【需要家】スマメ導入の効果 データ利活用の可能性探る

【業界スクランブル/需要家】

2014年から進められてきた低圧部門のスマートメーターの導入が昨年度末に完了し、この春から全ての旧一般電気事業者で紙の検針票の無料送付が原則廃止となった。

今では新電力を含めウェブ上で電気代や使用量を確認することは当たり前になりつつある。日別や時間帯別使用量、類似世帯との比較、関連サービスの情報、ポイントの交換など情報が充実した一方で、能動的に情報を受け取りに行く必要があることや、スマートフォンの他の利用目的と画面や時間の取り合いになること、アカウントを持つ家族しか情報を確認できないといった側面もある。このような変化により生活者がエネルギーを意識する時間や、エネルギーに対する向き合い方にどのような影響を及ぼすのか注視していく必要があるだろう。

スマートメーターによるデータの中で特に注目しているのは不在時のエネルギー消費状況である。すでに高齢者の見守りサービス開発や再配達削減のための在室把握の研究が進んでいるが、生活者視点で見た時に「そこにいなくてもエネルギーを使い続けている」という気付きは、エネルギーに向き合うきっかけとして効果的であろう。また、家電の機能の変化や新たな機器の登場により、待機電力などの「見えないエネルギー消費」は増加している可能性がある。それらの把握という点でも研究的価値があると思われる。

データの利用ハードルはまだ高いが、例えば過剰な待機電力消費に対する製品側からの省エネの検討やエネルギー貧困世帯の推定など、電力需要データを用いた自由な発想が生まれる環境が整備されることを期待したい。(K)

日本の成長軌道定着を目指す 電力制約で阻害されてはならず

【巻頭インタビュー】畠山 陽二郎/経済産業省 経済産業政策局長兼首席GX推進戦略統括調整官

今夏の人事で経済産業政策局長に、資源エネルギー庁次長だった畠山陽二郎氏が就任した。

産業政策全般、そしてGXのキーマンとしての考えを、経産省ペンクラブ主催の会見で語った。

はたけやま・ようじろう 1992年東京大学法学部卒、通商産業省入省。商務・サービス審議官、産業技術環境局長、資源エネルギー庁次長などを経て2025年7月から現職。

―経済産業政策局長に就任しての抱負は。

畠山 ウクライナや中東を巡る不確実な国際情勢下、さらに足元では米国の関税問題もある中で、日本をどう成長させ、成長軌道を定着させるのか。そして国内投資を拡大し、物価上昇を上回る賃金上昇をどう確保していくのか。これらが経済産業省全体で数年前から取り組む政策です。このたび分野ごとの取り組みをまとめ上げるポジションとなり身の引き締まる思いです。

―米国との関税交渉が合意に至りました。

畠山 交渉当事者なので評価は委ねたいと思いますが、元々言われていたラインより低い水準で早期に合意できたことは、予見性を確保する観点でプラスになるかと思います。足元で関税の影響を受ける部分については機動的に対応していきます。

物価高に負けない賃上げと国内投資拡大に向けて良い流れができており、腰折れさせない環境整備が重要になります。引き続きGX、DX、経済安全保障といった戦略分野に対する大胆な投資促進策、さらに中堅・中小企業が持続的な賃上げと投資へ取り組めるような環境整備に向けた支援策が必要です。


電源から系統、熱需要まで 投資促進の政策措置が必須

―「経済産業政策の新機軸」と銘打った政策は継続しますか。

畠山 継続こそ大事です。米国・欧州・中国が産業政策を強化する中、政策で負けているから企業は勝ちようがない、となってはなりません。新機軸で示したように、分野を特定した上で大胆な投資を促し、研究開発からビジネスで勝つまでの取り組みを強力に進めていきます。

―電力需要の増大見通しに関し、電力広域的運営推進機関のシナリオでは2040、50年に供給力が相当不足するとしましたが、そこまで需要が増えるのかと懐疑的な声もあります。

畠山 国内では過去20年間電力需要は一様に減ってきましたが、反転する状況に入りました。議論として間違えてはならないのが、増えない可能性があるからといって備えなければそこが上限となります。電力さえあれば本来もっと成長できるところをみすみす逃す、つまり国民経済を犠牲にすることになります。電気は需要と供給が一致し結果的には常に足りますが、電力供給の制約が日本経済全体の足かせになることは、エネルギー政策として絶対にやってはならない。バランスを見ながら、増大するという需要を満たせる供給体制を作ることが肝要です。

他方、供給側から見た経済合理的な行動は過小投資になります。その犠牲になるのは日本国民全体ですから、そうならないような仕組みを考える必要があります。

【コラム/9月24日】“夏は一休み”とは言えない制度設計の進展

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

猛暑続きの夏も、ようやく落ち着きを見せ始め、仕事からの帰路では、セミの声が秋の虫の声に変わりつつある。電力需給は、7月以降、計7回の需給改善指示のための融通、計1回の作業停止計画調整の要請があるなど、対応が講じられる場面もあった。

電気事業をはじめとする国の審議会は、エネルギー基本計画などの大きな政策の議論が進んでいた昨年度と比べて開催件数は少なく、例年通りであったが、各分野の議論は粛々と進められている。今回は、この夏に動きを見せた制度設計について簡単に振り返りたい。


GX2040ビジョンの具体化は排出量取引制度と産業立地から

今年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」では、不確実性が高まる中で、目指すべき産業構造や成長のためにエネルギー政策と一体となり、エネルギー安定供給確保・経済成長・脱炭素の同時実現を目指すとして、①産業構造の転換、②新たな産業立地の選定、③現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献、④GXを加速させるための個別分野の取組、⑤成長志向型カーボンプライシング構想、⑥公正な移行、⑦GXに関する政策の実行状況の進捗と見直し――、という7つの施策の方向性が示された。

これを受け、今年5月には改正GX推進法が可決されたが、その中でメインとなる施策が来年度から本格運用する排出量取引制度である。CO2の直接排出量が直近3年度平均で10万t以上の企業を対象に排出枠の無償割当を行うもので、成長志向型カーボンプライシング構想のトップバッターを切って始まる施策である。この後、28年度からの化石燃料賦課金、33年度を目途に予定している発電事業者への有償オークションへとつながっていくことから、その制度設計は産業への影響や過度な負担を強いない範囲で低・脱炭素化を円滑に促す仕組みにしなければならない。

26年4月の法施行まで残された時間も多くないことから、早速、7月から小委員会を設置し、制度運用に必要な項目の検討が始まっている。特に、エネルギー多消費でCO2排出量が多い鉄鋼や化学、セメント、紙パルプなどの製造業、火力発電を有する発電事業、日々の移動や物流に欠かせない運輸については、排出枠の割当量の設定が難しいことから、それぞれワーキンググループを設置し、業界団体や事業者の声を聞きながら具体的な割当をする際のベンチマーク水準や割当量の算定式の検討が着手されている。

産業や電気事業に影響を与え得る施策の割には、かなりタイトなスケジュールで検討事項を決定していなかければならず、拙速な議論とならないよう、また実務から離れた学術的な議論に陥り過ぎないような留意が必要だろう。特に電気事業という点では、発電事業者にどの程度の負荷がかかるかは着目する点だろう。割当量を超えれば排出枠を購入する必要があり、そのコストは、容量拠出金やその他卸電力取引(相対取引含む)に転嫁される可能性は十分にあり得る。逆に割当量を下回って排出枠を売却できれば、その分、卸単価への反映ができることから、小売電気事業者にとっては、このカーボンプライシングを踏まえた調達戦略を考えていく必要がある。

もう一つ、検討が進んでいるGX施策は、GX産業立地である。戦後の日本の経済成長を支えてきたのは、各地にできたコンビナート群や工業団地に、電力・通信・水道・道路・鉄道・港湾といった産業インフラを整備し、内需・外需を獲得してきたことにある。こうした場で生まれた産業の中には、アジアをはじめとした海外諸国への移転や、事業自体が衰退したものもあり、元気があるとは言い難い。そこで新たな産業を呼び込むとして、GX産業立地構想が出てきた。GX実行会議の下に、専門のワーキンググループを設置し、4月以降、計4回の議論を経て、戦略の全体像と具体的な立地の選定要件が整理された。

事業譲渡の先に何を見据えるのか 将来ビジョンを持った検討を

【論点】LPガス業界のM&A〈後編〉/中原駿男・スピカコンサルティング代表取締役

M&Aという言葉は日常的に使われるが、全ての経営者にとって身近なわけではない。

成功するには手順を守ることはもちろん、在りたい未来の姿を描くことも大切だ。

今でこそ、M&Aという言葉が少しずつ浸透してきた。しかし、具体的なM&Aの進め方を把握している経営者はいまだ多くない。そこで今回は、M&Aの進め方について具体的なステップを解説する。

M&Aの7つのステップ


成功への7つのステップ その目的と注意点とは

①現状把握とビジョンの確認
まずは、譲渡を検討している企業の現状を把握することから始める。創業から現在に至るまでの経緯や成功体験、現在の課題、将来のビジョンとその実現可能性などを詳しくヒアリングし、M&Aが本当に必要かどうかを見極めるのだ。また、この時点で自社の株式価値を知りたい経営者も多いため、簡易的な株価評価を実施することもある。この時、決算書に表れないLPガス事業者ならではの価値を見落とさず評価することが重要だ。

②アドバイザリー契約締結
M&Aを進めると決断した場合、次のステップはアドバイザリー契約の締結だ。業界的には専任契約が一般的だが、委任先の選定は慎重に行うべきである。LPガス業界にノウハウのない支援仲介に委任してしまうと、いつまでたっても良い企業と巡り合えないまま、時間だけが過ぎてしまう。実績やノウハウを確認し、信頼できる委任先を見極めてもらいたい。

③企業概要書・評価書の作成
企業概要書とは、自社の強みや成長の可能性を正しく伝えるための重要な資料だ。決算書の数字だけでなく、事業の特徴や市場での立ち位置など幅広い情報を含めていく。同時に、M&Aを進めた場合のリスクの洗い出しを行う。M&Aのゴールは、成約後の安定した成長だ。だからこそ、税理士、公認会計士、弁護士など専門家と連携し、あらゆる論点から見落としているリスクがないかをこの時点で確認する。そして、M&Aの基準となる株価を算出。評価方法は業界によって異なり、LPガス業界は、収益還元法が一般的である。そして、営業権を顧客件数で割り戻して1件当たりの投資額を明示する。またM&Aで算出される評価額は、相続税評価額とは異なることも覚えておいてもらいたい。

④候補先の選定とトップ面談
企業概要書と企業評価書が完成したら、次は譲渡企業に適した候補先の選定だ。候補先企業には、秘密保持契約の締結後、まずは「ノンネーム」と呼ばれる企業名を伏せた情報を提供する。興味を示した企業にのみ、詳細な企業概要書を開示。質疑応答を経て条件提示を行う。前向きに検討を進める企業が決まれば、次はトップ面談だ。トップ面談は、譲渡企業と譲受企業の経営者が初めて顔を合わせる場である。細かい数字条件の話をすることはなく、企業の文化や理念の相性を確認する時間となる。

⑤基本合意契約締結
基本合意契約は、譲渡企業と譲受企業が初めて交わす契約だ。この時点で、最終契約書に盛り込む内容はできるだけ明記することをお勧めする。「話し合いができていないから、基本合意後に決めましょう」などと先送りしてしまうと、後々のトラブルになりかねない。また、このステップの後、企業の経営状況や財務状況を確認する買収監査を行うが、基本的にはこの時点で公表している情報や取り決めた事項について、理由なく条件変更することはルール違反となるので注意が必要だ。

⑥買収監査(デューデリジェンス)
最終契約を締結する前に、譲受企業がこれまで共有された情報に間違いがないかを最終確認する。M&A成立後にスムーズな引継ぎが行えるよう、譲受企業が全容を把握するために設けられている。譲受企業によっては財務担当や担当税理士、会計士に委託する場合や、全く別の機関に委託するなどさまざまだ。基本的には数十項目~数百項目の質問のやりとりと、その証明となる原本資料の確認、資産の現物確認がメインとなる。

⑦最終契約書の締結・決済・成約式
一般的には、最終契約書の締結と決済を同じ日に行うことが多い。M&A成約式を行い、社員や取引先には計画を立て慎重に開示していくことが求められる。特に、幹部社員や重要な取引先に関しては、不安を抱かせないように丁寧に説明するべきだ。それぞれの思いや考えがあり、デリケートな部分なので慎重に進めることが肝心となる。 以上のように、M&Aにはさまざまなステップがある。小さな認識のずれが、大きなトラブルに発展しかねない。どの工程もおろそかにすることのないよう、一つひとつの手順を守って、大切な会社のM&Aを成功させてほしい。


より良い社会の実現へ 資産の循環を後押し

そして最後に、M&Aを通じて得た資産は、金額の大小に関係なく「より良い社会の実現」に向けた使い道を検討してもらいたい。当社ではM&Aが個人や企業の枠を超え、社会全体に良い影響を与えていくための活動に注力している。例えば、優良企業の譲渡で生み出された資産を、地域社会や文化、次世代企業の発展と関連付けていく活動だ。こうした活動に対して資産を循環させていくことで、世界はより良い社会になると信じている。

M&Aは終わりではなく、新たな日々の始まりだ。だからこそ、M&Aを検討し始めた時から「その先に何をしたいのか」を、具体的に想像していく必要がある。輝く未来のため、経営の選択肢としてのM&Aの正しい知識を身に付け、その可能性を排除することなく、考え続けてもらいたい。

なかはら・としお 慶應義塾大学経済学部卒。2010年みずほ銀行に入行。14年から日本M&Aセンターで事業承継問題に取り組む。中堅M&A仲介企業の取締役を経て22年8月にスピカコンサルティング設立。23年7月にGA technologiesと資本提携。


【再エネ】太陽光のケーブル盗難 業界全体でリスク分担を

【業界スクランブル/再エネ】

ここ数年、銅価格の高騰を受け、太陽光発電施設の銅線ケーブル盗難が相次いでいる。盗難に伴い長期間の運転停止や復旧への経済的負担が増加し、太陽光発電事業の運営面に対する不確実性が高まっている。

6月、「盗難特定金属製物品の処分防止等に関する法律」が国会で成立した。これまでは自治体ごとに条例を制定していたが不十分との声が上がり、新法を制定した。くず買い受け業者の届出や買い取り時の本人確認、取引記録の保管の他、指定犯行用具の隠匿携帯の禁止や金属盗に関する情報周知が義務付けられた。警察や各省庁とわれわれ事業者との横断的で地道な活動が実を結び、おかげで直近のケーブル盗難は大幅な減少傾向になりつつある。改めて関係者に対して敬意を表したい。

一方、タイミング遅れで問題が顕在化しているのは、ケーブル盗難急増の影響により、発電事業者だけでなく損害保険会社にも深刻な損害が発生したことで、これら盗難に関する保険は原則不担保に見直されている点だ。太陽光発電事業の新規開発のみならず既設案件の事業継続も脅かされており、保険引き受けの適正化は太陽光発電事業者にとって喫緊の課題だ。当然、発電事業者などからも保険会社へ働きかけを継続しているが、まだ道半ばである。

今後は、発電事業者の一定のリスク負担により、有効な盗難対策を一層強化し、被害に遭いにくい施設作りを進めるべきだ。同時に、損害保険会社もそうした施設へは盗難を含む保険引き受けを再開するなど、業界全体でリスクを分担していくことが太陽光発電の長期安定電源化には重要と考える。(F)

原発由来だけではない〝核のごみ〟 余剰プル処分を巡る米国の迷走

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

核保有国は核兵器や原子力潜水艦など軍事用の核ごみ処分に手を焼く。

米国では処分先が決まらない核ごみを軍用施設に仮置きしている。

93基の原子力発電所が稼働する世界一の原発大国アメリカ。しかし、その米国でも核のごみ処分を巡っては、日本と同様に最終処分場の建設にめどが立たない状態が続く。 米国は、西部ネバダ州ユッカマウンテンの山中に処分場建設を決め、1978年に調査を始めた。だが地元の根強い反対があり、2008年の米大統領選で激戦区であるネバダ州を制したい民主党のオバマ候補(後の大統領)が、計画撤回を公約した。新たな処分場は設定されないままの状態にあり、7万t以上に達した核のごみは、原発敷地内などに設けたドライキャスクに保管されている。

原潜から取り除かれた原子炉(2024年9月)
提供:米国防総省


軍事専門の核ごみ処分場 MOX燃料への加工断念

米国はロシアと並ぶ核兵器大国でもある。核兵器に使うプルトニウムを製造するため核燃料を再処理、これにより生じた大量の核のごみがある。ただ、処分場は民生用とは切り離し、メキシコ国境に近いニューメキシコ州の核廃棄物隔離試験施設(WIPP)に設けた。

1999年春に操業を始めたWIPPは、フィンランドのオンカロなどと同様に地下地層処分場だ。地下655mの岩塩層が処分場所となる。過去に何度も事故があり、最大だった2014年の事故では放射性物質が施設を汚染する事態にまで至り、3年近く作業中止に追い込まれた。現在の計画では70年まで廃棄物を受け入れ、その後、1万年管理する。

WIPPは、核燃料再処理で発生した半減期が20年よりも長い超ウラン(TRU)廃棄物の処分を想定していた。しかし、時代を経るにつれ、受け入れる核物質の範囲を拡大、最近は核軍縮で余剰になった軍事用プルトニウムも運び込まれている。

米露両国は00年、核兵器削減により余剰となった軍事用プルトニウムについて、核兵器1万7000発分に相当する34tずつを双方が削減することに合意した。核兵器用の高濃縮ウランを希釈して核燃料に使ったのと同様に、軍用プルトニウムも混合酸化物(MOX)燃料にして使うことが決まる。当初は軽水炉での使用を想定していたが、紆余曲折を経て、ロシアはMOXを高速炉の燃料に使うことになった。

米国は南部サウスカロライナ州サバンナリバーにMOX燃料工場の建設を始めた。だが、工期の大幅な遅れや建設費の高騰で計画がつまずく。16年にオバマ政権が建設を止め、翌17年にトランプ政権が計画中止を決めた。代替案として、処分費用が最も安く済むWIPPへの直接処分案が浮上した。 ところが、課題が浮上する。処分場や輸送中に敵国やテロリストなどにプルトニウムが強奪され、核爆弾が製造される事態を阻止する必要がある。そのための手法の検討が進んだ。


プルトニウムを「魔改造」 原潜や空母の処理も課題

米国はプルトニウムに「混ぜ物」をする手法で解決を図ることにした。ただ、この混ぜ物が何であるかは極秘で、詳細は公表されていない。

ロシアは「混ぜ物をしても、核兵器に使えるプルトニウムである点に変わりがない」と批判、米国がプルトニウム削減合意を守っていないとしている。米国が「廃棄」の名を掲げながら、プルトニウムを隠し持とうとしているとの主張だ。

プルトニウムに「混ぜ物」をする作業は、サバンナリバーのMOX工場予定地を再利用した。グローブボックス内で、プルトニウムを10%未満に希釈するため混ぜ物をして小さな缶に詰める。それをドラム缶に梱包し、輸送用のコンテナに詰める。大型トレーラーに載せ、数千㎞も西にあるニューメキシコ州のWIPPに陸上輸送する。

トレーラーは2人乗り。過去にも横転事故など20件もの事故を起こしている。保安対策のため全地球測位システム(GPS)を装着、絶えず衛星が動向を監視しているが、警備車両も付けずに時速約100㎞で単独走行している。米国は長年の間、核物質をこうしたトレーラーでの輸送を続けてきた歴史がある。日本人にとっては意外に映るが、核専門家からは「輸送面で大きな問題が起きたことはない」との評価が定着している。

前代未聞のプルトニウム廃棄輸送は、22年12月に始まった。

だが、トランプ米政権は今年5月になって、突然、方針の変更を打ち出す。同政権は50年までに原子力発電所の容量を4倍増とする新たな原子力政策を発表し、その中で、プルトニウムを重視する政策への変更も打ち出した。余剰プルトニウムの廃棄計画を中止するほか、1976年にフォード政権が核拡散防止のため国内での実施を禁止した民生用の核燃料再処理も再開する考えを示した。ただ、過去にも81年にレーガン政権が再処理モラトリアムを停止した例がある。当時は「採算が合わない」ことを理由に、再処理に乗り出す企業は出なかった。今回は、どうなるのだろうか。

米国など核保有国は、原子力潜水艦や原子力空母の処理・処分にもてこずっている。

原潜は退役が決まると造船所に回航される。まず、原子炉内にある使用済み核燃料を引き抜く。次いで、船体を解体して原子炉を切り取る。米国では太平洋に面する西部ワシントン州の造船所が「原子力海軍の墓場」の役割を務める。取り出した原子炉は前後を密閉した上でバージ(はしけ)に載せ、約1200㎞もコロンビア川をさかのぼり、ハンフォードに運ぶ。86年以後、160基以上の原潜の使用済み原子炉が運び込まれ、野積みされている。

英国では、昨年まで海軍基地2カ所に、初代の原潜を含めて23隻全ての退役原潜が係留されていた。このうち11隻は、使用済み核燃料を抜き出しイングランド北部にあるセラフィールド原子力複合施設に移送した。だが、残りの12隻には現在も核燃料や原子炉も据え付けたままの状態にある。ようやく今年6月に1隻目の解体作業が始まった。

核のごみとの戦いは、民生にとどまらず軍事面でも難航している。

夏場のガス火力低下 議論スルーを直前で回避

【業界スクランブル/火力】

OCCTOが約1年半にわたって議論を重ねた「将来の電力需給シナリオに関する検討会」の報告書が7月に公表された。それによれば、2050年には2300万~8900万kWもの供給力が不足する可能性があるという。25年先の話とはいえ、すでに足元では需給ひっ迫の兆しがあり、大規模な電源開発には着手から10年以上を要することを考えると、残された時間は決して多くない。

しかし、国の対応は鈍い。この検討会の設立趣意書には「ここで策定されるシナリオはエネ基等正式な計画との整合を前提としない」と明言しており、当初から責任回避の余地を残していた。報告書の中でOCCTOは、見直しの時期について3~5年後などと悠長なことを書いている。

さらに、世間ではあまり話題となっていないが、報告書発表の直前になって検討シナリオの信頼性を大きく揺るがす事実が明らかとなった。

原動機にガスタービンを利用するLNG火力は、気温が高くなる影響で夏季に出力が低下する特性を持つが、これまでそのことを考慮していなかったというのだ。修正量は500万~1300万kWに及ぶという。 将来の電力需要や脱炭素技術の進展など不確定要素が多く、とても難しいシナリオ検討であるのは理解できる。だからこそ現時点で分かっている諸元は、なるべく正確にインプットすべきではないのか。報告書に間に合ったので、事なきを得たかに見えるが、火力関係者ならすぐに気が付くような基本的な事項に気が回らなかった事実は重い。メンバー構成の在り方を含め、国やOCCTOには根っこからの見直しを期待したい。(N)

経済多角化に注力するUAE 関係深化へ問われる日本の姿勢

【リレーコラム】山野 総/中東三井物産アブダビ事務所長

三井物産がUAEの首都アブダビに事務所を設けている一番の理由は、1970年代に操業開始したアブダビ国営石油会社(ADNOC)とのLNG事業に参画したことだ。それから50年以上、アブダビでADNOCと協働してきた。長年、パートナーとして真剣に対峙してきた実績も含めた総合評価から、最近では同社が力を入れる脱炭素社会を見据えたクリーンアンモニア製造事業とE―Drive設計を採用した低炭素LNGの生産・販売事業への参画を果たすことができた。

いずれもアブダビから陸路で約2時間半要するルワイス地域での事業となる。ともに昨年最終投資決定がされ、現在建設フェーズだ。強風時の砂嵐に伴う視界不良により工事の中断が発生するなど中東ならではの事象もあるが、ADNOCとわれわれ外国株主がスクラムを組み、そして建設業者と連携しながら計画に則った事業の立ち上げに向けて日々取り組んでいる。数年後の生産開始が待ち遠しい。


エネルギー以外の連携に期待高まる

現在、日本の原油輸入量の半分以上はUAEから供給されている。三井物産はアブダビで原油生産には携わっていないが、アブダビ石油、INPEX、合同石油開発の操業会社のブンドクが当地で長年根を張り原油供給の一翼を担っている。そしてアブダビは長い間、原油を日本に安定的に供給してきたことを誇りにしている。エネルギー供給が原点となって発展した日本・UAEの現在の良好な関係を将来にわたり継続させたいと考えた時、現在の在り方がUAEからの一方通行になってしまっているのではないかと感じる。

UAEは、責任のあるエネルギー供給者として脱炭素事業にも注力しつつ、同時に経済多角化に向け、インフラや農業・食品、ヘルスケア、デジタル分野への投資などに国を挙げて取り組んでおり、多くの米中欧といった各国企業が積極的にアプローチしている。日本企業の進出も聞こえてくるが、まだまだ少ない。特にこの数年、日本企業とこれらの分野での協働を期待する姿勢の強まりを感じている。5月には大規模な経済ミッションを東京に派遣するなど、本気でエネルギー以外のビジネスでのパートナーリングを目指している。

日本がエネルギー供給の観点からアブダビとの関係を重んじ、それに彼らは応えてくれた。今後もこの関係が継続することを信じているが、そのためにも今度は日本がアブダビの期待に応えるべく新たな分野で協力していくことを真剣に考えなければならないし、それを現地で働くわれわれの使命の一つとしなければならないと考えている。

やまの・そう 1998年慶応義塾大学卒、三井物産入社。LNG、排出権、石炭事業に従事し、2009年ブリスベン、20年からアブダビ駐在。

※次回は、国際協力銀行の豊田康平さんです。

【原子力】美浜の建て替え調査再開 迅速な許認可が必須

【業界スクランブル/原子力】

関西電力が美浜1号機の後継機設置に向け、現地調査の再開を公表した。火力は炭素を出し、再エネは天気任せ、蓄電池は高コストとなれば、原子力に頼るしかない。現在、稼働中で最初に炉寿命に達する高浜1、2号機と美浜3号機はいずれも60年運転の許可を得ているが、事業者にとって外的要因の停止期間を除外しても2047年には3基合計248万kWが消え、50年まで運転できない。

後継機の運転開始はいつになるのか。新規建設に要する標準的な年数は、地質調査と基本設計、環境審査と地元了解に5年、設置変更許可と設工認の審査に5年、建設工事に5年で合計15年、実態は20年以上かかる。最近の既設炉の再稼働では、工事が終了し使用前確認を終えても安全協定に基づく地元からの最終合意に追加の時間がかかるが、福井県知事は理解が深く、そう月日を要さないだろう。

問題は規制委の許認可に要する時間である。建設中の島根3号機と大間は変更申請から既に12年経つが、合格時期は見えない。両者の審査は他原発の審査終了を待たされ停滞したが、その審査範囲は新規制基準関係だけで、新増設のフルスコープではない。12年を参考とすれば5+12+5で22年、つまり47年運転開始となる。

後継機は120万kWの革新軽水炉と言われるが、喪失する248万kWの半分に満たない。となれば、着手済みの敦賀3、4号機も必要だろう。米国ではトランプ政権が規制委を改革して新規建設の許認可を1年半で終わらせるよう、大統領令を出した。日本のお手本となるような迅速な許認可プロセスの実現を望むところである。(T)

【石油】需給緩和の気配なし 低い需要見通しにバイアス

【業界スクランブル/石油】

昨秋から世界中の多くの石油研究機関は、今年の原油需給の緩和拡大、原油価格の低下を予想し続けてきた。トランプ大統領の就任で、米国のイラン核施設への攻撃、対露制裁強化など地政学リスクの高まりはあるものの、原油価格は予想外の堅調を保っている。特にOPECプラス有志8カ国の追加減産220万バレル(日量)分の緩和拡大・増産があっても、市場はこれを吸収している。

そのOPECは、8月月報で今年と来年の需要はそれぞれ前年比130万バレルを予想。過去の合意違反国の超過増産分の減産もあるので、需給均衡を失することはないとした。

他方、国際エネルギー機関(IEA)の8月月報は各70万バレル増、供給増加はOPECプラスの増産を前提に今年が210万バレル、来年は130万バレルと予想している。予想通りなら、そろそろ原油価格は暴落を始めていいが、その気配は見えない。

果たして、本当に石油需給は緩和しているのであろうか。IEAは低めの需要見通しの理由として、経済減速、EV増加、効率改善などを挙げているが、そこには脱炭素のバイアスがかかっているのではないか。そもそも、石油需要のピークについて、IEAは2027年としているが、OPECは40年代初めまで伸びるとした。

脱炭素の重要性は認めるが、途上国の経済成長を認めないわけにはいかない。本来、エネルギー安全保障を最優先すべきIEAが、脱炭素を優先することは間違っている。日本の経産省・エネ研を含め、圧倒的に影響力があるIEA月報の見通しがこのようなことでは困る。(H)

【シン・メディア放談】参院選経てカオスの自民党 現実に直面する暫定税率廃止議論

〈メディア人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙

自民党のパワーが衰える中、総裁選の行方、そしてエネルギー政策への影響やいかに―。

―参院選からはや1カ月以上。改めてそれぞれ感想は?

A紙 最終日、参政党の芝公園での演説にはびっくり。選挙の風景が変わったと感じた。他方、最後に自民が踏ん張り、国民民主も意外に伸びた。そして立憲民主は低迷が明らかだ。

B紙 今回も出口調査は当てにならず。午後8時の第一報は「与党過半数割れへ」だったのが、日付が変わるころには「微妙な情勢」となった。なんだかんだで自民は比例で1280万票と国民の1・7倍取っている。

C紙 参政は排外主義や反ワクチン、有機農業推進などウイングを広げて「政治的無知層」を掘り起こした。マスコミはオールド政党が見放された理由をしっかり分析しけなれば、オールドメディア離れもまた加速する。

A紙 兵庫県知事選の経験から、選挙期間中でも真偽不明の言動は臆せず攻めるという姿勢が毎日や東京新聞などで顕著だった。ただ、意外にも読者の中には参政支持者が一定数いるという。

C紙 参政が炎上すると、かえって「既存メディアは敵」と支持者の団結が強まっていったね。また、やはり神谷宗幣代表の話し方が分かりやすい点が受けた。石破茂首相とは対照的だ。

A紙 神谷氏は意識的に話を短くまとめる訓練をしている。

C紙 討論会はそうした違いが如実に表れていた。というか、テレビで各党党首を集めるのはもうやめた方がよい。

A紙 試しに月1000円で参政党員になった人の話を聞くと、日本の歴史だのトランプ政権だのに関するボイスメッセージが毎日届き、イベントも毎週のようにあり、工夫が感じられる。


石破降ろし吹くも次見えず どうなる総裁選

―8月中旬になっても総裁選の行方が不透明だ。

C紙 高市早苗氏や茂木敏充氏、小林鷹之氏、斎藤健氏などの名が挙がるが、誰になっても選挙は勝てない。3連敗は裏金問題のせいで、その震源地の旧安倍派が石破降ろしに騒ぎ、根本的にずれている。むしろ石破政権の支持率は上がってきている。

B紙 今回も自民に入れた1280万が岩盤保守層とすれば、高市総裁などは支持されないはず。それにしても、FIT法を人質に辞任を拒んだ菅直人氏がマシに思えるような宰相が現れるとは……。石破氏は選挙直後落ち込んでいたが、旧安倍派の動きでスイッチが入り戦闘状態に。こんなことなら石破氏は再度総裁選に出ればよい。

A紙 「石破やめるなデモ」が心の支えであるのは間違いない。今の自民には核となる政治家がおらず、このままでは総裁選がないかもしれない。

B紙 五分五分とまではいえないが、その可能性はあるね。

C紙 当選14回の勘で、石破氏がこの流れを読んでいたのならすごい。他方、野田佳彦・立民代表も追い詰められている。得票率は自民以上に落ち、今選挙をしたら自民よりもダメージが大きい。蓮舫氏を比例で擁立する辺り、センスがない。

A紙 立民では票が取れないからと、地方議員がぞくぞく離党している。共産か社民党のような道に入り始めている。

トランプ2.0と国際社会〈上〉 波乱含みのウクライナ停戦

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

石油市場には、供給過剰と需給ひっ迫という相反する要素が共存する。原油(WTI)の1~7月平均は1バレル当たり68.2ドルで昨年通年(76.6ドル)より8ドル低く、IEA(国際エネルギー機関)の最新月次報告によれば、今年の石油供給は昨年比で日量210万バレル増加するものの、需要量は同70万バレル増にとどまり供給過剰が残る一方、地政学リスクが払拭できない。

こうした基調の中で、トランプ関税は今日の原油相場にさまざまな影響を与えている。今年の原油相場で大きく下げたのは、4月2日のトランプ関税発表後、およびイランとイスラエルの「12日間戦争」に米軍参戦後、イランに戦闘能力がないことが明らかになった6月下旬である。WTIでフォローすれば、4月2~4日に約10ドル下げ(72.1から62.4)、6月20~27日には9ドル(75.7から66.7)下げた。

トランプ関税交渉の進展過程では、景気後退懸念と実施先送りが相場を形成した。4月2日の相互関税の発表に対し、各国首脳から同決定は世界経済への大打撃であるとする批判が相次いだが、その後の展開は批判通りの展開となった。

その後、実施日の順延、関税率の下方修正、中国との合意観測予想などが原油相場を浮揚させたが、原油相場は4月2日以前に戻っていない。

関税交渉絡みで次に注目されたのはインドの扱いだった。トランプ大統領は、同国は安価なロシア原油を大量に輸入し転売して利益を得ていると批判し、7月31日付けで25%にすると主張していたが、実際は8月6日の大統領令により27日からインドからの輸入品には合計50%の関税を賦課するとした。

世界は8月、さらに振り回された。ウクライナ戦争に対する米露停戦交渉の進展報道で原油は2カ月ぶりの安値をつける中で、トランプ・プーチン両大統領は15日に対面会合を持つことで合意し、原油価格はさらに急落した。

トランプ大統領は、7月末時点では「8日までにプーチンが停戦に合意しなければ、ロシア原油輸入国に懲罰的追加関税100%を賦課する」と述べていたが、本措置の扱いは不詳である。報じられた「ほぼ現状での固定」では、ウクライナが了解するはずはなく、そのことは属国化を目指すプーチン大統領も同様である。

国際紙の報道ではウクライナ戦争の現状凍結がトランプ提案の骨子となる公算が大きいものの、どのような進展を見せるか予断を許さない。トランプ大統領は13日、「初日の協議での停戦合意は難しい」との見方を示すとともに、2回目がより重要だと話しており、ゼレンスキー大統領を含めた2回目の会談を開く可能性に言及した。

ウクライナ停戦交渉の展開は、英仏独3国が13日、対イラン制裁復活を求めて国連に書簡を送ったこと、及びイランの同措置復活阻止に向けた中露との協力を示唆する対応と併せて、目が離せなくなった。

(須藤 繁/エネルギーアナリスト)

露産原油巡るEUの印制裁は妥当か

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

インドを代表する英字経済誌エコノミック・タイムズは、ウクライナ紛争が勃発して以降、EU(欧州連合)がロシア産のLNGの輸入量を急増させているにも関わらず、インドの石油会社に制裁を課したことについて、その偽善を批判した。

同誌はウォール・ストリート・ジャーナルに次いで世界で2番目に多く読まれている英字ビジネス紙と言われ、紙媒体がインド国内の主要14都市で発行されているのに加え、ウェブサイトはインド国内外から数千万のアクセスを集めるなど、絶大な影響力を誇る。

その8月7日付の記事によると、EUが昨年に輸入したロシア産LNGの量は、2021年に比べ9.6%増加し過去最高を記録。また、今年7月のガスプロムによる欧州向け天然ガス輸出量は前月比で37%増加したと指摘した。その一方で、EUは7月にインドのナヤラ・エナジー製油所(ロスネフチが49.13%の株式を保有)に対し制裁を発動した。その批判は一定理解できるところはあるが、全体像はより複雑だ。

EUは確かにロシア産LNG輸入を増やしたが、パイプライン経由を含めた天然ガス全体では6割以上減らしている。肥料など輸入量がほとんど変わらないものや、鉄鋼やニッケルなど継続して輸入しているものもあるが、全体の輸入額は22年初頭から今年第1四半期にかけて86%減少している。一方、インドのロシアからの輸入額は石油を中心に急拡大し、約8倍に膨れ上がった。

米国のトランプ大統領は、インドがロシアから石油などを輸入していることを問題視し、合計で50%となる関税を課す大統領令に署名。印米関係は危機的な状況に陥っている。インドのエネルギー戦略は今後難しいかじ取りを迫られそうだ。

(大場紀章/ポスト石油戦略研究所代表)

【ガス】国民・参政が躍進 どうなる選挙後のエネ政策

【業界スクランブル/ガス】

今回の参院選は物価高対策を争点に始まったが、後半に入ると外国人問題が活発に取り上げられた。日本が抱える問題は、経済の成長戦略、少子化対策、対米・対中などの外交問題、原発を含むエネルギー政策、財政健全化など、多岐にわたるはずだ。目先の物価高対策を論じて消費税減税などを提起することはまだ理解できるが、欧米などに比べて移民が少ない日本において外国人問題が大きなイシューになったことは残念だと言わざるを得ない。

選挙を経て、次はガソリン暫定税率の廃止や消費税減税などが焦点となるだろう。私感だが、一度でも減らした税金を元通りに復活させることは極めて困難だ。決して賛成できる政策ではないが、減税などをせずに税収入を維持しながら給付金などを「バラまく」方がまだマシではないか、と考えてしまう。

一方、エネルギー会社にとって今後の政策で注目すべきは再エネの動向である。今回大躍進した参政党は公約において「再エネの推進中止・賦課金廃止」をうたっている。再エネ賦課金廃止は国民民主党も同様の意見だ。目先の国民負担を減らすべく再エネ賦課金をなくしても、その部分を他の財源で賄う必要があり、結局は何らか別の国民負担が増加する可能性もある。

第7次エネ基に明記されたが、DXやGXが進む中で電力需要増加が見込まれている。「再エネか原子力か」といった二項対立的議論ではなく、再エネと原子力を共に最大限活用していくことが重要だ。エネルギー政策は短期でコロコロと変えるものではなく、長期的視点に立つ必要があると肝に銘じて、冷静に議論を進めてほしいものだ。(Y)

供給力確保の義務化巡り 小売事業者に動揺

【業界スクランブル/新電力】

7月に開かれた制度設計ワーキンググループで提言された、小売事業者に供給力確保を促す仕組みが物議を醸している。当局による発電事業者に対する監督が功を奏し卸電力市場の価格高騰局面が激減したため、小売事業者が市場調達比率を高めた矢先の相対調達比率義務化の提言である。小売事業者に動揺が走るのも無理ならざるかな、である。

発電事業者からすれば、火力燃料の太宗を占める天然ガスは、ロシアのウクライナ侵攻以降高止まりであり、卸市場での販売では逆ザヤである。容量市場や長期脱炭素電源オークションなどの固定費回収スキームが整備されたとて、可変費回収スキームの確保は喫緊の課題である。当局の指示に従い供給力を提供し続けた結果、卸市場価格が下落し自身の経営基盤を脆弱化させる事態となるのは看過し難く、適正価格での売電先を保証してほしいといったところか?

本件の根底には、限界費用が極めて安価であるが不安定な太陽光と、価格は割高だが安定電源である火力・原子力の両立という、電力システム改革の根源に係る課題がある。この課題解決には、小売事業者・発電事業者双方の努力が不可欠であろう。従って当局が小売事業者にのみに制約を課すのでは不十分である。

発電事業者には、卸販売における公平性・透明性の徹底ならびに、卸販売メニューの多様化(日中は太陽光活用を推進し、夜間帯のみの卸販売メニューの新設など)を求めたい。小売事業者にも、今回の提言を機に、蓄電池を活用した太陽光発電所とPPAを推進するなど、ピンチをチャンスに変えるような行動が求められよう。(S)