欧米と比較する日本のガソリン価格/原子力再稼働の料金への影響
Q 国の補助金がない場合、日本のガソリン価格は欧米の主要国と比べて高いのでしょうか?
A わが国の2024年2月最終週のガソリン店頭平均小売価格は174.4円/ℓでしたから、為替レートを149.3円/ドルとすると1.168ドルになります。国際エネルギー機関(IEA)の3月の石油市場報告によれば、ドル換算でフランス1.922ドル、ドイツ1.699ドル、英国1.967ドル、米国は0.848ドルと、日本のガソリン価格は、欧州主要国と米国の中間だといえます。
2月最終週の補助金は21.1円でしたから、仮に補助金がなければ、195.5円になっていたとして、ドル換算で1.309ドル相当と、結論は変わりません。やはり、日本に比べて欧州諸国はガソリン税(環境税を含む)と付加価値税(VAT)がはるかに高いのに対し、米国ではガソリン税がほとんどかからないからでしょう。
また、税抜き・ドル換算で比較すると、日本0.837ドル、フランス0.820ドル、ドイツ0.911ドル、英国0.853ドル、米国0.746ドルと、米国が約10%安くなっていますが、日欧ではほとんど変わりません。税抜きで補助金のない場合は、日本は0.978ドルとなり、欧州諸国よりやや高い水準となります。ガソリンの場合、国際比較をする上では、補助金の要素より、税金の要素がいかに大きいかがわかります。
ただ、考慮しなければならないのは、最近の円安です。ウクライナ侵攻以前は1ドル110円程度でしたが、150円水準まで円安・日本安が進んでしまっていますから、それだけで、ドルベースでの比較では、日本の商品に国際競争力があることになってしまいます。その意味では、現時点で内外価格差を考えることはあまり意味があるとは言えないかもしれません。
回答者:橋爪吉博/日本エネルギー経済研究所石油情報センター事務局長
Q 東日本地域での原子力再稼働は、新電力を含むエリアの電気料金にどう影響しますか?
A 発電原価の観点では、火力発電における燃料費のようなランニングコストがかからない原子力は火力に比べ優位性があるため、再稼働は電気料金を引き下げる要素になります。昨年に規制料金の値上げ申請をした一部の旧一般電気事業者の値上げ申請書においても、原子力の再稼働によるコスト低減効果が反映されています。ただ、原子力の再稼働による発電原価の低減効果は値下げ原資となり得ますが、これだけで大幅に電気料金が下がることはあまり期待できないと考えます。
なぜならば、電源構成割合を考えると、現在想定されるユニットの再稼働によるコスト低減効果が発電原価に及ぼすインパクトは、東日本エリアでは西日本エリアほど大きくないからです。また、市場価格は需要と供給で決まることを踏まえると、電力広域的運営推進機関が公表しているように、人口減や省エネが進展するなどいろいろなシナリオがある中で、今後予想される電力需要はデータセンターや半導体工場の新増設などで産業用の需要がけん引し、全体では伸びることが想定されています。供給サイドでは、原子力の再稼働や再生可能エネルギーの導入拡大による供給力の増加要因がある一方、非効率石炭火力のフェードアウトなど老朽火力の退役による供給力の減少要因もあります。これらの変数で価格の想定が変わるため、予想することは非常に困難です。
将来的に再稼働する原子力が増加し、電源構成に占める割合が増えると電気料金が下がる可能性はありますが、安全対策へのコスト負担が以前より大きくなっていることに加え、今後増大する送電系統整備に関わるコストの上乗せを考慮すると、大幅な値下げはあまり期待できないでしょう。
回答者:齋藤克宏/EY Japan電力・ユーティリティセクターリーダー






