萩生田光一経済産業相は10月5日、就任後初の閣議後会見を行い、経済産業政策における緊急重要課題として①コロナ禍で傷んだ日本経済の再興、②「S+3E」を大前提としたエネルギー政策の推進、③福島第1原発から出る処理水の海洋放出をはじめとした福島の復興――の3点を挙げるとともに、月内に第六次エネルギー基本計画の閣議決定を目指す考えを明らかにした。
萩生田氏は会見の冒頭、着任にあたって岸田文雄首相から「処理水の海洋放出に向けた万全の風評防止対策など、福島第1原発の廃炉、汚染水、処理水対策や、福島再生に全力を挙げて取り組むこと、(中略)エネルギーの安定供給に万全を期すとともに、2050年カーボンニュートラルを実現し、世界の脱炭素を主導するため、再エネの最大限の導入促進、省エネの推進、安全性が確認された原発の再稼働、新たなクリーンエネルギーへの投資支援に取り組むこと」などについて指示があったことを明かした。
その上で、まず福島復興について、「経産省の最重要課題。福島第1原発の廃炉は復興の大前提であり、中長期ロードマップに基づいて、東電任せにしないで、国が前面に立って安全かつ着実に進めていきたい」「処理水の処分では本年4月、厳格な安全性確保と風評対策の徹底を前提に海洋放出するとの基本方針を決定した。8月には、風評を生じさせないための当面の対策を取りまとめたところで、政府を挙げて理解醸成に取り組んでいく」「帰還困難区域に関しては、特定復興再生拠点区域の整備を行うとともに、拠点区域外についても、政府方針に基づき、帰還意向のある住民の方々全員が帰還できるように着実に進めていく」などと述べた。
またエネルギー政策については、「S+3Eを追求することが最重要課題だと考えている。その大前提のもと、2050年カーボンニュートラルや、2030年度の新たな削減目標の実現に向けて、日本の総力を挙げて取り組むことが必要だ。徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、安全最優先での原発再稼働などを進めていく」と強調した。
使用済み核燃料の再処理路線を堅持
萩生田氏は、文部科学相や文部科学政務官を務めた経験から、使用済み核燃料の再処理や高レベル廃棄物の最終処分などの核燃料サイクル政策、高速炉などの原子力技術開発に関して、豊富な知見を持つ。会見では、わが国の原子力政策について次のような持論を展開した。
「立地地域の方々や国民の理解を得ながら、安全性を最優先として原子力発電所の再稼働を進める」「高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウムなどを有効利用することが政府の基本方針」「政府としては、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を堅持する方針。昨年12月には電気事業連合会がさらなるプルサーマルの推進を目指す方針を明らかにした。こうした方針に基づいて、プルサーマルを一層推進することで、プルトニウムの利用拡大が進むと考えている」「高速炉については、核燃料サイクルのメリットをより大きくすると認識しているので、わが国での研究開発、人材育成の取り組みが途絶えないよう、『常陽』の運転再開などに政府として取り組み、さらに米国やフランスなどの国際協力の下、高速炉の運転開始に向けた研究開発を着実に進めていくことが重要だと考えている」――。
先の総裁選では、立候補した河野太郎・前規制改革相が、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の中止などを理由に核燃料サイクル政策の見直しを提起したことで、電力業界に衝撃が走ったが、萩生田氏は「核燃料サイクルの推進」が政府の方針であり、自身としても「再処理路線」を堅持していく姿勢を改めて強調した格好だ。
萩生田氏は、第六次エネルギー基本計画の見通しにも言及。「政府内での協議を終え、与党の皆さんにもご理解を、ご了解をいただいた上で、ちょうど昨日までパブリックコメントを実施した。今後、意見の取り扱いを検討した上で、10月末から始まるCOP26(温暖化防止国際会議グラスゴー会合)に間に合うよう、閣議決定を目指していきたい。2030年度まで10年を切っている。早期に計画に実行できるように努力をしていきたい」との考えを示した。