需要伸長で電力融通実施 供給力潤沢な関西で何が


8月26日午後、関西電力エリアに対し、中部電力エリアから最大111万kWの電力融通が実施された。想定を上回る高気温に伴う需要増に電源トラブルが重なり、需給がひっ迫する恐れがあったためだ。同エリアは原子力が全7基体制となり供給力は潤沢のはず。なぜこのような状況に陥ったのか。

日本卸電力取引所の発電情報公開システムによると、確かに、同エリアでは前日正午に南港発電所(LNG、60万kW)が停止していたほか、同日には、赤穂1号機(石油、60万kW)、姫路第一5号機(LNG、約73万kW)などが出力を下げて運転していた。

今年6月には下げ代不足に陥る事態も
提供:アフロ

同日の最大電力は午後2時台に記録した2627万kWで、ピーク需要で想定する水準だった。それにもかかわらず、エリア内の予備率が安定供給に必要とされる3%を一時的に下回り、発動指令電源の発動などの追加対策を講じたものの、需要の伸びに追いつけなかった。

実は、6月1日には気温下振れや需要減により下げ代不足に陥り、中部・中国エリアに送電することで需給バランスを保つという逆の事象も起きていた。電力業界関係者は「原子力が正常化した関西は電力価格が安く、通常の取引により他エリアに多くの電力が流れることが常態化している。そのために、突発的な需要増や電源脱落に対応するための調整力を、送配電事業者が域内で調達しづらくなっているのではないか」と、こうした事態の背景を推測する。

計画外停止も一定数起きている中、供給力に問題はないのか―。一抹の不安がよぎる。

一本道にならないC‌N戦略 e―メタンの高い潜在力に期待


【論点】e―メタンの実現可能性/古関惠一・茨城大学教授

e―メタン(合成メタン)が熱分野の脱炭素化の鍵として期待されている。

現時点で社会実装のリアリティをどう見るべきか。

昨今は、企業によるカーボンニュートラル(CN)関連のロードマップ作成や各種研究開発の動きの中で、e―メタンをはじめ合成メタンを絡めたものに注目が集まっている。本稿においては、そのリアリティについて言及したい。

e―メタンとは、再生可能エネルギーから生成した水素と、大気中や産業プロセスから回収したCO2を触媒の化学反応を用い、熱バランスを考慮しつつ一つの生成物として合成するメタンのことだ。化学的に天然ガスと同じ成分であり、既存のインフラを利用でき発熱量管理などにおいても心配がない。

太陽光や風力などの再エネ由来の電気を使って水を電気分解し、水素を得ることが本線となる。それよりもコストが安いのがリファイナリー(精製)水素と呼ばれるもので、昨今のカラー分類では化石燃料由来で「ブルー水素」とも呼ばれている。

もう一方の原料となるCO2は、工場や発電所などの排ガスから回収される。私が所属する茨城大学のカーボンリサイクルエネルギー研究センターでも取り組んでいるが、空気中から直接回収するDAC(Direct Air Capture)も、回収手段の一つとして研究が進む。

e―メタン実用化への取り組みが加速している


CN達成に貢献 レジリエンスなど課題も

e―メタン導入のメリットは、何と言ってもCNへの貢献だ。e―メタン燃焼時に排出されるCO2は、生成時に回収したCO2と相殺されることになるため、実質的な排出はゼロとなる。また、既存のガスインフラを利用することで新規の投資を抑えられるほか、国内生産することでエネルギーの自給率向上と安定供給にも貢献できる。さらには、発電、暖房、燃料など、天然ガスと同様に幅広い用途に利用でき、大口需要があることでスケールメリットを出せる。

一方で、課題もある。その一つが製造コストだ。現時点では再エネやCO2回収コストが高額であるため、それに応じてe―メタンの生成コストも既存の都市ガスに比べて相当高い。経済的な大量生産を実現するためには、水素や回収ユニットの技術開発でさらなるイノベーションが必要となるだろう。

コスト面の課題と比較すれば軽微かもしれないが、水素生成やCO2回収のプロセスにおける副産物の処理を含め、環境負荷が生じる可能性があることにも留意が必要だ。また、エネルギー供給に求められる強靭性(レジリエンス)の観点から、南海トラフ地震や首都直下地震、富士山噴火といった異常時、緊急時の備えとして戦略的防災対策を講じることも、今後課題となっていくだろう。


原理上、炭素原子は平等化 パラダイム変化に高い関心

高コストとの認識が持たれている現状では、投資前の「Get Ready」戦略の一角であり、R&Dフェーズでは基盤技術を企業間で共有化する動きが強い。必要性が高まった段階ではじめて企業として大きな投資判断が行われ、中期経営計画にも盛り込まれることになる。

また、それと異なるイシューの議論のフェーズとして政治的に扱われる側面が強く、国際的議論も巻き起っている。イノベーションの成功や低コスト化を前提としたロードマップが要求されるが、日本の場合は、自前の再エネが少ないという特殊事情が加わるため、右から左に作成できるものではない。なかなか一本の道にならないのが、目下のCN戦略のリアリティだと言える。

現実を改めて意識すれば、技術的な課題だけではない本当のイシュー・問題も内在している。

不慮の事故に対応するための水素社会を志向しつつe―メタンをさまざまにポートフォリオに入れることで、大規模水素の利用や災害に対するプラスがある。例えばエネルギー供給側では常に作法として考えられる「Business Contingency Plan」(BCP)としての潜在力も、計画の中では肯定的に解釈され得る。それだけ、2030年、50年に向けた議論の振れ幅と不確実さがもともとある中では、より現実的な目線や水素直接利用ではないパラダイムチェンジ展開の側面も用意周到にしておく背景もある。

事実、水素もe―メタンも再エネのキャリアとして再エネを変貌、変容させるものであり、CCUS(CO2の回収・貯留・利用)との絡みを整理した上で、どちらが優位であるか、対比した上で決定するという戦略的思考になることも推察されるので、舞台表と楽屋裏の双方での思考がされよう。

最後に、e―メタンは炭素が付いている水素であるだけに、言ってみればさまざまな炭素原子が再び権利を持ち、その炭素原子が由来にかかわらず平等化される原理であるとも言える。エネルギー供給側はやがて、発想できるさまざまな可能性から社会実装の変化(すなわちリアリティの変化)を深く認識する機会を持つことになるだろう。水素からe―メタンと聞くと、この“パラダイム変化”に、筆者は深い興味を抱く。

e―メタンは『時代のキーワードになる資質を持つと見られる』とは言い過ぎだろうか。熱分野の脱炭素化は電力分野よりもハードルが高く、e―メタンはこの分野において格別な潜在力を持つ上に、リアリティについても期待度が高い。今後の議論の推移を見守る必要がある。

こせき・けいいち 1990年東京大学大学院 工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。東燃ゼネラル石油で戦略企画部長などを歴任し、17年にJXTGエネルギー・フェロー。24年から現職。

再処理工場「27回目」の竣工延期 耐震設計見直しで認可なるか


日本原燃の足踏み状態が続いている。原燃は8月29日、「今年度上期のできるだけ早期」としていた六ケ所再処理工場の竣工時期を「2026年度中」に延期すると発表した。27回目の延期となる。

原因は審査の長期化だ。事業変更許可は20年7月に取得したが、現在は2回目の設計および工事計画認可(設工認)の審査が続いている。原燃は8月の審査会合で耐震設計を最新データに基づいたモデルに見直し、建屋や機器、配管などを全て再評価する方針を示した。26年3月頃の審査終了を見込む。

記者会見する日本原燃の増田尚宏社長(8月29日)
提供:時事

再処理工場は06年、操業手前となるアクティブ試験を開始。ガラス固化設備で不具合が生じたが、13年に社内で安全運転と性能の確認が終了していた。だが同年12月に新規制基準が施行。アクティブ試験から審査へと、時計の針が一気に巻き戻されてしまった。

再処理工場は原子力発電所に比べて、審査する設備が多い。また日本に一カ所しかなく、原発のように前例が積み重なるわけではない。とはいえ、すでに事業変更許可申請から10年以上が経過。地元からは「新たな工程を示されても信頼できない」(宮下宗一郎・青森県知事)、「遺憾の一言に尽きる」(戸田衛・六ケ所村長)などと辛辣な声が上がるものの、発電所の審査同様、規制の在り方を疑問視する声は少数派だ。

地元から聞こえる「またか」の声と、思うように進まぬ審査─。試練は続くが、再処理工場の竣工・操業はわが国の原子力政策の要だ。原燃の努力はいつ実を結ぶのか。

都市ガス事業者の新発想 意外な事業で社会課題解決へ


【業界紙の目】黒羽美貴/ガスエネルギー新聞 編集部記者

本業の都市ガス事業に加え、社会課題解決や地域活性化に向けた新事業に挑む事業者が増えている。

魚類の陸上養殖やキャンプ場運営など、意外な取り組みが注目を集めている。

都市ガスの小売り全面自由化から8年が経つ中、都市ガス事業者は本業の枠を超えたさまざまな事業に挑戦している。その多くは、ガス事業と親和性の高いリフォーム事業や電力事業などだ。また、空き家の管理や買い物代行といった、人口減少や高齢化など地域課題に対応した新事業が組成されるケースも増えている。

武州ガスはウナギの陸上養殖に参入


都市ガス×陸上養殖拡大中 環境配慮型で挑戦

こうした事業以外にも、一見ガスとは関係がなさそうな魚類の陸上養殖を始めている事業者もいる。

東邦ガスは日本水産の協力のもと、2021年からLNGを海外から受け入れている知多緑浜工場(愛知県知多市)でトラウトサーモンの陸上養殖の実証実験を行っている。この養殖の特徴はLNGの未利用冷熱を使っていることだ。この基地では海水でマイナス162℃のLNGを気化している。LNGを温め、温度が下がったこの冷たい海水はこれまで利用されていなかったが、20度以上になると成育が難しくなるサーモンの養殖にぴったりということで、活用することになった。22年6月からは「知多クールサーモン」という名で、地元スーパーや自社ウェブサイトで販売している。東邦ガスでは養殖事業の本格運用に向け、今秋に大型水槽を完成させる予定で、今後水揚げ量を60tにまで増やす目標を掲げている。

海から離れた埼玉県の武州ガスでも、22年6月にウナギの陸上養殖を始めた。本社がある川越市はウナギ料理の名店が多く、その周辺地域では川魚料理の食文化が根付いているが、これまで県内ではウナギ養殖が行われていなかった。そこで同社では名物のウナギの地産地消に貢献するため、東松山市で養殖を開始した。県内企業と業務提携して、地下水を循環利用する独自のろ過システムを用いて排水量を最小限に抑え、システムの電力の一部を太陽光発電で賄い、環境に配慮した施設で養殖している。

昨年7月には、「武州うなぎ」という名で大手EC(電子商取引)モールで販売を開始。かば焼きや、それを刻んだ商品を冷凍状態で届け、ボイルなどすればすぐ食べられる。23年度は約4・2万尾を飼育し、約2・4万尾を出荷した。

同社では当初より、東松山産の養殖ウナギを使った食事を出す直営の飲食店も構想していた。そこで今年9月から11月に期間限定で、川越市内に武州うなぎを使った商品を出す飲食店を試験的に出店する。なお、同社が20年から取り組んでいる農業事業で栽培している地元米と武州うなぎを合わせて、武州ガスオリジナルの「うな丼」を作ることを目指すという。

実は農業事業も好調で、23年度のコメの収穫量は約41tに上り、8月中旬に完売した。今年度はさらに栽培面積を増やすそうだ。コメ不足が叫ばれる中、農業事業にも追い風が吹いているといえそうだ。

そして静岡ガスでは、今年11月にコンテナを利用した陸上養殖システムを使ってハタ科の高級魚・ヤイトハタと海ブドウの養殖を試験的に始める。場所は同社の静岡支社内(静岡市駿河区)だ。世界的に懸念される人口増によるタンパク質不足への解決策として、また地域への新たな食の提案を目指す。来夏には地元の飲食店やスーパーに出荷予定だという。試験養殖の結果や需要を探りながら、魚種の拡大や、設備の拡張を検討していく。エネルギーの有効活用の観点から、同社の発電所近くにこの養殖システムを設置して、熱源を発電所の排熱に切り替えることなども考えているという。

【コラム/10月4日】台湾有事は日本のエネルギー有事 化石燃料インフラの強化が急務


杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 

ウクライナの戦争では、互いのエネルギーインフラが攻撃対象になっている。台湾有事になれば日本も戦争に巻き込まれる可能性が高いが、その時は、日本のエネルギーインフラも攻撃対象になるだろう。どのようなことがありうるか。それを防ぐには、どうすればよいのか――。

まずウクライナの戦争の状況を見てみよう。

ウクライナのエネルギー設備はロシアによるミサイル・ドローン攻撃を受けている。IEAの報告書https://iea.blob.core.windows.net/assets/cec49dc2-7d04-442f-92aa-54c18e6f51d6/UkrainesEnergySecurityandtheComingWinter.pdfによると、2022年2月のロシアの侵攻以来、7割の発電能力が奪われた。

その一方で、ウクライナはロシアのエネルギー設備をドローンによって攻撃している。特に石油精製所が多く狙われ、ロシアのディーゼル燃料製造能力の2割が失われたと言われている。

この様子はSNS(ソーシャル・コミュニケーション・ツール)の動画に多数アップされている。元NHKの石川雅一氏は、これらのオープンソースから動画を収集し、YouTube上の動画チャンネル「石川雅一のシュタインバッハ大学」https://www.youtube.com/@steinbach-universityで公開している。

良心的なジャーナリストらしく、地図情報などと突き合わせて、プロパガンダ目的のフェイクではないことを確かめるなどしており、信頼のおける情報源だ。

動画は多数に上るが、最近の5件のリンクだけ以下に貼っておこう。

どれも動画はショッキングだが、ドローンが体当たりすると、ペイロード(爆弾の量)が小さくても、エネルギー設備は可燃物だらけなので大火災が発生することが分かる。

空中のドローンだけでなく、水上の無人艇も利用されている。ただしこれはまだエネルギー設備ではなく軍事目標に対するものだけのようだ。ウクライナは2022年10月以降、無人艇によってロシアの艦艇を攻撃し、黒海における海上優勢をロシア黒海艦隊から奪ってしまった。海上自衛隊OBの木村康張氏が詳しくまとめている。

黒海の戦況を変えたウクライナ無人艇の「威力」と「限界」 | 実業之日本フォーラム (j-n.co.jp)

この無人艇による自爆攻撃についても、前述の石川雅一氏が動画を公開している。娯楽用のモーターボートを改造して、通信や制御機能を付けたもののようだ。

「顔が見える」組合活動 重責担う若手社員たち


【電力事業の現場力】日本原子力発電労働組合

原子力専業として、他電力より規模が小さくコンパクトな組織が特徴。

組合員数が少ないからこそ、きめ細やかな組合活動を行っている。

昨今、デジタル化に伴う電力の需要増や脱炭素、エネルギー安全保障の観点から原子力の重要性が再認識されている。そのような追い風が吹く原子力業界の中において、大きな課題を抱えつつ、懸命に原子力のパイオニアとしての役割を模索しているのが日本原子力発電だ。

現在の原電の業務内容は、既設発電所の審査対応や東海第二発電所の安全対策工事、東海発電所と敦賀発電所1号機の廃止措置など多岐にわたるが、社員は約1200人と、ほかの大手電力会社と比べて規模は小さい。このため上司と部下との距離が近く、また若手社員が基幹業務の最前線で活躍しているのが特徴だ。

東海第二発電所で繰り返し行われる水源、電源確保訓練

例えば、審査会合での原子力規制庁への説明や現地調査での対応を行う担当者には、20代の若手社員が含まれる。他電力と比べて実践登用が早く、果敢に課題に挑戦し、社員それぞれが原子力の専門家として活躍している。それだけに組合員の平均年齢も低い。他電力は40歳前後だが、原電労組は35歳。コンパクトな組織を生かして、一人ひとりの組合員と向き合う「顔が見える」活動が強みだ。

若手の組合員に対しては、全員参加型の組合研修を実施。3地区に散らばった仲間が集まる「同期会」の様相を呈すという。コロナ禍以降、ウェブ研修などが増える中で、同期と対面で集まれる数少ない機会として好評だ。研修の場では、労使懇談会で議論した経営課題などを執行部が組合員に伝えることができる。反対に若年層の組合員が抱える悩みにも直接、耳を傾けている。

同期組合員が集まる初級組合員研修の一幕

「幅広い若手社員が活躍でき、いきいきと安心して働ける職場づくりを推進していきたい。当社の事業を支え、将来の原子力事業全体を引っ張っていく人材が育つ職場環境を作ることが、原電労組としての意義の一つだ」(山本祥平書記長)


再稼働目指す現場は多忙 職場を支える使命感

規制庁の審査会合対応は緊張感が高い業務だ。記者や傍聴者に囲まれ、その模様はYouTubeで配信される。資料に対して、厳しい審査が展開されることも。若手社員の精神的な負荷は、想像するに余りある。

さらに、稼働していなくても原子力発電所の現場は多忙を極めている。設備保守・管理といった通常業務をこなしながら、新規制基準施行以降は、重大事故を想定した電源・水源確保訓練をはじめ通報、参集、消防訓練などが頻繁に行われている。また本店も含めた全体的な訓練を繰り返し実施するなど、発電所の再稼働に向けた準備が日々着々と進む。

敦賀発電所2号機の現地調査で説明を行う若手社員

日々発電所の状況を見守る運転員

だが再稼働を目指す発電所2基のうち、敦賀2号機は原子力規制委が新規制基準に「適合していると認められない」とする方針を示した。東海第二発電所は、今年9月の予定だった安全対策工事の完了時期を2026年12月に延期した。

山本書記長は「組合活動の基調は、いかなる状況下であっても原子力発電を通じて地域と社会に貢献していくことだ」と強調する。今は長いトンネルの中かもしれない。それでも来たる再稼働と、その先に見える明るい未来に向けて努力を続ける社員たち─。「日本の原子力を背負ってきた」という自負と高い使命感が、彼らを奮い立たせている。

航空燃料不足の裏に流通硬直化 根深い構造問題に踏み込めるか?


インバウンド需要が急回復する中、海外便への供給難が表面化した。

系列化が進む流通体制を見直す課題も突き付けられている。

新型コロナウイルス禍後のインバウンド(訪日客)需要が急回復する中、航空機向けジェット燃料の供給が追いつかず、日本各地の空港で給油できない事態が表面化した。政府が経済成長のけん引役として期待する訪日客は、今後も増加傾向が続く見通しだけに、航空燃料を巡る構造的な問題を踏まえてサプライチェーン(供給網)などの体制を見直す対応が求められている。関係者を取材し、背景や課題を探った。

国内空港で相次いだのは、燃料の供給を受けられずに海外の航空会社が新規就航や増便を断念するという問題。そうした事例が合計で週140便に上った。便によっては、帰路の燃料が確保できない事態となり、往復分の燃料を出発空港で積む「タンカリング」を余儀なくされた。これは、乗客数や貨物量を絞らざるを得ないリスクをはらむ非効率的な運用方式だ。

「非常に大きな問題だ。外国の航空会社が入るのを断念することがないようしっかり対策を打ちたい」

斉藤鉄夫国土交通相は6月下旬の閣議後記者会見で一連の事態を深刻に受け止め、こう強調。燃料供給不足の解消に向けて経済産業省と立ち上げた「官民タスクフォース(TF)」での検討を踏まえ、迅速に対応する考えを示した。

インバウンドで活気づく空港(イメージ)
提供:日本航空


問題解消の実効性が焦点 問われる政府の本気度

そもそも燃料の国際線向け出荷量は、2023年度にコロナ禍以前の水準にほぼ回復。これまでも不足分は海外から輸入しており、今回の燃料不足は供給量の問題ではない。一部で「元売りが精製能力を削減しすぎた」という誤解まで生じたが、大きな要因は機敏に動けない輸送体制だ。「元売りは年間計画で輸送体制を組んでおり、需要の急激な変動に対応できなかった」(業界関係者)という。

両省は7月、こうした事態への対応策をまとめた官民TFの行動計画を公表。短期的には、①需要量の把握、②供給力の確保、③輸送体制の強化―といった計画を盛り込んだ。例えば、航空会社が確度の高い情報を集め、燃料供給計画を立てる石油元売り各社に時間的な余裕を持って提供。元売りがその情報を基に供給網の状況を確認し、燃料の依頼に備えるよう促した。

中長期的には、将来の燃料需要増などを見据え製油所や油槽所の既存タンクを航空燃料用に転用するなど、計画的な設備投資について検討するよう要求。輸送に必要なタンクローリーの台数確保や船舶の大型化などの対応も求めたが、計画の実効性を高められるかは未知数だ。構造的な問題にまで踏み込んだ内容とは言い難いからだ。

石油流通に詳しい桃山学院大学経営学部の小嶌正稔教授は、「本質的な問題は石油製品流通の硬直化だ。本来なら競争原理を働かせるべきだが、石油元売り大手3社による系列化と専属化が進んだ」と指摘。続けて、「価格や販売を優位にコントロールしやすい寡占体制下で、需要の変化に柔軟に対応できなくなり、燃料不足につながった」とも分析する。

さらに問題の根底を探ると、「元売り間の競争を排除することを容認してきた資源エネルギー庁と公正取引員会の姿勢に行き着く」(小嶌氏)ようだ。元売り業界が約30年間にわたり再編の歴史を重ねてきた結果、効率化を実現したものの、物流面で弊害が顕在化。石油流通で要となる内航タンカーの運航会社が自由度を失った。まさに政府が流通面の競争に目をつむり続けた結果と言えそうだ。

元売りには、硬直性を打破し「オープンイノベーション」を促す姿勢も問われている。小嶌氏は「新しい分野を見据えて積極的にビジョンを示し、開かれた競争を巻き起こさないと、企業成長の推進力につながるイノベーションは生まれない」と課題を投げかける。

オープンな対応は流通面でも不可欠で、商社が海外から燃料を輸入する際に「給油タンクの空き状況」などの流通情報を素早く開示するといった対応が求められる。主要な国内空港が近隣諸国のハブ空港との競争にさらされているだけに、給油問題が日本の国際競争力を削ぐことがないよう流通を見直す対応が必要だ。


国内生産と輸入で量的確保 確度の高い情報が重要に

石油は原油から各種製品が同時に生み出される「連産品」という特性を持つため、航空燃料のみの増産が難しい。こうした中で石油業界は、成分が近い灯油の需要を見極めながら必要に応じて航空燃料を輸出入してきたが、政府が国策として力を入れる訪日客の誘致策を支える責任がより問われそうだ。

定期航空協会は成長する訪日客市場に触れ、「右肩上がりで推移する国際線の需要に応じて必要量の燃料を適切に確保できるかどうか、今後も注視していきたい」と説明。エネ庁燃料供給基盤整備課の永井岳彦課長も「航空燃料は引き続き増えていく燃料種だ。石油業界には確度の高い需要に対してしっかりと対応してほしい」と述べた。

関係者の期待に応えるように元売りは、「需要に見合った安定供給に向けて最大限努力したい」と強調。石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)は記者会見で「引き続き国内生産を基本としつつ、必要に応じて輸入を行うことで、航空燃料の量的確保を図る」と表明した。

一方、脱炭素という潮流を受けて化石燃料需要の先細りが見込まれる中、元売り各社には成長分野を視野に事業構造の転換を急ぐ課題も突き付けられている。航空分野の脱炭素化を促すSAF(持続可能な航空燃料)を巡っては、各社が供給網づくりを加速し始めた。ただ、事業予見性がなければ投資に動きにくい。各社が足元の対応とは相反するSAF戦略にも注力できるよう、より知恵を絞る対応が政府に求められそうだ。

KK再稼働へ原子力閣僚会議 花角知事の慎重姿勢は変わらず


ペースは遅いが、柏崎刈羽原子力発電所(KK)の再稼働に向けて着実に前進している。

政府は9月6日、原子力関係閣僚会議を開き、KK再稼働に向けた対応について確認した。特定の発電所の再稼働を巡って閣僚会議が開かれるのは初めて。官房長官や経済産業相など従来のメンバーに加えて、岸田文雄首相(当時)や避難道路の整備を担当する国土交通相などが出席した。岸田首相は地元の不安の声や地域振興も含めた要望を踏まえ、再稼働への理解が進むよう政府を挙げてさらなる具体的な対応を行うよう指示した。

原子力閣僚会議で発言する岸田文雄首相(9月6日)
提供:首相官邸

今年に入り、新潟県や自民党新潟県連が防災対策などの要望を政府に提出していたが、今回打ち出した対応方針はおおむね両者の要望に沿う形となった。避難道路の整備については、経産省・内閣府・国交省で整備促進に向けた「協議の枠組み」を新たに立ち上げる。地元が求めていた6方向へ放射状に避難する経路は関係府省庁で整備し、経産省は予算を継続確保する。

国が前面に立った取り組みとしては、政府が厳しいエネルギー情勢や再稼働の必要性について、新潟県内のみならず電力消費地である首都圏での広報活動を展開。また発電所のガバナンス強化のため、海外の専門家やほかの事業者など「外部の目」による気づきを改善につなげる新体制を構築すべく指導・監督するとした。


緊急時対応の策定時期は 選挙シーズンを前に

しかし新潟県の花角英世知事は、依然として慎重姿勢を崩していない。「入口に入っただけ、方針を示しただけで、検討が進む中で県の要望に沿った結論となっていくのを見極めたい」(9月11日の記者会見)

今後焦点となり得るのは、①経済的メリットを感じられる取り組み、②緊急時対応(避難計画など)の策定─の二点だ。

①は地元要望の一つ。電源立地地域対策交付金の対象拡大などを念頭に検討が進むとみられるが、ほかの立地地域と公平性の観点で課題が残る。②については内閣府が9月13日、新潟県庁で19回目となる作業部会を開催し、現時点での素案を示した。現在、屋内退避を巡っては原子力規制庁が運用の再検討を行っている。大きな変更は考えにくいが、花角知事は今年度中を予定する規制庁の取りまとめを待って、柏崎刈羽地域の緊急時対応を策定するよう求めている。知事の姿勢を額面通り受け取れば再稼働は来年4月以降ということになり、その先には26年6月の県知事選が待ち受ける。

処理水海洋放出に伴う水産事業者への賠償拡大などで、福島第一原発事故の賠償費用は膨らんでいる。総合特別事業計画の見直しに向けた議論が進む中、収益改善に効果が年1200億円とされるKK7号機の早期再稼働は必須だ。解散総選挙や参院選の足音も近づいており、期待と不安が交錯している。

【特集1/座談会】エネ基で重要性の明記が不可欠 原子力主力化は国益の源


需要増や脱炭素化に対応するため、原子力の必要性が見直されている。

再稼働の加速や新増設に向け国や事業者は何をすべきか。有識者4人が議論した。

【出席者】
山地憲治/地球環境産業技術研究機構 理事長
寺澤達也/日本エネルギー経済研究所 理事長
竹内純子/国際環境経済研究所 理事・主席研究員
重竹尚基/GX推進機構 専務理事

左から順に、山地氏、寺澤氏、竹内氏、重竹氏

山地 第7次エネルギー基本計画は、デジタルトランスフォーメーション(DX)に伴う電力需要が増えるという前提で議論が進められています。需要増と脱炭素に対応するために原子力が必要だ、という論理は強い説得力を持っています。DXを支えるデータセンター(DC)や半導体工場には安価な電力を安定的に供給できるベースロード電源が必要で、原子力が最も相性が良いからです。

竹内 東京電力パワーグリッド管内では、すでに申し込みがあるDCの新設による需要増が、2030年までに600万kWを超えています。仮に柏崎刈羽1~7号機が全て稼働して約820万kWですから、需要増のインパクトは極めて大きいと言えます。発電所の新設にはリードタイムが必要なので、この急速な需要増に対応するには既存原発の再稼働しか術はありません。

寺澤 世界ではDX、気候変動対策、エネルギー安全保障の三点から、原子力が再評価されています。アメリカでは昨年、ジョージア州のボーグル原子力発電所が運転を開始し、30年ぶりの新規稼働を果たしました。インフレ抑制法(IRA)にも、既設炉や新型炉への税額控除を盛り込んでいます。DC需要には365日カーボンフリー電力を100%供給する「24/7カーボンフリー電源」が重要性を増しますが、安定供給の点では同じ脱炭素電源でも再エネより原子力が優位性を持っています。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が作ったファンド「ブレークスルー・エナジー」が次世代原子炉に多額の投資を行っていることからも、原子力へのアメリカの期待が透けて見えます。

フランスは3・11以降に新増設を止めていましたが、気候変動対応を理由として50年までに最低6基、最大14基増設の方針を打ち出しています。これはロシアによるウクライナ侵攻前の話です。イギリスは、ウクライナ侵攻後に8基の増設を打ち出しました。これまで原子力発電所がなかったポーランドも、エネルギー安全保障の観点から6基の新設を決めました。

山地 日本では昨年、グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法が成立しました。原子力活用の方向性を示し、運転延長についてもフレキシブルに対応できるようになりました。原子力政策の正常化に向けた出発点と言えるでしょう。

竹内 3E(安定供給、経済効率性、環境適合)の中で、わが国のエネルギー政策の根幹にあるのは安定供給でしょう。そのため、エネルギー安全保障は極めて重要です。太平洋戦争について、昭和天皇が「油に始まり油に終わった」と評されていますが、文明社会の生命線であるエネルギーを、資源小国である日本がどのように確保するのかは大きな課題です。

日本は3・11以降、原子力に頼らない道を模索しました。しかし原子力を排除すると、3Eは達成できないという現実を痛感しました。火力発電への依存度を下げればCO2排出量は削減できますが、発電量や再エネの調整力はどこで埋め合わせるのか。太陽光と風力がともに補うという期待もありましたが、両方が不調という状況は世界各国が経験しています。火力発電は調整力として不可欠ですが、依存度を減らすためにもベースロード電源として原子力を増やす必要があります。

重竹 私も原子力の必要性については、特にエネルギー安全保障の観点から語られるべきだと思います。需要増や脱炭素を主な理由として原子力活用を主張しても、それ以外のオプションがあるからです。電気料金の安さを強調しても、使用済み燃料の再処理や最終処分までを考えると、安価という論陣を張るのは難しいところです。しかしエネルギー安全保障となれば、原子力以外はあり得ません。

寺澤 原子力は将来的に水素製造への活用も期待できますね。水素は産業分野の脱炭素化の「切り札」と言われますが、日本でグリーン水素を大量に製造するための再エネを確保するのは難しいです。当面は海外の豊富な再エネで作ることになりますが、高額な輸送費が発生します。それが原子力なら24時間、国内で脱炭素電力を送り続けられ、水素製造装置の稼働率も上がります。

竹内 逆に言えば、再エネと水素製造装置の相性は悪く、再エネの余剰電力で動かすのでは、装置の稼働率が極めて悪くなります。

【特集1】原子力「最大限活用」へのヒント 国民理解と規制の抜本改革を


SMR導入を検討するエストニアでは、国民が原子力の必要性を実感する電気料金制度があった。

わが国で新増設を実現するには、国民理解の一層の醸成と適切なリスク計画に基づく規制の導入が必要だ。

岡本孝司/東京大学大学院教授

先日、エストニアを訪問する機会を得た。バルト三国の一つで、古都タリンの街並みは世界遺産にも登録されており、中世の面影を残しカラフルな建物や石畳の路地が目に付く。IT先進国としても有名だ。

エストニアで改めて感じたのは、脱炭素に向かう欧州の強い意志と、原子力の必要性である。欧州においては、安定供給とのバランスの観点から天然ガス火力と水力、原子力が主力である。これに太陽光と風力が変動電源として乗ってくる。そうした中で、原子力に対する国民理解を醸成する上での鍵を握るのが、電気料金との関係性であるという視点に着目してみた。

古都タリンの美しい街並み

エストニアでは、電気料金単価が1時間ごとに変わるプランがあり、国民の多くが利用している。翌日の電気料金が、前日の午後3時に発表される。その電気料金を見ながら、エコキュートの沸き上げ時間や電気自動車(EV)の充電スケジュールを調整する。例えば8月のある日の電気代は、1kW時当たり0・08ユーロ(約13円、1ユーロ=160円換算)がベースで、朝は0・15ユーロ(24円)、夕方は0・25ユーロ(40円)だった。なお日本と同様の固定価格のプランも選べるが、相対的には高くなるため変動型を契約する人が多いそうだ。

エストニアは人口100万人の小国だが、エネルギーの自給率はおよそ9割で、残りは輸入に頼っており、そのうち9割をフィンランドが占めている。フィンランドでは、豊かな資源を活用した水力発電所と原子力発電所が動いている。原子力については昨年4月にオルキルオト3号機が運転を開始し、年間国内総発電量の約15%を占める。また化石燃料への依存度が低いため、化石依存度が5割強と高いエストニアよりも電気料金は格段に安い。産業が動いていない深夜時間帯はおおむね0ユーロ。人々が活動を始める朝は少し値上がりし、午前9時に0・016ユーロ(約2・5円)の最大値をとる。それでも日本に比べればかなり安い料金だ。

エストニア国民の多くは、毎日スマートフォンを使って電気料金の安い時間帯を調べるなど、節約を考えているという。そこでフィンランドの電気料金の安さに気づき、その理由が原子力であることを理解するようになったようだ。エストニアはかつてロシアからの輸入に依存していたものの、エネルギー安全保障の強化を図ってきた。こうした流れの中で現在、国内初となる原子力発電所として小型モジュール炉(SMR)の導入を柱に建設の検討が進められているが、原子力への国民理解があってのことだ。


需給を価格で整える 価格の東西差がより明確に

さて、日本の電気料金単価は固定価格である。関西電力の時間帯別料金であるハピeタイムRは、1kW時当たり深夜15・37円、朝夕22・80円、昼(夏)28・87円である。東京電力エナジーパートナーで同じような時間帯別料金である電化上手は、深夜28・85円、朝夕35・87円、昼(夏)43・93円となる。原子力の動いている関電は東電のほぼ半額であることが分かる。

そこで日本でも、エストニアのように1時間ごとの変動価格オプションを導入してはどうだろうか。現在、ほとんどの家庭にスマートメーターが導入され、電力消費量をリアルタイムで計測している。短時間の変動価格を導入するためのハードはそろっているのだ。市場価格のデータをもとにマージンを乗せれば、小売事業者が1時間ごとの電気料金を設定するのは難しくない。翌日が雨であれば電気料金は高く、晴れであれば安くなる。こうして需給を価格でバランスできるようになる。

エストニア気候省

以前は毎月郵便ポストに電気の検針票が入っていたが、今はウェブサイトで確認する人がほとんどだ。毎日の電気料金が変動し、スマホで毎日チェックするようになると、エストニアのように国民が電気料金の仕組みや特性に気づくのではないだろうか。消費者はエストニア国民のように毎日の電気代とにらめっこし始めるので、料金の高低が直接見えてくる。原子力発電所が稼働している関西は安く、動いていない関東が高いことが極めてシンプルに分かるだろう。省エネ促進にも極めて有効である。

【特集1】各国が主力電源化の利点を再認識 世界で復権する原子力の現在地


世界ではロシアによるウクライナ侵攻前後から原子力活用を巡る動きが相次いでいる。

新設や輸出加速のための支援策などで日本が学ぶべき点は多い。

「いい加減、『再エネ主力電源化』の旗を降ろすべきだ」

奈良林直・東京工業大学特任教授は、エネルギーフォーラムが運営するオンライン番組で声高に訴えた。その意味するところは、「原子力の主力電源化」にほかならない。


英仏は具体的な目標設定 開発の米国、輸出の韓国

世界を見渡せば、原子力が復権している。2010年代半ば以降、各国は野心的な温室効果ガス削減目標を打ち出したが、変動電源である再生可能エネルギーだけではカーボンニュートラル(CN)は達成できない。そこで「CO2が発生しないベースロード電源」として原子力のメリットが再評価され始めた。

22カ国が「原子力3倍宣言」を支持した

その後、コロナ禍からの需要回復やロシアによるウクライナ侵攻で世界的に化石燃料価格が高騰。山場は越えたものの、23年10月にはイスラム組織ハマスがイスラエルに対して大規模攻撃を展開し、戦闘地域全体への波及が懸念されている。世界は身をもってエネルギー安全保障の重要性を認識し、原子力が脚光を浴びることになった。

23年末、日米英仏など22カ国が50年までに世界の原子力発電設備容量を20年比で3倍にすると宣言。日本や欧米はオイルショックの教訓から1970~80年代に多くの原子力発電所を建設したが、ある意味、当時と似た雰囲気が漂う。ここからは原子力活用を巡る各国の動きを見ていこう。

フランス

「今われわれが築き上げるべきは、(中略)フランス原子力発電のルネサンス(再興)である」(マクロン大統領)。

マクロン大統領はウクライナ侵攻直前の22年2月、縮・原子力の方針を転換し、28年に6基の新設に着工すると発表した。将来的には8基を追加し、最大14基の新設を目指す。

同国はオランド前政権時、発電容量の7割を超えていた原子力の比率を25年までに50%まで下げる目標を掲げ、国内の原子力の規模をこれ以上増やさない方針を示した。17年のマクロン政権発足後も踏襲したが、18年に年限を35年に引き伸ばした。その後、建設基数に応じての電源比率や全体的なコスト算出など綿密なシナリオ分析を実施。結果、具体的な時期と基数を明示した方針発表となった。

新増設実現に向けた手立ても打ってある。まずは22年7月、政府がフランス電力(EDF)の完全国有化を発表。23年5月には既存の原子力発電所の敷地内やその周辺で原子炉などを新設する場合に、手続き合理化を認める法案が成立した。同時に「35年50%」目標を削除。発電比率の最適解を柔軟に模索する姿勢を打ち出した。

英国

「大胆な計画によって、不安定な国際価格にさらされる電源への依存を減らし、より安価なコストでエネルギー自給を享受できるだろう」(当時のジョンソン首相)

ウクライナ侵攻後に原子力政策の大転換を図ったのが英国だ。22年4月、「エネルギー安全保障戦略」を発表し、原子力を「50年ネットゼロ達成の基盤」と位置付けた。50年までに最大2400万kWの設備容量を達成し、電力需要の25%を原子力で供給するとの目標を掲げる。2400万kWという数字は、現在の設備容量が600万kWの英国にとって複数基の新設を意味する。

英国では近年、日立製作所が参入した新設計画ホライズン・プロジェクト(HP)が中止となり、ヒンクリー・ポイントC(HPC)原子力発電所の新設も延期となった。中止・延期の要因の一つがファイナンス面だ。HPやHPCに導入した差額契約型固定価格買い取り制度(FIT―CfD)の固定価格が、建設費用の上振れリスクなどに起因して高水準に押し上げられて折り合いがつかなかった。

こうした失敗を踏まえて生み出されたのが、発電前からリターンが得られ、建設費が増加した場合も規制当局が許可すれば回収できる規制資産ベース(RAB)モデルだ。総括原価的な方式と言っていい。サイズウェルC原子力発電所の建設計画で適用される予定で、ファイナンス面の支援を検討中の日本としても注目だ。

【特集1】第6次の愚を繰り返さず実質議論へ 原子力活用の国家意思明記を


再エネ最優先に翻弄された前回のエネルギー基本計画議論。その後GX政策が進み環境は一変した。

政策をどう立て直すべきか、そしてエネ基以外に必要な具体策は。鈴木淳司・衆議院議員に聞いた。

【インタビュー:鈴木淳司/自由民主党 衆議院議員】

―エネルギー基本計画の前回議論を振り返っていかがですか。

鈴木 3年前の議論は再生可能エネルギー至上主義者に振り回され、一体何だったのかという気持ちが正直なところです。原子力は「可能な限り依存度を低減」との表現が残り、2030年度の電源構成で20~22%とされた一方、再エネ比率目標は36~38%超とされましたが実現には程遠い。菅義偉首相のカーボンニュートラル(CN)宣言直後でもあり、13年度比46%削減というNDC(温暖化の国別目標)に基づき、意味のない数合わせで終わった感がありました。

第7次エネ基ではその愚を繰り返さず、現実を踏まえた実質的な議論とすべきです。NDCは国家としてのビジョンではあるものの、エネ基と混同しないことが重要かと思います。


今回がラストチャンス システム改革の検証反映も

鈴木 ロシアのウクライナ侵攻以来、世界のエネルギー情勢が一気に変わり、CNの世界的要請も相まって、わが国でもGX(グリーントランスフォーメーション)推進法ならびにGX脱炭素電源法が成立しました。今回は「GX2040ビジョン」をエネ基の上位概念に据え、それをベースに具体策を書き込む流れにすべきかと思います。

AIやデータセンター(DC)、半導体工場などの電力需要が急拡大する局面となり、原子力も再エネも含めたあらゆるエネルギーを総動員しなければ到底対応できなくなる日が来るように思います。国力の源泉である電力を、熱需要への対応も含めて安価・安定供給するためには、CNのベースロード電源たる原子力を中核に据え直すべきです。再稼働は当然ながら、新増設・リプレース、核燃料サイクル・最終処分まで含めた国家の意思をエネ基に明記することが必須となります。原子力損害賠償の無限責任原則の見直しも課題となろうかとも思います。

21年の解散総選挙ごろからは、原子力の必要性を理解する方の姿が目立ち始めました。また、現実の課題を前に、先のGX2法案には野党からもまともな反対はありませんでした。電力供給のためだけでなく、技術も含めた国力の源泉として、わが国は恐れずに原子力へのコミットを明示すべきです。

―ただ、原子力産業維持のタイムリミットは目前でしょう。

鈴木 投資回収の予見性を高めるためには英国のRAB(規制資産ベース)モデルのような仕組みが求められます。その上で、まずはとにかく早期に再稼働し、稼働の常態化が不可欠です。

再稼働の判断の際、首長に過大な負担を課すことなく、国が主体的責任を持ち、さらに前面に立つべきでしょう。立地地域などの一部地域だけでなく、国全体で原子力政策を進める体制をつくらなければ、CN・GXに向けてわが国の産業を強くすることも不可能だと思います。核燃サイクルまで含めた原子力の最大限活用の意思を第7次エネ基で示せば、それに応える国民はいるはずで、今回が最後のチャンスです。もはやこのままでは、原子力の人材・サプライチェーン・技能伝承が持たず、万が一日本がこの技術・産業力を失えば、西側諸国全体が中国・ロシアに負けることにもなりかねません。

時系列の意識も重要です。まず優先すべきは再稼働に向けた課題解決に鋭意取り組むこと。ただ、DCなどで需要が膨らみ得るので、SMR(小型モジュール炉)の実用化も並行して検討する必要があります。もちろん高温ガス炉や高速炉などの革新炉開発への積極的な取り組みも鋭意進めるべきでしょう。

―ほかに不可欠な視点は?

鈴木 電力システム改革の検証も重要でしょう。総括原価方式の長所を排して電力自由化を進めたことの帰結か、再エネの変動をカバーするバックアップ電源への安定投資が進まない。その功罪を、資源エネルギー庁内だけでなく国民の目の前で真摯に議論しエネ基に反映させる作業が、本来必要だと思います。

【四国電力 宮本社長】電気事業の安定運営と成長事業の拡大により地域の発展に貢献


本丸の電気事業は安定供給で地域の発展に貢献するという基本的使命を携えつつ、多面的にカーボンニュートラル対応を前進させている。

また、社長就任前、自ら携わった中期経営計画の達成に向け、経営の両輪として電気以外の事業にも磨きをかけていく。

【インタビュー:宮本喜弘/四国電力社長】

みやもと・よしひろ 1985年京都大学工学部卒後、同年四国電力入社。常務執行役員総合企画室経営企画部長、取締役常務執行役員総合企画室長(再生可能エネルギー部・広報部担当)などを経て、24年6月から現職。

志賀 6月に社長に就任して4カ月ほど経ちます。改めて抱負からお聞かせください。

宮本 会社を代表する立場の重責を日々感じています。電力の安定供給を通じて地域の発展に貢献すべく、伊方発電所をはじめ設備の安全確保を最優先に、お客さまに喜ばれるサービスの提供に全力を尽くします。また社員が誇りを持てるよう、挑戦し続ける企業集団でありたいと考えており、そのような私の思いを伝えるために事業所訪問を始めたところです。役員・従業員の一体感を高めながら、私が先頭に立ち経営課題に全力で取り組みたいと考えています。

志賀 京都大学工学部を卒業後、四国電力に入社しました。

宮本 元来、論理的に考えれば答えが一意に定まる理系分野が自分には合っており、モノづくりなどへの興味から工学部に進みました。4年生で研究室に配属されるまでは、テニスばかりやっていましたね。

重電系の研究室で、発電機の研究をしていました。同じ研究室からは関西の企業に行く人が多かったのですが、私は地元に帰り電力の仕事をしたいと思っていました。当時、当社に電気工学科の先輩がいたので、訪ねて話を聞いたところ、良い印象を抱き入社に至りました。

志賀 印象に残っている仕事を教えてください。

宮本 会社人生の前半は専ら技術系の部門で働き、後半は企画系の仕事が中心でした。最初の勤務地は徳島県の池田電力所で、以降は水力や変電、系統運用の現場で経験を積みました。企画では最初に地球温暖化問題に取り組み、その後、他社との電力融通や、共同での電源開発なども担当しました。

技術者としての仕事の思い出は、徳島での変圧器の増設工事が印象深いですね。変圧器の負荷試験で変電所に泊まり込み、新しい設備を徹夜でチェックしました。国の検査に合格し、自分がつくった設備が性能通り動いた時、電力事業の一端を担っていると実感できました。

また、変電所を新設する際の用地交渉も印象に残っています。当時、私は計画部門の課長で、立地部門の課長と一緒に、地域の皆さまが具体的に何をご心配されているのか話を伺って回りました。地道な努力を積み重ねて成し遂げる仕事の重要性が身に染みました。


電力以外で着実に利益 DCや不動産にも意欲

志賀 2021年3月に公表された「よんでんグループ中期経営計画2025」は自ら中心となって作られたとのことですが、どのような思いを込めたのでしょうか。

宮本 企画部長として策定に関わりました。ここで打ち出した一番のポイントは、電気事業と電気事業以外を車の両輪として取り組むという方針です。

背景には東日本大震災と、電力自由化の進展で経営環境の厳しさが増したことがあります。震災後の13年に料金改定を行った際、グループ会社への発注も効率性が厳しく問われるようになりました。そこでグループ会社には、電気事業関連の仕事で培ったさまざまな技術力を生かし、今後は一般向け事業での売り上げを増やしてほしいと伝えました。結果、現在ではグループ全体で電気事業以外の利益が順調に増えています。

志賀 STNetのサーバーサービスなどは時代を先き取りした成功例の一つでは?

宮本 今まさに世の中のニーズが高まっているデータセンター(DC)事業が軌道に乗っています。本事業には13年から先行的に取り組んでおり、運営のノウハウも着実に蓄積してきているので、この好機を逃さぬよう事業拡大に取り組んでいきたいと思います。また、同社が取り組むご家庭向けの光インターネットサービスも、四国内で高いシェアを獲得しています。

志賀 不動産事業はどうでしょうか。インバウンド需要を見込み、高松へ外資系高級ホテルを誘致したとも聞いています。

宮本 新規事業の一環で、グループ会社の四電ビジネスも含めて不動産事業を展開しており、首都圏のマンションや、四国ではサ高住(サービス付き高齢者住宅)の運営などに取り組んでいます。また、観光事業の面からも四国の活性化に貢献したいとの思いから、ホテル事業に進出しました。四国の地方銀行をはじめとする共同出資者の皆さまと共に、このホテル運営を軌道に乗せ、インバウンド観光客が高松だけでなく四国を周遊することで、その効果を四国全体に広げていきたいですね。地域の皆さまからの期待をひしひしと感じています。

志賀 電力自由化の時代になっても、電力会社が地元から地域活性化を牽引する役割を期待される姿は変わらないようですね。

差し迫る「大量廃棄」時代 適切な処理に向け課題山積


【今そこにある危機】江田健二/RAUL社長

2030年以降、5億枚もの太陽光パネルが廃棄される見込みだ。

廃棄処理を巡る技術革新やルールづくりが求められる。

再生可能エネルギーの普及とともに、太陽光パネルは日本全国に普及した。昨今は災害などでの廃棄問題や、将来の大量廃棄についての懸念が報道されている。太陽光パネルを巡っては今後10年、リサイクル、リユース、適切な廃棄が重要なテーマとなるだろう。これは「課題」にも見えるが、裏を返せば大きなビジネスチャンスにもなり得るのだ。


廃棄処理市場が未成熟 初期投資などコストかさむ

太陽光パネルの大量廃棄問題の中心的な課題は、適切な処理方法やルールが確立されていないことだ。

日本では、2009年のFIT(固定価格買い取り制度)導入以降、太陽光発電が急速に拡大した。これにより、環境に配慮したエネルギー供給が促進されたのは確かだ。しかし、一般的に太陽光パネルの寿命は20〜25年で、このため30年以降には多くのパネルが廃棄されるという予測がある。

太陽光パネルにはガラスやアルミニウムなど再利用が可能な材料が多く含まれている。これらの資源は、適切なリサイクルが行われることで新たな製品の生産に役立てられ、資源の有効利用が可能となる。一方で、シリコンやカドミウムのような有害物質も含まれており、適切な処理が求められる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、40年までに太陽光パネルの廃棄量は日本で約800万t、世界で約7800万tに達すると予測されている。太陽光パネル1枚の重さをおよそ15㎏と仮定すると、日本だけでも約5億枚の太陽光パネルが廃棄される計算になる。

読者は「30年まではまだ時間がある」と思うかもしれない。しかし、廃棄問題は現在も発生している。例えば、豪雨や台風などの自然災害により、太陽光発電設備が被災し、数千枚もの太陽光パネルが廃棄される事例が繰り返し起きているのは周知の通りだ。

太陽光パネルは災害での被害が相次ぐ

災害での廃棄問題だけではない。古い太陽光パネルの故障も増えている。製品寿命を迎え、廃棄が必要な太陽光パネルが増加。これらの現状を踏まえると、太陽光パネルの廃棄処理は現時点から取り組まなければいけない問題と言える。

廃棄を推進するために乗り越えるべき主な課題としては、故障したパネルの処理方法が明確に決められていないこと、リサイクルを含めた廃棄処理ができる業者が少ないことなどが挙げられる。

適切な業者が少ない原因は、太陽光パネル廃棄処理が市場として未成熟であり、廃棄処理がビジネスとして成り立っていないからだ。太陽光パネルの廃棄設備を建設するには初期投資が必要であり、運用には専門知識や技術者が必要になる。そういったコストが一つのハードルになっている。

太陽光パネル廃棄処理には次のような対策が求められる。第一に、廃棄物の適切な分別とリサイクル技術の発展だ。専門的な廃棄処理業者や仕組みの整備が不可欠となる。第二に、施設オーナーや関係者に適切な廃棄処理の重要性を理解してもらうための啓発活動や教育だ。さらには不法廃棄を防ぐために、廃棄処理の責任やペナルティを明確化するといった対策も重要だろう。

光ファイバーネットワーク構築 ビッグデータの活用促進に意欲


【技術革新の扉】デジタル技術駆使の変電所/東京電力パワーグリッド

データセンターが集積する千葉県印西市で稼働したデジタル変電所。

安定供給を支えるため、設備を監視・制御するシステムを高度化した。

デジタル社会を支えるデータセンター(DC)が集積する「世界のINZAI」として注目を集める千葉県印西市。その地で、高度な運用や保守を実現する「デジタル変電所」が存在感を放っている。東京電力パワーグリッド(PG)が整備した「千葉印西変電所」だ。発電所でつくられた電力の流れを制御する重要な役割を担うだけに、設備の状態を効率よく監視するなど、多様な効果をもたらすデジタル化が望まれていた。東電PGのデジタル戦略に迫った。

千葉県印西市のデジタル変電所


設備異常の検知能力アップ レジリエンス機能の強化へ

工業団地の整備が進む印西市の千葉ニュータウンは、国内外の大手IT企業が運用するDCが続々と建設されている。強固な地盤を持つことに加えて、首都圏や成田空港へのアクセスが良いことから、今後も立地が進みそうだ。このエリアで消費する電力も飛躍的に増加し、2027年度の電力需要量は17年度の6倍に達する見通し。

こうした動きに備えて従来の半分程度の工期で新設したのが千葉印西変電所。新京葉変電所(船橋市)と変電所の間に約10㎞のトンネルを造り、内部に送電ケーブルを敷設。6月に運転を始めた。27万5000Vと6万6000Vの送電線で電力を需要先に送り込む変電所で、超高圧変電所としては国内初のデジタル変電所となる。

送電ケーブルを通すトンネルの工事

デジタル変電所は、電力設備の自動化に必要な通信ネットワークやシステムについて規定した国際規格「IEC61850」に準拠した。同規格に基づき、変電所を構成する各機器をつなぐネットワークを構築し、作業員がネットワーク経由で所内のデータを共有できるようにした。

さらにデータが行き来する通信網を従来のメタル回線から、高速で大容量のデータ通信が可能な光ファイバーケーブルに切り替えたことも大きな特徴だ。

電力系統で事故が発生した際に変電所の機器を安全に系統から切り離す保護装置と、所内の機器を制御する装置の2系列を踏襲しつつ、通信ネットワークも2系列化し、データ共有と機能分離が両立できる構成とした。装置の異常で1系列が停止しても別の1系列で変電所を稼働し、安定供給に貢献できる。多様な選択肢から最適な機器を選ぶ「マルチベンダー」方式で、4社の製品を組み合わせた。

こうした仕組みで変電所をデジタル化するメリットは、制御に必要なケーブルの本数を減らして設備を簡素化できる点で、設備の運用や保守に必要なコストの低減につながる。

所内には、設備の状態を常時監視する各種センサーも設置。遠隔地にいる管理者がデータサーバーに蓄積されたセンサー情報をリアルタイムで把握できるようにした。このため作業員が数値データを取得するために現場に出向する必要がなく、少ない人員で効率的に状態の把握や保全業務を確認することが可能となった。また、センサーで異常の予兆を検知し設備トラブルを未然防止したり、作業員によるケーブルの誤接続リスクを低減したりして、災害発生時の電力安定供給を支え続けるレジリエンス(強靭さ)機能を高められるようにしたという。

通信装置が並ぶ変電所の監視制御室

すでに東電PGは南横須賀変電所(神奈川県横須賀市)に、メタル回線で設備を高度に遠隔監視する仕組みを取り入れており、これまでに培った経験や知見を土台に今回のデジタル変電所を実現した格好だ。

背景には、電力業界に広がる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という潮流がある。AIやビッグデータの活用といった波も押し寄せる中で東電PGは、今後も変電所のDXを追求したい考えだ。


現場の省人化ニーズに対応 将来的には無線化も視野に

工務部変電グループの佐野優作主任は変電所で取得した有益データの活用策にも触れ、「働く場所を問わず業務用パソコンでデータを安全に共有できるようにしたい」と強調。「データの分析結果を保全や工事の計画づくりに加えて、災害対応や人材育成にも有効活用したい」とも意欲を示した。

次のステップとして視野に入れているのは、デジタル技術の適用範囲を広げた「フルデジタル変電所」で、28年に実現することを目指す。ただ、デジタル化を追求するハードルは高い。変電所の各種データを処理したりデータへのアクセスを処断したりする仕組みを、より高度化する力量が試されるからだ。複数の変電設備間でデータを精緻に同期させるといった課題も立ちはだかる。

作業現場の省人化を進める課題を踏まえ、30年代を視野に所内を無線で統合制御するというシナリオも描く東電PG。変電所のデジタル化をけん引する技術陣の挑戦の舞台が一段と広がりそうだ。