〈メディア人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙・大手D紙
フジテレビ問題は収束どころかグループ全体に飛び火。
メディア関係者とすれば他人ごとではない。
―今回は番外編。エネルギーは抜きにして、炎上し続けるフジテレビ問題を扱う。
A紙 1月17日のクローズ会見から、27日の10時間超の会見での新要素は、社長・会長の辞任、被害者に対する社長の謝意、加害者への具体的な聞き取り回数くらい。「公開処刑」でも状況は変わらなかった。この一連で印象的なのはフジの危機管理、特に初動の悪さだ。何か隠しているのではないかと疑われ、「社員の関与はない」と説明しても誰も信じない。一方、事実関係が不明な段階にスポンサーが一斉に離れるという判断に至るのもどうかとは思う。
B紙 関西電力が変圧器のPCB(ポリ塩化ビフェニル)基準値越えに関して、2月頭にコンプライアンス委員会の調査結果を公表。原因としてコンプラ意識の弱さ、業績優先の意識、正当化論理の構築―などを挙げたが、まさしくフジにも当てはまる。ただ、エネ会社の不祥事では業界紙やステークホルダーがかばうものだが、フジにはそうした味方はいない。
東電会見を彷彿? グループ傘下にも波及
C紙 フジの現場の人と付き合いがなく、これほど女性の権利が守られない職場なのかと衝撃を受けた。新聞の社風も遅れているが、テレビは輪をかけている。また、会見は1時間を超えたら後は見世物で、記者批判やフジ同情論などエンタメと化した。ところで10時間会見で思い出したのが、原発事故直後の東京電力の会見だ。中身が分かりづらく混乱ぶりも似ていた。
D紙 毎日6時間ほど開いていたね。東電には「ゼロ回答の天才」がいた。その頃からフリー記者が増え、当時の某政権幹部が記者クラブを批判していた。
いずれにせよ今回、記者は新しい情報を引き出せなかった。加害者が何をしたのか、なぜフジがかばい続けたのかを知りたいのに、質問が練れていない記者が多かった。むしろフジは同情論が出てきて助かったと思う。
C紙 引き出すような質問といのは存外難しく、特定の記者を批判する気はない。中には鋭い質問もあり、それに答えなかったフジが評価を上げたとは思えない。日枝久取締役相談役が辞めない限り状況は改善しないとの危機感があるのではないか。
D紙 日枝氏が辞めても重用された人が残る。幹部だけでなく、何人も同氏のコネで入社している。少なくとも第三者委員会の報告書ではプライバシーを隠れみのにせず、踏み込まないと収まらない。日頃、企業の不祥事をたたきまくる自分たちが逆の立場になったわけで、とにかく大手メディア不振が広がっている。スポンサーの反応を含め、嫌な雰囲気が漂い始めている。
C紙 これはフジ特有の問題で他局では起き得ないのか、もしくはテレビ局全体の問題なのか、はっきりさせるべきだ。一部の局は自主的に調査したというが、こうした視点をマスコミが持たないと今後足元をすくわれる。
ところで、フジと他局の文化の違いはあるのかな?
A紙 TBSは他社より上層部に意見を言える風土があり、社長のあいさつに役員がガヤを入れるそうだ。フジや日テレ、ましてやテレ朝ではできない。
B紙 かつてはフジテレビと産経新聞のトップは緊密な関係で、鹿内家を追放できたのもそのおかげだ。だが産経のトップが変わる中、日枝氏だけが残り続け、もうツーカーではない。
とはいえ、今回の件で産経も無傷とはならないだろう。産経の広告営業やイベントの協賛などは巻き込まれていると聞く。
A紙 フジから産経への広告もそれなりにあるようで、これがなくなると痛手となる。
B紙 日枝氏が辞めた後、フジと産経のつながりがどうなるかも注目だ。読売や産経はある程度エネルギーを冷静に報じる媒体。その一角が仮になくなると、エネルギーフォーラムの読者にとってショックかも?
文春にブーメラン 訂正に批判の声
―一方、週刊文春がフジ社員の関与を巡る文章を訂正し、そのやり方が批判されている。
C紙 よく読めば方向を少し変えたと分かるが、週刊誌を丁寧に読み込む人はいないよね。また文春側は、報道の大筋は変わらないので裁判になっても負けないという判断もあったのだろう。ただ、会見でもっと指摘する質問があってもよかった。
B紙 訂正は致命的ではない。従軍慰安婦論争と似ているが、直接的な「狭義の強制性」はなくとも、間接的な「広義の強制性」はあったとの強弁は可能だ。また、続報で上書きしての手打ち経験がある記者は多いはずだ。
A紙 訂正を出すかどうかは、社内でかなりもめたという。文春としては誠意で訂正したつもりが、結局批判されるのなら出さない方が良かったとなる。ただ、そこもメディアが世間ずれしている部分なのかも。
D紙 一般紙も大スクープだと報じ、結局間違っていてもそのまま、ということはある。文春は訂正しただけよくやったが、取材が甘いことがたたかれるのは仕方がない。それだけ世の中に見られる媒体となった。
A紙 最近、文春で特派の記者から本社のデスクになった人がいると話題になった。従来、特派は真偽不明の情報を集め見出しで突っ走る傾向にあり、本社のデスクが冷静に見てバランスを取るものだが、先ほど述べたような体制には危うさを感じる。
―奇しくもフジ特集の誤記で販売を中止したダイヤモンド社には賞賛の声が。文春編集部は何を思うのか。