【マーケット情報/5月5日】原油続落、需要低迷に加えて供給過剰の見方が台頭


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の主要指標は、軒並み続落。マクロ経済の成長鈍化が顕著となるなかで、供給過剰の見方が広がったことから、市場では売りが優勢となった。

米国では、金融政策や経済統計の発表を受けて、景気の冷え込みと需要後退の見方が広がった。連邦準備制度理事会(FRB)は、新たな銀行破綻を受けて金融不安が増すなか、追加の利上げを発表。次回会合での利上げ停止を示唆したものの、強材料にはならなかった。また、第一四半期のGDP成長率は、個人消費などで回復が見られたものの、民間在庫投資が足かせとなり市場予測を下回った。

中国では、製造業・非製造業とも、購買担当者景気指数(PMI)の悪化が顕著になった。特に製造業のPMIは昨年12月以来の低水準となったことから、経済回復の鈍化と需要後退の見方が強まった。

一方、供給面では、米石油メジャーのConocoPhillipsが、今年の石油ガス生産見通しを上方修正した。また、米Morgan Stanley銀は、ロシア原油の減産が見られないことなどを理由に、第二四半期のブレント価格見通しを下方修正するなど、供給過剰の見方が台頭。油価の下方圧力となった。

【5月5日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=71.34ドル(前週比5.44ドル安)、ブレント先物(ICE)=75.30ドル(前週比4.24ドル安)、オマーン先物(DME)=73.24ドル(前週比4.57ドル安)、ドバイ現物(Argus)=72.97ドル(前週比6.29ドル安)

コモディティ市場への理解を促進 第一線の実務家らが東京大学で講義


【東京大学】

東京大学経済学部の3・4年生の学生らを対象に、エネルギービジネスの最前線で活躍する実務家が、エネルギーやコモディティ市場について解説する「産業事情」の講義が始まった。

産業事情は、各産業界の現状、課題などを学ぶため、毎年度、各界の実務家を講師に招き行われている。2023~24年度は、「エネルギー/コモディティ市場」をテーマに、著しく価格が変動するエネルギー市場(電力、LNG、石油、排出権など)について、実践的な経験に基づいた講義を実施することになった。

東京商品取引所の石崎隆社長をはじめ、宮本慎次・三井物産商品市場部室長、安永崇伸・イーレックス常務らなどエネルギー企業幹部、総合商社の経営者、トレーディング責任者ら12人が、オムニバス形式で担当する。エネルギー/コモディティ市場の実務家らが、寄付講座ではなく一般講義として、大学生を対象に本格的に教えるのは初めての試みだという。講義は上期13コマを使って行われ、200人以上の学生が受講する予定だ。

初回は東商取の石崎隆社長が講師を務めた

取引市場の役割 石崎・東証取社長が概説

昨今、エネルギーや食料品の価格高騰が経済に大きな影響を及ぼしているが、これらの一次商品価格の多くは商品取引所を中心とするコモディティ市場で形成されている。講義では、商品ごとの生産、流通構造を踏まえたコモディティ市場の役割と、価格発見、リスクヘッジ、投資などの各機能について概説する。

経済の基本であるコモディティ市場は、本来は身近なものであるにもかかわらず、マーケットや価格メカニズムは経済学部生にとってさえ遠い存在になりがちだ。本講義は、学生のうちからマーケットの素養を培い社会に出てもらいたいと、東証取の石崎社長が同大の大橋弘副学長に働き掛けたことをきっかけに開講に至った。 4月5日の初回の講義では、その石崎社長が「コモディティ市場と先物取引」をテーマに教壇に立ち、「既存の出来上がった理論を勉強するというよりも、実際のビジネスを踏まえてのコモディティ市場の価格形成のメカニズムについて一緒に考えてもらいたい」と、本講義の狙いを語るとともに、「日本の技術力、ものづくりの力は世界でも最高レベルにあるが、市場取引については個別に優秀な人材がいても層が薄く、十分ではない。さまざまな分野で日本の経済を担っていく皆さんに、エネルギー・コモディティ市場に親しんでもらいたい」と訴えかけた。

【覆面ホンネ座談会】大手電力・ガス人事を読む カルテル騒動で大波乱も


テーマ:電力・ガス業界の人事と評価

電力業界の不祥事は、人事にも大きな影響を及ぼしている。潔くトップが辞任した会社があれば、辞任のタイミングを見計らったり、社長の首を守ろうとする会社も。騒動が過ぎ去った後の人事予想まで語り尽くした。

〈出席者〉 Aアナリスト  Bエネルギー関係者  Cジャーナリスト

―まずは電力業界から。電気事業連合会は池辺和弘会長(九州電力社長)が続投。これで4年目に突入し、八木誠氏(当時、関西電力社長)に次ぐ在任期間に。候補には東北電力の樋口康二郎社長の名前も挙がっていた。

A 池辺さんの続投は、あくまで暫定的だ。中部電力と関電はカルテル、不正閲覧問題で引き受けられる状況ではない。一方で東北電にとっては、このタイミングで初めての会長職は荷が重すぎる。ただ池辺さんも一連の不祥事が一段落すれば退任する可能性もある。

C そんな状況でも、会長職へ触手を伸ばしたのが関電だ。カルテル問題は、関電自らがタネを撒いて刈り取ったようなもので業界内の評判は最悪だというのに。

B 一連の問題で逃げ切れたとしても、金品受領問題以降、経済産業省から連続して業務改善命令を食らう会社が電事連会長というのは、業界的に受け入れられない。カルテルの後で不正閲覧問題が明るみになり、ようやく会長職は無理だと悟ったようだ。

A 関電は他業種からの信頼も失った。一部の会社は安定供給を維持するために不正閲覧を行ったが、関電は営業に利用していたので極めて悪質。電事連会長などあり得ないのは明白なんだが……。業界の次男坊として自由奔放にやってきて、周囲の目など気にしない経営体質が表れている。

B 関電は昨年、森望社長の就任会見で、森本孝前社長の退任理由について「カルテルとは無関係」とした。退任理由をしつこく問われた森本さんは、質問した記者に「あなたの言っている意味が分からない」とまで口走った。森さんは今回の不祥事を巡って3月30日に記者会見し、岩根茂樹元社長や森本さんの関与に触れたが、改めて森本さんの退任理由は経営陣の若返りの趣旨だと言った。

ただ4月12日の社長会見では、森さんら幹部13人を減給などにする処分を発表、特別顧問の森本さんは結局辞任した。いま関電はとにかく森さんの首を守ることが至上命題になっている。一方で3年前、外部から招聘された榊原定征会長の今後も注目される。

A 森本さんは当時、営業担当の副社長でカルテルのレポートライン(指揮命令系統)にいたが、森さんはいない。しかし、森本さんがギリギリまで引責辞任という形を取らなかったことで、全ての責任が森さんに覆い被さってしまった格好だ。

C 金品受領問題以降、執行役員で残っているのは稲田浩二副社長だけ。もし森さんの首が飛べば、次は稲田さんか。

A いや、稲田さんもレポートラインにいるので、社外取締役が納得しないのではないか。取締役の中でカルテル問題と無関係なのは杉本康さんだけだが、年次を考えると難しい。関電は一気に執行役員クラスに若返りするかもしれない。

会見で辞任を表明した中国電力の瀧本夏彦社長(中央)
提供:朝日新聞社

福島1号機の損傷激しく 現実味帯びる「石棺化」


東京電力は4月4日、福島第一原発1号機の原子炉格納容器の内部を調査し、撮影した動画を公開した。調査の結果、圧力容器を支える土台「ペデスタル」内側の壁が、全周にわたり損傷した可能性があるという認識を明らかにしている。

調査は3月28日から3日間にかけて遠隔操作の水中ロボットを使い実施した。撮影部分では、崩れた壁から内部にある鉄筋が露出していることも確認できたという。東京電力は「過去行われた耐震性評価では、土台が一部欠損していても重大なリスクはないと確認しているが、今後も調査を継続する」として、廃炉に向けた中長期ロードマップの第3期にあたる「燃料デブリ取り出しと施設解体」に取り組む意向を改めて示した。

原子炉内部を映像で公開

とはいえ、1号機の燃料デブリは2号機、3号機に比べ堆積量が多く、散らばった範囲も広いため、取り出し作業の難航は必至だ。14日の原子力規制委員会会合では委員から、土台の崩壊による放射性物質漏えいリスクの指摘を受けた。専門家の中には「事故発生から30~40年での廃炉完了はすでに現実的ではない。今回の調査結果を受け、うわさされている石棺化がまた一歩現実に近づいた」と指摘する声もある。

【イニシャルニュース 】NFT推進派のK議員 原発反対で起きる矛盾


NFT推進派のK議員 原発反対で起きる矛盾

「最近、楽天の三木谷浩史会長が自民党の大物K議員と会合を行ったようだ。デジタル資産関連で協力を仰ぎたいのだろう」

こう話すのは在京キー局の記者。楽天はNFT(非代替性トークン)やデジタル給与などの電子マネー事業に本腰を入れており、自民党きってのデジタル通であるK議員を味方につけたい考えだという。「K議員は常々『政治資金調達にNFTを利用することはできないか』と話している。

三木谷会長とは数年前からその手の話題で盛り上がっている」(キー局記者)

NFTとは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のこと。 暗号資産(仮想通貨)と同じく、ブロックチェーン上で発行・取引される。

2021年には米ミネソタ州知事選の共和党候補者が、初めてNFTによる資金調達を行ったこともあり、自民党内でもデジタル資産に対する関心は高い。党青年局では、昨年5月に会議出席の証明や記念にNFTを発行。コンテスト表彰者に送るNFT「岸田トークン」は一時ネットで話題になった。

一点ものデータを証明付き資産として運用できるNFTの特性上、ネット知名度が高いK議員にとっては、「新たな政治資金獲得手段」とも言える。

一方で、NFTを商取引する際に大量の電力を消費するとして、電力需給や環境への影響を指摘する声もある。党の関係者は「電力の大量消費は一部の暗号資産だけとはいえ、脱原発を主張するK議員がNFTに傾倒するのは世間体が悪い」と嘆息する。

電力を使うNFTを推進するのであれば、原発など多様な電力供給先の確保は必要なのだが……。

三木谷・楽天会長が会う大物議員は

革新炉に傾注の高市氏 原子力の「先生」は誰?

ポスト岸田の有力候補の一人だが、総務省の行政文書問題などで渦中の人である高市早苗内閣府特命担当大臣が、原子力開発について並々ならぬ関心を寄せている。誰の影響を受けているのか聞くと、「いろいろな方から学んでいます」と話をそらすという。

高市氏は大臣として科学技術振興も担当しており、有識者会議「核融合戦略」を自らが主導して昨年9月に立ち上げた。ただし、高市氏の関心は原子力の中でも「革新炉に傾きすぎ」(原子力業界関係者)と言われている。「ちょっとバランスが悪い。今の原子力政策で優先すべき課題は既存の原発再稼働だろう」(同)と関係者は首をかしげる。

高市氏が革新炉に固執する理由は何か。ある原子力関係者によると、関西にある核融合ベンチャーのK社とその周辺が同氏に情報を提供しているという。この分野の第一人者で同社を支援するK大K教授は有識者会議のメンバーだ。ただし同社関係者は「情報提供を行い、あいさつをする程度の仲」と、高市氏との親密な関係を否定している。

また業界関係者は、高市氏の夫で前衆議院議員の山本拓氏が高市氏に影響を与えていると見ている。山本氏は福井県選出の自民党国会議員だったが、70歳という年齢の制限があり候補者調整で選挙区から出馬できず、21年の衆院選では比例区に移ったが落選。しかし、まだ意欲は衰えず、中央政界への復帰を目指しているという。

山本氏は原発や高速増殖炉「もんじゅ」の開発を支援し、革新炉にも以前から関心を寄せていた。一方、「原子力支援の見返りに、行政や電力会社に地元への貢献をしっかり求めていた」(業界関係者)ともいわれる。

高市氏は初の女性首相になる可能性もある。山本氏が高市氏の指南役ならば、原子力政策はどんな展開をみせるだろうか。

小野寺・宮下が一騎打ち 保守分裂の青森知事選


青森県知事選が6月4日に行われる。有力候補は青森市長の小野寺晃彦氏と前むつ市長の宮下宗一郎氏。共に元中央省庁官僚の保守系候補で、自民党は推薦を決められず自主投票としている。

電力業界で知名度が高いのは宮下氏だ。2020年12月、むつ市に建設中の中間貯蔵施設を電力業界が共同で利用するよう、電気事業連合会と資源エネルギー庁の幹部がむつ市を訪問した。しかし、当時市長の宮下氏は「核のゴミ捨て場ではない」と一蹴。その強気の姿勢が業界内に知れ渡った。

原子力施設が集中立地する(六ケ所再処理工場)

三村申吾知事に近い小野寺氏は、三村県政の継承を掲げる。5期20年にわたり知事を務める三村氏は電力業界との関係が長く、原子力政策への理解も深い。電力会社は中立の立場だが、ある幹部は「三村県政を引き継ぐ小野寺氏になってほしい」と漏らす。

宮下氏は4月の県議選むつ市区(3人)で支援する候補を当選させ、下北地方で支持の厚さを見せつけた。一方、小野寺氏は自民党関係者に支持者が多く、今はほぼ互角の戦いと見られている。

電力業界にとって、原子力施設が集中立地する青森県の保守分裂は好ましくない。ある電力関係者は「どちらが当選しても、しこりは残る」と顔を曇らせる。

温暖化対策目標がパリ協定に合致 SBTが大手エネ事業者で初の認定


【九州電力】

国際機関「SBTイニシアチブ」は、九州電力の温暖化対策目標がパリ協定に合致するものと認定した。

国内大手エネルギー事業者での認定は初めて。トップランナーとして目標実現にまい進する構えだ。

パリ協定の発効から7年が経ち、今年の温暖化国際会議・COP28では、各国政府の温暖化対策の進捗を点検する「グローバル・ストックテイク」を初めて実施する。パリ協定で掲げる産業革命前からの温度上昇を2℃、さらには1.5℃未満に抑える目標と照らし合わせ、政府だけでなく、民間企業も含めて対策の実効性が問われる段階になっている。

民間では、自社が持続可能な企業だとステークホルダーにアピールする手段として、「SBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)イニチアチブ」からの認定を目指す動きが広がる。SBTは、UNGC(国連グローバルコンパクト)やWWF(世界自然保護基金)などの団体が共同で設立した国際機関だ。そしてSBT認定は、科学的根拠に基づき、企業の目標設定がパリ協定に合致したものであると示す「国際共通基準」として位置付けられている。

国内では369社(3月1日時点)が取得済みだ。ただ、エネルギー業界においては中小企業の取得実績はあるものの、大手事業者の実績はこれまでなかった。

そうした中、九州電力は3月下旬、国内大手エネルギー事業者第一号となるSBT認定を取得した。

認定された目標のターゲットイヤーは2030年だが、同社は長期的なビジョンとして「50年に自社サプライチェーンの温暖化ガス排出実質ゼロ」、それを超えて社会全体の排出削減に貢献する「カーボンマイナス」を掲げる。同社の江口洋之環境部長は、「野心的なゴールを最終目標とし、対策を積み上げて設定した当社の経営目標が、科学的根拠に基づいて望ましい水準であると実証されたことには大きな価値がある」と強調する。

サプライチェーンで評価 裏付けは非化石比率の高さ

今回認定された目標はどのような内容なのか。

九電グループは30年経営目標として、国内の温暖化ガス排出量を13年度比で65%削減する目標を掲げる。これは、政府のNDC(国別目標、30年度13年度比46%減)を上回る水準だ。同社はこの目標をベースに、SBTが示す温暖化ガス削減経路のうち「WB2℃」(2℃目標を十分下回る経路)に沿った目標を申請し、今回認定を受けた。WB2℃は、一般的には年2.5~4.2%ペースで排出量を減らす経路だが、電力セクターについてはさらに厳しい水準を求めている。

SBTの目標設定イメージ
出所:環境省

危機の時代の国際石油情勢〈前編〉 西側脱露政策とOPEC減産の実情


【識者の視点】小山正篤/石油市場アナリスト

ロシアのウクライナ侵攻などの影響で、石油情勢は国際的な危機を迎えている。

西側諸国の脱露政策やOPEC減産の実情について、米ボストン在住のアナリストが解説する。

日本を含む西側諸国は、ロシアのウクライナ侵略に対抗する中で、国際石油秩序の担い手としての広い視野を回復し、その上で秩序基盤の再構築を図る必要がある。

このような視点に立って昨年の世界石油需給動向および西側の対応を振り返ってみよう。なお本稿は私見を述べるもので、筆者の所属する組織とは無関係である。

世界は露産石油依存が顕著 複雑化する西側の脱露政策

ロシアを除く世界全域における広義の石油需給を、国際エネルギー機関(IEA)統計に基づいて概観すると、昨年平均の需要量・日量約9600万バレルに対し域内生産量は日量8900万バレル。不足量は日量700万バレルを超える。これは日本の石油消費量の2倍以上に相当する規模だ。この不足分を埋めているのが、ロシアの石油輸出であり、昨年の輸出量は原油・日量約500万バレル、軽油など石油製品が日量250万バレル強と推定されている。

一方、世界の実効的な原油生産余力は石油輸出国機構(OPEC)加盟諸国、中でもサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)に集中しているが、昨年12月時点で両国合わせた余力は日量約250万バレル強にすぎない。すなわち、ロシア外の世界は、ロシア産石油を排除するに足るだけの石油生産力を持たないわけだ。

2022年の世界(除ロシア)石油需給

世界はロシア産石油を必要とする―。この簡明な事実は何を意味するか。英国とEUはロシア産石油の海上輸入を、原油は昨年12月、石油製品は今年2月以降、それぞれ禁ずる措置を採った。実際、昨年12月時点でロシアのEU、英国、米国向け石油輸出量は、年初に比べて日量計200万バレル強の大幅減少となった。

一方でインド、中国の2カ国向けは、合わせてほぼ同量の増加を見た。すなわち欧州・西側とロシアの分離に伴い、石油貿易ルートが新たに組み替えられた格好だ。

インド・中国などのロシア産石油輸入増を問題視する向きが多いが、それは自家撞着だ。非ロシア世界の域内石油供給不足という条件下では、ロシア産石油を追加的に引き取るインド、中国のような輸入国があってこそ、欧州・西側の脱ロシア依存が円滑に達せられる。両者は補完関係にあるのだ。

EU・英国はロシア産石油に対する海上保険を制裁対象に加え、これに米国が介入して上限価格(原油1バレル当たり60ドルなど)内であれば不適用とした。同制裁を事実上無効化する措置だが、これもロシア産石油輸出が阻害されれば、世界的な石油危機に直結し得る現実を反映している。本来、海上保険を制裁対象とする必要はなく、インド、中国などがリスクに見合う割引価格でロシア産石油を引き取れば済むことを、わざわざ西側が複雑にしている。西側自身の脱ロシア産石油依存は、ロシアに石油を外交的恫喝の「武器」として使われないように図る防御的措置だ。それをロシア経済に打撃を与える攻撃的措置として表明するので、取り組みが混乱する。

ロシアの石油輸出収入を断つとは、ロシア産石油の国際市場からの排除を意味する。それは、非ロシア世界の域内供給不足の解消と同義だ。大幅な石油増産と消費抑制がそこで並行して起こらなければならない。

これは少なくとも10年単位の射程を持つ中・長期的目標でなければならず、かつ、段階的な達成を順次図るほかない。また昨年時点で非ロシア世界の石油生産の4割はOPECが握っている。今後の増産にはとりわけサウジアラビアを筆頭とする中東OPEC産油諸国の同調が不可欠となる。

サウジアラビアの現実主義 OPEC減産報道の誤りとは

2021年6月から昨年10月までの間、サウジアラビアの原油生産量は日量200万バレル増加。米国の増産量・日量100万バレルをはるかにしのいだ。

同国は「OPECプラス」(OPEC側10カ国、非OPEC側からロシアを含む産油10カ国が参加)が合意した原油生産目標量に従って21年8月以降も継続的に増産し、その生産量はすでに21年12月時点で日量1000万バレルの大台に乗った。

昨年11月、OPECプラスは生産目標総量を削減し、これが「大幅減産」として広く報じられて波紋を呼んだ。削減されたのは名目的な生産目標量であり、基準とした昨年8月時点の日量4400万バレル弱から日量4200万バレル弱へと、確かに日量200万バレルの削減だ。しかし、同じ基準月の生産実績は日量4000万バレル強にとどまっていたため、もし当該の生産枠がそのまま実現すれば、日量約150万バレルの増産となった。

サウジアラビアのように実生産量と生産枠が合致する場合には減産だが、実生産が目標量と乖離して低迷する国々に対しては、反対に増産が求められた。実際、昨年11~12月の、ロシアを除くOPECプラス原油総生産量は、同年8月対比で日量50万バレル弱の減少にとどまり、対前年同期比では逆に日量100万バレルの増大を示した。つまり、かかる生産調整を大幅減産と見たのは誤りだ。

むしろサウジアラビアの動向から伺えるのは、自国の生産量を高位に保ちつつOPECプラスを通じた生産調整によって、国際石油需給の均衡を図る、いわば実務本位の冷めた姿勢だ。同国は緊急時の備えであるべき生産余力も堅持し、また27年を目途に、日量100万バレルの原油生産能力の増強計画を進めている。

このサウジアラビアの現実主義的な姿勢は、対ロシア産石油依存からの脱却と非ロシア世界の域内自給率向上という西側の目標に呼応している。この点はよく理解されなければならない。

※1 本稿での石油需給、貿易および在庫に関する数値はIEA統計(Oil Market Report)による。広義の石油は、NGLやバイオ燃料など、非石油由来の燃料を含む。

※2 ロシアに加えOPECプラスのうち8カ国が今年5月以降の追加減産を決めたが、昨年11月の減産がさほど大きくないと示した形だ。これも現状を供給過剰と見た実務本位の対応と考えてよいだろう。

こやま・まさあつ 1985年東京大学文学部社会学科卒、日本石油入社。ケンブリッジ・エナジー・リサーチ社、サウジアラムコなどを経て、2017年からウッドマッケンジー・ボストン事務所所属。石油市場アナリスト。

MOX燃料「在庫切れ」 プルサーマル一時停止へ


プルサーマル発電を行う国内原発4基のうち、2基がMOX燃料の使用を停止する見通しとなった。玄海原発3号機が11月、伊方原発3号機が来年7月までの運転で、海外に加工を委託したMOX燃料を使い切るためだ。通常のウラン燃料を用いた運転に切り替わる。一方、高浜原発3、4号機はプルサーマルを継続する。国策として各社が取り組むプルサーマルだが、なぜMOX燃料の「在庫切れ」が起きているのか。

日本は英国とフランスに使用済み燃料の再処理とMOX燃料の製造・加工を依頼していたが、2011年に英国の加工工場が閉鎖。現在はフランスのメロックス工場のみで生産されている。昨年12月末時点で、フランスに所有するプルトニウム保有量は九州電力が166㎏、四国電力が96㎏となっており、関西電力の6418㎏と比べるとわずか。九電と四電がMOX燃料に加工可能なプルトニウム量の底をついた格好だ。

プルサーマル発電を一時停止する玄海3号機

事態打開の策はあるのか―。電気事業連合会は昨年2月、「名義交換」という手法を打ち出した。プルサーマルの実施見込みが当分ない事業者の名義(フランス所有分)を四電、九電の英国保有分と交換し、両社のフランス所有分とするのだ。自社の使用済み燃料から造られたプルトニウムは、あくまで自社原発で使用するという原則の中で知恵を絞った。26年度以降の実施を目指す。

わが国は、核兵器製造につながる余剰プルトニウムの削減を国際公約にしている。プルサーマルが実施されなければプルトニウム保有量は削減されず、手つかずの状態が続く。プルサーマルを予定する島根2号機などの原発を稼働させる意義が、ここにもある。

炭素価格付け政策が本格始動 「第二のNEDO」とGX投資の行方


これまで経済界が認めようとしなかったカーボンプライシングの導入が、昨年あっさりと決まった。

個別の制度設計はどうなるのか。そして巨額のGX投資の執行を一手に担う新機構の行方は。

排出量取引(ETS)や炭素賦課金導入、そして新たな国債であるGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債の発行へ―。昨年後半、官邸主導の有識者会議でいつの間にか決定した〝成長志向型カーボンプライシング(CP、炭素価格付け)〟を規定した「GX推進法」が、今国会で成立する見通しだ(4月18日現在)。CPの議論は、欧州連合(EU)の炭素国境調整措置(CBAM)導入に対する貿易措置の面から、また岸田文雄首相お膝元でのG7サミット(主要7カ国首脳会議)成功のため日本の気候変動政策の本気度を示す意味からも、従来のように先送りはできなかった。

新法では、①化石燃料輸入事業者に対して2028年度から炭素賦課金を徴収、②ETSでは発電事業者に対して33年度から一部有償でCO2排出枠を割り当て特定事業者負担金を徴収、③20兆円規模のGX移行債を23年度からの10年間で発行し①や②で償還―と方向性を提示。一方、附則第11条で、CPの詳細な制度設計は法律の施行後2年以内に必要な法制上の措置を行うとした。

つまり今回で大枠は決めるものの、細目を決めるのは25年までと猶予を持たせたわけだ。今後見直しもあり得るということで、特に賦課金の先行きが不透明となっている。環境NGO(非政府組織)関係者は「最悪の場合、33年のETS有償オークション開始まで追加的なCPの負担はゼロという可能性もある。加えてCO21t当たり数百円程度と、石油石炭税に毛が生えた程度にしては意味がない」と懸念を示す。

巨額の新国債を引き受けるのは

政府主導のETSが始動 市場活性化の取り組み進む

詳細設計の議論が始まる気配がない賦課金と対照的に、ETSについては官民で動きが活発化する。

議論が先行する経済産業省主導のGX―ETSは、東京証券取引所での「カーボン・クレジット市場」の実証を経て、まずは今年度に自主参加型で第一フェーズがスタート。ETSが本格稼働する26年度からの第二フェーズでは、目標からの超過削減分(政府目標の30年度46%減以上の削減率が条件)の企業間取引を実施する。そして33年度ごろからの第三フェーズで、いよいよ発電部門の有償化に着手するスケジュールだ。

経産省は市場環境整備に向けた検討を進め、これまでに第一フェーズのルールを公表。さらに3月下旬の有識者会合では、市場活性化策として先物取引の導入案などを示した。先物の導入で、幅広い主体の参加や、価格変動リスク回避などが期待できると説明する。

先物導入の狙いにもあるように、GX―ETSは市場価格安定化を重視。下限価格と上限価格の設定で5年程度の価格帯を示しつつ、上昇させていく構想だ。ある試算によると、こうした措置で第三フェーズの炭素価格はCO21t当たり1万円程度となる見込み。

また、民間でも市場活性化の座組みができてきた。昨年末設立された「ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム(NCCC)」には現在、47企業・11自治体が参画。政府発行のクレジットも扱うが、欧米中心に取引が急増する民間プロジェクト由来の「ボランタリークレジット」に着目しながら、既存だけでなく独自認証のクレジット創出にも取り組む。

同組織の理事長を務める馬奈木俊介・九州大学主幹教授は「NCCCはGXリーグを補完する市場になる。今後、世界的にクレジット不足となる見通しの中、スピード重視、取扱量の多さを意識し、アジア・太平洋地域のボランタリー市場トップを狙う」と強調。今年度は実証的な取引を始めていく。

電力カルテル処分の波紋 訴訟は合意の有無が争点に


公正取引委員会は3月30日、2017~18年ごろの特別高圧・高圧の電力販売や入札で、関西電力との間で独占禁止法の不当な取引制限の禁止規定に違反するカルテル行為があったとして、中部、中国、九州の電力3社とその子会社に対し、計1010億円超という国内独禁法案件としては過去最高の課徴金の納付を命じた。

これに対抗姿勢を鮮明にしているのが中部電力だ。林欣吾社長は4月7日の記者会見で、「関西電力との間で営業活動を制限するような合意はしていない」と断言。処分取り消しの行政訴訟に踏み切る考えを強調した。

公取委と争う姿勢を鮮明にした林・中部電力社長

もっとも高額の700億円超の課徴金支払いを命じられた中国力電は、瀧本夏彦社長、清水希茂会長がそろって引責辞任することを決めたが、「各命令における事実認定と法解釈に見解の相違がある」として訴訟の検討を視野に入れる。九州電力は訴訟に踏み切る姿勢をちらつかせているものの、27億円という課徴金に対し訴訟に費やす労力が割に合わないと、社内には慎重論もあるようだ。

カルテルを「持ち掛けた」とされる一方、リーニエンシー(課徴金減免制度)によって公取委の処分を免れた関電は、直接関与した前社長の森本孝特別顧問や森望社長ら幹部13人に対する減給などの処分と森本氏の退任を決めた。しかし経済産業省や他電力から厳しい視線が向けられ、これで決着となるのかは不透明だ。

訴訟が起きた場合、争点となるのが「不可侵の合意」の有無だ。公取委は関電の申し出を基に事実認定しているが、その信ぴょう性を疑問視する向きもある。カルテル騒動の波紋は当面収束しそうにない。

電力カルテル騒動の舞台裏事情 公取委「処分強行」で因縁の訴訟劇へ


大手電力4社によるカルテル騒動では、抗戦、引責、様子見、防衛と各社各様の対応が鮮明になっている。

合意の事実が不透明な中で公取委が処分を強行した背景を探ると、ある因縁が浮かび上がってきた。

 「公正取引委員会との間で見解の相違がある。訴訟を通じて具体的な意見を述べて、的確に対応していくことが経営責任だと考えている」「役員級が会合していたのは事実だが、誰が誰といつどこで何を話したかなど具体的な内容は訴訟の場で説明する」―。

中部電力の林欣吾社長は4月7日の会見で、大手電力4社のカルテル認定に対する公取委の処分を受け入れず、行政訴訟で徹底的に争う考えを重ねて強調した。公取委が処分を発表した3月30日も、水野仁副社長がすぐさま会見を行い、取り消し訴訟の提起に言及した同社。問題の2018年当時、専務執行役員販売カンパニー社長として当事者の立場にいた林氏自らが見せる強気の姿勢には、カルテルで合意した事実はないという絶対的な自信が見え隠れする。

その一方で、リーニエンシー(課徴金減免)制度を活用した関西電力の言い分は、真っ向から食い違う。森望社長は3月30日の会見で、「独占禁止法違反に当たると認識した時点で、公取委に対しすみやかに減免申請を行い、その後の調査にも全面協力した」「お互いが接触する場で、われわれの営業活動を縮小するという方針を伝えること自体に違法性があると認識している」などと話した。

一体どういうことなのか。公取委が30日の処分発表会見で述べた見解はこうだ。「通常の談合であれば、特定の会合で情報交換を行って合意が形成されるが、今回は必ずしもそうではない。いろいろな役職が最初は探り合いみたいな情報交換を行い、次第に合意に至るような話をして形成された」(斎藤隆明第三審査長)

3月30日の会見で処分内容を説明する田辺局長(中央)

あいまいな合意形成 勝算は中部電にありか

つまり、この場で談合が行われたという決定的な証拠はなく、情報交換という状況証拠を積み重ねていった結果、カルテルの合意形成を認定したということのようだ。実際、森社長は会見でこう話している。「当時、企画と営業部門での会議が行われ、管外営業活動に関する議論がなされた。結果、管外での営業活動を縮小するという方針を立て、他社に伝達した。一連の行為が全体として違法と認定されたと受け止めている」「他社が(伝達を)どう受け止めたかについてはコメントできない」

そうしたあいまいさがあるからこそ、合意の有無で争う余地が生まれてくる。実は関電側の関係者からも「明確な合意などなかったのではないか」との声が聞こえているのだ。「公取委は確固たる証拠に基づき、関電と他社の主張を綿密に検証した上で合意形成を認定したわけではなさそうだ。そこに落とし穴がある。勝算は中部にありか」。関係者はこう話す。

仮に課徴金納付命令が出された3社が足並みをそろえて提訴した場合、公取委が認定した不可侵の合意の形成を、司法が認めるかどうかが焦点になる。かなりの長期戦になるのは間違いない。

「公取委の一連の対応を見ていると、リーニエンシーを行った関電のメモを証拠の基本線にして、史上最高額の課徴金処分を強行した感は否めない。肉弾戦の訴訟になる可能性もある」(事情通)

G7エネ環境相会合が開催 危機下で「現実解」を模索


4月15~16日、主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境大臣会合が札幌市で開かれた。開会挨拶で、西村康稔経済産業相は「これまでに経験したことのない不安定なエネルギー市場、サプライチェーンの脆弱化などの経済不安といった課題に直面している」と語り、脱炭素とエネルギー安全保障を両立する〝現実解〟の模索がポイントとなった。また脱炭素という共通のゴールに向け、「各国の事情に応じた多様な道筋」でのアプローチも強調された。

G7エネ環境相会合のフォトセッション。2日間にわたり活発な議論が展開された

共同声明では、石炭火力の廃止期限について明示を避けた点が特筆される。原発再稼働が進まない日本にとって、石炭火力の早期放棄は、電気料金のさらなる上昇や供給安定性の低下を引き起こす可能性が高い。一部の国からは日本が作成した共同声明の初期草案段階から、廃止期限の不明記について懸念の声があったとされるが、振り切った格好だ。

原子力については、昨年の共同声明から記述が倍増し、革新炉開発や強靭なサプライチェーンの構築、技術や人材の維持・強化が明記され、力強い内容となっている。

日本として注目すべきは、福島第一原発についての項目が加えられたことだ。今夏に予定されている処理水放出を巡っては、国際原子力機関(IAEA)による独立したレビューが支持された。レビューは夏前に包括報告書が提出される予定で、放出前にG7の支持を得られた意義は大きい。

ガス投資の必要性明記 日本主導で現実路線に

天然ガス・LNGを巡っては、グローバルサウスの国々への配慮と将来のガス不足を防止する観点から、気候目標に反しない形での投資の必要性が明記された。日本が支持を求めたとみられ、現実解の一つとして評価される。

水素・アンモニアについては、電力部門の脱炭素化に資する点を明記。日本はアジア・ゼロエミッション共同体構想を提起し、アンモニア混焼などによるアジアの脱炭素化に取り組んでいる。これらを念頭に、電力部門で水素とその派生物(アンモニアなど)の使用を検討する国にも触れ、まさに「各国の事情に応じた多様な道筋」に配慮した形となった。

自動車分野では、米英などが電気自動車(EV)をはじめとするゼロエミッション車について、市場シェアや販売台数などの数値目標の明記を求めていたとされる。しかし共同声明では、2035年までにCO2排出量00年比50%減の可能性に留意という表現にとどまった。同分野では水素、合成、バイオなど脱炭素燃料についての言及もあり、ハイブリッド車とEVの〝二正面作戦〟を展開する日本にとって追い風となりそうだ。

共同声明ではさまざまな項目で定量目標を設けず、多様な選択肢を追求する姿勢が目立った。これを「玉虫色」「後退」と評する向きもあるが、脱炭素化への急進的な動きを議長国である日本が現実路線に引き戻した結果といえる。

本会合が9月のG20首脳会議、年末の温暖化防止国際会議・COP28にどのような影響を与えるか注目だ。

南豪州で環境配慮型の不動産開発 不動産とエネルギーの融合を目指す


【東京ガス不動産】

東京ガス不動産は初の海外不動産事業を豪州で開始する。今年1月に現地法人「東京ガス不動産オーストラリア」を設立。豪州デベロッパーであるシダー・ウッズ社が手掛ける分譲マンション開発事業「Banksia(バンクシア)プロジェクト」に参画する。

バンクシアは、南豪州の大規模再開発事業「Glenside(グレンサイド)プロジェクト」内のESG型住宅開発の一つだ。同プロジェクトは、州都のアデレードから2kmほどにある病院跡地の再開発事業で、敷地面積は東京ドーム約5個分だという。広大な敷地の中には、複数のヘリテージ(歴史的建造物)を保全するとともに地域の生態系による多くの公開緑地を設け、地域環境の保全や自然と調和した住環境の形成も重視している。住宅ではタウンハウス250戸、マンション12棟の建設を予定。東京ガス不動産オーストラリアが携わるのは12棟のマンションのうち、4棟目となる。

2022年11月から始まった工事は、24年7月の完成に向け順調に進行中だ。想定していたスケジュールよりも早めに進んでいるという。間取りは1LDK~3LDKで、各住戸の面積は日本国内仕様よりも広い。価格帯はおよそ5000万円から1億3000万円ほど。引き合いが強く、すでに9割以上が先行販売済みだ。

自然と調和した住環境を実現する

厳しい評価基準をクリア ESG型不動産開発を展開

豪州の住宅開発では、エネルギー性能について10段階の効率基準「NatHERS(ナザーズ)」を満たす必要がある。複層ガラスやシェードの採用、方角、壁の色などを工夫し、必要なエネルギー量を低減することで、その基準を満たさなければならない。バンクシアは基準の6ポイントに対し、7・9ポイントを取得している。

豪州を初の海外進出先として選択したのは、不動産開発の要件として、生態系やコミュニティー形成、エネルギー効率性などの配慮が必要であり、同社が掲げる環境配慮型の不動産開発「ESG型不動産開発」に通ずるからだ。

バンクシアプロジェクトで得たノウハウを基に、今後はアデレードだけでなく、豪州の他エリアへの展開も構想中。また、豪州で新たに市場が形成されつつある賃貸マンション事業への展開も考えているという。 東京ガス不動産オーストラリアの柴﨑裕之社長は「当面は豪州に絞って、年間で複数の開発案件に携わっていきたい。まずは、水や廃棄物、コミュニティー形成などを加味した豪州のESG型開発のノウハウを習得する。また、豪州で普及が急速に進んでいる分散型電源を活用し、不動産とエネルギーを融合させたビジネスモデルの構築も目指していく」と、意気込みを語った。

【マーケット情報/4月28日】原油続落、需要低迷の観測強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の主要指標は、軒並み続落。需給を引き締める材料はあったものの、景気後退の見方が一段と強まったことで、需要の低迷が続くとの観測が台頭。市場は、総体的に売りが優勢となった。

米国では、マクロ経済の鈍化を示す統計が発表され、景気の冷え込みに対する懸念が広がった。

第1四半期のGDP成長率は1.1%と、市場予測を大きく下回ったことに加えて、消費者心理の悪化が顕著になった。さらに、連邦準備制度理事会(FRB)による追加の利上げが確実視されていることから、景気と原油需要の後退に対する見方が一段と強まった。また、カナダでも今年の北米工業の見通しに対して悲観的な見方が示されたことからも、売りが優勢となった。

なお、米国の週間在庫は減少に転じたものの、油価への影響は限定的だった。

他方、中国では、国内消費の拡大から需要増が続いている。国内製油所での生産量と製品輸入を合わせた石油需要は、3月に記録的な高さとなって以降、4月も高い需要が続いていた。だが、油価の上昇圧力には至らなかった。 また、北海油田においては、一部で48時間におよぶ労働争議が発生した。加えて、定修による大幅な減産が予測されたことから供給量に対する懸念が生じたものの、強材料にはならなかった。

【4月28日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=76.78ドル(前週比1.09ドル安)、ブレント先物(ICE)=79.54ドル(前週比2.12ドル安)、オマーン先物(DME)=77.81ドル(前週比3.20ドル安)、ドバイ現物(Argus)=79.26ドル(前週比1.64ドル安)