膨大な電力を消費する半導体産業やデータセンターのプロジェクトが次々と立ち上がっている。
需要家が望む安定、低廉かつ低炭素な電力供給の実現が、「失われた30年」から抜け出す条件だ。
近い将来、日本の電力需要が爆増する―。ほんの2、3年前、そのような未来をどれだけの人が予想していただろうか。
長らく続く景気の低迷や省エネの進展、そして新型コロナウイルス禍が影響し、この10数年、国内の電力需要は漸減してきた。昨年までは、その傾向が少なくとも2030年代初頭までは続くと見られていた。
それが一転。電力広域的運営推進機関が3月に取りまとめた「供給計画」における今後10年の電力需要想定では、33年度に全国の需要電力量が8345億kW時と、24年度の8056億kW時から増加(図1)。これまでとトレンドが大きく変わったことが示されたのだ。

出典:広域機関
背景には、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の加速などにより、千葉県印西市をはじめ東京・大阪圏でデータセンター(DC)の建設が進んだこと。それに、熊本県菊陽町でのTSMC(台湾)、北海道千歳市でのラピダスなど、半導体産業の集積が拍車をかけようとしていることがある。家庭用の電力消費量が減少することは変わらないが、こうした新たな需要が全体を押し上げるという構図だ。
足もとでは、需要増が局所的であることもあり、今のところ一般送配電事業者による送変電設備の増強などで対応できている。だが広域機関は、DCや半導体工場の新増設により、24年度には48万kW、33年度には537万kWもの最大電力需要の増加を見込む(図2)。発電所建設のリードタイムはLNG火力で6年、原子力では17年で、現状では、10年でこれだけの需要を賄えるような発電所を建設することは非現実的と言わざるを得ない。

出典:広域機関
今夏(7~9月)の電力需給は、(10年に1度の厳暑を想定した)H1需要に対する予備率が安定供給に最低限必要な3%を上回るものの、7月の北海道・東北・東京エリアは4・1%とかなり低い。原子力発電所の長期稼働停止、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う火力発電所の休廃止が加速する中、需要が求める供給力を確保できるのか。不安視する向きは多い。
再エネでDC運用 大規模供給に課題
DCを利用する企業の多くは、事業活動の使用電力を全て再エネ由来とすることを目標とする「RE100」に加盟していたり、脱炭素化を宣言したりしている。世界的なDC急増に伴うCO2排出量が問題視されていることもあり、運用にもグリーン化を求める意向が強い。
NECは、神奈川・兵庫県内で100%再エネ電気を活用したグリーンデータセンターを運用。今のところ、①電力会社のグリーンメニューの購入、②非化石証書、③太陽光パネルでの自家発電―の三つの方法で再エネを調達している。DCは24時間365日、一定の電力を消費するだけに、「需要と供給がマッチするよう再エネ電源を確保することが本当の意味でのグリーンという見解もある」(データセンターサービス統括部の伊藤誠啓統括部長)と、今後、「生再エネ」による運用に挑戦するべく施策を考案中だという。
いち早くそれに取り組もうとしているのが、京セラの子会社である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が、北海道石狩市で今秋開業予定の「ゼロエミッション・データセンター(ZED)」だ。
再エネ電気特定卸供給制度を活用し、グリーンパワーインベストメント(GPI)の小売り子会社を通じて、石狩湾新港洋上風力発電所由来のトラッキング付きFIT非化石証書と合わせた電気の供給を受ける。自社開発の太陽光発電所(1800kW)と蓄電池(6000kW時)を組み合わせ、KCCS自らが需給調整を担い、使用電力の100%を再エネで賄う。
ZED建設を発表した19年は、脱炭素の流れが本格化する前だったが、「発電所と需要設備を一体開発しなければ、再エネの普及拡大は行き詰まる」という、メガソーラーを中心にFIT再エネ開発を手掛けてきた同社だからこその判断があった。デジタルソリューション事業部の尾方哲・デジタルインフラ部長は、「同プロジェクトを、化石燃料依存を少しでも減らす取り組みにつなげていく」と意気込む。
冷涼な気候で空調用の電力消費を抑制、東京・大阪圏との同時被災リスクを低減でき、さらには再エネポテンシャルが高い北海道では、ソフトバンクが苫小牧市で再エネ100%で運用するAI用DCを29年までに建設する方針を打ち出すなど、石狩・苫小牧を中心に複数のプロジェクトが進んでいる。











