関西電力など電力大手4社が相互の電力販売を制限するカルテルを結んでいた問題で、公正取引委員会は3月30日、排除措置命令および課徴金納付命令などについての記者会見を行った。詳しいやり取りは次の通り。

田辺治審査局長 公正取引委員会は、旧一般電気事業者らによる独占禁止法違反について審査を行ってきたが、中部電力、関西電力、中国電力、九州電力ら6社が、独占禁止法で禁じられている不当な取引制限に該当する行為を行っていたと認められた。本日関係各社に対し、排除措置命令など行政処分を行うとともに、電気事業連合会に対し申し入れを行い、また電力ガス取引監視等委員会に対し情報提供を行った。
詳細説明の前に、私の方から3点ほど本件について申し上げたい。
1点目。本件は地域を代表する企業である旧一般電気事業者により、長年にわたり推進されてきた電気の小売供給分野の自由化の目的、理念である「電気料金を最大限抑制すること」「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大すること」こうした理念をないがしろにする違反行為であるということ。
2点目。本件では、旧一般電気事業者間の協調関係を背景として、社によっては代表者を含む役員など、幅広い層が関与して違反行為が行われたということ。
3点目。本件違反行為は、相手方の供給区域の顧客を競争で奪わないようにするという二者間の市場分割で、自社の供給区域における競争を制限するものに他ならない。そのため自社の供給区域における売り上げを算定基礎として課徴金を課すこととなった。
その結果、本件の課徴金額は4社総額で1000億円超となり、中国電力単独で700億円超。1件あたり、1事業所あたりの課徴金額としては、いずれも過去最高額である。公正取引委員会としては、本件のように自由化が進む分野も含めて、独占禁止法違反行為があれば厳正に引き続き対処していく所存だ。
【記者質問】
記者 国民生活への影響の大きさについて、どのように評価しているか。
田辺氏 対象の違反行為の対象商品は、国民生活に重要なインフラである電力だ。最終的な電力の消費者である一般国民に対する影響は、大きなものであると考えている。
記者 カルテルのどこの部分に、特に悪質性があると考えているか。
田辺氏 今回は「不可侵相互不可侵協定」のような形での違反行為だった。情報交換の積み重ねで合意が成立したということ。情報交換が社によっては代表者を含む幅広い層で、いろんなレベルで情報交換が行われ、違反行為が行われていたのは一つの大きな問題だ。
記者 電力市場や電力料金への影響は?
斎藤隆明第三審査長 平成29年(2017年)末頃から、旧一般電気事業者(旧一電)間による競争が生じたことで、電気料金の水準が低下。しかし本件違反行為により、その競争がなくなってしまった。元々の契約価格についてはそのまま維持され、競争により下がるはずの価格は値上げ状態になってしまったと考えられる。
記者 合意により電気料金水準が維持されたという認識か。
斎藤氏 そう考えている。
記者 業界の地域特性など、特殊性からくる背景事情の認識は?
田辺氏 業界の特殊性という意味では、かつては地域ごとに独占供給をする電力会社があった。平成12年(2000年)の特別高圧から自由化が進められ、越境競争が導入された。当初は相互乗り入れのような競争が少なかったが、平成29年から30年(18年)にかけて競争が活発になってきた。その中で行われた違反行為という認識だ。それまで独占だった分野において、競争が導入された中での違反行為。これは他の業界とは違う面があると考えている。
記者 電力業界について今後求めることは?
田辺氏 再発防止について、各社経営陣が筆頭となり、各役職員・従業員に対して独禁法の遵守を周知徹底する姿勢が大事。一番重要なのは、2社間での相互営業活動において、自社の営業活動の情報交換をしてはならないということだ。
記者 課徴金減免制度の意義とは。減免申請なければ関電の課徴金はどの規模になるのか
田辺氏 制度に沿って協力を得て実態解明が進んだということで、それを評価して免除または減免率を決定した。減免申請しなかった場合の仮にという話は、この場で申し上げることは差し控えたい。