主要エネルギー会社の2022年度連結決算は、前年度に引き続き電力とそのほかの業種で明暗が分かれた。
規制料金の値上げ改定を機に、大手電力は収益力を回復し財務基盤を立て直すことができるか。
電力、ガス、石油など主要エネルギー各社の2022年度(23年3月期)連結決算が出そろった。
大手都市ガス3社は、大阪がフリーポート液化基地の火災の影響で減益となった一方、東京、東邦の2社は売上高、最終利益ともに高い水準を記録。ENEOSホールディングス(HD)、出光興産、コスモエネルギーHDの石油元売り大手3社は、ガソリンなどの価格が上昇し全社で増収となったものの、下期に原油価格が下落基調となり備蓄石油の在庫評価損が生じたことや、過去最高益だった前期の反動もあって軒並み減益となった。岩谷産業、伊藤忠エネクス、日本瓦斯のLPガス3社は、資源高などを追い風に売上高、利益ともに好調に推移した。

際立つ大手電力の苦境 8社が最終赤字に
前年度に引き続き、厳しい決算が際立ったのが大手電力会社だ。前年度は5社が最終赤字となったが、22年度は中部電と関西電を除く8社が赤字を計上。ロシアによるウクライナ侵攻などに伴い燃料費が高騰し、燃料費調整の期ずれ差損が拡大したことに加え、卸電力取引市場価格の上昇に伴う購入電力料の増加といった外的要因が重なったことが主な要因だ。
燃料費調整制度により、燃料費の上昇分は遅れて料金に転嫁できる仕組みではあるが、家庭用など低圧規制料金には急激な上昇による需要家への影響を緩和することを目的に調整上限(基準燃料価格の1・5倍)が設けられている。
昨年2月の北陸電以降、10月までに全社が上限に到達し、燃料費持ち出し状態となったことも業績に大きな影を落とした。既に完全自由料金に移行した都市ガス大手は、原料高騰に伴い上限を引き上げることができたわけで、事業環境の変化への柔軟な対応を阻害する規制の在り方に、改めて課題が突き付けられた形だ。
こうした中、唯一、経常・最終損益ともに黒字となったのが中部電。東京電との火力合弁会社、JERAのLNGスポット調達価格高騰という収益悪化要因はあったものの、期ずれ差損の縮小や、小売り会社の電源調達ポートフォリオ見直しなどによる市場高騰影響の抑制、規制のない高圧以上の顧客向けの料金適正化などに努めたことがプラスに働いたという。
23年度(24年3月期)はどうなるのだろうか。既に業績見通しを公表している中部、関西、九州の3社はいずれも大幅な増益を予想し、明るい兆しが見えている。期ずれが差損から差益に転じることが、業績を押し上げる大きな要因として考えられる。
ただし、燃料価格の水準は落ち着きを見せてはいるものの依然としてボラティリティは高く、電力事業の先行きに対する不透明感はぬぐい切れていない。それはつまり、今期の業績も外部環境次第だということだ。