NEWS 01:革新的な電力流通モデル開発 NTTなど再エネ接続後押し
NTTアノードエナジーなど8社はこのほど、配電網の潮流データを分析し、電流容量の増加や電圧上昇時に蓄電池制御を一体的に行う、革新的な電力流通モデル「Internet ofGridプラットフォーム(IoGプラットフォーム)」を開発したと発表した。スマートメーターで系統電流や電圧などを計測し潮流データを分析。配電網の容量を超過する場合があれば、余剰分の電力を蓄電地へ充電し配電網の負担を抑える仕組みを実現した。これにより太陽光などの再生可能エネルギーを配電網に接続しやすくする。
実証試験で使う蓄電所の一つ(八百津町)
提供:NTTアノードエナジー
IoGプラットフォームのスマートメーターは、従来型とは異なり、通信部に新たな機能を搭載できる「サービス基盤」を内蔵する。HEMS(家庭用エネルギー管理システム)を介さずに家庭の機器と直接接続することも可能だ。電気給湯器やEV充電器などの需要家リソースを直接制御し、再エネの発電量に応じた運用も展開できる。
同社はこの一連のシステムを一般送配電事業者などに販売するほか、自ら配電事業を手掛ける際に利用することも視野に入れている。実用化に向けて同社は今年9月から約3カ月間、岐阜県八百津町で実証試験を行う。同町とNTTの施設に5台のスマートメーターを設置し、電圧上昇時に蓄電池へ充電されるかを確認する。再エネ普及を後押しするカギとして、同モデルの実用化に期待がかかる。
NEWS 02:第5回の先行地域決定 3年目で案件80超到達
環境省が9月下旬、「脱炭素先行地域」の第5回選定結果として新たに9提案を追加すると発表した。取り組みが3年目を迎える中、これで38道府県108市町村の82提案となった。2025年度までに少なくとも100か所という目標にあと数回の選定で到達する見込みだ。
今回選定されたのは、①北海道厚沢部町、②岩手県陸前高田市、③岩手県釜石市、④三重県度会町、⑤神戸市、⑥広島県東広島市、⑦山口県下関市、⑧福岡市、⑨長崎県五島市―。例えば五島市では、洋上風力などの立地が進む中、地域が系統末端部に位置するため、地域全体で出力抑制回避に向けた策を講じる。地域新電力がダイナミックプライシングを活用した再エネメニューを創設。加えて系統混雑緩和に向け、新設アグリゲーターがデマンドレスポンスを行う。これらに伴う風力発電事業者の収益を地域に還元する狙いだ。非化石価値のマネジメントや地産地消も促す。
評価委員会は、第5回の総評の中で、地域の脱炭素の取り組みが着実に広がり、先行地域などで目標前倒しの動きもあると指摘。例えば千葉市は、公共施設の電力消費に伴うCO2排出量実質ゼロ目標を、30年から26年に前倒して達成する見通しだ。この施策を機に、「計画に記載されている以上の取り組みが加速し、地域脱炭素の政策として位置付けられていくことは大変意義深い」と強調した。
一方、自然・生活環境への配慮の不足や、営農型太陽光で肝心の農業生産をないがしろにするといった再エネトラブルは拡大傾向にある。これについては、「先行地域のように、地域の実情を把握している地方公共団体が主導し、地産地消型、地域裨益型の再エネ導入を推進することが重要である」と訴えた。
NEWS 03:「高レベル」の青森県搬入 宮下知事反発の背景は
「理解も協力もできない」
電気事業連合会が9月10日、フランスからの放射性廃棄物返還に関する新方針を青森県に伝えると、宮下宗一郎知事はこう一蹴した。
日本は使用済燃料の一部を、英国とフランスの工場に委託して再処理している。その際に発生した放射性廃棄物は返還され、日本原燃の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ケ所村)で保管する。
フランス分についての高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体1310本)は、2007年までに12年かけて返還が完了した。今回焦点となったのは低レベル放射性廃棄物だ。その数、およそ1800本。日仏事業者間の交渉で設定した返還完了期限は33年だが、8月に貯蔵管理センターのしゅん工時期が26年度へと2年以上延期。過去の国際輸送実績を踏まえても33年までの返還は困難だ。
そこで電事連は、高レベルのガラス固化体約20本に交換した上での搬入を青森県に申し入れた。この「交換返還」はすでに英国分で実績がある。体積や輸送回数が減る一方で、放射線の影響は等価。貯蔵管理センターの貯蔵量低減や最終処分場の規模縮小にもつながる。
宮下知事は強い拒否感を示したが、実は英国分の交換返還の際も事業者の申し入れから約半年後に三村申吾知事(当時)が了承した過去がある。宮下知事は昨年6月の就任以来、むつ中間貯蔵施設の事実上の操業容認など原子力政策に協力的な姿勢を示してきた。複雑な県民感情が絡み合う問題だけに、今は〝小休止〟が必要な時期なのかもしれない。
とはいえ仮に宮下知事が了承しても、貯蔵管理センターが原子力規制委員会の審査に合格する必要が……。いばらの道は続きそうだ。
NEWS 04:WANO総裁に小早川氏 廃炉への取り組み評価か
世界原子力発電事業者協会(WANO)は9月30日、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで開催した隔年総会で東京電力ホールディングスの小早川智明社長を総裁に選出した。
WANO総裁に就任した小早川智明氏
提供:東京電力ホールディングス
WANOはチェルノブイリ原子力発電所の事故を契機に1989年に発足した。緊密なコミュニケーションにより、原発の安全性と信頼性を最高レベルに高めることが使命だ。東電ではかつて91~93年に那須翔元会長が総裁を務めたが、それ以来の就任となる。現在、CEOには関西電力出身の千種直樹氏が就任しており、理事会のメンバー3人のうち2人が日本人に。小早川氏は東京で予定されている2026年の隔年総会に向けての準備を担当する。
就任あいさつで小早川氏は福島第一原発の現状を説明した上で、「26年の隔年総会では福島第一の視察ツアーを企画している。皆さんには、ぜひ福島の復興状況や廃止措置の状況を視察していただくことを望む」と次期総会への展望を語った。
原子力が専門の学識者は小早川氏の総裁就任について、「東電が行う福島事故の原因究明、廃炉作業から多くの知見が得られ、世界の原発の安全性を向上させている。小早川氏の総裁就任はこうした姿勢が認められている証左だ」と分析。国内では批判の矢面に立つことが多い東電だが、国際的には廃炉への取り組みが評価されている。