電力供給システムは、様々な集中型と分散型の技術および調整メカニズム(需給バランス)を環境適合性、経済性、安全性、アクセプタンスの観点から最適に組み合わせることによって構築されなくてはならない。このことは、再生可能エネルギーが大量に導入される状況においても変わることはなく、電力供給システムは、必然的に集中的要素と分散的要素を併せ持ったものとなると考えられる。同電源が飛躍的に増大するドイツでも、この点に関しては専門家の間でコンセンサスが見られる(Nationale Akademie der Wissenschaften Leopoldina et al. 2020)。集中型か分散型かという単純な二項対立に焦点を当てる議論はあまり意味がないと言えるだろう。
A 両社とも、数年前から予想されていた通りのトップ交代となった。九州に関しては実はもう一人社長が必要で、ホールディングス(HD)体制への移行と同時であれば取締役の中野隆さんが有力視されていた。ところが中野さんの退任が決まってしまった。HD化を来年以降に控え人事予想が不透明になってきた。
B 西山さんと中野さんがHDと新九電の社長と見られていたから、九電社内はショックもあるようだ。HD化のタイミングで中野さんが復帰することはあり得なくないけど、その目はほぼ消えたのかな。
C HD化のポイントは再エネ新社の立ち上げにあるが、それが遅れていると聞く。HD社長には池辺さんか、西山さんがスライドするかだろう。後者の場合、取締役への昇格が決まった中村典弘さんが次期社長候補に浮上してくる。
デジタル産業は電力経営にどのようなインパクトを与えるか
―新社長にとっての経営課題は。
B 石山さんにとっては、女川2号の再稼働後をどうかじ取りするかが非常に重い課題だ。審査では東通1号が先に進んでいるけど、地震や大津波への安全対策で時間もお金も相当かかるらしい。合理的に考えたら女川3号を優先するべきだけど、地元の納得を得るのが難しそう。青森県内だから中途半端に対応してしまうと、六ヶ所の核燃料サイクルにも影響しかねないしね。非常に難しい立ち回りが求められる。
A 西山さんにとっての経営課題は原子力の新設。ずばり川内3号をどうするかだ。廃炉を決めたサイトではなく、廃止を決めた電力会社の他サイトでも新規建設ができることになり、川内3号が意識されていてプレッシャーが高まったんじゃないかな。固定費回収の仕組みやファイナンス支援の制度が整っていないので具体的にはまだ先の話だが、いずれにしても新社長として矢面に立って調整していくことになる。
C 九電はHD化に合わせてグループ会社を整理統合しようとしていて、これに結構な時間と労力がかかっている。部門ごとに他社とのアライアンスを組みやすくするという狙いがあるのは確かだろうけど、池辺さんの問題意識は社長の業務の7割を原子力が占めてしまっていることにある。HD社長はグループ全体の事業を統括し、小売り・発電会社の社長が原子力を見る―とすみ分けをしたいのが本音のところだ。
B 東京電力HD、中部電力はそれができなくてHDが原子力を引き継いでしまった結果、社長が奔走せざるを得なくなったしね。同じ轍を踏みたくないという思いは理解できる。九州モデルがうまくいくと、各社に波及していくかもしれないね。