【特集2】ごみ発電で地産地消電力を拡大 全国の循環型社会づくりを後押し


【日鉄エンジニアリング】

地域で発生したごみ処理の余熱で生み出した電力を域内で有効活用する―。そうしたごみ発電の「地産地消」の取り組みで存在感を高めているプラントメーカーが日鉄エンジニアリングだ。全国で循環型社会づくりを進める機運が高まる中で同社は、プラント操業で培った知見を生かした地産池消モデルを着々と広げている。

広島県の2市1町(東広島市と竹原市、大崎上島町)で発生する多様な一般廃棄物を処理し最大限に資源化するごみ発電施設が、東広島市西条町にある。同社が操業を受託している「広島中央エコパーク」(事業主体・広島中央環境衛生組合)だ。

東広島市の「広島中央エコパーク」

同社は今春、エコパークで発電した電力を竹原市庁舎や大崎上島環境センターなどの施設に供給する契約を、竹原市と施設管理者の広島中央環境衛生組合との間で締結。4月にこうした施設への電力供給を始めた。

これまでにもエコパークの電力を、地産地消電力として東広島市に供給。ごみ処理由来の電力を同社が買い取り、ごみを受け入れる自治体の施設に提供する仕組みを回してきた。

今回の契約でエコパークにごみを搬入する全ての自治体に電力を供給する体制が整い、電力の供給先は合計30施設、契約電力は4349kWに達した。CO2排出量の削減効果は年間約5000tで、一般家庭1800世帯分の排出量に相当する見込みだ。「最終処分量ゼロ」に向けてエコパークは、1日最大285tのごみを処理可能だ。さらにごみを1700℃以上の高温で溶かす低炭素型のガス化溶融炉を採用しており、残渣ごみを溶融してスラグやメタルに再資源化。埋め立てされるごみの削減に貢献している。


プラント操業との一体化 基幹電源として普及へ

自治体が注目するごみ発電の魅力は、環境面だけではない。再生可能エネルギーでありながら天候や時間帯に左右されないという「安定性」を評価する地域も増える傾向にある。

同社はこうした動きを踏まえ、ごみ処理施設の設計・建設・操業と電力供給を一体で行う事業者として、電力を地産地消する分野に参入。第1弾として2021年2月から、千葉県君津市で電力供給に乗り出した。その後も供給先を、さいたま市や東京都東久留米市の施設などに拡大。3月には、福岡県北九州市を筆頭株主とする地域新電力の北九州パワーへ出資。同社として初めて地域新電力へ参画した。多彩な再エネ電源と蓄電池を組み合わせて最適に運用するためのエネルギーマネジメントシステムを開発し、北九州パワーの取り組みに生かす予定だ。

日鉄エンジニアリング電力ソリューション部電力営業室の土屋一子シニアマネジャーは、「ごみ発電は地域のベースロード(基幹)電源としての役割を担える。そこに太陽光などの脱炭素電源や電力市場も組み合わせ、ごみ発電を中心とした地域循環共生圏の創造に貢献したい」と意欲を示した。プラント操業と電力の地産地消を一体化する挑戦の舞台が広がりそうだ。

【特集2】天神中心地の新ランドマークへ 大型複合ビルにコージェネを導入


【西部ガス】

九州一の繁華街・天神の中心地に来春開業予定のONE  FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング通称:ワンビル)。延べ床面積14万7千㎡、高さ97m(地下4階・地上19階)という九州屈指の規模を誇るこの大型複合ビルに、コージェネレーションシステムが導入される。

ワンビルは、低層階に商業施設、6、7階のスカイロビーフロアにカンファレンス機能を有し、上層階にオフィス、18、19階はホテルで構成されている。特にオフィスフロアはグローバル企業をターゲットに環境性能や事業継続計画(BCP)に配慮したコンセプトであること、また災害に強い街づくりを目指す自治体や事業者である西日本鉄道の思いが体現されている。

ワンビルに導入されたコージェネ


補助金活用で導入実現 災害に強い街づくりを支援

ワンビルの熱供給プラントは、災害時に電気が途絶えた場合でも熱供給可能な熱源システムが検討され、コージェネ導入の運びとなった。中圧ガスとガスコージェネレーションシステムによるビルの安全性向上、ガス・電気のベストミックス熱源による経済性への貢献などが採用に至った理由だ。熱源設備に関しては、福岡エネルギーサービスが所有・整備・運用を担う。

コージェネの能力は発電規模400kW×2台、排熱供給量600kW。これにより、一次エネルギー換算で年間省エネ率20%以上、年間CO2削減率25%以上の達成を目指す。また災害時にはビル内にある、避難所の電灯、コンセント電源と空調用の熱源機電源も担う。その役割が評価され、導入に当たり、経済産業省の「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業」補助金を活用することができた。

今後注視していく点として、事業者の西日本鉄道は、電気とガスのカーボンニュートラル化の動向、福岡エネルギーサービスは、コージェネ機器の更新時のコスト管理を挙げる。西部ガスは、災害に強い街づくりを下支えし、BCPに着目したコージェネ導入を補助金活用なども含めて提案していく。

【特集2】地域熱供給でロードマップ策定 3本柱で新たな街づくりに挑む


SHK制度の改正で、熱の環境価値の提供が可能となった地域熱供給事業。

新制度を踏まえ、日本熱供給事業協会は2050年に向けた新たなロードマップを打ち出した。

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)が改正されたことを契機に地域熱供給への期待が高まっている。

2024年度に始まった新制度では、熱供給事業者ごとの係数を用いることが可能となり、熱の環境価値を評価するしくみや、カーボンクレジットなどの活用によりCO2排出係数ゼロのメニューの提供を可能とする内容が盛り込まれた。

これらを踏まえ、日本熱供給事業協会は、「地域熱供給中長期ロードマップ」を策定し、熱のカーボンニュートラル化による脱炭素社会の実現、新しい街づくり、街の防災機能の強化への貢献を目標とした三つのアプローチを打ち出した。

ロードマップのシナリオイメージ
提供:日本熱供給事業協会

各アプローチには、具体的な施策とともに、現在実装済みの先行事例を掲載している。これは、熱供給を営む各事業者が、先行事例を参考とすることで、目標達成に向けた取り組みを加速させる狙いがある。

一つ目のアプローチは、「最新技術の導入による省エネルギー・省CO2運転の取り組み」だ。具体的には、デジタル・AIを活用した熱製造システムの実装を推進することとしている。CEMS(地域エネルギー管理システム)の利用で、熱源運転効率の向上や省エネを実現した10社の取り組みなどが先行事例として挙げられた。

さらに将来的なCCU(CO2回収・利用)の導入にも言及している。現時点で革新的な技術開発として注目しているのが、CO2を脱吸着できる「CO2固体回収材」の「Na―Fe系酸化物」だ。熱供給に使用するボイラー設備での活用に期待を寄せる。

二つ目のアプローチは、「熱の脱炭素化に向けた取り組み」だ。取り組みは①カーボンオフセット熱の供給開始、②再エネ熱・排熱の有効利用システムの実装に加え、③関係業界などと連携したクリーンガスの導入、④関係業界と連携した水素の導入―に細分化される。事業者はSHK制度を活用し環境価値の高い熱の供給に取り組み、30年以降にはe―メタンや水素を活用することでさらなる環境価値の向上を見込む。


BCP向上に貢献 災害時の対応力強化

三つ目のアプローチは、「街のレジリエンス強化に向けた取り組み」で、地方自治体との連携を通じ、災害時のBCP対応力を強化する。施策として電気・熱の継続供給にはコージェネ設置型熱供給プラント、消防・生活用水の継続供給には、蓄熱槽設置熱供給プラントをそれぞれ活用し継続供給する体制を推進することを打ち出した。

同協会は、先行事例を交えたロードマップを通じ、熱供給事業者に方針を示すだけでなく、政府や需要家側にも熱供給の有用性を訴えることで業界を挙げて取り組みを加速させていく。

【特集2/座談会】期待高まる分散型エネ資源 重要視される市場の制度設計


コージェネ、再エネ電源、VPP……。多様なリソースの出番が着々と増えている。

主力電源を担う火力発電の先行きが見通しにくい中、分散型の活用方策を探る。

【出席者】
石井英雄/早稲田大学スマート社会技術融合研究機構事務局長
岩田哲哉/東京ガスソリューション共創本部ソリューション事業推進部長
新貝英己/東芝エネルギーシステムズエネルギーアグリゲーション事業部営業担当上席部長

左から順に、石井氏、岩田氏、新貝氏

―大規模電源の先行きが不透明な中、さまざまな分散型の事例が出てきています。まずは石井先生に分散型の歴史や現状について解説いただき、次に事業者の方々に分散型を活用した取り組みについてお聞きします。

石井 日本の分散型の歴史はとても長く、エネファームや蓄電池、電気自動車(EV)などは、低炭素化や省エネ、エネルギー利用の効率化に向けて開発されたものです。経済産業省のプロジェクト「クールアース50」で取り上げられた機器群から発展した製品が今、実用化されて役立てられています。

2009年頃にはスマートグリッドが登場し、分散型を統合して使う概念が入ってきた。この時、通信で機器を制御して、省エネやエネルギー効率を向上させるエネルギーマネジメントが追求されました。その後の東日本大震災で大規模システム一辺倒は脆弱だとの認識で、分散型を強調する流れになりました。

今では脱炭素化、カーボンニュートラルの流れで再生可能エネルギーが増え、需要と供給のバランスを取るため、需要側の分散型資源の活躍も求められている状況です。

岩田 当社は、ガスと電気のベストミックスで、コージェネレーションを核に再エネや空調、給湯、EVといった多様なリソースを広げることが重要だと考えています。また、東日本大震災を機に、コージェネの持つピークカット、レジリエンスといった価値が見直されました。エネルギーが全面自由化された今は、ガスだけではなく、電気式空調機やターボ式冷凍機の扱いを加速させ、ベストミックスの価値として、お客さまに最良な省エネ、低コスト、脱炭素、レジリエンスをご提案しています。

――コージェネの運用は、従来とは違ってきますか。

岩田 コージェネが容量市場や需給調整市場に適用され、さらに他の用途が出てくれば、設備単体ではなくて、当社がかねてから取り組んでいたスマートエネルギーネットワークのようなシステム全体での運用へと広がっていくと考えています。

【特集2】多彩な地域エネ資源で脱炭素化 防災力向上と経済振興にも貢献


全国各地で分散型システムの先進的な活用事例が続々と登場している。

デジタルの力でシステム制御する技術や事業モデルの進化も著しい。

再生可能エネルギーによる発電設備やコージェネレーションシステム(CGS)などの多彩なエネルギー資源を一定の地域内に配置して最適に制御する―。そうした分散型エネルギーシステムの先進的な構築事例が続々と登場している。大規模な災害時にエネルギー供給が滞るリスクを軽減したり、各地で脱炭素社会づくりを促したりする要請が強まっているからだ。デジタル技術の進化も追い風に、分散型システムの出番が一段と増えそうだ。

大手電力も採用に踏み切ったCGS


地域に根差した再エネ イノベーションにも

政府が決定した2023年度版の「エネルギー白書」では、カーボンニュートラル(CN)を実現する観点から地域と共生した再エネを最大限に導入すると明示。FITやFIPなどの再エネ政策を総動員しながら、この分野のイノベーションを加速し市場を拡大する方針も示した。地域の再エネをコージェネなどの分散型エネルギー資源と組み合わせて利用しやすくする仕組みのあり方にも触れ、「検討をさらに深めていくことが重要」と明記した。

こうした動きに呼応するかのように、東京都内でも先進的な分散型システムが相次ぎ具体化している。一つが「日本橋一丁目中地区再開発」のエリアに自立分散型のエネルギーセンターを導入して周辺地域に電気と熱を供給する取り組みで、街の付加価値を高める先進的な挑戦として注目を集めている。

仕掛けるのは、電力小売りの東京電力エナジーパートナー(EP)と三井不動産が共同設立した三井不動産TEPCOエナジー(東京都中央区)。三井不動産と東電EPによる初の「スマートエネルギープロジェクト」で、26年度のエネルギー供給を目指している。

電気と熱の供給先は新規の再開発ビルに既存ビルを加えた約50万㎡規模のエリアで、日本橋1丁目で計画する商業施設やオフィスに届ける。ビルの地下部分に約1・6万kWの発電機を設け、ビルに入居する企業や店舗のエネルギー需要に応える。さらに「自立分散型電源」として、大型のCGSを採用。燃料は耐熱性能が高い「中圧ガスライン」からの都市ガスで、系統電力が停電時にもエネルギー供給を継続できるようにする。

CGSによる発電時に生まれる排熱は冷暖房に生かすとともに、効率的に運転計画を立案できるAIをエネルギーマネジメントシステムに取り入れたことも特徴。30分周期という短時間で目的に合わせた計画を導き出せる仕組みで、約25%のCO2排出量を削減する効果が見込まれる。人材確保が難しい運営面の省力化にもつなげる。

日本橋1丁目で実現するエネルギーシステムの流れ

オール電化に傾注してきた大手電力会社が、脱炭素化が叫ばれる今この時期にCGSを手掛ける意味は大きい。というのも、現在構築した街のエネルギーインフラは少なくとも今後数十年にわたって継続運用されることになるからだ。大手デベロッパーの技術系幹部が言う。

「50年CN社会を見据えた時、これから構築するエネルギーインフラはそれに対応することが求められる。その観点から電化シフトの加速を予想する向きも多いが、現実的な選択はやはりエネルギーミックス。東電・三井不の取り組みが意味することは、50年時点でもガスインフラが重要な役割を担っているということだ」


AIでマネジメント進化 新たな潮流に乗り創意工夫

脱炭素化や防災力の向上を狙った分散型システムを構築するニーズは、地方でも高まっている。ごみ発電設備を生かして「地産地消電力」を供給する動きが広がっているほか、蓄電所を最適に制御するビジネスモデルも登場。AI搭載のエネルギーマネジメントシステムを生かすサービスも誕生した。

政府からは、GX(グリーントランスフォーメーション)による地域活性化の一環で、各地の再エネを活用した「分散型エネルギーのマスタープラン」の策定を支援する追い風が吹いている。技術面では、複数の分散型電源をデジタル技術で束ね、あたかも一つの発電所のように機能させる「VPP(バーチャルパワープラント)」を巡る取り組みが進展している状況だ。

デジタル化の進展を背景にデータセンター(DC)の需要が増える中、大都市に集中するDCの立地を地方に分散する取り組みも拡大。これに伴い、「DCとセットにしたエネルギー供給システムの引き合いも増えている」(分散型システム事業者)状況で、DXと連動する形で分散型システムの役割が増す方向にある。エネルギー大手やプラントメーカーなど関連各社が追求する多彩な「分散型ミックス」の最前線に迫った。

【特集1】増加に転じた電力需要のトレンド 電源投資・系統整備への影響は


これまでの電力制度改革は消費量が減少していく中でいかに既存設備を合理的に活用するかが主眼だった。

急激、かつ局所的な需要増にどう対応するべきか。広域機関の土方教久理事に聞いた。


【インタビュー:土方教久/電力広域的運営推進機関理事】

―2024年度の供給計画では、15年度に同計画の取りまとめを広域機関が担うようになって以降、7年ぶりに電力需要が増大する傾向が示されました。

土方 供給計画の需要想定は、基本的に過去の実績と経済指標などの相関式を用いて算定しています。ただ、過去の実績の中に含まれない要素、例えば新幹線の開業や大規模イベントなどによる短期的な需要増といった個別的要素があった場合にはそれを考慮することになっていて、データセンター(DC)や半導体工場など大規模、かつ急激な需要側の計画を反映したことが、いくつかのエリアで増加に転じることになった大きな要因となりました。

―「将来の電力需給シナリオに関する検討会」では、より長期的な需要見通しについて議論されています。

土方 DCや半導体工場稼働などに伴う電力需要増を見据えた需給シナリオが求められており、それを政策的にも生かしていく必要性が高まってきたことから、昨年11月に検討に着手しました。現在は需要側について、基礎的需要に加え、DCや半導体、EV(電気自動車)、鉄鋼などの産業分野―といった追加的要素をいくつか設定し検討しているところです。今後、供給側についても検討した上で、需給バランスという形で複数のシナリオを示す予定ですが、その後も情勢変化に応じて柔軟な見直しを行っていきます。


市場運営者として責任 制度の見直し検討も

―急激な需要増は、今後の電源投資の在り方にも課題を投げかけています。

土方 20年度に容量市場、23年度にはその一部として長期脱炭素電源オークションが導入されました。特に脱炭素オークションは電源投資の予見性を高めるのに有用であり、広域機関は市場運営者として貢献していきたいと考えています。一方で、これだけ大きな状況変化に合わせた制度の見直しも重要です。第7次エネルギー基本計画の策定議論が始まり、電力システム改革の検証作業も進んでいますが、容量市場は5年をめどに包括的な検証を行うことになっています。国における議論の中で大きな方向性を示していただいた上で、改善すべき点があれば詳細な検討を行うことになります。

―需要側にとって、電源投資のリードタイムが長いことが懸念材料のようです。

土方 大規模需要家が発電設備も併せて開発するような取り組みが始まってもおかしくないと考えています。それは、系統の負荷を下げることになりますし、電力安定供給上も望ましいことです。いずれにせよ、系統混雑を生まないよう、需要の立地を系統整備と一体で考えることが、効率的かつ安定的な電力システム形成のために有力な方策となることは間違いないでしょう。

ひじかた・のりひさ 1986年東京大学工学部卒、東京ガス入社。総合エネルギー事業部企画部長などを経て2021年4月電力広域的運営推進機関に出向。同年7月から現職。

【特集1/座談会】待ったなしの制度抜本見直し 電力需給構造が激変!?柔軟な仕組み構築できるか


半導体やAIなどデジタル産業が電力需給構造を大きく変えようとしている。

電力ビジネスはどう変わるべきか。岡本浩・小笠原潤一両氏が語り合った。

【出席者】
岡本浩/東京電力パワーグリッド副社長執行役員
小笠原潤一/日本エネルギー経済研究所研究理事

左から、小笠原氏、岡本氏

小笠原 米国でデータセンター(DC)が整備されている上位12州の電力消費量を分析したところ、テキサス、バージニア、フロリダ、アリゾナ州で増加、ニューヨークやカリフォルニアなど北部の州で減少傾向にありました。DCの立地が消費量を押し上げているようですが、景気の低迷が影響して地域差を生じさせているようです。欧州でも同様に、アイルランドは増えていますが、その他の国では減少しています。電力需要増を全体的な傾向なのか局所的な現象に過ぎないのか、見極めるのはなかなか難しいように思います。国内、特に東京電力パワーグリッド管内はどのような状況ですか。

岡本 局所的な需要増が世界的なトレンドになっていて、当社の供給エリアの場合、最初にそれが顕在化したのは千葉県印西市でした。これに対応するため、20数年ぶりに超高圧の変電所を建設し6月5日に運開しました。実は、同じような地点がどんどん増えてきていまして、今では東京都心部を取り巻くように他7地点でもDC建設に伴う接続契約の申込みが急増しています。西日本では関西エリアが既に同様の状況ですし、国がDC立地を推進する北海道と九州もこれに続きそうです。点がいつの間にか面としての広がりを持ち、電力需要全体を押し上げる可能性はありますが、どこまで増えるのかを今の段階で見通すことはなかなか難しいです。


需要を押し上げる脱炭素化 欧米では需要家が大型電源投資に参加

小笠原 電気料金が安いテキサス州は、かなりの数の水素製造装置とマイニングマシンが集積していて、低炭素化の取り組みが電力需要の増加に寄与しています。アメリカと比較すると、日本の情報化投資額は微々たるもので産業のデジタル化が進んでいません。日本のみならず、アジア全体で見ても欧米の1割程度しかDCがありません。デジタル化で省エネを進めることはできますが、そのためには産業界のデジタル化がマストです。双方を車の両輪にように回すことができるかが、鍵なのではないでしょうか。

岡本 デジタル化の進展による電力消費への影響は確かに大きいですね。デジタル化はエネルギーの消費構造をスマート化する一方で、膨大な計算資源を必要としますし、EVの普及や熱分野の電化といった脱炭素化の取り組みも需要増に働きます。さらに水素を国内で製造することになれば、莫大な電力量が必要とされるでしょう。

小笠原 「ENTSO―E(欧州系統運用者ネットワーク)」が出している電力需要の長期見通しには、まだデジタル化や水素の影響が反映されていません。米国でも、ようやく将来に向け電力消費が増える方向へトレンドが切り替わるということに言及され始めたところです。というのも、例えばPJM(米国北東部地域の地域送電機関)の管轄エリアでは、データセンターが集積するバージニア州北部は2033年まで年率5%で需要が増えると予想されているのですが、全体では0・8%の伸びに止まる見通しです。電源投資ではなく変電設備の増強で済みますし、全体として増えるという姿は描けていません。

AI社会におけるDCの役割は大きい

岡本 当社エリアは、24年度の供給計画において初めて需要が増えるという見通しを出しました。従来は、DCに電力供給するに際して全体の供給力が不足することはなく、変電所や送電線の増強で足りていました。今後は、さらに大規模なDCが建設され、電力量そのものが不足する可能性があります。既にシンガポールなどでは、電源に投資しないとDCを建設させないといった措置を取っているようです。

小笠原 アップルやグーグルといった大手テクノロジー企業は、RE(Renewable Energy Certificate/米国・カナダで発行される再生可能エネルギー電力証書)だけではなく、自社でも再エネを調達する方針です。電源選択で再エネのみのニーズが高まるのは、少し歪んだ構図かなと感じてしまいます。

岡本 申し込みのあるDCの大規模化が進んでいて、1カ所当たり100万kW近い例もあります。大規模なDCは稼働率も85%程度と高いので、間欠性の変動電源だけではとても賄えません。産業界の一部からは、原子力が必要だという声が上がっているようですが、GAFAの中にもSMR(小型モジュール炉)と一体でDC建設を検討している企業があると聞きますし、今後具体的な動きが出てくるのではないでしょうか。

小笠原 半導体産業のように不確実性が高く、しかも大きな電力を消費する設備の建設計画が突然出てきても、電力会社として対応しきれないのではないでしょうか。

岡本 容量市場や長期脱炭素電源オークションといった、投資を促進する仕組みがあって良かったと実感しています。おっしゃる通り、個別に想定して供給力を備えるのではリスクが高く誰も電源投資できませんから、全体の需要と供給力がマッチするようにしていく必要があるでしょう。

小笠原 とはいえ、脱炭素オークションは、系統制約を考慮していないことに問題があります。ネットワークの設備形成と需要の立地とのバランスで、どこに発電投資したらよいか、同時に考えなければならない時代になっているわけですから。イギリスでは、電力需要と送電線の立地状況からどの種類の電源をどこに誘導するかという計画を作ろうとしています。系統混雑が多いところに蓄電池を誘導したり、送電設備の建設計画と合わせて電源誘致を進めたりしています。

岡本 以前は、いつどこにどのような電源を作るか計画し、それに合わせてネットワークを計画的に建設していました。現行の制度下でいかにそれに近い仕組みを作るのか。市場メカニズムだけではうまくいかないはずで、脱炭素オークションや容量市場を足掛かりに望ましい方向性を模索するべきです。

【特集1】光電融合技術でインフラの限界突破 消費増大問題解決の切り札に


データ処理に必要な電力消費が増大するAI新時代を支える「IOWN」。

次世代通信基盤として社会実装することを目指すNTTの戦略に迫った。

膨大なデータ計算を必要とするAIの利用拡大が進むと、情報処理を担うデータセンターの役割も増し、そこで消費する電力が急速に膨らんでいく―。こうした時代を支えるインフラとして国内外から熱視線が注がれているのが、光技術を駆使する次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」だ。IOWNは進化したAIが日常に入り込む社会にどのようなインパクトをもたらすのか。開発に取り組むNTTの戦略に迫り、IOWNの可能性を探った。

NTTの荒金陽助IOWN推進室長

「AI同士で高度に判断するなど、人間が追い付けないスピードで技術革新が進もうとしている」。NTT研究企画部門IOWN推進室の荒金陽助室長はこうした環境変化に触れた上で、データセンターで消費する電力が急速な勢いで増えている現状に言及。「電力効率を追求した新たなコミュニケーションやコンピューティングのインフラで、電力の急激な増加を抑制していくことが求められている」と力説する。

IOWNが世界から注目される理由は、消費電力を劇的に下げる可能性を秘めた革新技術だからだ。NTTは、エネルギーの損失が少ない光技術を通信からコンピューティングの分野まで幅広く生かすことで、消費電力を現在の100分の1に抑えるという目標を掲げている。実現できれば、AIの爆発的な普及を背景に深刻化する電力問題を解決する糸口となり得る。


高速道路のような役割 新産業を創出する好機に

そもそもIOWNが広げる通信の世界は「道路」に例えると、分かりやすい。これまでのインターネットは「一般道路」で、信号や交差点があり制限速度が低いなど、さまざまな制約がある。IOWNは「高速道路」の役割を担い、「より遠くにより速く」という人々のニーズに応えて生まれたインフラといえる。荒金氏は、インターチェンジやサービスエリアを進化させることで「新しい産業やサービスを生み出すこともでき、社会に大きなインパクトをもたらす可能性を秘めている」と強調する。

NTTグループがIOWN構想を発表したのは2019年。当初は30年ごろを目標に、現状比で伝送容量が125倍、遅延が200分の1、電力効率が100倍となるサービスを実現することを目指していた。

要となる技術が、電気信号よりもエネルギー効率が高い光信号と組み合わせた「光電融合技術」だ。着々と技術開発を進める中、大きな反響が得られたことを踏まえて順次サービス化する流れとなり、大幅な前倒しで23年3月に構想実現に向けた初の商用サービス「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)IOWN1・0」の提供を、NTT東日本とNTT西日本が始めた。25年度には「IOWN2・0」を実用化する計画で、データセンター内のコンピューターを光で結ぶ。その後もIOWNを段階的に進化させ、半導体チップ内の部品間も光でつなぐことを狙っている。

「NTT R&D FORUM 」で注目を集めたIOWN

APNサービスは、通信ネットワークの全区間で光波長を使用することが特徴。この光ネットワークで離れた場所にある複数のデータセンターをつなぎ、この拠点間で遅延を減らしながら「ゆらぎのない安定した通信」を実現できるようにする。

用途を開拓する動きも活発化している。APNサービスの展開先として想定される分野の一つが遠隔医療で、遠隔でロボットを操作し手術する環境の実現に期待が集まっている。世界中に点在する化学プラントのメンテナンス業務を遠隔で操る展開も視野に入っている。

エネルギー分野にも新風を注ぎ込みそうだ。荒金氏は、大都市に集中するデータセンターの立地を各地に分散する取り組みで役割を果たすことにも意欲を示し、「地域にある再生可能エネルギーなどの資源をうまく活用し、データセンターに役立てる仕組みを環境にやさしい形で実現したい」と力を込める。

視線の先には、各拠点が連動してデータを処理する「分散型データセンター」がある。APNサービスで複数の中規模なデータセンターを相互接続し、仮想的に大規模なデータセンターと見立てる取り組みだ。データセンターの消費電力を賄えるだけの再エネ電力の確保が難しい地域であっても、IOWNがあれば再エネ電源を支えに施設を効率運用できるようになる。エネルギーの地産地消を促す切り札になるというわけだ。


仲間づくりで世界に挑戦 国内外の企業とタッグ

荒金氏は「『高速道路がないとだめだよね』と実感してもらえるようなユースケース(活用事例)を増やしていきたい」とも強調。IOWNのグローバル展開に向けた仲間づくりも重視し、「企業が垣根を越えて連携し、エコシステム(生態系)を拡大したい」と述べる。そうした狙いでNTTはソニーグループ、米インテルなどの有力企業と20年に「IOWN Global Forum」を立ち上げ、6月時点で140を超える企業や団体が参加。この中で技術仕様の議論も進めている。ビジネスを加速させたいという声にも応えており、トヨタ自動車や日立製作所、中部電力などの主要企業が名を連ねる。

生成AIの学習に必要な電力量は原子力発電所1基1時間分以上という試算もある。NTTはデータセンター事業の世界シェアで第3位を誇るだけに、電力消費問題の解決に向けても並々ならぬ熱意をのぞかせる。「データセンター事業者として電力効率の向上はわれわれ自身の課題でもあり、社会への貢献にもつながる」と荒金氏。電力を含む社会インフラの未来を照らすIOWNの普及に向けた土台づくりが進み始めた。

【特集1】DC・半導体活況の現場から 期待と不安渦巻く奮闘を追う


電力需要な急激な増加に各エリアの電力会社はどう対応しているのか。

半導体産業、データセンターの立地で活況する3地点の取り組みをレポートする。

千葉県 印西市/外資系がINZAIに照準 DC集積で全国に先駆け

国際空港へのアクセスの良さ、強固な地盤、都心から至近という好条件を兼ね備えた千葉県印西市は、全国でもいち早くDCの集積地として脚光を浴びた。海外の事業者にとって、「INZAI」はもはやブランド化しているそうだ。

それだけに、東京電力パワーグリッド(PG)が同エリアで大規模な送変電設備の増強工事に着手したのは、2019年と他社エリアよりも早い。今年5月に工事が完了し、6月5日に運転を開始したばかりだが、5年という工事期間は、同社にとっても前例のないスピードだったという。

電力供給設備の増強には、通常、計画立案から稼働まで約8年かかる。一方で、DC事業者が土地確保から試験稼働に至るまではわずか2~3年。「8年もかけていては、折角、系統接続を申し込んでくれた事業者が海外へ流出しかねず、日本の損失になってしまう」(草間順一・系統計画グループマネージャー)との判断から、できる限りの工期短縮を図った。

新設の千葉印西変電所(27万5000kV)から既設の新京葉変電所をつなぐ送電線を敷設するに当たっては、全長10・1㎞の洞道トンネル工事を実施。通常は1台のシールドマシンで掘削するところ、4台同時稼働させるなど工夫を講じたのだ。

約10kmのトンネルに敷設した送電ケーブル

新たな設備が稼働したことにより、印西エリアの供給力は約60万kW増の計170万kW程度まで拡大した。だが、5月時点で申し込みのあった同エリアの電力需要は約200万kWにのぼる。今後、変電所の変圧器の台数を現行の2台から4台に増強、洞道トンネル内にも新たな送電ケーブルを敷設し、27年までに供給力を約230万kWまで拡大し、対応する方針だ。

今も、同エリアへのDC進出は続いている。これまでは、北総鉄道の路線を挟んで北側への立地が中心だったが、現在は、南側にも接続申し込みが殺到しているというのだ。さらなる需要増を念頭に、同社は送変電設備の新設も視野に入れている。

【特集1】AI社会が突き付ける電力政策の限界 強靭性回復が日本経済復活の道開く


膨大な電力を消費する半導体産業やデータセンターのプロジェクトが次々と立ち上がっている。

需要家が望む安定、低廉かつ低炭素な電力供給の実現が、「失われた30年」から抜け出す条件だ。

近い将来、日本の電力需要が爆増する―。ほんの2、3年前、そのような未来をどれだけの人が予想していただろうか。

長らく続く景気の低迷や省エネの進展、そして新型コロナウイルス禍が影響し、この10数年、国内の電力需要は漸減してきた。昨年までは、その傾向が少なくとも2030年代初頭までは続くと見られていた。

それが一転。電力広域的運営推進機関が3月に取りまとめた「供給計画」における今後10年の電力需要想定では、33年度に全国の需要電力量が8345億kW時と、24年度の8056億kW時から増加(図1)。これまでとトレンドが大きく変わったことが示されたのだ。

図1 電力需要は上昇トレンドに転じた
出典:広域機関

背景には、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の加速などにより、千葉県印西市をはじめ東京・大阪圏でデータセンター(DC)の建設が進んだこと。それに、熊本県菊陽町でのTSMC(台湾)、北海道千歳市でのラピダスなど、半導体産業の集積が拍車をかけようとしていることがある。家庭用の電力消費量が減少することは変わらないが、こうした新たな需要が全体を押し上げるという構図だ。

足もとでは、需要増が局所的であることもあり、今のところ一般送配電事業者による送変電設備の増強などで対応できている。だが広域機関は、DCや半導体工場の新増設により、24年度には48万kW、33年度には537万kWもの最大電力需要の増加を見込む(図2)。発電所建設のリードタイムはLNG火力で6年、原子力では17年で、現状では、10年でこれだけの需要を賄えるような発電所を建設することは非現実的と言わざるを得ない。

図2 データセンター・半導体工場の新増設による影響
出典:広域機関

今夏(7~9月)の電力需給は、(10年に1度の厳暑を想定した)H1需要に対する予備率が安定供給に最低限必要な3%を上回るものの、7月の北海道・東北・東京エリアは4・1%とかなり低い。原子力発電所の長期稼働停止、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う火力発電所の休廃止が加速する中、需要が求める供給力を確保できるのか。不安視する向きは多い。


再エネでDC運用 大規模供給に課題

DCを利用する企業の多くは、事業活動の使用電力を全て再エネ由来とすることを目標とする「RE100」に加盟していたり、脱炭素化を宣言したりしている。世界的なDC急増に伴うCO2排出量が問題視されていることもあり、運用にもグリーン化を求める意向が強い。

NECは、神奈川・兵庫県内で100%再エネ電気を活用したグリーンデータセンターを運用。今のところ、①電力会社のグリーンメニューの購入、②非化石証書、③太陽光パネルでの自家発電―の三つの方法で再エネを調達している。DCは24時間365日、一定の電力を消費するだけに、「需要と供給がマッチするよう再エネ電源を確保することが本当の意味でのグリーンという見解もある」(データセンターサービス統括部の伊藤誠啓統括部長)と、今後、「生再エネ」による運用に挑戦するべく施策を考案中だという。

いち早くそれに取り組もうとしているのが、京セラの子会社である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が、北海道石狩市で今秋開業予定の「ゼロエミッション・データセンター(ZED)」だ。

再エネ電気特定卸供給制度を活用し、グリーンパワーインベストメント(GPI)の小売り子会社を通じて、石狩湾新港洋上風力発電所由来のトラッキング付きFIT非化石証書と合わせた電気の供給を受ける。自社開発の太陽光発電所(1800kW)と蓄電池(6000kW時)を組み合わせ、KCCS自らが需給調整を担い、使用電力の100%を再エネで賄う。

ZED建設を発表した19年は、脱炭素の流れが本格化する前だったが、「発電所と需要設備を一体開発しなければ、再エネの普及拡大は行き詰まる」という、メガソーラーを中心にFIT再エネ開発を手掛けてきた同社だからこその判断があった。デジタルソリューション事業部の尾方哲・デジタルインフラ部長は、「同プロジェクトを、化石燃料依存を少しでも減らす取り組みにつなげていく」と意気込む。

冷涼な気候で空調用の電力消費を抑制、東京・大阪圏との同時被災リスクを低減でき、さらには再エネポテンシャルが高い北海道では、ソフトバンクが苫小牧市で再エネ100%で運用するAI用DCを29年までに建設する方針を打ち出すなど、石狩・苫小牧を中心に複数のプロジェクトが進んでいる。

【九州電力 池辺社長】多様な強み・能力生かし 事業環境が変化する中、 持続的な成長へ


2023年度の連結業績は22年度の赤字から一転し、過去最高益を記録した。

電力供給の安定化や再エネの主力電源化に取り組みつつ、新たな価値創造にも挑戦していく構えだ。

【インタビュー:池辺和弘/九州電力社長】

いけべ・かずひろ 1981年東京大学法学部卒、九州電力入社。2017年取締役常務執行役員コーポレート戦略部門長、18年6月から代表取締役社長執行役員。20年3月から電気事業連合会会長を兼務し、24年3月に退任。

井関 電気事業連合会会長を退任し、4月からは社長業に専念されています。

池辺 電事連会長を務めた4年間は、さまざまな電気事業制度の変更がありましたし、資源高騰という難局に直面したこともあり、勉強の毎日でした。これほど勉強したのは、米国留学した30歳前後の2年間以来だったというくらいです。記者会見を通じて記者の皆さんとコミュニケーションを取ることも、大事な仕事の一つでした。

電事連会長としての発言は、影響が大きいだけに緊張の連続で、何をどうお話すれば理解していただけるのか試行錯誤するなど、大変ではありましたが有意義な経験となりました。4月から社長業に専念と言いましても、もともと各部門の責任者に任せる経営スタイルなので、実は、経営への関与の仕方はそれほど変わっていません。

井関 2024年3月期決算では、売上高が4期ぶりの減収となった半面、経常・最終損益ともに2期ぶりに黒字化しました。

池辺 23年度の連結業績は、経常利益2381億円と過去最高を計上することができ、非常に良い結果になったと受け止めています。燃料価格の下落により、燃料費調整(燃調)の期ずれ影響が前年度の差損から差益に転じたことが大きな要因ではありますが、原子力発電所が4基体制に復帰できたことも収支改善に大きく寄与しました。

原子力の安定稼働は、他の発電設備と同様、社員が日ごろからきちんとメンテナンスし、安定稼働・安定供給に万全を心がけているからこそ実現できます。こうした原子力をはじめとする電力の安定供給と、九電グループ一体となった収益拡大、経営効率化に、努力してくれた社員に大変感謝しています。 

井関 来期は2期ぶりの増収と2期連続の黒字見込みです。

池辺 2期ぶりの増収を見込む一方で、燃料価格下落による燃調の期ずれ差益の縮小や、卸電力市場価格の上昇による購入電力料の増加などにより、経常利益は1100億円程度にとどまり23年度を下回る見通しです。とはいえ、これは当社が25年度の財務目標として掲げる経常利益1250億円以上を十分に狙える水準です。引き続き、電力の安定供給と経営全般にわたる効率化の取り組みなどにより、グループ一体で目標の達成を目指していきます。

現実味を帯びる台湾侵攻 日本のエネルギー供給は窮地に


【今そこにある危機】岩田清文/元陸上幕僚長

中国による台湾への武力侵攻の可能性が高まりつつある。

有事の際、日本のエネルギーインフラは人民解放軍の攻撃対象だ。

米インド太平洋軍司令官ジョン・アクイリノ海軍大将は3月20、21日の米上下院議会軍事委員会において、「中国は3年以内に台湾を侵略する準備ができている」と証言した。台湾有事になれば、太平洋地域で作戦指揮を執る司令官の議会証言は軽視できない。その2カ月前の1月22日には、米戦略国際問題研究所(CSIS)が、米国専門家52人および台湾専門家35人に対して行ったアンケート調査を発表した。その中で、「今後5年間で、北京の第1目標が台湾統一を即座に強行するとしたら、北京はどのような行動に出るか」との質問に対し、「台湾への武力侵攻」のケースに関して、米側67%、台湾側77%の専門家が、「可能性が非常に高い」あるいは「可能性が高い」と答えている。

これらの危機認識がもし現実になった場合、日本にどのような影響が及ぶのだろうか。特にエネルギー問題に絞って考察してみたい。

台湾有事になれば、米国は参戦するであろうし、参戦しなければ台湾の自由と民主主義は奪われる結果となる。参戦した場合、米軍は中国との「戦力集中競争」に勝つ必要がある。距離的に米軍が不利であることは自明であるが、これを補完するのが日本の支援である。在日米軍基地が効果的に稼働することにより、台湾への米軍の戦力投入が可能となる。加えて、安倍晋三政権時に制定した平和安全法制により、重要影響事態が認定されれば、米軍に対する燃料補給や弾薬輸送ができるようになる。また存立危機事態が認定されれば、自衛隊が米軍を防護できる。

日本は台湾有事に耐えられるか


インフラへの攻撃 在中邦人の拘束も

当然ながら、この米国に対する日本の支援を妨害するために、中国は、破壊工作、サイバー攻撃あるいはフェイクニュースなどの非軍事力を駆使して妨害を仕掛けてくるだろう。例えば全国数十カ所の鉄道の変電所に火をかければ、都市圏の交通機能は完全にまひする。あるいはサイバー攻撃で、大手銀行のATM、配送業者の予約システム、自治体や病院などの重要機関の業務システムをダウンさせようとするだろう。電気・ガス・航空・鉄道会社および通信事業者の業務系システムや港湾コンテナターミナルシステム内に侵入したマルウエアによるサイバー攻撃は、電気・ガス料金の支払い、旅行予約及び携帯電話の契約をはじめ、コンテナの運営にまで大きな影響を及ぼすことになる。これだけで日本社会全体が大パニックとなることは容易に想像できる。

そこに、「アメリカに対する支援をやめれば、サイバー攻撃は収まる」との北京発のフェイクニュースがSNS上に氾濫するだろう。これに扇動された数十万人が米国支援を阻止するため、国会議事堂の周りを取り囲むというような事態も想定すべきだ。

情勢の緊迫に伴い、在中国の邦人は早期に帰国するだろうが、避難が遅れた日本企業の従業員は拘束される可能性が極めて高い。日本向けのレアアースの輸出が止められ、予定していた日中経済関連の会議もキャンセルとなる。中国にある日本資産を凍結するとの脅しも北京から発せられるだろう。これらの脅しは2010年、実際に日本に対して行われた。中国の漁船が、尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に体当たりした際、その船長を逮捕して石垣島で地検が取り調べていたところ、上海で日本企業の社員4人が拘束され、レアアースの輸出も止められた。

中国の脅しに屈した当時の民主党政権は、中国漁船の船長を特別機で送り返すという、極めて屈辱的な外交を行った。この〝成功体験〟を持つ中国は、台湾有事でこの類の脅しを繰り返すと見た方がいい。


LNG輸送は危機に 南シナ海航路が止まる!?

事態が進展し、台湾周辺で中国軍と米軍が実際に戦闘するようになれば、中国は日本に対しても軍事力を躊躇なく行使してくるだろう。同時に、台湾海峡およびバシー海峡の封鎖により、南シナ海経由のエネルギー供給が止まることになる。

原油は、現状237日分の備蓄があるので大丈夫とされているが、国の施設に備蓄されているのは141日分。10カ所の国家備蓄基地のうち、地下岩盤式は3カ所に限られる。中国のミサイルが着弾すれば、大きな被害を受け、備蓄量が減ることは明らかだ。ちなみに中国は日本列島をカバーする中距離弾道ミサイルを約500発、準中距離弾道ミサイルを約1000発保有している。そのほかの備蓄としては、LPガスは50日分しかない。

最大の問題はLNGだ。マイナス162℃に冷却するので長期備蓄ができず、継続的な輸入が必要となる。22年度の燃料別の発電実績は、LNGがもっとも多く45・4%、次に石炭が42・2%となっている。化石燃料のほぼ100%を輸入する日本は、その海上輸送のうち、原油のほぼ全量およびLNGの約4割を南シナ海航路に依存している。これらは、台湾有事になると迂回を余儀なくされ、マラッカ海峡からはるか東のロンボク海峡、そしてセレベス海などなどに抜ける航路になる。迂回により航行距離が25%以上増加することによる輸送料や船舶保険料も高騰し、加えて航海日数も増えることにより、燃料の輸入遅延、全国的な計画停電の実施などにより、石油精製品のみならず、工業製品の品不足から、これまでに経験したことのない第3次オイルショックが日本を襲うこととなる。

このような想像もしたくない悲惨な状況を絶対に生起させてはならない。重要なことは、習近平主席に対し、「日本に手を出すことは、中国自身が大きな痛手を被ることになる」「日本は攻められたら戦う」との意志と能力を示すとともに、「日本へのエネルギー供給体制は不測事態にも対応できる準備と覚悟がある」ことを示し、台湾有事勃発を抑止することである。

いわた・きよふみ 1957年生まれ、徳島県出身。防衛大学校を卒業後、79年に陸上自衛隊に入隊。陸上幕僚監部人事部長、第7師団長、統合幕僚副長、北部方面総監などを経て2013年に第34代陸上幕僚長に就任。16年退官。

エネルギー業界のDXけん引 プラットフォーム事業にも意欲


【技術革新の扉】LPガス充填・配送システム/ニチガス

ニチガスが川崎市のLPガス充填基地「夢の絆・川崎」を起点に進めるDX。

デジタルなどを駆使し配送までの高効率なシステムを確立している。

ガスを容器に充填して顧客に届けるまでの一連の業務を革新する―。総合エネルギー企業でLPガス販売大手の日本瓦斯(ニチガス)グループはそうした狙いで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を世界最大規模のLPガス充填基地「夢の絆・川崎」(川崎市川崎区)を起点に着々と進め、業務の効率化と顧客サービスの向上に結びつけている。

「夢の絆・川崎」の外観


リアルタイムなデータ連携 一連の業務高度化を実現

海に近い臨海部の川崎区浮島町で、宇宙船のような未来感が漂う外観の建物が存在感を放っている。2021年3月に始動した夢の絆・川崎だ。

2万8700㎡という広大な敷地には、78台分もの20tトレーラーの駐車スペースを設置。月間のガス充填能力は約5万tで、一般的な充填所の約100倍に相当する。そうした巨大基地でDXを加速。LPガスを巡る一連の業務を先進技術でリアルタイムにつなぎ、集めた各種データを仮想空間上でAI(人工知能)が独自のアルゴリズムに基づき解析し、さまざまな運営に生かしている。

消費者側のDXを象徴するツールが、ガスメーターをオンライン化するIoT機器「スペース蛍(ホタル)」。IoTサービスを手掛けるソラコムと共同開発した装置で、都市ガスも合わせた合計で140万件以上 (今年4月末時点)に設置した。

LPガスを充填したボンベは戸建ての場合、ガス切れのリスクを避けるため、顧客宅に2本ずつ置かれている。スタッフは各地の顧客宅を訪ねて月1回の検針を行うとともに、過去の検針値に基づいて1本目がなくなりそうなタイミングを予測し、交換を決定。回収したボンベは充填工場に運ばれ、ガスを充填後に新たな顧客宅に配送される。

夢の絆に取り入れたLPガスの回転式充填機

こうした仕組みを革新するのがスペース蛍だ。実績に基づく正確な配送計画を立て配送効率を高められるほか、顧客宅のガスメーターに後付けできる。こうした利点が評価されて他のガス会社への導入も進み、約30社が採用した。

スペース蛍は、ガスメーターから検針データを1時間ごとに取得し、1日に1回24個分のデータをまとめて送信。それを保安業務の高度化につなげるほか、遠隔からパソコンでガス栓を開閉できるようにした。

毎月のエネルギー使用量や請求額をスマートフォンの画面で確認できるアプリ「マイニチガス」も用意し、今年4月末時点で約7割の顧客に浸透。こうした展開で、検針に関する業務や検針票の発行コストが低減したほか、車で顧客宅を巡る際に排出されるCO2排出量を削減する効果も得られたという。

供給側では、AIと仮想空間を生かしたLPガスの新配送システムが威力を発揮。ガスボンベを運ぶトレーラーが夢の絆のゲートを通過すると、トレーラーに積載されたボンベのバーコードを入場口にある8台の高性能カメラが、天候や時間帯にかかわらず正確に自動で読み取ってデータを送信する。

また、スペース蛍からのガス使用量データと配送実績を組み合わせることで算出されるボンベ在庫データに基づいて最適な製造計画を算出するAI「新製造計画エンジン」が、ボンベの充填本数と行き先を決める。

自動検針ツール「スペース蛍」

同様のゲートは、24時間無人で稼働可能なLPガスの容器置き場「デポステーション」にも配備し、容器の入出庫管理を全て自動化した。得られた容器の在庫データは、スペース蛍からのデータと連携。新製造計画エンジンによって「何本の容器を充填し、どの容器をどのデポステーションに持っていけば良いか」といった充填・配送計画を瞬時に導き出す。


チャレンジ精神を原動力に システムの進化を追求

すでに10年に業界に先駆けてクラウドの基幹システム「雲の宇宙船」を開発するなど、先進技術によるビジネス変革に注力。これらが評価され22年には、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄」のグランプリを獲得。銘柄選定は、前身である「攻めのIT経営銘柄」から通算7年連続だ。

ニチガスの吉田恵一代表取締役専務執行役員は「当社には『同じ成功を繰り返さない』という社風があり、新しいことにチャレンジするカルチャーが根付いていた。こうした土壌があったため、デジタル技術で仕事のやり方や組織を変革するという本質のDXを進めやすかった」と振り返る。

ただ、DXの進化に終わりはない。吉田氏は、成長著しい「シェアリングエコノミー(共有経済)」を踏まえ、「さらにAI技術を投入し、(現実世界を仮想空間に再現する)デジタルツインによって物流システムをブラッシュアップし、多くの事業者に使ってもらえるようにしたい」と強調。グループ再編で新会社「エナジー宇宙」を設立したことを機にこうしたプラットフォーム(基盤)事業を拡大することに意欲を示した。エネルギー業界に新風を吹き込む挑戦の舞台は一段と広がりそうだ。

【平岡清司 五條市長】まずは人命救助の拠点を


ひらおか・きよし 1963年奈良県五條市生まれ。大阪工業大学高等学校(当時)卒業後は五條市内の国民宿舎に勤務し、その後は刺しゅう業などに従事。2013年、五條市議会議員に初当選以来3期目途中まで務める。23年の五條市長選挙に立候補し初当選。

五條市で生まれ育ち、市議会議員を務めた。昨年4月、五條市長に初当選。

公立小中学校の給食費無償化を実現するなど、住民目線の市政に奔走する。

奈良県五條市で生まれ育った。高校は大阪市の大阪工業大学高等学校(現常翔学園中学校・高等学校)に進学し、卒業後は五條市の国民宿舎に勤務。21歳で実家の刺しゅう工場を継いで以来、家業に専念した。

26歳の時、父親が五條市議会議員に初当選。義叔父も市議会議員を務め、選挙の手伝いなどを通じて政治を身近に感じるようになった。自らが政治家を志したきっかけは、2011年の五條市長選だ。新人候補を応援していたが、所属する消防団の団長が現職を支援。しかし現職が敗れたことにより、消防団内部で亀裂が生じた。意見を言いたかったが、「役職のない人間は黙っていろ」と相手にされない。「自分もモノを言える立場にならないと」と思い、市議選への立候補を決めた。40代後半の出来事だった。

13年に五條市議に初当選すると、3期目の任期途中に行われた五條市長選に出馬。初当選を飾った。就任から1年が経つが、市長の仕事には強いやりがいを感じている。「市議と市長は全く違う仕事。市議時代は市民の意見を聞き、行政に訴えかけることが主な仕事だった。だが市長は予算さえあれば、やりたいことをすぐに実行できる」

五條市では今年に入り、県有地でのメガソーラー計画が全国的な話題を呼んだ。県有地は当初、広域防災拠点として2000m級の滑走路の整備が予定されていたが1月、奈良県の山下真知事がこの用地の25ヘクタール以上を利用したメガソーラー整備計画を公表したのだ。

各地で増大する再エネ出力抑制 求められる電力システムの在り方は


【多事争論】話題:再エネ出力抑制と系統増強

東京を除くすべてのエリアで再エネの出力制御が実施されるようになっている。

マスタープランに基づく送電網増強が計画される中、今後重視すべき視点とは。

〈 CNでの電力NWの将来像 コスト効率高い対策優先 〉

視点A:荻本和彦/東京大学生産技術研究所特任教授

2050年の温暖化ガスゼロ排出(CN)に向け、再生可能エネルギーの大量導入が期待される。太陽光発電(PV)は建物の屋根を含め設置面積が確保できる場所から配電網に接続し、風力は発電に適した風況の地域、その多くは大規模な需要地から離れた地点から送電網への接続が中心となる。

PV、風力の発電は、日射や風況によって変動し利用率が低い。その電気を需要地に送るために送電線を新設する場合、出力制御をゼロにするためには最大出力を送る必要があり、送電線の容量・建設費が大きくなり、その利用率は下がり、送電コスト(送電電力量当たりの費用)は増加する。逆に、再エネの出力制御を許容し発電の最大出力より小さい送電容量とすると、建設費は下がり、利用率は上がり、送電コストは低下するが、利用できる発電電力量は出力制御の分減少し、発電コストは上がる。再エネの出力制御と送電費用の間にはトレードオフの関係がある。

現在の約1兆kW時の電力供給の3分の1を再エネが担う場合、PV、風力の利用率を15%、30%と仮定すると、それぞれ250GW(1GW=100万kW)、130GWの導入が必要となる。再エネ出力制御に関する電力ネットワーク(NW)の課題は、この大量導入を見据えて、電力NWの将来を考えることである。

現在、電力広域的運営推進機関による広域連系系統マスタープランとして、全国9エリア間の連系線とエリア内の送配電網増強の検討・実施が行われている。計画検討では費用・便益評価に基づき、再エネの出力制御低減と緊急時の停電の抑制を目標として、北海道・九州から本州向けと、本州内のエリア間の連系線、それに関連したエリア内の送電線の増強が検討されている。しかし、再エネの利用率の低さや受け入れ側での出力制御の増加を考えると、NW増強による再エネの導入拡大の効果は限定的である。

高度化や需要・財蔵技術も重要 広い選択肢で評価・検討を

電力NWの対策は、先に述べたNW自体の増強である「ワイヤ」、運用高度化さらには電力需要・貯蔵技術との組み合わせの「ノンワイヤ」の対策に分けられる。ノンワイヤの対策では、平常時の送電網の容量制約の下での潮流管理と事故時の潮流管理(平行送電線1回線遮断時のN―1電制)が制度化(コネクト&マネージと呼ばれる)され、送電線の運用容量を気象条件によって管理して最大活用するダイナミックラインレーティングも検討されている。

貯蔵技術としては、日本が大きな設備容量を持つ揚水や、価格低下によって世界で大量導入が進む蓄電池、さらには液化空気貯蔵のLAESなどの新技術への期待も大きい。電力需要としては、CNに向けては省エネと、再エネ有効利用に直結する電化の促進に加え、ヒートポンプ(HP)給湯機やEV充電および、産業・業務の各種需要の時間シフト、さらにはデータセンターや半導体工場など新規需要の再エネ有望地域への誘導が有効である。調整力については、大半を供給する従来電源に代わり、PV・風力、蓄電池、需要などの分散型資源による供給を拡大し、化石燃料発電の運転台数を少なくすることで、出力制御量ひいては燃料費の低減につながる。

出力制御の抑制対策として、連系線の増強と定置用(系統用、需要側)蓄電池の適用が注目されているが、日本の設備増強コストの特性・運用特性においては、出力制御時間帯へのHP給湯やEV充電の需要シフトが短期的によりコスト効率の高い選択肢である。また、北海道・九州への半導体工場やデータセンターなど大規模需要の立地は、再エネの導入が先行するエリアでの需要増加という意味で、電源と需要のバランスを改善し、エリア間のNWのニーズを軽減する。そしてNW増強の「ワイヤ」対策の計画では、限られたシナリオによる費用便益分析ではなく、より広い選択肢を対象とした継続的な評価、検討が必要である。

CNへの移行において、日本の電力・エネルギーの供給コストは海外に比べて高くならざるを得ず、社会活動や産業を守るためには社会全体でのコストを下げる不断の努力が必要である。その中で制度、技術を磨くことができれば、エネルギー環境分野での国際貢献、産業競争力の向上にもつながる。再エネの電力NWへの統合には、よりコスト効率の高い対策を優先することと、情報・データと解析ツールの事業者および社会全体への適時・適切な情報提供に基づき3E(供給安定性、経済性、環境性)+S(安全性)を目指すエネルギーの議論の深化が必要であろう。

おぎもと・かずひこ 1979年東京大学工学部卒、電源開発入社。技術研究開発、設備保全業務高度化、技術戦略などに従事し、2008年から現職。専門はエネルギーシステムインテグレーション。