【JERA 奥田社長CEO兼COO】時代の変化に合わせ新たなモデルを模索し 地方創生にも本腰

脱炭素への現実的な歩みを着々と進めつつ、急拡大するDX需要に応えるべく、新たな供給モデルを提案する。

GXによる地方創生にも本腰を入れ、エネルギー事業者という殻を破りつつある。

【インタビュー:奥田久栄/JERA社長CEO兼COO】

おくだ・ひさひで 1988年早稲田大学政治経済学部卒、中部電力入社。グループ経営戦略本部アライアンス推進室長、JERA常務執行役員、取締役副社長執行役員などを経て2023年4月から代表取締役社長CEO兼COO。

井関 6月下旬の会見で、地方創生・ 産業高付加価値化と一体となるGX(グリーントランスフォーメーション)開発に向けた新たな試みを発表しました。まさに産業政策とエネルギー政策は絡め合いながら考えるべき問題であり、注目しています。

奥田 例えば英国は製造業主体から、金融とデジタル主軸のモデルに脱皮し、エネルギーは原子力と再生可能エネルギー、天然ガスで賄い、電気料金が上がってもこの産業構造で世界と伍していく戦略です。われわれも相応のコストがかかる脱炭素を現実的に進めていくには、環境価値の高いエネルギーを使っても競争力が落ちないような産業・社会構造の変革が必須です。そして、GXは地域の関係者との連携なしには成し遂げられないと思います。

井関 洋上風力や水素・アンモニアの拠点で地域の産業振興を図る方針ですが、具体案は?

奥田 地方創生や工業地帯の再開発とセットで、各地域のニーズをくんだGXで地方も潤う流れを定着させたい。既に、各地には付加価値の高い製品が存在します。一から新しいモノを作るのではなく、既存のモノを適切な価値で売れる仕組みづくりが有効ではないか、という仮説に基づき、今後ショーケースを順次お見せする予定です。

例えば当社の洋上風力開発拠点である秋田県は魅力的な食の宝庫ですが、国内ではその利益が地元へ十分に還元されていません。日本で売られている日本酒が、欧州などでは数十倍で売られていることがあり、その差額は欧州側の利益となります。マーケティングやブランドストーリーの工夫によって、利益が日本の生産者に還元される仕組みを作り上げることが必要です。その点、ピュアな地産地消のクリーンエネルギーである洋上風力を使って製造し、付加価値をさらに高めれば良い循環が生じるのではないか。また、人手不足の問題には最新のデジタル技術による支援も考えています。

井関 地方創生を重視する現政権の方針にも合致しますね。 奥田 地方で開発した再エネの電気を全て東京に持ってくるという昭和のモデルのままでは、地方で持続的な雇用が生まれません。これでは地方での再エネ開発は行き詰まるでしょう。


着々と火力リプレース 袖ケ浦はアセス準備中

井関 それにしても今年は6月から連日の猛暑続きで、需給への影響が懸念されます。元々、端境期は定期点検中の火力が多いですが、足元の運用ではどんな工夫を行っていますか。

奥田 ここ数年、夏の需要ピークが早まる傾向にあり、冬もピークが早まる、あるいは長期化しています。定検の時期をなるべく前倒し夏冬フル稼働できるよう工夫していますが、それでも需給が厳しくなる場面があります。一方で再エネが大量に普及し、出力変動に応じて日常的に火力の起動停止を行っており、それに伴って故障が増え、計画外停止につながっています。古い設備はどうしても金属疲労が起きやすく、リプレースを着実に進めることがやはり重要です。JERA設立以降、リプレースを経て営業運転に至った設備は700万kW以上、計画中も含めると1000万kW以上です。多くが計画より前倒しで運開し、需給ひっ迫の際には試運転の設備も含めて供給力としてできる限り提供してきました。

リプレースが完了した五井火力

井関 再エネの拡大により、火力の運用は様変わりしましたね。

奥田 五井や姉崎はコンバインドサイクル発電ですが、ガスタービン単体のシンプルサイクル運転も可能で、実はこれがミソ。太陽光の出力変動に合わせる上で、スチームタービンも動かすと迅速性に関しては劣ります。供給力としての役割はもちろん、しわ取りとしてのガス火力の機能をフルに発揮できるよう、時代に合った火力発電所に変えていくことを意識しています。

井関 デジタル技術の活用にも力を入れていますね。

奥田 起動停止が頻発する中、機器の傷み度合いを正確に把握することが重要です。「予兆管理」と呼んでおり、AIで予兆を見つけ、早めに部品を交換することで計画外停止を防いでいます。こうしたDPP(デジタルパワープラント)化は、姉崎など最新鋭設備から導入し、徐々に拡大しています。

井関 6月中旬には袖ケ浦のリプレースに向け環境アセスメントの準備を開始。2032年度以降の運開を目指しています。

奥田 運転開始から50年たち計画外停止の蓋然性が高まる中、現役で稼働する2~4号機の計300万kWを260万kWの最新鋭に入れ替えました。引き続き安定供給に貢献していきます。

井関 近隣では東京ガスの袖ケ浦火力の新設も進行中ですが、今後両者が連携する可能性は?

奥田 今はまだそこまで考えていません。アセスの準備を始めたばかりで、その結果を踏まえてから、さまざまな可能性を考えることになるかと思います。

揺らぐ日本人の常識 エネルギー巡る犯罪が多発

【今そこにある危機】石井孝明/ジャーナリスト

在留外国人の存在がエネルギー産業に新たな課題を突き付けている。

企業はどのようにリスクを管理し、共存の道を模索すべきか。

日本に住む外国人の数が増えている。在留者は昨年末の時点で、約376万9000人と前年比10%増で、過去最高になった。彼らの行動が、これまでの日本で通用した常識では想定できない形で、エネルギー産業に影響を与え始めている。

けんかで集結した中東系外国人(埼玉県民提供)


電気を止められて放火 海外では「盗電」も

4月4日の早朝、東京電力パワーグリッドの山梨総支社甲府事務所が放火された。犯人は電子レンジを投げて窓ガラスを破り、灯油を浸した布を投げ込んだ。幸いなことに、火は広がらず、けが人はいなかった。警察が防犯カメラの映像を追跡したところ、犯人は南アルプス市で飲食店を経営するスリランカ人だった。料金未払いで電気を止められたことに腹を立てたという。この男の自宅では大麻が見つかった。

日本の電力会社は顧客に優しく、なかなか電気を止めないので逆恨みの可能性がある。この程度の動機で犯罪に走るのは異様だ。この犯人が「外国人だから犯罪をした」と、差別的なことを言うつもりはない。しかし外国人全てが善人ではないし、「日本の常識を知らない人がいる」ことは念頭に置いて向き合った方がいいだろう。

日本の太陽光発電は事業に容易に参入でき、管理が各所で放置されている。そしてここ数年の金属価格の高騰で、そこから銅の電線を盗む事件が多発している。その実行犯、また買い取りをする古物商が外国人である例が多い。例えば5月に茨城県警が逮捕した事件では、同県在住のタイ人3人が太陽光発電所のケーブルを1年にわたって盗み続け、被害総額は4億円程度になった。

建設業・解体業でも、外国人労働者が目立つ。そして外国人の運転免許の取得が容易になりトラックを動かしている。そんなトラックには多くの場合、缶から車のタンクに液体を入れる石油ポンプが見られるとの指摘がある。

灯油は軽油より税金が安い。灯油でディーゼルエンジンを動かせるが、エンジンを傷め有害ガスが出やすくなる。これまで日本では、石油業界と警察の努力でそうした自動車への灯油の使用は減った。しかし外国人が値段の安さのために、やっているらしい。

ただし外国人問題を批判的に取り上げると、人権問題として批判を集めかねない。一例を示そう。埼玉県南部には、トルコ国籍のクルド人が集住し、迷惑行為で地元住民とトラブルになっている。メディアは報道しないが、SNS主導で社会に知られ話題を呼んだ。

IoT活用の独自手法を構築 低コストな水素量産に挑む

【技術革新の扉】廃棄物水素化技術/BIOTECHWORKS―H2

複数素材から構成される廃棄物は従来、再資源化が困難とされてきた。

廃棄物の水素化技術は、これらの課題の突破口になり得る。

廃棄物から水素に変え、あらゆるごみを「資源」にする―。一見、荒唐無稽にも思えるようなこのアイデアを実現すべく奔走するのが、2020年に創業したスタートアップ、バイオテックワークスエイチツーだ。代表取締役の西川明秀氏はこれまで、アパレルのODM・OEMを手がけ、サステナブルな素材の開発に注力してきた。

長年同業界に身を置く中で、強く問題意識を抱いていたのが、処理困難な廃棄衣料の急増だった。ポリエステル、ナイロン、コットンなど、複数素材から構成される衣類は分解が難しく、大半がリサイクルされずに焼却されるか海外に送られる。この現実を前に、「廃棄される衣類を水素に変え有効活用できないか」と考えた西川氏は共同パートナーを求め渡米。現地で技術開発と実証を進めてきた。

廃棄物前処理の最適化図


水素生成には前処理が必須 低負荷へ「燃やさずに」処理

廃棄物はプラント内で溶融され混合ガスとなる。細かな不純物を除けば、ガスは主にCH4(メタン)、H2O(水蒸気)、CO(一酸化炭素)から構成され、このメタンと水蒸気に熱を加えることで水素を取り出す仕組みだ。これらは吸熱反応であるため、高濃度の水素を生成するには、プラント内を一定の高温に保つ必要がある。ただ、成分が不均質な廃棄物をそのままガス化すると、温度の安定維持が難しく、水素の収率が低下してしまう。つまり、効率的な水素生成には、溶融の前段階で廃棄物の成分を均質化し、安定させる「前処理」が不可欠となる。

この工程において、同社は独自開発のIoTプラットフォームを活用する。廃棄物をシュレッダーにかけた後、デバイスで成分分析を行い、AIが最適な組成バランスを計算。そのデータをもとに、廃棄物を効率よく処理できるようブロック単位に分類する。さらにプラントでガス化する前に混合処理を行い、再度成分を分析して最終調整を施す。この一連の工程により、安定したガス化反応と効率的な水素生成が可能になる。

この前処理工程の構築ついて、西川氏は「廃棄物処理を担う事業者は処理の効率性を追求するため、成分分析の工程に割けるリソースは限られる。その中で当社はいかに安く、大量の水素を作り出すかを重点目標に据えていたため、同工程に投資することができた」と説明。誰も手を出せない領域にこそ、大きなチャンスがある―。こうした信念の元で積み重ねた試行錯誤が実を結んだ形だ。

また、同社のプラントはCO2排出量の低減にも寄与する。前処理から水素化までのプロセスにより、焼却処理と比べて最大80%のCO2排出削減が可能とされている。また、発生したCO2はドライアイスや飲料用途などへの転用も検討されており、低環境負荷な水素生成モデルの構築が進んでいる。「従来のように燃やすのではなく、『燃やさずに活用する』というアプローチにこだわっている」と西川氏は強調する。

eフューエル用途の水素製造も視野に入れる


紆余曲折を経た道のり 次は国内での商用化実証へ

ここまでの道のりは、決して平坦ではなかった。水素化プロジェクトを立ち上げた当初、国内で共同パートナーを探すも、事業の難易度の高さから門前払いされる日々が続いた。それならば国外で進めるしかないと、コロナ禍の2020年に渡米。現地で200社以上にアプローチし、プラント会社との提携にこぎつけた。実証は提携先が所有するガス化溶融炉を活用しながら、一連の工程を細分化して進めた。それぞれのパートで想定される技術課題を一つひとつ確認し、検証と改良を進める地道なプロセスだった。

こうした経緯から、これまでは米国を拠点に開発と検証を行ってきたが、次のフェーズでは、日本国内でのフルスケール商用化実証に移行する。現在は国内での提携先を拡大しており、27年内の実証完了を目指す。また、将来的にはeフューエル用途の水素製造も視野に入れる。

西川氏は今後に関して、「ゆくゆくは47都道府県すべてに当社のプラントを展開したい。資源の乏しい日本だからこそ、廃棄物を水素という形で再資源化する技術は一層重要になる」と意気込む。同社の挑戦の先には、持続可能な社会の未来像が浮かび上がっている。

地熱発電に高まる期待 導入拡大への課題は

【多事争論】話題:地熱発電のポテンシャル

地熱発電の次世代技術早期実用化へ、官民による議論が活発化している。

実現性に疑問の声も上がる中、今後重視すべき視点とは。

温暖化と資源問題の解決手段に 若年層への訴求が普及の鍵

視点A:江原幸雄/NPO地熱情報研究所代表・九州大学名誉教授

「地熱発電(地下から取り出した高温・高圧の蒸気によってタービンを回して発電)」は、多くの関係者が期待するほどには進展していない。日本の地熱発電が始まって60年近く経過しているが、発電所の出力規模が1万kW以上(1万kWで約2万世帯を賄える)の地熱発電所は20カ所程度ある。

さて、国内地熱発電の可能性を開くためにはいくつかの課題がある。まず、「自然公園・温泉地域」との競合による不都合の解消。わが国は火山が多く地熱資源(世界3位)に恵まれ、また地熱開発技術も世界の先進国であるが、国内設置の地熱発電設備容量は約55万kWで世界10位、電力シェアは0・3%で、政府の2030年度導入計画150万kWに対し、現在の達成率は37%と、十分には進んでいないのが現状だ。原因として、自然公園内の地熱開発に環境省の協力や地元の合意が得られず、調査断念に至る例が少なくないことなどがある。加えて、地熱発電の利点(国産、安定性、環境性、経済性など)が国民に十分に理解されておらず、国内のエネルギー問題やグローバルな地球温暖化問題において、「地熱発電が解決手段になり得る」ということが、国民に十分に浸透していないことがある。


明らかになった超臨界流体の存在 想定出力は1000万kW以上にも

次世代地熱発電「超臨界地熱発電」の実現も重要である。火山の近くにある従来の地熱資源は浅部(地表~地下数100m)に「温泉帯水層」がある。ここから温泉水が取り出される。その下にある中浅部(地下数100m~3㎞)には「地熱貯留層」があり、ここから高温熱水・蒸気が生産され、通常の地熱発電(1万~3万kW)に利用されてきた。さらに、より深部(3㎞~10㎞)に高温の岩石が溶けた「マグマ貯まり(800~1200℃)」がある。マグマ貯まりの熱を利用する「マグマ発電」はさらに先の将来に向けた課題だ。(なお、わが国ではマグマ貯まりから熱抽出を行う「坑井内同軸熱交換器(DCHE)」がすでに開発されている)

そのような中で、ここ10数年、「地熱貯留層」と「マグマ貯まり」との間(3~7㎞)に、高温・高圧(温度400~600℃、圧力300~500気圧)の超臨界流体の存在が新たに知られるようになってきた。アイスランドでは、掘削によって400℃を超える岩石の微小粉体を含んだ流体が噴出した。わが国でもこのような流体を利用した「超臨界地熱発電」の開発が進行しており、日本列島の火山下に10個以上のこのような「超臨界地熱資源」が存在し、超臨界流体の水熱力学的高特性と規模の大きさから1カ所当たりの出力は10万kW程度と推定されており、日本の活火山を120個とすれば、総出力は1000万kW以上が想定される。

一方、国内地熱発電を大きく開くために、技術の進歩だけでなく、地熱発電の国民へ周知、特に若者への期待がある。以下では若者の活動が比較的短期間に国外あるいは国内の注目を浴びた2例を紹介する。1例目として「スウェーデンの女性環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの活動」がある。当時8歳であった21年に気候変動問題を知り、女性学生環境活動家になり、国内だけでなく、国連はじめ、世界各国で地球温暖化問題の解決を訴え、それまで保守派から、むしろ否定されてきた「地球温暖化問題」を、「個人の危機感」から、一気に「人類共通の危機感」へと引き上げ、世界の人たちに問題解決の重要さを広めた。2例目として「10~20代の日本の男女学生活動家16人による火力発電の停止を求める集団訴訟」がある。日本の若者は、24年8月、気候変動の悪影響は若い世代の人権を侵害しているとして、CO2排出量の多い火力発電事業者10社を相手取り、CO2排出量を削減するよう求めて名古屋地裁に提訴した。判決はまだ出ていないが今後日本各地の裁判所でCO2排出量削減の判決が出ると期待できる。

さらに、日本政府の誤った地球温暖化対策を抜本的に変える可能性が十分にある。地球温暖化が急激に進む中で、人類の苦難を解決する「脱炭素化」。また資源小国ゆえ、国際紛争の影響を受け続ける「資源の安定確保」の課題にさらされ続ける日本。だが、日本にはそれらの問題解決手段として「地熱発電」がある。この重大な事実を国民に浸透させることで、これらの問題に立ち向かうことができる。

なお、地熱発電に関する詳細を述べられなかったが、疑問に関しては以下を参考にしていただければ幸いだ(地熱エネルギーの疑問50、日本地熱学会編、成山堂書店、2022年10月発行)。

えはら・さちお 北大大学院博士課程修了後、北大助手、九大助教授、教授を経て2004 年工学研究院教授、12年年退職。その間日本地熱学会長2期、国際地熱協会(IGA)理事2期歴任。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年7月号)

GX-ETSと民間クレジットの関係/濃縮ウランの調達先

Q 改正GX推進法の成立を受け、排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務化される中で、今後のボランタリークレジットの位置付けや民間で活用されている現状にどのような影響を与えるでしょうか。

A 来年度から本格稼働するGX-ETS第2フェーズの具体案に関して検討を行っていた「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ」は昨年12月、「法定化後の制度においては、海外ボランタリークレジットの活用は認めず、J-クレジットやJCMの方法論拡大を優先して進めることで、(DACCS、CCSなどの)先進的な技術の導入インセンティブを高めていく」とし、ボランタリークレジットの活用は認めないことにしました。

GX-ETSの2023~25年度の第1フェーズでは、自主的な枠組みであることを踏まえ、DACCS、BECCSなどの将来NDC達成に貢献し得る方法論による民間クレジット(ボランタリークレジット)の活用も一部許容されていたのが、第2フェーズでは変更になりました。

ただ、DACCS、CCSなどに関する海外ボランタリークレジットは、現時点ではまだ実際に適格になったものがなく(国内では、Jブルークレジットが適格になっています)、この需要がなくなったとしても、ボランタリークレジット市場への影響はほとんどないと考えられます。

世界のボランタリークレジット市場をみると、21・22年をピークに取引量も発行量も大きく減少している一方で、償却(活用)量はほぼ変わらないことから、ボランタリークレジットへの需要自体は堅調と見られます。償却されるクレジットは、再生可能エネルギーと森林・土地利用が大部分を占めていますが、再エネは減少気味です。

回答者:田上貴彦/日本エネルギー経済研究所気候変動グループマネージャー


Q ロシアによるウクライナ侵攻後、世界の濃縮ウラン調達先はどう変化しましたか?

A 2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、原発用の濃縮ウランをロシアに依存する危険性が認識されましたが、調達先の変更はあまり進んでいません。

原発の燃料製造には、ウラン濃縮が必要です。天然ウランは、核分裂して熱エネルギーを放つウラン235の含有量がわずか0.7%であり、残りは核分裂しないウラン238で構成されます。235を238から分離し、割合を3~5%に高めて核燃料にします。このウラン濃縮で、ロシアの原子力国策会社「ロスアトム」が45%の世界シェアを持ち、他国産への切り替えは容易ではありません。

特に危機感が強いのが米国です。数々の制裁をロシアに科してきましたが、原子力分野は例外でした。濃縮ウランの25%を依存しているためです。昨年8月、米国はロシア産ウラン輸入禁止法を施行し同時に濃縮ウランでロスアトムに次ぐ世界シェアのウレンコ(英独蘭の連合事業体)に、米国本土内での濃縮ウランの増産を要望しました。

今後は小型モジュール炉など、次世代炉用の高純度低濃縮ウラン(HALEU)の国際競争が激しくなりそうです。HALEUは現行の通常原子炉用に比べ、特殊な工程が必要です。米国は将来をにらみ、HALEUの自給体制構築を急いでいます。

こうした動向は日本にも影響を与えます。日本はロシア産に依存していません。また、世界市場には進出していませんがウラン濃縮技術を有しています。ウラン濃縮には遠心分離機が必要で、自前の分離機で濃縮を行っているのは世界でロスアトム、ウレンコ、日本原燃のみです。米国は今後、日本原燃にも協力を求めると予想され日本の濃縮技術が世界進出する可能性があります。

回答者:小林祐喜/笹川平和財団安全保障・日米グループ主任研究員

【需要家】若者の環境意識に変化の兆し 行動促す体験を

【業界スクランブル/需要家】

消費者を対象とした環境意識調査では、若年層ほど環境への関心が低いという結果がしばしば見受けられる。これは、若年層が中高年層に比べて社会問題への関心が低いことが一因と考えられる。一方で、近年は環境教育の充実により若者の意識にも変化が生じている可能性も考えられるが、実際のところはどうなのだろうか。

筆者は昨年、大学生数名と環境意識について意見交換を行う機会があった。その中では、気温上昇など気候変動の影響を実感し、不安を抱く声が多く聞かれた。また、身近な範囲で省エネ行動を実践している学生もおり、若者が気候変動に無関心というわけではないことが把握できた。

一方で、「自分一人の行動では何も変わらない」との声もあり、環境・エネルギーといったグローバルな課題が自分事として捉えられていない実態も浮かび上がった。

博報堂生活総研のコラム〈「若者論」座談会~大学生篇~〉では、大学生へのインタビューを通じて、環境問題は「自分が少し気を付けた程度では解決しない」といった意見が紹介されている。また、30年前の若者と比べて、現在の若者の方が環境配慮行動への意識が低下している傾向が示されており、大きな社会課題に対する無力感が以前より強まっている印象を受ける。

ただし、大学生との意見交換の場では、サークル活動などを通じて気候変動への関心や知識を深めている学生もいた。これは自身の体験が環境意識の変化につながる好例であり、今後は若者が気候変動をより身近に感じ、自らの行動と結びつけられる体験の場の提供が重要になると考えている。(K)

【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る

飯倉 穣/エコノミスト

1、テーマ選択の不思議

猛暑が続く。参院選があった。公約は、憲法・外交安保、経済財政、社会保障、多様性等で、各党各様である。その中で耳目に届く主張は、「物価問題、給付か減税か」という争論だった。

報道もあった。「参院選公示20日投票 石破政権を問う 物価高対策 現金給付か減税か」(朝日25年7月4日)。「与野党「分配」鮮明に インフレ対策現金給付や減税訴え 社会保障改革保険料減や年金底上げ 規制改革や貿易成長戦略乏しく」(日経同)。選挙中報道は、主として物価を追いかけた。物価問題の基本を考えた場合、この話題の選択と各党主張は、如何だろうか。金融政策不全、国債残高、財政赤字で困窮する国が、借金で散在する。賢明な大人の候補者の主張なのか。この風景を見て国が壊れると嘆息する著名ジャーナリストもいた。

改めて、選挙を巡る経済論議の低調さ、現在も継続する物価問題の扱いとあるべき政策を考える。


2、物価・賃金・成長率の状況

近年の物価の動きをどう捉えるか。それが政策立案の前提である。輸入物価、企業物価、消費者物価、賃上げの動きの再確認が必要だ。今次の状況は、コロナ中のロシア侵略・エネ資源価格上昇に始まる。

輸入物価指数前年比(2020年=100、円ベース)は、20年△10.3%下落後、ロシア侵略ウクライナ戦争で21年21.6%、22年39.1%と高騰した。その後エネ価格の落ち着きで23年△4.7%、24年円安で2.7%だった。25年に入り第1四半期△0.5%、第2四半期△10.0%と低下した(契約通貨第1四半期△0.6%、第2四半期△4.6%)。つまり21年、22年のエネ・資源価格に起因する上昇が一段落し、為替の影響も小幅で、安定化している。

この効果で企業物価指数前年比(同)は、コロナで落ち込んだ後(20年△1.2%)、21年4.6%、22年エネ価格の影響で9.8%と上昇、23年4.4%、24年2.3%と沈静化した。ただ本年に入り25年第1四半期4.2%、第2四半期3.4%と水準が高い。要因は円安の他に有りそうだ。

消費者物価はどうか。総合指数前年比は、20年0.0%、21年△0.2%の後、エネ価格等上昇で22年2.5%、23年3.2%、24年2.7%だった。その後25年第1四半期3.7%、第2四半期3.4%と高めで動いている(生鮮・エネ除く総合25年第1四半期2.5%、第2四半期3.0%)。つまり22年以降エネルギー・食料関係で上昇し、その後、加えて工業製品等の値上げの影響が続いている。

賃金はどうか。民間主要企業の賃上げは、20年2.0%、21年1.86%、22年2.20%の後、23年3.60%、24年5.33%、25年は5.25%(連合7月3日集計結果)と直近3年間高率だった。政経労の合言葉「物価見合いの賃上げ」の影響が大きい。

そして経済成長率は、依然低迷している。実質GDP前年比は、20年コロナで落ち込み(△4.2%)、その後21年2.7%、22年0.9%、23年1.4%、24年0.2%、25年度政府見込1.2%である(名目20年△3.3%、21年2.5%、22年1.3%、23年5.5%、24年3.1%、25年度政府見込2.7%)。

物価対策の基本は、この指標の関係をどう見るかで方向が決まる。

事業承継を軸に業界再編加速 長期戦略見据えた課題とは

【論点】LPガス業界のM&A〈前編〉/中原駿男・スピカコンサルティング代表取締役

LPガス業界では昨年、大型のM&A案件が相次ぎ、この流れは今後も続くと予想されている。

円滑な事業承継に何が必要か。M&Aコンサルのスペシャリストが3回にわたって解説する。

2024年、LPガス業界は顧客件数が1万件を超える企業の譲渡が相次いで行われた。過去10年を見た時に、顧客件数1万件超え企業の譲渡は1年に1社、もしくは2年に3社程度のペースであった。しかし、昨年は6社がM&Aを選択。事業承継だけの理由ではない、長期戦略のためのM&AがLPガス業界にも到来したと言えるだろう。こうした業界進化の兆しはありつつも、未だ後継者不在による事業承継型M&Aが件数の大多数を占めていることに変わりはない。そして、今後も水面下でM&Aの件数は増え、業界再編は加速していくであろう。

LPガス事業の経営者がM&Aを検討する上で、取引先卸との関係を懸念することは想像に難くない。しかし、これ以外にもこの業界のM&Aには他業界とは異なる特徴がいくつかある。今回はLPガス業界のM&Aの特徴と難しさについて解説していく。

LPガス業界のM&Aが活況だ


空前の売り手市場 他業種上回る営業権相場

まずM&Aの手続きや進め方は、業界によって大きく異なることはない。しかしながら、M&Aは案件ごとにぞれぞれの事情や目的があり、一つとして同じものはないという認識を持つべきだ。

業界の特徴や担当する会社・経営者の特性を踏まえて、円滑に交渉が進むようあらかじめ議論となりうる論点を整理してまとめていくのが実績のあるM&Aコンサルタントである。M&Aの目的を達成するための最善の判断をしていくには、やはり経験と業界の知識が不可欠だ。LPガス業界のM&Aは他業種と比べていくつか特徴的な点がある。

現状のLPガス業界のM&Aは空前の「売り手市場」であり、買い手である譲渡先候補は実に多い。また、LPガス事業はもともと粗利率が取れて安定性も期待できることから、常に新規顧客獲得コストが高騰していた。だからこそ営業権の相場は他業種の常識をはるかに超えるものとなっている。

こうした事情を知らずに一般的な営業権査定を行うと、業界内の「相場」を大きく下回ることになるだろう。M&Aスキームについては「営業権譲渡」や「事業譲渡」が耳馴染みある言葉かもしれない。この二つは売り手の事業の一部または全部を売却するという意味で、実質的には同じだ。事業承継の方法には、商権譲渡を含む事業譲渡のほか、会社分割や株式移転・株式交換などがある。

LPガス販売店、とりわけ小規模店では、従来型の「顧客1件当たりいくら」の商権譲渡や事業譲渡が大半だ。新規獲得時の単価が営業権相場に影響するのである。さらに、顧客数を前提とした譲渡契約であるため、譲渡後に顧客減が生じると譲渡対価の返金スキームが発生する点も業界特有のアクションだ。また、営業権に対するLPガス事業以外の収益の影響が小さいのも特徴だ。

こうしたことは、業界を知らなければ分からないことであり、売り手と買い手双方に理解を得る営業権査定が難航する要因となる。他にも、LPガス販売業は販売登録や業務に各種の資格が必要であることから、同業者、とりわけ取引先卸会社に譲渡することが他業種に比べて極めて多く、反対に、他業種とのマッチングの事例はほとんど見られない。 いずれにしても、こうしたLPガス業界のM&Aで特有とされる事柄の多くは、過去から長く続いた「顧客1軒いくら」という卸会社による商権買収が事業承継の主流であることに起因している。とはいえ、時代は変化しており、こうした価格設定や習慣は見直すべきタイミングが来ていると考えている。


中立的な条件の調整 欠かせない仲介者の存在

卸会社と小売販売店とが密接な関係にあれば、事業承継についてまず取引先の卸会社に相談することが浮かぶかもしれない。しかし、現実はそう簡単ではない。もちろん、長年取引をしてきた卸会社にそのまま進むことは、卸と小売りの関係性的にも、円滑な引継ぎという点でも優先すべき相手である。

ただ、売主の希望と卸の希望は必ずしも一致するものではない。例を言うと、売主は法人そのものを残したい要望が一定ある。従業員の雇用はそのまま守られ、かつ株式譲渡スキームであれば金融所得課税の優遇を受け取れる。

一方で、卸先は近隣に拠点を持っているが故に、顧客のみを受ける商圏買収を希望することが多い。卸会社側はコストを抑えることができ、かつ営業権を償却することによって将来的な節税にもつながる。さらに言うと、売主がLPガス事業以外の事業を営んでいたり、会社とオーナーが資産の持ち合いをしていたりする場合は、必ずしも卸先がその事業や資産を受けられるとは限らない。こうした場合は、複雑な会社分割スキームを要し、卸先以外の候補先の条件を見た方が結果的に満足のいくM&Aにつながる。

ほかにも、中小企業では、経営者やその一族など関連当事者との取引が多くあり、中立的な視点から条件をまとめる仲介者=アドバイザーがいなければM&A話を進めることが困難を極める。特に中小規模の会社では、経営者が会社の課題に対して全て一人で対応しているというケースも少なくない。 いざM&Aを進めるとなれば、煩雑で膨大な事務処理も発生する。それを経営者とともに判断し、処理していくアドバイザーの存在は、小規模企業であれば不可欠と言えるだろう。

なかはら・としお 慶應義塾大学経済学部卒。2010年みずほ銀行に入行。14年から日本M&Aセンターで事業承継問題に取り組む。中堅M&A仲介企業の取締役を経て22年8月にスピカコンサルティング設立。23年7月にGA technologiesと資本提携。

【再エネ】法案成立も課題山積 EEZでの洋上風力推進

【業界スクランブル/再エネ】

今国会でいわゆる「EEZ法案」が可決成立したことを受け、次の段階はJOGMECがEEZの中から特定海域を選定し、セントラル調査を行うことになる。その海域は国による入札海域になり、どの海域が選ばれるのか注目されている。EEZに大型発電所を設置するのは日本人にとって未体験の領域であるため高いハードルを乗り越えながら進むことになる。

第一のハードルはコストだ。浮体、電力ケーブル、洋上変電所、施工、メンテなど着床式に比べればかなり高価になると予想され、コスト低減のための技術開発や制度の仕組みなど知恵を絞らないといけない。第二に、EEZは領海と違って国際法が支配する公海である。経済的利益が沿岸国に帰属するに過ぎない。日本ができることは国際法に根拠があることだけである。

EEZの境界は、日本の国内法で中間線理論に基づき決めているが、中間線理論は海洋法に記述がなく判例である。中間線理論を認めない国もあり、またEEZの境界は国同士の条約で決めよと国際法にあるが日本はどの国とも条約を結んでいない。尖閣、竹島、沖ノ鳥島など領土の所有に関して日本とは異なる主張をする国があり、その領土が形成するEEZはとても危険だろう。

また国際法上対等な権利を持つ者、例えば科学的調査を行う中国公船などとは外務省を通じて政府間で調整しなければならない。国際法上対等な権利を持たない者は、最終的には海上保安庁に出動してもらい実力で排除する。共同漁業区域がないので、遠くから魚を取りに来る漁業者1人ひとりと個別に補償交渉しなければならない。などなど、解決すべき課題は多い(Ⅰ)

【火力】予備電源制度の迷走 委員らは本質無理解

【業界スクランブル/火力】

国が検討を進めている「予備電源制度」が迷走している。資源エネルギー庁は、応札上限価格を従来の2倍に引き上げる案を示し、清水の舞台から飛び降りるような覚悟を見せているが、制度設計の根幹にある本質的な課題には手が付けられていない。このままでは、発電事業者の理解は得られないだろう。

制度設計に携わるエネ庁や有識者の中には、「非常時にしか使われない予備電源が、常時稼働を前提とする容量市場の電源より高値で落札されるのはおかしい」との認識があるようだ。しかし、これは予備電源の本質を理解していない証左である。

予備電源とは、災害などによる電力需給のひっ迫に備え、平時には停めている設備を短期間で再稼働できるよう維持しておくものだ。稼働しないことでコストを抑える一方、実際に稼働することになれば、通常の設備より発電コストが高いので停めてあるのだ。さらに、長期間の休止に伴う不測の不具合による追加コストの発生リスクも不可避だ。

つまり予備電源は「いざという時の保険」であり、平時には費用を支払って待機させ、必要時には割高のコストでも稼働させるという〝二重構造〟を理解しない限り、妥当な制度設計は望めない。

ところが現行案では、制度の複雑化を避けるあまり事後清算を認めず、発電事業者にも需要家にもリスクばかりが目につく設計となっている。 上限価格を2倍にしても応札がなければ、「応札を強制する規制が必要」との声が上がる。実運用への無理解を棚に上げ、制度の不備を是正することなく強権的手段に頼ろうとする姿勢には、強い懸念を抱かざるを得ない。(N)

日本での最終処分地選定は難航 幻の候補地に見る技術的課題とは

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

フィンランド、スウェーデン、カナダ、米国、そして日本―。

〝核のごみ〟の最終処分場を巡る世界の動向を3回に分けて紹介する。

核のごみは、高い放射線を持つため、放射線量が安全なレベルに下がるまで10万年以上の長期間にわたり人間が居住する環境から隔離することが好ましい。プルトニウムなど原爆の材料となる物質も含まれているため、テロリストの襲撃や強奪から防ぐ防護策も必要となる。

これまで、さまざまな処分法が考案されてきた。だが、海洋投棄や南極への投棄などが禁じられ、宇宙空間への投入も安全面やコスト面がネックとなる。現在は、地下への深層処分が最善と位置付けられている。

核のごみの処分法と問題点

日本は1976年に地層処分研究を開始。旧動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構=JAEA)が北海道幌延町や、岩手県釜石市などで地層処分の手法を探った。

政府は2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)」を制定、最終処分地の選定を担当する原子力発電環境整備機構(NUMO)を設立した。17年には、処分場としての適否を示す「科学的特性マップ」を公表、自治体に応募を呼びかけている。

北海道西部の積丹半島に近い神恵内村と寿都町の2町村が20年に、佐賀県玄海町が24年に手を挙げた。NUMOは10前後の自治体が立候補することを期待している。


北海道は足踏み状態 幻の最終処分地構想も

調査は3段階ある。最初の文献調査は2年間で、論文などで候補地周辺の火山の状況や、断層などを調査する。20億円の補助金が自治体に交付される。次の段階に進むには地元自治体の長だけでなく、都道府県知事の同意が必要となる。2段階目は概要調査。4年間かけボーリングや地質・地下水の状況を調査する。70億円が交付される。最終段階は14年かけて実施する精密検査で、地下に調査用施設を整備し岩盤や地下水の動きをチェックする。

NUMOは24年11月、文献調査の報告書を初めてまとめた。寿都町全域と神恵内村南端の一部、両町村の沿岸海底で第2段階の概要調査に進めるとする内容だった。だが北海道の鈴木直道知事は、処分場を受け入れない条例があることを理由に「現時点で反対」と表明。足踏み状態が続いている。この3町村以外でも、長崎県対馬市や島根県益田市が、文献調査への応募を検討したが、市長や知事の反対表明を受けて断念している。

日本最東端の南鳥島
出典:小笠原村ウェブサイトより

選考作業が進まない状況を受けて、選考手法の見直を求める声も上がる。4月25日に開かれた経済産業省(経産相の諮問機関)総合資源エネルギー調査会の特定放射性廃棄物小委員会では、委員が「国が新たな方向性を示すべき」と提案した。ただNUMOには、国が主導する形での候補地選定は「世界各国での失敗の歴史を繰り返すだけ」(幹部)との思いが強い。フィンランドやカナダなどが選定に成功したのは、手を挙げた自治体との粘り強い交渉を重ねた経緯があり、NUMOはこうした手法が「最善」と考えている。

「10年ごとに浮かんでは消える」。そう原子力関係者が呼ぶ幻の最終処分地構想がある。東京都小笠原村の南鳥島だ。太平洋上に浮かぶ島で、日本最東端に位置する。一辺2㎞ほどのほぼ正三角形状の島だ。無人島だが、現在、海上自衛隊、国土交通省、気象庁の職員が交代で勤務。戦前に整備した滑走路や港湾があり、輸送機なら東京から片道約4時間、船舶なら横須賀から片道4~5日の距離にある。

処分地になり得るのか。NUMOは、陸地面積が島全体でも1・51㎢という点が難点と見る。ガラス固化体を船で持ち込み、島の地上施設で、金属製容器に納める作業を実施することになるが、安全面に配慮すれば1~2㎢ほどの敷地が必要とされる。また、島の外側はすぐに深さ約1000mの断崖絶壁に。地下300mに設置する地下施設は、約6~10㎢の敷地が必要となるが、これを確保できない。


シェール技術を活用 安全面などで課題山積

ただ、解決策がないわけではない。石油や天然ガスを掘削する手法を援用して地上から2~5㎞の深層部にまで縦穴を掘り、そこに埋める手法だ。深層ボアホール処分と呼ばれる。米国ではシェールガス・石油掘削と同様の手法を使い、2㎞ほどの深さに掘った上で水平に横穴を掘る手法も提案されている。

メリットは、坑口の面積が1㎢程度と小さくてすむこと。深層処分地の建造には数十年単位の時間がかかるが、5年以内で済む。デメリットもある。深くなるほど、大口径でのボーリングが難しい。石油・ガス掘削は直径22㎝の管を使うが、放射性廃棄物を詰めたキャニスターは直径30㎝以上ある。穴の口径は40㎝以上が望ましい。そうしないと、キャニスターの口径を小さくする必要が生じ、1基当たりの容量が減る。キャニスターの数が増えればコストが上がる。

安全面でも課題がある。廃棄物から出るガンマ線は、薄いキャニスターだと透過し、作業員が被爆する。狭い穴を通すために肉厚を減らすことはできない。また、地表から2㎞以下が最善とされる処分深度に達しない時点で、キャニスターが引っかかって動けなくなる懸念もある。破損して、放射性物質が漏れれば大事となる。

南鳥島でこの方式による処分を採用した場合、「数百本の縦穴を500m間隔で掘る必要がある」と専門家は見ている。ただ、日本には、まだ大口径掘削技術はまだ確立されていない。

【コラム/7月22日】2025年度第1四半期の制度設計の振り返りと今後の展望

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

今年も、毎年の恒例行事のごとく夏の電力需給を気にする季節に突入した。猛暑かと思えば、線状降水帯が発生するような天候悪化や台風の発生など不安定な状況にあるが、現時点(7月18日)で電力需給ひっ迫や大きな災害、長時間停電に至ってはいない状況にある。

一方で、エネルギーに関する制度設計については、GX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画が閣議決定されてから4ヵ月ほど経ち、少しずつ具体的な検討が始まりつつある段階だ。  天気同様に不安定・不確実性が増す中で、まずは第1四半期(4月~6月)の動向を振り返り、その後で今後の展望について触れていきたい。


四半期での動きは相変わらず多い状況

毎年、四半期の区切りにおいて、顧客向けのレポートで国内の四半期制度動向を整理・配信しているが、改めて4月から6月の3ヵ月で検討・審議、実行された政策や制度は非常に多く、複雑怪奇さがより一層増していると感じる。

特に今年度については2月にGX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画が閣議決定された関係で、その内容を意識した議論が追加されている。昨年度は、ちょうどこの時期に各政策の議論に着手されたが、政策を作っても具現化されなければ意味がない。実現のためには、切れ目なく検討を続けなければいけない。

また、6月には通常国会が閉会された。当初予定していた法案のうち、太陽光パネルのリサイクルについては内閣法制局との法案調整がつかずに見送りとなったが、その他の施策については全て可決し、法律が公布された。具体的な制度設計は後述するが、足元・将来双方に関わる議論や審議や決定が順次、行われている。

入札や公募関連では、長期脱炭素電源オークションの第2回入札や非化石価値取引市場の24年度第4回入札の結果が公表された。前者では、容量ベースで新たに追加された既設原子力発電の安全対策投資が、件数ベースで活況している系統蓄電池が大宗を占めた。後者では、高度化法の義務達成に向けた年度最終入札であったことから、非FIT非化石証書の買い入札が多かったこと、さらに例外措置としてのFIT非化石証書による代替措置が行われた。また、公募では脱炭素先行地域の第6回募集の結果が公表され、7件が選定された。これで計88件となり、目標の100件まで残りわずかとなったことから、おそらく次回10月の公募で一旦、募集が終わるのではないかとの声もある。

【原子力】ベトナムが原発輸入計画 日本は優位性を失うな

【業界スクランブル/原子力】

南シナ海を巡り中国と対立するベトナムは、日本に対して好意的な感情を持っている。2002年に原発導入の検討を始め、09年に南部のニントゥアン省に第1原発としてロシアから2基、第2原発に日本から2基を導入すると表明した。16年に両計画とも中断したが、その理由は財政難、対外債務などとされる。

そのベトナムで昨年、実質トップに就任したトー・ラム共産党書記長の経済成長政策の下、再び原発建設計画が動き出した。今年4月に国家電力開発計画を改定し、原発建設の再開方針を示した。ニントゥアン第2原発2基の輸入先が日本なのは変わらないと考えるが、既に第3国による売り込み攻勢は始まっている。訪越のため到着した飛行機内での様子が話題となったフランスのマクロン大統領は5月、90億ユーロの協力協定を結び、その中には原子力協力が含まれると報道されている。これに先立つ2月には、小型モジュール炉(SMR)を提案する韓国が原子力を含む経済協力の協定に署名したという。一方、4月に訪越した石破茂首相の共同記者発表の中に原子力への言及はない。

日本は過去に原発輸出案件がいくつかあったが一度も成功していない。ベトナム政府は先進的で安全性の高い原子炉の提供とファイナンスへの協力、燃料の安定的な供給、放射性廃棄物の処理・処分方策への支援などを求めているようだ。巨大津波の経験から外部事象対策を強化した日本の設計は、同じく海岸に立地するベトナムの原発建設に役立つに違いない。ニントゥアン原発の優先権を失うことのないよう、官民が協力した取り組みを期待する。(T)

トランプ政権で鉱業活性化の動き 米国が秘める「底力」に注目

【リレーコラム】河口光康/Cosmo E&P USA Inc.Chief Executive Officer

ドナルド・トランプ氏が再び米大統領に就任してから100日が過ぎた。「一貫性がないことで一貫している」との批判を浴びつつ、外交・通商・移民、さらには気候変動対策に関する諸政策は、協調的な国際秩序とは相容れない方向へと急速に傾きつつある。

こうした変化は、国際企業の投資戦略にも徐々に影響を及ぼし始めている。とりわけ、自由貿易を基盤にしてきた多国籍企業にとって、米国市場の「信頼性」が揺らいでいることは看過できない。私自身も現在、3度目の米国駐在として、EV(電気自動車)用電池の正極材であるリチウム資源の探鉱・開発に携わっており、この事態は決して他人事ではない。

一方で、こうした混乱の中にこそ中長期的な投資機会が潜んでいる、との見方も少なくない。とりわけ、重要鉱物(クリティカルミネラル)やレアアース(希土類)といった戦略物資は、脱炭素と地政学の交差点に位置付けられ、いまや国家安全保障の対象でもある。例えばリチウムの処理においては、中国が世界の70%以上のシェアを占めている。トランプ政権は、精錬工程を含めた供給網の国内回帰を掲げており、規制緩和や資金支援を打ち出している。

もっとも、米国の鉱業は1950年代の全盛期を過ぎて以降、長く衰退の道をたどってきた。新規鉱山の開発許認可には平均10年以上を要し、環境規制や先住民族との協議も不可欠である。

加えて、同政権による連邦政府の人員削減が、現場での開発許認可にさらなる遅れをもたらすとの懸念も強い。こうした不安定さがあるにもかかわらず、国内鉱業の活性化に向けた議会・官民の関心と支援の規模は、過去に例を見ないレベルに達している。資本と技術の両面で、長期的な協業の機会が着実に芽吹きつつある。


戦略眼が問われる時

政権の性質や社会の分断を理由に米国への関与を控える動きもあるが、私はむしろ、同国が持つ資源と制度の底力にこそ、今あらためて目を向けるべきだと感じている。

トランプ氏の任期は残り3年半。次世代の交通動力源が内燃機関から何へと移り変わるのかを判断するには、10~15年というスパンが必要だ。私たちが取り組むリチウム探鉱開発も同様である。

目先の混乱に惑わされず、10年単位の大局でこの国の政策動向と自社の立ち位置を見定めること―。経営者の戦略眼が、まさに試される時だろう。

かわぐち・みつやす 1993年筑波大学卒、コスモ石油入社。石油貿易事業に従事し、米国は2000年ニューヨーク、05年ロサンジェルス、24年ヒューストンと、通算10年間駐在。

※次回はINPEXの高橋功さんです。

【石油】堅調な原油価格 直前の水準が参院選に影響か

【業界スクランブル/石油】

5月22日の燃料油補助金の制度変更後、同月26日の1週目ガソリン小売価格調査では4・5円の値下げ、6月2日の2週目調査では3・3円の値下げと、政府の意図通り順調なスタートを見せた。

ところが、たまたま5月22日の改定時、14日の米中関税協議の合意により世界経済の後退は限定的だとして、原油価格が前週比2・4円上昇。政府の5円値下げ分と合わせて、1週目で補助額が7・4円となり、補助上限10円まであと2・6円になってしまった。小売りの値下がり効果もあって、2週目の補助金は1円増、おそらく4週目で限度額10円の上限に達する。その後は、ガソリン・軽油の場合、旧暫定税率廃止の実施まで10円支給が続くが、小売価格は原油価格と為替次第で上下することになる。問題は、7月の参院選前のガソリン小売価格だ。原油価格水準が選挙結果に影響するかもしれない。

さて、その原油価格はというと、WTI先物が60ドル台前半で上下している。世界中の関係者が原油需給の緩和・値下がり予想をしている割に、原油価格は堅調だ。石油を敵視するIEAも5月の月報では、今年の世界需要の増加予想をわずかに上方修正したが、意外にも需要は底堅いのかもしれない。

OPECプラス全体としては従来の協調減産を維持したが、有志8カ国が予定の3倍以上の自主減産緩和(増産)を3カ月連続で打ち出したのも、その自信の表れか。サウジがイランなどの合意違反の増産にいら立ち、長期の原油低価格にも対応可能・原油価格下支えの意思はないとしたのも気になるところ。

国内価格の点でも、原油価格から目が離せない。(H)