応したんだろう。将来の総理候補で、期待しているところがあった。しかし、今までも物議を醸す発言があったが、今回は特に失望した。電気事業について勉強していないし、理解しようともしていない。結局、世論に迎合する政治家で終わるのかなと思った。

―新聞各紙は、小泉さんの発言を検証もしないで掲載していた。

マスコミ 朝日や東京だけでなく、大手紙の経済記者は「容量市場って何だ」というレベルの記者ばかり。彼らは、経産省の説明は聞くが、広域機関(電力広域的運営推進機関)に足を運んで取材するようなことはほとんどしない。

 容量市場の仕組みは複雑だけど、広域機関はかなり工夫して説明用の資料をつくっている。しかし、それさえ読まずに記事を書いている記者がいる。

石油 容量市場をよく分かっている記者は、電気新聞などの業界紙にしかいない。それで容量市場の必要性や、今年から入札が始まることが、大手紙やテレビを通じて世間に伝わることが、価格発表までまったくなかった。その中で突然、「費用総額は1兆6000億円」という記事が出て、世間もあわてた。「誰がこんなことを決めたんだ」となった。

マスコミ 「電気料金が国民全体で平均500円上昇する」との記事に対して、梶山弘志経産相が会見で「追加の国民負担はない」と火消しに走った。ただ、政権の側には、小売り自由化後に雨後の筍のようにできた新電力が、負担増である程度淘汰されるのは仕方ないと考えている節もある。

 菅義偉首相は、「日本経済の停滞は、生産性の低い中小企業が多いからだ」と訴えるデービット・アトキンソン氏の影響を受けている。卸電力だけに頼るような新電力は低生産性の典型的企業。早く撤退して、商売替えした方がいいと考えているんじゃないか。

―容量市場に限らず電力システム改革は複雑になりすぎて、普通の人には分かりづらい。

電力 行政の側に責任があると思う。電力システム改革の中で、広域機関の権限が強くなっている。容量市場や需給調整市場に加え、系統増強やマスタープランの検討なども始めている。

 しかし、広域機関には自分たちの検討していることの内容や、これからの議論の方向性を積極的にメディアに伝えようという姿勢が足りない。それでマスコミも、よく理解できないままでいる。

石油 ここが大きな問題。エネ庁の制度改革であれば、経産省は記者クラブを通じて情報発信ができる。だけど、広域機関はそれができない。たまたま関心を持った人が取材するだけだ。容量市場を巡る誤解だらけの記事も、そういった構造的な問題が背景にあるとみている。

電気新聞の秀逸記事 負担増発言を痛烈批判

―すると、業界紙の役割が重要になる。

電力 やはり、さすがだと思ったのは電気新聞。電力自由化については歯切れの悪い記事が多かったけれど、10月5日の「容量市場 どこまで理解?」は分かりやすく、読んでスッキリした。

 「(新電力の)分担額は過去1年間の卸市場価格の下落によって、フリーライダーが手にした利益でほぼ賄える水準」と指摘していた。電気新聞だからこそ書けた記事といえる。「大手紙記者はこれを読んで勉強しろ」と思った。

マスコミ 小泉さんの発言への批判もあった。記者会見で「小売り事業者の負担が増える」と述べたのに対して、「本来あるべき負担の在り方を完全に無視した発言」とバッサリ切って捨てた。久しぶりの骨太の記事だった。

―電気新聞に座布団一枚!

【火力】高額の落札価格 結果の受け入れを


【業界スクランブル/火力】

容量市場は、電力市場制度の要の一つである。その初めてのオークションがこの7月に行われ、9月に落札結果が公表された。約定価格は、指標価格を大幅に上回り、ほぼ上限価格の1万4137円。この結果に驚きの声とともに小売り事業者からは反発の声が上がっている。

しかし、発電事業者の視点に立つと、この水準は、現状の需要と供給力のバランスを素直に反映したものであり、おおむね妥当なレベルとなっている。さらに言えば上限価格近傍に多くの入札があったことは、発電事業者に無理を強いている表れであるともいえる。

電力・ガス取引監視等委員会の報告によると、今回の入札に関し、売り惜しみや価格つり上げなどの問題行動は確認されていない。すると、今回の落札結果こそが市場からの価格シグナルであり、指標価格の1.5倍の上限価格に張り付いた原因は、指標価格の算定方法や1.5倍という係数が実態から乖離していることを示しているにほかならない。

今回の入札では、経過措置に伴う逆数入札の仕組みを問題視する意見も多かった。しかし、そもそも経過措置を一律に科したこと自体が根本原因ではないか。応札価格が高くなる傾向の経年火力では、機能維持のためのコストが“今から”かかってくるのであり、応札価格こそが必要な経費を反映するものだからだ。経過措置の控除率×逆数入札という分かりにくい制度にこそ問題があることを認識してもらいたい。 容量市場は、不安定な卸市場を補完し将来にわたり供給力を安定的に確保するためのもので、うまく機能すれば事業者にも消費者にもメリットのあるものだ。今回は初回ということもあり、検証と修正を行うのは当然であるが、落札価格が高かったから一方的に抑え込もうとするばかりでは、ますます制度の在り方をゆがめてしまうだけだ。今後、CO2の削減と整合の取れた市場をつくるという新たな課題が加わることもあり、まずは今回の結果を虚心坦懐に受け入れるところから始めなければならない。(M)

【原子力】海外への技術移転 ポーランドに協力


【業界スクランブル/原子力】

わが国の原発の運転が11月初旬に1基のみとなる見通しとなった。原子力規制委員会の厳しい審査に9基が合格しているが、伊方3号が広島高裁の仮処分決定を受けて停止中のほか、川内1、2号と高浜3、4号がテロ対策の「特重」対策遅れで停止しており、大飯4号機が11月初旬に定期検査で停止。また、7月から定期検査で停止している大飯3号は配管に傷を示す信号が確認され、運転再開のめどが立たないなどのため、国内で稼働中の原発は玄海4号のみとなる。

原発を1基停止すると代替の燃料調達などで1日約1億円の負担増といわれ、CO2の排出もそれだけ増える。来年は、エネルギー基本計画の改定の年。S+3Eの視点に立った原発ウエート見直しと再稼働策の抜本的強化、さらにはわが国の原子力技術の将来的な確保が、原発稼働たった1基の厳しい現実の下で改めて急務となっている。

わが国の原子力技術は、今も世界でトップレベルにある。その進んだ技術を海外へ伝えるプロジェクトが米・英・ベトナム・トルコなどで進められたが、残念ながらどれもついえてしまった。その中で、堅調な経済発展を続けEUの中での存在感を増しているポーランドへ原子力技術を伝え、社会貢献をしようという取り組みが昨年9月に始まっている。安全性が高い次世代原子炉の「高温ガス炉」の設計などでポーランド国立原子力研究センターとの協力が始まった。将来ポーランドが建設する予定の研究炉(2020年代に建設)や商用炉(30年代に出力16万5000kW規模を建設)で日本発の技術を活用し、CO2排出削減を目指す。

ちなみに、ポーランドはCO2排出量がEU28カ国中で多い国のトップ5だ(18年に一人当たり8t、EU平均は5.5t)。日本との協力プロジェクトに対し、原子力資機材輸出の前提となる二国間の原子力協定が整っていないことを問題視して、他国が事実上の妨害をしていたりと多難な状況もあるようだが、菅首相の外交で何とか課題克服し、このプロジェクトが実を結ぶことを期待したい。(Q)

学生時代は知的好奇心を探求 数十年先を見通した研究を


【リレーコラム】江村勝治/大阪大学特任教授

約三十年間の企業勤務を経て、今年一月から大学に奉職している。仕事柄、世界トップクラスの先生方に身近で接する機会が多く、先生方の高邁な理想、どん欲な知的好奇心、猛烈な仕事ぶりに驚くばかりの毎日である。

自分自身の学生時代を思い返すと、浅学菲才の身でありながらも、素晴らしい先生方や先輩方のおかげで充実した日々であった。私が大学院生の頃、ある先生が、「エネルギー分野は基礎研究から実用化まで数十年かかることもある。われわれは数十年先を見通して、数十年先の社会が苦境に陥らないよう今から研究に打ち込まないといけないんだよ」と熱く語っておられたことを思い出す。若い頃のオイルショックの原体験が、このような熱い思いに昇華させたようだった。大学は、熱い思い、進取の気風、自由闊達な精神で満ちた場であり続けてほしいと思う。

研究テーマ設定は自由な発想が最重要

大学において、研究テーマの設定は、研究者の自由な発想や知的好奇心に基づき行われるものと理解している。ただ、最近、研究の現場を回っていて少し気になることがある。「重要な研究領域だが、論文になりにくいので、人が集まりにくい」といったお話を時折耳にすることだ。

一定の質的レベルを担保された論文数は、研究者や機関の研究力を反映する指標とされる。私が学生だった頃は、論文数の計数自体が大変な労力を伴うものだったので、数を比較してうんぬんすることは少なかったように思う。しかし、今では論文データベースの整備が進み、研究者ごとの論文数や引用回数などを手軽に把握できるようになった。このため、論文数が各種評価に用いられるようになってきている。数字は大事だが、無機質に扱ってしまえば弊害を誘発しかねない。研究テーマの設定は、本来、研究者の自由な発想や知的好奇心に基づき行われるべきものだ。「論文になりやすい、なりにくい」といったことが研究テーマの設定に何らかの影響を及ぼしていないか、気になるところである。

新型コロナウイルス感染症の影響で、本年度上半期の大学キャンパス内は学生の数もまばらで寂しいものだった。しかし、秋に入り、キャンパスに学生たちが戻り始めている。ベンチに座り談笑している学生たちの姿を見ると、こちらもうれしくなってくる。

学生たちには、豊かな時間を過ごしてもらい、自由な発想や知的好奇心に基づき研究に打ち込んでほしい。数十年先を見通して、数十年先の社会が苦境に陥らないような知的資源を蓄えてほしいと切に願う。

えむら・かつじ 1988年大阪大学大学院工学研究科修了、住友電気工業入社。同社エネルギーシステム事業開発部企画部長を経て、2020年1月より現職。博士(工学)、第一種放射線取扱主任者、エネルギー管理士。

次回は京都大学特定教授の橋本道雄さんです。

【LPガス】脱炭素化が加速 販売業者の備え


【業界スクランブル/LPガス】

脱炭素化の流れが世界中で加速している。産業界では、2050年における二酸化炭素(CO2)排出量ネットゼロを目指した動きが活発化し、金融機関もESG(環境・社会・ガバナンス)投資が主流となり、グローバル企業として生き残るためには、化石燃料が使えない時代が来る。それも、私たちが想像する以上に早く到来する可能性がある。

9月に発表された、恒例の英石油メジャー・BPの20年版「エネルギーアウトルック(BP統計)」は、再生可能エネルギーの導入拡大と新型コロナウイルスの流行によるエネルギー需要への影響を背景に、化石燃料の消費が歴史上初めて縮小するとの見通しを示している。

もちろん、私たちが取り扱っているLPガスの需要が、この先数年の間に消滅してしまうなどというわけではないが、今般のBP統計の予想では15年のパリ協定における目標(世界の気温上昇を産業革命以前の水準から摂氏2℃を「大きく下回る」水準に抑える)に向けた政府政策のレベルに応じて三つのシナリオを盛り込んでいる。

そのうち二つは、化石エネルギーの需要量が相当程度、今回のコロナ禍の影響により急激に減少すること、そして、それに代わる再エネとして風力、太陽光発電が急増していくということだ。当然これらのシナリオはマクロ的なものであり、私たちのLPガス販売事業に今すぐ大きなインパクトを与えるようなものではないが、5年後、10年後の中長期の経営計画への展望として、事業の将来を考える上で少なからず影響を与える時が来ている。

自らできる対応策は少ないが、まずは徹底的した高効率ガス機器類への販売転換と再エネ関連事業への業態変更は避けて通れないと考える。さらには物流販売面の徹底的な効率化と生産性向上により、自らの使用するCO2の削減量まで問われる時が目の前まで迫っている。いずれにしろ、経営者としてそれらの施策の具現化の時間が迫って来ている。(D)