【リレーコラム】関口美奈/リゾナンシア代表
バブル崩壊後、不良債権売却が始まる直前に米国から帰国した私は、いきなり日本経済の怒涛の波に放りこまれた。アーサー・アンダーセン(現KPMG)というコンサル会社の米ダラスから東京に転籍直後、不良債権の買い手が外資ファンドであったため、英語要員として不良債権売却支援チームにアサインされた。日本の会計規則も知らなかった私に、時価評価の不良債権評価はありがたかったが、今ではあり得ない残業や休日返上が続いた。
ほどなくしてエネルギーに出会う機会がやってきた。バブル期の不動産投資で財政危機に陥った商社の風力発電事業に関するM&A案件に携わったのだ。その頃は再生可能エネルギーに関する世間の認知は低く、事業価値を正しく認識できる買い手も多くはなかった。
当該事業は、2000年に東京電力が買収し、社名をユーラスエナジーと変更した。が、11年の東日本大震災による原子力発電所事故で資金を要した同社は、持ち分の半分を豊田通商に譲渡。その後豊田通商は徐々に持ち分を増やし、22年完全子会社化した。ユーラスは今では日本有数の再エネ電力事業者だ。
自由化を機に国内ニーズ生じる
08年、リーマンショック後に投資家は変動幅が大きい株式市場を敬遠、行き場を失った資金が余っていた。そんな投資家に、欧州で始まった再エネブームへの意欲を探ったところ、長期安定かつ将来的な香り漂う再エネに強い関心が示された。グローバルネットワークを活用し、海外の再エネ投資に力を入れた。そんな頃に震災が起き、自由化に向かう国内市場に新たなコンサルニーズが生まれたことをきっかけに、KPMG社内でエネルギーセクター事業を立ち上げ、セクター統括責任者を10年超務めた後、独立した。私自身は、エネルギーについて専門的に勉強したことはない。エネルギーの知識は全て業務を通じて学んだ。そんな私がいまだにエネルギーに携わり価値創出ができるのかと自問する。
エネルギー・電力は生活に不可欠であるが、あまり深く理解されていない。政治に任せればどうにかしてくれるのだろうか。多く人々に自分達の使うエネルギー・電力をもう少しだけ知り、この国の将来に向けて今何を選択すべきか考えてほしいという思いが募る。エネルギー貧国に暮らし、いくつかの悲劇を経験した私達が客観的、合理的にこの問題と向き合うことは、それ自体が大きな試練かもしれない。
深い知見を有する専門家が多い中、必ずしも専門家でない私は、エネルギー・エバンジェリストとして業界の来し方行く末を俯瞰し、感情的でないストーリーを語っていきたい。

次回は、マトリクスKの近藤寛子代表です。