【火力】中長期的な供給力確保へ 大局的な視点で俯瞰を

【業界スクランブル/火力】

2025年は、電力システム改革の各制度の検証が進められた。その中で、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が容量市場制度に関する意見募集「CfE」を行ったが、説明文の冒頭に「容量市場は日本全体で中長期的な供給力を継続して確保することを目指す」と記されていた点に違和感を覚えた。制度設計の議論の時点では、既設電源と新設電源を区別しない以上、資本費が軽い既設電源が有利になることが容認され、その結果、応札価格には減価償却費などの資本費は含めないとするという明確な方針が示されていたからだ。

しかし実際には、既設電源であっても設備維持や将来に向けた技術更新のための対応が不可欠であり、減価償却費の回収は固定費確保の根幹を成す。そのため近年では老朽火力の退出が加速し、資本費の重い新設電源は、熱効率の大幅向上が見込める一部のガス火力の更新計画に限られ、供給力が急速に市場から失われているのが実情である。

こうした状況を踏まえ、国やOCCTOはいつの頃からか容量市場が「将来の電源投資の予見性向上にも資する」と説明するようになった。しかし、制度の基本構造が変わらない以上、この期待は名目にとどまり、実効性に乏しい。とりわけ電力システム全体の不確実性といった構造的リスクを、減価償却費の回収もままならない発電事業者に一方的に負わせている現行制度では、供給力の安定確保など到底成し得るものではない。

中長期的な供給力確保に資する制度とするには、短期の市場にばかり目を向けるのではなく、中長期のコスト構造といった大局的な視点を持つことが肝要だ。(N)

【シン・メディア放談】柏崎刈羽・泊の再稼働を地元が容認 首長への批判記事に説得力なし

〈メディア人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙

柏崎刈羽、泊原発の再稼働に向けていよいよ動きが。その批判報道に目新しさはない。

―2025年11月21日、花角英世・新潟県知事が柏崎刈羽6・7号機の再稼働を容認。事故から14年、ようやくここまできた。

A紙 1年前、県民が判断するための議論が出そろった後に具体的な動きがあるだろうと見ていた。実際その通りになった。「KKの再稼働は難しい」との見方が一部あったが、県庁は長い時間をかけ、他地域とは比べものにならないほど丁寧に進めてきた。東京電力も小さなトラブルはあったが、着実に取り組んできた。

B紙 選挙をしなかったことは意外だったが、これ以上先延ばしはできず、知事が決断できる環境を粛々と整えてきた結果だ。資源エネルギー庁幹部が足しげく通い、県議や県首脳陣と直でやり取りし、行政がやれることは全てやったと思う。

他方、「拙速な判断」と報じた東京新聞などは現状を踏まえておらず、自治体を馬鹿にしている。事故から10年以上経ち、審査に合格し、電力会社はお金をかけてきた。それでも拙速と言うなら根拠を示すべきで、取材不足と言わざるを得ない。また、反対寄りの朝日や毎日含め、原発報道には目新しさがない。


「新潟スペシャル」の是非 地元紙も元気は良いが……

C紙 東京から見た感想として、KKが特殊とはいえ自治体のやりすぎ感がある。県議会で12月22日に知事の信を問うが、ここまでやる必要はあるのか。そもそも「地元合意」の範囲を巡る議論もあり、言い方は良くないが、手続き論で悪い前例とならないか心配だ。

A紙 確かに遅さは否めず、25年春ごろには賛成・反対両方が決断しないことを批判していた。ただ、前々知事から続く問題で、複雑な事情があった。

また「新潟スペシャル」というのはエネ庁発の造語のようで、県の手続きも、避難道整備も、東電の1000億円基金も、1・2号機の廃炉も、東電かつ首都圏に電気を届けるサイトだから特別、という考え方だ。

―ところで新潟日報は威勢が良いようで。

A紙 でも苦しい報道ぶりだ。1・2面は淡々と手続きなどを説明する一方、社会面ではアンケートを乱発したり、適当な人選で知事を批判したり。これまで再稼働阻止でまとまっていたが、それが難しくなり、悩ましさがにじみ出ている。加えて、地元では影響力ある媒体だが、読者はやはり高齢化。県民調査では、ネットなどで直接情報を取る傾向にある若年層で再稼働賛成が多く、同紙が主な情報源である高齢者に反対が多かった。

―国会議員の大半が立憲民主だが、その影響などはないか?

C紙 政治より東電が心配。こういう大事な局面でミスが起こらないことを祈る。

B紙 KK再稼働は東電の悲願だが、経験者がほとんどいない中、無事乗り切れるのか。東電は重要なことを同時にできなそう。福島第一のデブリ取り出しの延期などが予想される。

A紙 県の東電への信頼度は無いに等しいが、26年に最難関のKK再稼働を東電がクリアできれば、その意味は大きい。新増設に向けた政策議論などを行える雰囲気となるのではないか。

【原子力】台湾で運転再開の動き 日本の廃炉撤回は時遅し

【業界スクランブル/原子力】

台湾は3カ所の原子力発電所に各2基ずつ合計6基(他に建設中断が2基)を運転していたが、40年間の法定制限を守り、2025年5月17日に最後の馬鞍山2号を停止してゼロとなった。

一方、その4日前の13日に運転年数を20年延長する法律改正が立法院で可決された。さらに8月23日には馬鞍山1、2号の運転再開の是非を巡る国民投票が行われ、賛成が反対を3倍近く上回った。投票率が低く不成立となったが、エネルギー資源の乏しい台湾の人々の原子力への期待は圧倒的である。

11月27日に台湾の経産省は最初に停止して廃止措置が進んだ金山原発は難しいものの、国聖、馬鞍山の両原発は運転期間中に求められる保守点検を継続しており、再開は可能との台湾電力の評価報告書を承認した。同電力は26年3月に原子力安全委員会に対して運転再開の計画を提出する予定だが、実際の運転再開は安全審査や現地での検査を必要とするので数年先になる。日本が原子炉や発電機を納入する龍門原発2基の建設工事の再開を期待しよう。

米国ではミシガン州で廃止されたパリセード原発を買い取ったホルテック社が運転再開に方針変更し、エネルギー省や州政府の資金支援を受け原子力規制委員会に申請して審査が進んだ。25年11月には新燃料も届いた。本稿掲載号が発行される頃には運転している可能性もあり、その後は60年運転を80年に延長する手続きに入る予定である。

廃炉は発電収入を閉ざすので新増設へのキャッシュフローを失う。自由化だけが進んだ日本の多数の廃炉撤回は、すでに「時遅し」と言わざるを得ないのか。(H)

燃料規制交渉を巡る独伊対立の深層

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

欧州の政策メディアポリティコは2025年11月、EU(欧州連合)の燃料規制交渉を分析したレポート「Greening the gears」を発表した。35年のエンジン車販売禁止という目標が、EUの産業基盤を揺るがし迷走する実態を描き出している。

折しも欧州委員会は、25年12月に予定していた自動車の排出量規制に関する重要提案の発表を延期した。表向きは事務的な調整とされるが、その背景には「産業の生存」をかけた国家間の深刻な亀裂がある。その本質は、日本では全くといっていいほど報じられない23年の「外交的裏切り」である。当時、ドイツはEUと取引し、自国の高級車を守る高価な「合成燃料」を容認する条文(通称「リサイタル11」)を土壇場でねじ込む一方、共闘したイタリアが求めた「バイオ燃料」を切り捨てた。

この「リサイタル11」事件のトラウマが交渉を呪縛している。イタリアは「ドイツはまた自国の利益だけでEUと手打ちにする」との疑念から、今回はバイオ燃料の法的確約を求め、徹底抗戦の構えだ。日本の報道は、「欧州のEV推進疲れ」で独伊が「反EV」で結束しているという文脈で捉えがちだが 、深層は単純ではない。

延期の主因は、イタリアが自国の利益のため、バイオ燃料の容認や、燃料の脱炭素効果を計算に含める「CCF(カーボン・コレクション・ファクター)」の導入を絶対条件としている点にある。対するドイツはバイオ燃料のグリーン不正を懸念しこれに冷淡だ。つまり、現在起きているのは一枚岩の「エンジン復権」ではなく、どの燃料を生き残らせるかという、国益をむき出しにした戦いである。この「同床異夢」を見誤れば、EUの戦略を見通すことはできない。

(大場紀章/ポスト石油戦略研究所代表)

供給過剰と地政学リスク〈上〉 成果乏しいトランプ外交

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

WTI先物価格は2025年12月初旬、1バレル当たり58~60ドルで推移した。11月末にウクライナ軍の攻撃を受けて60ドル近くまで上昇したが、その後下落し、ウクライナ戦争和平実現への期待後退を材料に5日、一時60ドル超えした。本年幾度も見られた展開が繰り返された。

市場は、相反するベクトルを併存しながら展開している。1990年代に「OPECサイクル(油価の軟化が生産調整の厳格化に連動)」という言葉があったが、2025年には、国際政治的に「トランプサイクル」、あるいは、「TACO(トランプはいつも尻込みする)サイクル」とでも呼ぶべき展開がみられた。直近の動向では、供給過剰の観測(下落要因)の基調の下に、「露ウ和平交渉に進展」、「ウによるドローン攻撃で露のエネルギー輸出港で火災発生」、「ベネズエラへの攻撃可能性高まる」の情報(上昇要因)が流れ、市況は両要素を折り込むように、50~60ドル相場に収れんしたように見える。

そうした中で、外電が12月5日、「EU(欧州連合)とG7、ロシア産原油の海上輸送禁止を検討」と報じたが、同時に同措置は対露制裁措置のパッケージの一部となり、G7の合意を得る必要があるとした。ロシア産原油の海上輸送禁止措置はギリシャ、キプロス、マルタ籍船を使用できないようにするが、それらはロシア輸出原油の約3分の1に過ぎず、専門家は、ロシアが利用船舶を影の船団に変更するので影響は少ないと分析する。

他方、EUは同月3日、ロシア産天然ガス輸入を27年11月までに恒久的に停止することで大筋合意した。これらの案件から日本として懸念されるのは、サハリン2の適用除外問題への波及である。米国は日本にロシア産LNGの輸入停止を求めている。高市首相は10月28日、トランプ大統領訪日の際、「日本が撤退すれば中国が権益取得に動くことは明らかであると説得した」が、適用除外期限は12月19日に迫っている。

トランプ大統領の基本戦術の特徴は、TACOにあり、関税政策がその好例だ。同戦術はガザ和平計画に関しては、11月18日の国際連合安全保障理事会で賛成多数で採択(露中は棄権)されたが、第二段階への移行は難航が予想される。また、ウクライナ停戦では紆余曲折を繰り返している。11月半ば過ぎに突如表明された和平案(28項目和平案)は、ウクライナに一方的に譲歩を迫るものであったが、11月23日にスイスのジュネーブで開催された協議でウクライナが押し返し、大幅に修正された。交渉は依然進められているが、領土割譲をウクライナが飲めないことは明らかだ。

関税政策と異なり、戦争の調停など外交交渉は明確な理念を持たないTACOでは相手が同様の理念を持たない戦術で対応してくる場合には、交渉は成立せず、相手に終戦の意思がない場合、収集がつかなくなることは自明である。その含意は、ウクライナ戦争はプーチン露大統領が戦略意思を達成するまで終わらない、ということである。

(須藤 繁/エネルギーアナリスト)

【石油】暫定税率廃止は大英断 焦点は脱炭素時代の税制

【業界スクランブル/石油】

いわゆるガソリン税の旧暫定税率が廃止される。過去何度もトライされたが、断念され続けた大きな課題だった。国会対策上、野党に妥協せざるを得なかったとはいえ、高市早苗首相の大英断だ。都市住民にはあまり関係ないが、一方で参院1人区の地方住民にとっては家計に直結する大問題である。並みの政治家にはできないし、また税制のプロにもできない決断だ。

特定財源化(1949年)も、暫定税率化(74年)も、田中角栄氏の「遺産」である。道路財源があったからこそ、国造りが整備され、自動車産業は発達、巨大輸出産業となり得た。同時に、わが国の「土建家国家」「金権政治」の根幹でもあった。角栄氏を政治の師と仰ぎ、その引きで政治家になった石破茂前首相にはできない芸当であろう。

暫定廃止で年間税収1・5兆円(軽油を含む)を失う。当面は、年間2兆~3兆円と言われる税収上振れがあり、補助金や租税特別措置の見直しで代替財源には困らないだろうが、安定財源・恒久財源とは言えない。旧民主党政権が暫定廃止を断念した2010年当時、立憲民主党の野田佳彦代表は財務副大臣で、国民民主党の玉木雄一郎代表は財務省出身の1年生議員だった。その難しさが分かっているからこそ、与野党対決法案としたに違いない。

老朽化した道路の維持管理が社会問題化する中、今後1年程度をかけて検討される長期的・安定的な代替財源の行方が注目されるが、将来的には脱炭素時代の燃料課税のあり方も問題となる。以前にも書いたが、脱炭素社会ではガソリン税も、炭素税も無意味なのだから。(H)

NDC提出巡りEUで内部対立 意見まとまらず苦肉の策で提出

【ワールドワイド/環境】

2025年はNDC(国別目標)の改定年に当たり、地球温暖化防止国際会議・COP30に向けて35年目標の提出が締約国に求められてきた。この中で注目を集めたのが「気候リーダー」を自認するEU(欧州連合)のNDC提出を巡る混迷だ。

23年のCOP28で「化石燃料からの移行」が盛り込まれたことを踏まえ、EU内には35年に向けて野心レベルをさらに引き上げるべきかで野心派(北欧・西欧)、慎重派(東欧諸国)の意見対立が生じた。24年前半には欧州委員会が40年に1990年比マイナス90%という長期目標を提案したが、これは現行の2030年マイナス55%目標と50年ネットゼロ目標を直線で結んだ軌跡よりも削減率が大きいものであり、野心派の意見を反映したものであった。

しかし24年半ばの欧州議会選挙ではエネルギーコストの上昇への不満などが噴出し、右派、極右政党が議席を伸ばし、環境政党は議席を減らすこととなった。40年マイナス90%目標についてもフランスが「原子力の扱いが不明確」、ドイツが「産業競争力、電力価格への懸念がある」、ポーランドなどが「石炭依存が高い東欧諸国の転換コスト負担が大きい」との理由で反発が起きた。野心的な目標設定をけん引してきたドイツ、フランスが野心レベル引き上げに異を唱え始めたことは大きい。

25年前半になっても40年数値目標(その結果、導き出される35年NDC)、原子力、CCS(CO2回収・貯留)などの扱い、国際クレジット使用の可否で意見がまとまらず、NDCの提出が遅れることとなった。結局、EUは35年NDCとして「90年比マイナス66・3%~マイナス72・5%」という幅のある数値を提出した。前者の数値は現行の30年マイナス55%と50年カーボンニュートラルを結んだ直線上にあり、後者の数値は30年マイナス55%と40年マイナス90%を結んだ直線上にある。40年目標に合意できないことによる苦肉の策であった。

NDCを巡る加盟国間の内部対立はウクライナ戦争以降、エネルギー価格が高止まりし、米国、中国に対する産業競争力の喪失、雇用不安などをかかえ、従来のように脱炭素の高い理想を掲げて世界をけん引する余裕を失ったEUの苦悩を雄弁に物語っている。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院客員教授)

【ガス】LPガスのミッションを発信 認知拡大に課題

【業界スクランブル/ガス】

日本LPガス協会はこのほど、2050年に向けたLPガス業界の羅針盤となる「LPガス産業2050ミッション」および今後5年間の実行計画「LPガス産業2030アジェンダ」を発表した。エネルギーの安定供給と災害対応能力強化に向け果たすべき役割を明確にした。田中惠次会長は、「エネルギー安全保障および国土強靭化に最も貢献できるエネルギーはLPガス。ミッションとアジェンダを着実に実行することで50年カーボンニュートラル(CN)実現に貢献する」と宣言している。

ミッションでは、「災害時も平時においても常にご家庭へLPガスを安定供給する体制を堅持」、「常にお客様に選ばれるエネルギーサービスを提供し、持続可能な産業として発展」、「社会的ニーズに応え、LPガスによるCN化を着実に実行」の3点を挙げ、アジェンダでは具体的なアクションとして六つの方向性を示した。

田中会長は「まだまだ知られていないLPガスの魅力と価値をより深く理解してもらうことを念頭にしている」というが、「PR不足」はこれまで多くの場面で指摘されてきた。例えば、文科省が100%設置を目指す体育館空調において、災害時に避難所となり得る施設への供給に最適なエネルギーはLPガスと言えるだろう。しかし首長の間で、発電、空調での活用について浸透しているとは言えない。第7次エネ基では、これまで石油製品扱いだったLPガスが、初めて項目立てて重要なエネルギーと明記された。これは追い風となる。LPガスの認知拡大や理解促進に向け、業界一丸となった取り組みに期待したい。(F)

非化石柔軟性資源に高い関心 イタリアの初回入札に応札殺到

【ワールドワイド/市場】

欧州では系統柔軟性の確保が喫緊の課題となっている。とりわけイタリアの電力システムは、需要が集中する北部と再生可能エネルギー電源が集中する南部で対照的な需給状況が生じており、南北を結ぶ電力系統の増強と再エネ電源の導入のペースの不均衡に起因する、再エネ電力の出力抑制増加が課題となっている。同国の送電事業者テルナは、こうした容量制約の解消に向けて、2030年までに39‌GWの送電容量増強と71・5GW時の電力貯蔵設備の新設が必要になると分析している。

こうしたニーズに対処すべく、政府とテルナは系統用蓄電池(BESS)や揚水発電といった非化石柔軟性資源の容量調達メカニズム(MACSE)を設計し、欧州委員会によって23年末に導入が承認された。テルナの系統開発計画では、MACSEを通じて30年までに、出力制限が頻発する南部を中心に50‌GWの電力貯蔵容量を確保する目標が掲げられている。25年9月末に南部・島しょ部地域のプロジェクトを対象とする第1回オークションが実施され、合計14件、9・968GW時の貯蔵容量が調達された。選定されたプロジェクトは、28年までの運転開始が義務付けられ、貯蔵容量(MW時)ベースの固定プレミアムが運開後15年間提供される。

テルナは、応札容量が募集量の4倍超に達したことや加重平均落札価格が上限価格を大幅に下回った点を強調しており、事業者の関心の高さと競争環境の激しさがうかがえる。他方、エネルやエニといったイタリアの大手事業者によって低価格で入札された大規模プロジェクトが落札容量の大半を占めたことが低価格化の要因になったと分析されている。また将来のバッテリー価格の下落を見込んだ投機的な入札が多かった可能性も指摘されており、慎重な見方をする関連メディアも散見される。

またEU(欧州連合)の動きを見ると、電力市場改革とクリーン産業ディールを通じて、非化石柔軟性資源を対象とする財政支援スキームの共通設計要件が確立されるなど、支援の導入に向けた下地が着実に整備されつつある。MACSEはこうした支援スキームの先駆けと見られている。今回のオークションの結果についても、制度設計に関する知見の蓄積に資する重要な機会とみる報道も多く、今後も選定されたプロジェクトの事業実現までの道筋も含めて、制度の有効性を見極める必要があるとしている。

(伊藤 格/海外電力調査会・調査第一部)

【新電力】制度見直し議論真っ盛り 欠ける中長期の視点

【業界スクランブル/新電力】

電気事業に関連する諸々の制度の見直し・導入の検討が進んでいる。「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計ワーキンググループ」における、「小売電気事業者の量的な供給力確保の在り方と中長期取引市場の整備に向けた検討について」の検討は、その目的の整理が必要との見解に至った。3年程度の量的確保では燃料確保につながらないこともあり、本来の目的が定まっていない印象を受ける。議論の方向性に注目したいところだ。

高度化法の見直しも注目されている。25年に策定されたエネルギー基本計画における、40年時点の電源構成に合わせる形だ。ただ、以前の目標設定時とは異なり、国際的なイニシアチブを表明している企業の多くが自ら再生可能エネルギーを確保する状況であり、小売電気事業者だけに目標を課すことは実態にそぐわない。GX―ETS第2フェーズの導入も間近に迫る。向こう数年の実態としての再エネ調達に実務的に沿った形、かつ追加性のある非化石電源の導入のインセンティブにつながる制度設計を期待したい。

足元では、系統用蓄電所の接続検討増加による系統連系の問題が顕在化している。検討する間に系統の状況が変化し、何度もやり直さなければならない案件も多発している。まっとうにビジネスを検討している事業者だけを検討の俎上に載せる整理が目下の課題である。

高市早苗政権になり、物価高対策・社会保障料の見直しなどが大きな話題となりつつある中、中長期的なエネルギーに対する議論が論点として薄くなっていると感じる。もう少し踏み込んだ議論に期待したい今日この頃だ。(K)

COP開催地近傍の石油開発 支持したルーラ大統領に批判

【ワールドワイド/資源】

ブラジルの石油生産量は、2025年10月に日量403万バレルと初めて400万バレルを上回った。リオデジャネイロやサンパウロの沖合に延長約1000㎞、幅約100㎞にわたり広がる下部白亜系岩塩層直下の炭酸塩岩を貯留岩とする地質構造、プレソルトの生産がこの増産をけん引した。今後もこのプレソルトを中心に増産が計画されている。ただし、新たな大規模油田の発見がなければ、生産のピークは28年から35年となる見込みだ。

その後のブラジルの生産維持、増産の鍵を握るとされるエリアの一つが、アマゾン川河口に広がるフォズ・ド・アマゾナス盆地だ。同盆地は有望エリアとされながらも、稀有な生態系を有することなどから掘削が認められない状況が長く続いていた。国営石油会社ペトロブラスが掘削許可取得に奔走し、25年10月にようやく掘削が開始された。

ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は環境保護政策を重視しているが、クリーンなエネルギー源への転換を進めるための財源として石油収入を利用する考えで、石油、天然ガスの探鉱・開発に注力している。フォズ・ド・アマゾナス盆地での掘削が可能となったのも、ルーラ氏の後押しがあったためと見られている。

しかし、このようなルーラ氏の姿勢が同年11月にブラジル北部ベレンで開催された地球温暖化防止国際会議・COP30で波紋を呼んだ。ベレンはアマゾン川の河口付近に位置している。ルーラ氏は、世界最大の熱帯雨林アマゾンを有するブラジルが、熱帯雨林を保護し、気候変動の救世主となるとともに、森林を保有する国々が森林伐採や森林破壊の被害者として気候変動対策の資金を受け取れるようにしたいとの思いのもと、この地をCOP30の開催地に選んだ。

そのルーラ氏がベレンの目と鼻の先の環境的に極めてぜい弱な海域での掘削を支持したということを、環境保護団体や先住民コミュニティなどが強く非難し、この掘削の差し止めを求め訴訟を起こしたり、COP30の会場に侵入したりして抗議活動を決行したのだ。

アマゾン川河口での掘削に対しては、より急進的なマリナ・シルバ環境・気候変動担当大臣など、ルーラ政権内にも根強い反対派がいる。これら内外の批判に対応しながら、ペトロブラスは掘削を完遂できるのか、そして、油田発見や開発、生産に結びつけることができるのか状況を注視したい。

(舩木 弥和子/エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

【電力】中長期市場の趣旨は理解も 議論の客観性に疑問

【業界スクランブル/電力】

2025年6月以来、議論されてきた「小売電気事業者の量的な供給力確保」について、原案が年末に提示された。本案は、国際燃料価格の高騰時に、スポット電力市場からの調達に依存する小売事業者が経営悪化により退出し、需要家に負担や混乱を招いたことから、導入が検討されたものである。

原案では、実需給の3年度前に想定需要の5割、1年度前に7割の供給力確保を求める。小売事業のリスク軽減とともに、燃料調達など発電事業の予見性を上げることも狙いだ。同時に中長期市場の導入も計画される。

趣旨は分からぬでもないが、この問題の本質は、スポット市場の価格が‶安値安定するもの″と市場参加者に誤解させてしまったことではないか。教科書の世界の「完全市場」を前提にした「限界費用」入札を強制までしたことが、市場が発信すべきシグナルを奪っている可能性については、もう少し真面目に議論されるべきではなかったか。売手の手の内が見える緊張感のない市場で、調達した電気をそのまま顧客に流すだけの安易な事業者を増やすために市場が作られたはずはない。

商品の″いま現在の価値″を決定するスポット市場は、市場取引の根幹と言える。根幹の問題を別の手法で解決しようとすれば、新たな矛盾を産むことになりはしないか。例えば、「限界費用」入札のスポット市場と「固定費と可変費」の中長期市場が本当に共存できるのかということだ。

「電力システム改革の検証」から始まったが、旧来のメンバーを中心に据えた議論では、客観的な「検証」をする意思がなかったと言われても仕方がない。(M)

円安是正からの逃避 暫定税率廃止は天下の愚策

【今そこにある危機】小山正篤/国際石油アナリスト

円安を主因とする燃料油高への対応が補助金や減税でいいのか。

こうした政策は円安圧力となり、原油輸入費を押し上げてしまう。

燃料油価格補助金に続くガソリン・軽油の暫定税率廃止は、日本自身による「日本弱体化政策」だ。

日本はこの4年間、円安が原油高の主因をなす現実から逃避し、巨額の補助金で国内石油価格を操作して「仮想現実」に自閉してきた。その逃避と自閉の延長線上に、今回の暫定税率廃止がある。これが衆参両院で全会一致、まさに挙国一致で決定されたところに、日本の民主政の劣化が鮮明に現れている。

政治が価格を決め続けた4年間だった


62年前の税率に回帰 妥当性問わず思考停止

ガソリン・軽油の本則税率は62年前に当時の道路財源として決まったものだ。今日の日本への妥当性は一切ない。

1964年度、第3次池田勇人内閣の下で税率をガソリン1割、軽油は2割引き上げたのが、今日の本則税率だ。第4次道路整備5カ年計画に沿った特定財源だった。ガソリン税率28・7円は現在の貨幣価値では140円以上に相当する。国内総生産(GDP)も今の5分の1に満たぬ日本が、成長の鍵となる社会資本に投じるため、あえて戦略的に行った増税だった。その後、74年度に税率引き上げが暫定税率として行われて以来、暫定税率は税収見積と道路予算を整合させる調整項となった。

したがって2009年度に一般財源化された時点で、税率を本則と暫定に分ける理由は失われていた。安全保障などを含む広い視点から、税率・税制を抜本的に見直し、それを本則税率に一本化して定めるべきだった。この必要性は今日でも同じだ。

しかし国の将来への思考を欠いたまま、目先の値下げにとらわれて62年前の名目税率に戻す─これが次世代に残すのは「大安売り」の石油燃焼後の二酸化炭素と、一層の財政負荷だけだ。燃料油高の原因は原油高だ。その対策は何より原油輸入代の低減だ。日本はこの本来の原油高対策から逃げ続けている。

すでに3年以上、日本の原油高の主因は円安だ。22年1月時点からの原油輸入価格の上昇は、24年平均では9割弱、25年は本稿執筆時点で100%が円安効果による。ドル建て輸入価格は24年11月以降の低落ですでに「原油安」だ。もし25年6月に22年1月と同じ1ドル=115円だったら、ガソリン価格は補助金なしで約160円まで下がっていた。 

原油高がすぐれて円安問題である以上、その対策も「円の価値の防衛」を基本とせねばならない。しかし燃料油補助金も暫定税率廃止も、財政規律を犠牲にした安易な石油消費・輸入の支援であり、逆に円安圧力を生む。すなわち日本の原油輸入代を押し上げる「原油高誘導策」だ。

22年3月以降、燃料油補助金は実質的に政府による「国内価格操作事業」として継続した。燃料油小売価格は国際価格との連動性を失い、世界の石油需給動向から遊離した「仮想現実」と化して低位安定した。暫定税率廃止もこの「政治家が石油価格を決める」という流れの中で決まった。国際石油価格の変動を迅速に国内に伝え、無数の経済主体の行動を共通に方向付け、能動的な適合を促す。それが国内市場の価格機能だ。日本と世界の石油情勢を結ぶ手掛かりであり、石油需給調整の自律神経だ。 

今に至る約4年間、日本はこの自律神経をまひさせてきた。省・脱石油の努力をせずとも、日本のガソリン価格はインド大都市圏をも下回る廉価に人為的に抑えられた。今や国費負担による燃料油低価格は強固な既得権と化している。これは1970年代の石油危機を積極果敢な燃料転換、技術革新、産業構造転換によって克服した日本の姿と、対極にある。国民の創造力を自ら萎縮させ、原油高への対応力を衰弱させている。

迷惑メガソーラーはあくまで一部 地域裨益型まで排除は勿体ない

【オピニオン】増川武昭/太陽光発電協会「JPEA」事務局長

2024年の1年間で新規に導入された太陽光発電(PV)は世界全体で6億kWに達し、日本の最大電力需要の4倍近くの容量が、たった1年で建設されたことになる。他方、国内におけるPV導入量は減少傾向にあり、24年の導入量は世界の1%未満と残念な状況にある。

国内の電力需要の10%程度を賄うまでに拡大したPVだが、近年は地上設置を主として新規導入が大きく落ち込んでいる。第7次エネルギー基本計画では、40年の電源構成に占めるPVの割合が23~29%とされ、現状比で2.2~3倍近く増やす必要があり、達成は容易ではない。

新規導入量減少の理由として、残された適地が少ないからとよく言われるが、日本の平地面積(約13万平方㎞)に占める既設の地上設置PVの面積は0.4%程度で、屋根設置を含めても0.6%程度に過ぎない。地域と共生し荒廃農地の活用などによって地域経済に貢献するようなPVについては、まだまだ導入の余地があることは明らか。もちろん、地域との共生も法令順守もできないようなPVは撲滅されるべきである。

地上設置型が減少している理由としては、系統制約や規制強化などの影響があるが、コスト低減を上回るFIT(固定価格買い取り)価格の低下による事業予見性確保の問題が大きい。例えば、足元の地上設置の平均的な発電単価は10~13円/kW時だが、買い取り価格が9円未満となったFITでの新規開発は難しくなっている。

解決には、FITによる支援がなくても自立的に導入が進むことが肝要。現在その自立に近づいてはいるが、そのためには一層のコスト低減に加え、需要家による長期買い取りなどに基づくPPA(電力購入契約)事業の拡大、さらには予見性が確保できるカーボン価格の整備が求められる。自立に近づいている事業用PVについては、FIT/FIP(市場連動買い取り)の支援はもういらないという意見があるが、小さな支援で自立という大きな効果が期待できるPVこそ公的に支援する意義と価値があるのではないか。

PVの健全な普及拡大には、事業者にとっての事業予見性確保が重要だが、大前提として、法令順守のみならず地域との共生が不可欠。山林を切り開き環境破壊が懸念されるようなメガソーラーは、規制強化に加えコスト的に合わず今後は激減するだろうが、これからは地域に貢献し地域から歓迎されるPV事業を目指すべきだ。地域資源である太陽の恵みを活用し、農業の担い手が主役の営農型や、地域主体で地産地消が可能なPVだからこそ、地域に便益をもたらす再エネになり得るし、実例も少なくない。一部の迷惑事例を理由に、地域に裨益する大きな可能性を秘めたPVを潰してしまってはあまりにももったいない。

ますかわ・たけあき 京都大学工学部資源工学科卒。1985年昭和シェル石油入社。分散電源事業課長、電力販売課長として電力ビジネスに携わる。2013年ソーラーフロンティア出向。17年6月JPEA事務局長。企画部長を経て23年1月事務局長再任。

地球温暖化リスクへの備え 「適応策」をビジネス機会に

【脱炭素時代の経済評論 Vol.22】関口博之 /経済ジャーナリスト

地球温暖化対策において温室効果ガスの排出を減らす「緩和策」と、気候変動による影響を軽減しリスクに備える「適応策」は車の両輪とされる。特に途上国での適応策が急がれるが、それにはやはり資金が必要だ。2025年11月にブラジルで開かれたCOP30(国連気候変動枠組条約締約国会議)では「適応資金を35年までに3倍に増やす努力」が呼びかけられた。前年に決めた「35年までに年3000億ドル」の途上国支援の内訳として適応により手厚く資金を回すことになるだろう。

資金ニーズは高い。国連環境計画は途上国側のニーズが30年までに年3870億ドル(約60兆円)に上ると推計している。こうした中、日本側でも「当然、日本は資金の出し手だが、その使途を日本企業のビジネスにつなげられないかという課題認識は強く持っている」(町井弘明・経済産業省地球環境対策室長)という。

経産省が発行する事例集

「適応策をビジネスに」の発想だ。インフラ強靭化、気象観測や監視・早期警戒システム、エネルギー安定供給や農業生産基盤の強化などもビジネスになり得る。レジリエンス強化はもともと、日本企業が得意とするところ。経産省は途上国での「適応ビジネス」のベストプラクティスを事例集としてまとめ、16年から毎年公表している。最新版には58例が載っている。

例えば防災情報システムでは大分市のスタートアップによる事例を紹介。気象レーダーや河川の水位、ドローン映像など国や自治体、研究機関らが別々に持っているデータを収集・分析することで水害の危険情報を行政や住民がいち早く得られる仕組みを作るもの。インドネシアでの導入を目指しマスタープランの策定を働きかけている。

堤防補強などインフラ投資には際限なく予算が必要になる恐れもあるが、こうした早期防災情報で迅速な避難誘導につなげれば投下費用を抑えつつ防災効果を高めることができる。インフラ建設で圧倒的に優位な中国に対し、日本はこうしたソフト力で対抗するのが上策だ。

「『台風発電』と衛星通信サービスのパッケージでの提供」を掲げるベンチャーもいる。通常の風車のようにプロペラが回るのでなく、垂直軸に取り付けた円筒形の羽根が回転して発電するマグナス式風車を使い、台風でも発電が可能だという。かつ災害時にはこの電力を使って衛星通信が行えるように設計されている。フィリピン島しょ部で事業化している。

確かに「種」はある。経産省も新設した「グローバルサウス補助金」を使い支援しているが、なかなか案件組成にはつながっていないという。なぜか。「適応ビジネスは技術単体だけでは成立しない。複数の技術、事業者を巻き込みサプライチェーンを作っていくのが難しい」と町井室長は指摘する。自ら案件を持ち歩いて参画者を募る、「適応ビジネス」をけん引しようというプレーヤーがまだ乏しいというのだ。途上国に防災・減災の「種」をまくだけでなく「ビジネス」に育てる、そんな挑戦者を、と望みたい。そのことは日本が拠出する適応策のための資金を有効活用し、「循環」させることにもつながるだろう。