〈業界人編〉電力・石油・ガス
今年も話題に事欠かないエネルギー分野。業界は何を恐れ、どこに活路を見出すのか。
─仕事始めの1月5日に衝撃的なニュースが飛び込んできた。中部電力・浜岡原子力発電所の審査で不適切事案が発覚した。
石油 基準地震動を過小評価して原子力規制委員会に報告していた可能性がある。7日の会見で山中伸介委員長は「明らかな捏造であり不正である」と厳しく批判した。昨年12月19日に規制委に報告が上がった時点で、いつ公表するか議論になったはずだ。年末は泊や柏崎刈羽など再稼働を巡って政治が目まぐるしく動いていた。政策を後退させかねない話題は年明けに、という判断だったのだろうか。
ガス「結構寝かせたな」という感想を持った。広報的にはどこかに抜かれるのだけは避けたいので、規制委に報告が上がった時点ですぐにリリースしたい。静かな年末年始だと思っていたが、担当部署は総出で想定問答を作っていたのかな……。
石油 会見翌日の1月6日は朝日と毎日が1面トップ、読売と日経は1面、産経は2面だった。電気新聞は7日に1面だったが、トップ記事ではなかった。
ガス この座談会を行っているのは1月上旬だが、左派系の新聞は規制委で自然災害分野を担当していた石渡明前委員や、「活断層」の有識者会合を主導した島崎邦彦元委員らのインタビューを載せてきそうだ。4日には、2006年に金沢地裁で志賀2号機の差し止め判決を下した井戸謙一氏のロングインタビューを掲載していた。
電力 万が一、各事業者が地震動の見直しを迫られたら大変だ。山中委員長は「ほかの事業者の調査はしない」と言ったが、世論がどうなるか。ほかのサイトの再稼働はともかく、美浜のリプレースなどに影響しなければいいが。
石油 メガソーラー規制が強化され、洋上風力はとん挫、原子力も立ち行かなくなれば、第7次エネルギー基本計画は見直しを余儀なくされてしまう。エネ基は必要があれば再検討する建て付けになっているので、今年見直されてもおかしくはない。
電力 50年カーボンニュートラル(CN)に向けて「オントラック」ではなくなるかもしれない。現実路線に寄せて「70年CN」や「2100年CN」に変わっていくのかも。
グリーンが消えた紙面 今年こそ終わるか料金補助
─年末年始の新聞記事はどうだった?
石油 アメリカによるベネズエラ攻撃まで、エネルギーの「エ」の字もなかったね(笑)。一昔前なら、日経がDAC(直接空気回収技術)を一面に持ってきたこともあった。それが今や広告含めてもほとんど出てこない。現実的なエネルギー政策を考えるようになったのか、グリーンでは飯を食えなくなったのか。
ガス 東京は年末に国際大学学長の橘川武郎氏のロングインタビューを掲載していた。柏崎刈羽は売却して廃炉費用に充てるべきだったと、以前からの持論を展開していた。
電力 東日本大震災15周年特集が始まっているが、その直前に柏崎刈羽は電力供給を再開する。中電の問題と絡めて、メディアがどんな報道をしてくるか。衆院選後の予算審議に埋もれそうな気もするが。
石油 年末年始の話題を一つ思い出した。大みそかでついにガソリン税の旧暫定税率が廃止になった。軽油引取税の同税率も4月1日で廃止になる。「暫定」だから廃止すべきというのは正論だが、財政・税制・エネルギー政策を俯瞰して正しかったのかは疑問が残る。衆参で自公が過半数を握っていれば廃止はなかっただろう。将来振り返れば、自民が最も政治力を失っていた1年足らずの間に行われた愚策と評されるかもしれない。
ガス 自公過半数だった時代から続いている愚策が、電気・ガス料金補助だ。ニュースを見ていると、「今年値上がりする商品がこんなにあります」と言った後に、「でも、ガソリンや電気・ガス料金は安くなります」と紹介していてため息が出る。自治体に負担をかける直接給付などは時間を要するが、電力・ガス会社に任せればすぐにやってくれるという仕組みができ上がってしまった。
電力 国会の論戦でも、野党が政府に物価高対策について尋ねた時、最初に首相が回答するのが料金補助だ。野党も「それをやるのは当たり前」という雰囲気を出している。
新エネより燃料混合 凪のガスと荒波の電力
─今年の注目点は。
石油 脱炭素政策の減速と路線変更だ。石油業界の合成燃料だけでなく、都市ガスのeメタンも厳しい。やはりトランジションはバイオエタノールに象徴される「混合」が本命になる。そして、トランジションが50年以降も続いていくと思った方がいいのかもしれない。グリーン全盛の数年前には考えられなかったが、全く別の燃料に変えなくても飯は十分に食っていけるということだ。
ガス 電力に比べると大きな話題はない。強いて言えば、GX―ETS(排出量取引制度)を注視している。排出枠の上限価格が5000円を下回る4300円になったが、製造業の海外移転など価格を高くし過ぎるデメリットを懸念したのだろう。高ければ燃料転換の需要が出てくるのでビジネスチャンスだが、ガスも化石燃料なので業界としてはイーブンな立ち位置だ。
電力 再エネも気になるが、今はとにかく原子力のことしか考えられない……。
─総選挙でエネルギー政策は争点の一つになるのか。