NEWS 01:波紋呼ぶ万博メタンガス爆発 対策徹底もぬぐえない不安
2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場西側にある来場者用トイレの建設現場で、3月28日に発生したメタンガスによる爆発事故。これを受けて万博協会は6月に会期中の安全対策を発表したが、不安の声が根強い。開幕まで1年を切る中、再発防止に向けた対策の徹底が求められている。
メタンガスの爆発が起きた現場
今回の事故が起きたのは、「グリーンワールド工区」の屋外イベント広場横にある東トイレの1階。溶接作業時に発生した火花が、床下の配管ピット内にたまったメタンガスに引火して爆発。けが人はでなかったものの、コンクリートの床などが破損する被害が出た。
会場の「夢洲」(大阪市此花区)は人工島。事故現場の夢洲1区は廃棄物の最終処分場として埋め立てられた土地で、地中からは空気より軽いメタンガスが常に発生する。そこで協会はガスの滞留を防ごうと、機械で強制的に換気するなどの対策を打ち出した。
ただ事故現場以外でも低濃度のメタンガスが検出され、大阪府の子ども招待事業で会場に行く可能性のある学校現場からも不安の声が浮上。7月中旬の大阪市議会万博推進特別委員会では、対策を巡る厳しい意見が飛び交い、「国内のみならず海外からも多くの来場者が来場するビッグイベント。徹底して安全・安心に取り組んでほしい」といった要望も出た。
NEWS 02:今年も「脱原発否決」強調 電力株主総会の報道に喝!
6月26日に開かれた大手電力9社の株主総会は、2023年度の好業績を背景に、電気料金値下げに関する株主質問が目立った。毎年議題に上がる脱原子力に加え、今年は利益水準にも焦点が当たったようだ。
各社は23年度の大幅増益について、燃料費調整制度の期ずれによる一過性の利益であることに言及した上で、電気料金の値下げには原子力の安定稼働が重要とし、そのための費用に充てていくことを説明した。
一方で、大手メディアは今年も、一様に脱原発を求める株主提案が否決されたことを前面に押し出して報じ、「脱原発株主提案、電力9社が否決」(毎日新聞)、「原発への姿勢問う声相次ぐ」(朝日新聞)など、見出しには「脱原発提案否決」の文字が並んだ。
かねてから、電力株主総会では原発反対派の株主が脱原発を提案し、それを経営陣が否決するという展開がある種の恒例行事となっている。とりわけ、11年3月の東京電力福島原発事故後はその傾向に拍車がかかり、メディアもその切り口で株主総会を大きく取り上げてきた。しかし……。
「このところの電力株の動きを見ていてもわかる通り、原発稼働が株価の上昇に寄与しているのは明らかだ。その意味では、原発反対ではなく、原発の安全で安定した稼働を求めるのが真っ当な株主の姿だろう」(大手エネルギー関係者)大手電力の経営陣は総じて、安定供給や電気料金の低廉化、脱炭素化対応のため、安全・安心を前提とした原発稼働の必要性を繰り返し強調している。この点が株主価値向上につながるとの判断があるからだ。そうした点に着目せず、これまでと同じ「紋切型」報道に終始するメディアの見識が問われている。
NEWS 03:NDCは35年60%減か 40年エネ基と分断狙い?
今年の政策議論の中で、GX(グリーントランスフォ―メーション)2040ビジョンや第7次エネルギー基本計画と併せ、次期NDC(国別目標)の行方も要注目だ。政府は6月28日、中央環境審議会の小員会と産業構造審議会のワーキンググループの合同会合を開き、NDCを含めた地球温暖化対策計画の見直しに着手した。
各国政府には来年2月までに次期NDCの提出が求められる。 35年を基準とした新目標では、1・5℃目標や、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書が示したシナリオの一つ、世界全体で35年温暖化ガス60%減(19年比)を意識すべきとの風潮がある。一方、エネルギー価格高騰を背景に、欧州などでエネルギー多消費産業の生産活動低下・生産拠点の移転が見られ、各国では多様で現実的なアプローチへと政策の修正も始まっている。
ただ、ある政府幹部は、「ネットゼロがある以上、日本も逆算して35年60%減程度を掲げるほかないだろう」と語る。現行目標でも政策的な裏付けは乏しく、電源構成の需要想定を減らすことで再エネ比率などを何とか調整。翻って今回のエネ基議論ではGXやDXに伴う電力需要の急増が主要論点であり、前回の手法は到底使えない。
そうした中、NDCとエネ基のリンクをできる限り避けようとする考えもある。ターゲットイヤーは、NDCが先述の通り35年で、一方のエネ基はGX2040ビジョンと平仄を合わせ40年となる見通し。実際、欧米はNDCをあくまでチャレンジングなビジョンと位置づけ、それを電源構成などに細かく落とし込むようなことはしていない。日本も今回は本音と建て前をうまく使い分けることができるかが問われる。
NEWS 04:米で「原発100基増設」宣言 日米の経済格差に直結か
米国原子力学会(ANS)が6月16~19日、ネバダ州ラスベガスで先進原子力プラント国際会議(ICAPP2024)を開催した。
米ラスベガスで行われたACAPP2024 提供:奈良林直・東工大特任教授
ANSの年会を兼ねた本会議には約1200人が参加。米エネルギー省(DOE)のジェニファー・グランホルム長官やアイダホ国立研究所のジョン・ワグナー理事ら、官学の代表がパネルディスカッションを行った。さらにはマイクロソフトやグーグルメタといった米国を代表する巨大IT企業の幹部が登壇し、電力安定供給の必要性などを訴えた。
米国は近年、原子力発電の拡大に力を入れる。昨年のCOP28では米国などが主導して、日米など22か国が50年までに原子力発電の容量を3倍に引き上げると宣言。それに呼応するかのように、今回のANS年会では「30年代に100万kW級原発100基に相当する100GWの原子力発電を送電線に接続する」との宣言が行われた。
ANS年会に参加した東京工業大学教授の奈良林直特任教授は、「電力がなければ世界とのAI競争に負ける、という米企業の危機意識を感じた。米国が原発増設に全力投入する一方で、再稼働すらままならない日本の現状は両国の経済格差に直結する」と焦りをあらわにする。
電力需要の急増を前に、原子力に対しては「好きか嫌いか」ではなく「必要か否か」という視点が求められている。