GX-ETSと民間クレジットの関係/濃縮ウランの調達先
Q 改正GX推進法の成立を受け、排出量取引制度(GX-ETS)への参加が義務化される中で、今後のボランタリークレジットの位置付けや民間で活用されている現状にどのような影響を与えるでしょうか。
A 来年度から本格稼働するGX-ETS第2フェーズの具体案に関して検討を行っていた「GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ」は昨年12月、「法定化後の制度においては、海外ボランタリークレジットの活用は認めず、J-クレジットやJCMの方法論拡大を優先して進めることで、(DACCS、CCSなどの)先進的な技術の導入インセンティブを高めていく」とし、ボランタリークレジットの活用は認めないことにしました。
GX-ETSの2023~25年度の第1フェーズでは、自主的な枠組みであることを踏まえ、DACCS、BECCSなどの将来NDC達成に貢献し得る方法論による民間クレジット(ボランタリークレジット)の活用も一部許容されていたのが、第2フェーズでは変更になりました。
ただ、DACCS、CCSなどに関する海外ボランタリークレジットは、現時点ではまだ実際に適格になったものがなく(国内では、Jブルークレジットが適格になっています)、この需要がなくなったとしても、ボランタリークレジット市場への影響はほとんどないと考えられます。
世界のボランタリークレジット市場をみると、21・22年をピークに取引量も発行量も大きく減少している一方で、償却(活用)量はほぼ変わらないことから、ボランタリークレジットへの需要自体は堅調と見られます。償却されるクレジットは、再生可能エネルギーと森林・土地利用が大部分を占めていますが、再エネは減少気味です。
回答者:田上貴彦/日本エネルギー経済研究所気候変動グループマネージャー
Q ロシアによるウクライナ侵攻後、世界の濃縮ウラン調達先はどう変化しましたか?
A 2022年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、原発用の濃縮ウランをロシアに依存する危険性が認識されましたが、調達先の変更はあまり進んでいません。
原発の燃料製造には、ウラン濃縮が必要です。天然ウランは、核分裂して熱エネルギーを放つウラン235の含有量がわずか0.7%であり、残りは核分裂しないウラン238で構成されます。235を238から分離し、割合を3~5%に高めて核燃料にします。このウラン濃縮で、ロシアの原子力国策会社「ロスアトム」が45%の世界シェアを持ち、他国産への切り替えは容易ではありません。
特に危機感が強いのが米国です。数々の制裁をロシアに科してきましたが、原子力分野は例外でした。濃縮ウランの25%を依存しているためです。昨年8月、米国はロシア産ウラン輸入禁止法を施行し同時に濃縮ウランでロスアトムに次ぐ世界シェアのウレンコ(英独蘭の連合事業体)に、米国本土内での濃縮ウランの増産を要望しました。
今後は小型モジュール炉など、次世代炉用の高純度低濃縮ウラン(HALEU)の国際競争が激しくなりそうです。HALEUは現行の通常原子炉用に比べ、特殊な工程が必要です。米国は将来をにらみ、HALEUの自給体制構築を急いでいます。
こうした動向は日本にも影響を与えます。日本はロシア産に依存していません。また、世界市場には進出していませんがウラン濃縮技術を有しています。ウラン濃縮には遠心分離機が必要で、自前の分離機で濃縮を行っているのは世界でロスアトム、ウレンコ、日本原燃のみです。米国は今後、日本原燃にも協力を求めると予想され日本の濃縮技術が世界進出する可能性があります。
回答者:小林祐喜/笹川平和財団安全保障・日米グループ主任研究員





