【業界スクランブル/火力】
今年もはや師走である。緊迫する国際情勢や長引く残暑などの影響はあったものの、幸いなことに著しい電力不足や卸価格の高騰などは起こらなかった。しかし、表面的に平穏であっても、水面下での供給力不足はのっぴきならない状況となっている。
背景をみると、再生可能エネルギー比率の増加や脱炭素の取り組み、デジタル化の進展による需要増などの要因が絡み合っているが、電力システム改革で整備を進める市場制度が思惑通り機能していないことによる影響も無視できない。予備電源制度もその一つで、9月30日を期限に東西で100万kWずつ募集したものの、発電事業者からの応札はゼロだった。
予備電源は、想定を超える需給ひっ迫時に休止中の電源を再稼働させ、供給力不足を補うという仕組み。主に経年火力が対象で、休止している間は手間とコストを極力かけないようにするが、再稼働時には適切な設備の点検と修繕が必須となる。その際、停止中の状況や経年化の影響で思わぬ不具合に見舞われることも多く、再稼働に係る費用を事前に正確に把握することは極めて難しい。
予備電源の募集要項によると、事前に提出された想定立ち上げコストを上回らないことを確認するとされている。これでは発電事業者にリスクがのしかかるばかりで、こんな制度に応札できないのは当然の結果だったのである。
遅ればせながら事業者へのアンケートを始めたようだが、このことは現場の実情を理解しないで制度をつくったことを示している。火力発電への配慮が足りない市場制度が、供給力不足を引き起こしているのである。(N)



