【記者通信/9月27日】台湾で最大規模のエネ展示会が10月初旬に開催


中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と、国際半導体産業協会(SEMI)傘下のグリーンエネルギー・サステナビリティ・アライアンス(GESA)が共催する「台湾国際エネルギー見本市(Energy Taiwan)」および「台湾国際ネットゼロ見本市(Net Zero Taiwan)」が、10月2日~4日の3日間、台湾・台北市の台北南港第1展示ホールで開催される。これはエネルギーに関する台湾最大の展示会で、今年は世界20か国から関連企業470社、1625のブースが出展し、昨年比30%増という過去最大の規模で実施される。日本からは、アスエネ、日本太陽光発電検査技術協会、ラスコジャパン、トーネジの4社が出展する。再生可能エネルギーとネットゼロへのソリューションという、台湾が総力をあげて取り組む二つをメインテーマに、展示エリアはPV Taiwan(太陽光発電)、Wind Energy(風力発電)、Smart Storage Taiwan(蓄電池)、Emerging Power Taiwan(新興電力)の4つに分かれ、「台湾国際ネットゼロ見本市」も同時開催される。

大勢の関係者が詰めかけた前回の展示会の模様

グリーンエネ調達のワンストップ・プラットフォーム構築へ

今回の見本市で紹介されるのは、太陽光や風力発電、スマートグリッド、エネルギー貯蔵アプリケーション、バッテリーシステム、充電インフラ、水素や海洋エネルギーなどに関する多様な最先端ソリューションだ。産官学連携の下、グリーンエネルギーへの包括的でスムーズな移行を加速させ、グリーンエネルギー・ソリューションのワンストップ・プラットフォーム構築に寄与することを目指している。

世界ではネットゼロを見据えた動きが強まり、各国はエネルギー転換の目標を達成するため、再生可能エネルギーの開発を加速させている。同時に、AI技術の発展により電力需要が急増している中、台湾においても、半導体産業や投資の増加、電化政策などの推進もあり、2024年から28年は年平均2.5%増で推移すると経済部は予測している。世界に目を向ければ、企業は自らが事業で使用する電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」基準への準拠を目的に、再エネ調達は最優先事項になっている。需要が供給を上回る中、エネルギー効率を維持しつつ、再エネ比率を高めていくための最先端ソリューションを知ることができるこの展示会に注目が集まっている。

【表層深層/9月25日】敦2問題で規制委を批判しないメディアのおかしさ


日本原子力発電の敦賀2号機(福井県敦賀市)の敷地内断層を巡り、原子力規制委員会は「活動性を否定しきれない」との見解を示し、8月に規制基準に適合しないとの決定を出した。規制委の判断は多くの問題があるが、それを論じるのは別の機会にしよう。理解に苦しむのが規制委の主張を無批判に伝える新聞・メディアの論調だ。

問題点をしっかり論じているのは産経新聞のみだ。8月7日社説「<主張>規制委の偏向審査 強引な幕引きは許されぬ 原電は敦賀稼働へ再申請を」では、「活断層がある可能性を否定しきれない」と繰り返し、原電側に活断層否定の立証を迫る規制委を「悪魔の証明」をさせていると批判した。

ところが、他のメディアは、規制委の行動と決定を無批判に伝える。公権力による人権侵害を常に強く批判する東京新聞は、「<社説>敦賀原発2号機 廃炉にするしかない」(7月27日)などと規制委を支持する論説もある。そしてこの問題ある決定に関与した規制委員会委員を讃えるような<原発「60年超運転」に反対を貫いた思いを振り返る 原子力規制委員・石渡明氏が退任>(9月18日)との記事を掲載している。権力と一緒に日本原電をいじめているように見える。

判断前にも、新聞の報道はおかしかった。「11年に及ぶ議論決着へ 規制委調査団 原電主張に疑問の声も」(毎日新聞、6月27日)など、不適合を煽る報道が目立った。

新聞の好きなテーマ「公権力の権利侵害」なのに…

敦賀2号機の問題は次の論点がある。①規制ルールがおかしい、②審査の経緯がおかしい、③「否定しきれない」という論理の判定内容がおかしい、④企業財産権の国による侵害である、⑤エネルギー供給や地元経済などへの影響が大きすぎる決定――だ。

ところがこれらを取り上げたのは産経新聞程度だ。多くのメディアはいずれの論点も取り上げていない。活断層の「疑い」という規制委の主張を一方的に垂れ流す。ここまでメディアが、規制委員会を支援し、一つの意見に傾くことは妥当なのか。

2011年の東京電力の福島第1原発事故を受け、原子力の安全審査体制が見直された。規制委が発足して新規制基準が13年7月に施行された。そこでは原子力プラントの主要設備が「活断層の上にあってはならない」と規定されている。「活断層」とは約12万~13万年前以降に活動、つまり地震を起こした断層をいう。

12万年前とは、現生人類が誕生し、アフリカから世界に広がり始めたほどの遠い昔だ。その時代の地震の有無を示す証拠は乏しく、推理の要素が大きくなる。敦賀2号機の断層を巡る議論は12年から続いてきた。その間、原電と規制委の見解が対立し、審査の中断もあった。断層の活動性に関する規制委の「否定しきれない」という見解に反論することは、そもそも証明が不可能に近い「悪魔の証明」ではないか。

そして原電だけに非があるかのような報道が目立つ。原電の小さなミスをあげつらう。しかしそれは規制委の情報コントロールにメディアが乗っているように見える。他の社会問題ならば新聞・メディアは政府を批判する意見を探し出してくる。ところが、今回は規制委の主張を垂れ流す一方だ。

「原発憎し」の風潮が、報道を歪める

東電の福島第1原発事故以降、「原発憎し」の風潮が強まった。そのために、原子力について、マイナスの事柄をメディアは促進しようとしているのかもしれない。しかし、そうした感情から離れて行政機関の行動を是々非々で議論をするべきであろう。権力監視と国民への情報提供は新聞の重要な役割なのに、原子力行政に関してはそれを行っていない。

原発を活用する上で安全性の確認は当然だ。しかし、それ以外にも重要な論点はある。原発は二酸化炭素を排出せず、気候変動に立ち向かう有効な手段だ。そして巨大な電気を生み電気料金を抑える。経済、安全保障など多様な観点から原発を巡る問題を考える必要がある。そうした論点も、今回の問題で、メディアは提供していない。

発電能力116万kWの敦賀2号機は、1kW当たり10円で売電し、フル稼働すれば1年で約1000億円以上の売り上げを出せる。さらに同程度の火力発電の使う1000億円程度の天然ガスを削減できる。原子力発電所一つは数千人の雇用を生む。そうした影響を、メディアは全く考えていない。

メディアは世の中に先んじて、問題を世の中に知らせるということだ。そして権力を監視することだ。最近のメディアは、必要ないことを騒ぎ、必要のあることを騒がない不思議な傾向がある。今回の敦賀2号機の問題では、その奇妙な傾向が、報道で現れている。

メディアは、このまま、この規制委員会の異様な決定の「共犯」になるのだろうか。その規制委員会の行動のおかしさを検証して、国民に提示してほしい。

【メディア論評/9月12日】報道に見る自民党総裁選とエネルギー政策<下>


◆エネルギー(原発)政策、有力候補のスタンスについての報道

岸田文雄首相の自民党総裁選不出馬表明を受けて、今回の総裁選(9月12日告示、9月27日投票)は史上最多の候補者によって争われることとなった。

○候補者(出馬表明順)

8月19日 小林鷹之前経済安全保障相

8月24日 石破茂元幹事長

8月26日 河野太郎デジタル相

9月3日 林芳正官房長官

9月4日 茂木敏充幹事長(元経産相)

9月6日 小泉進次郎元環境相

9月9日 高市早苗経済安全保障相(元経産副大臣)  

9月10日 加藤勝信元官房長官

9月11日 上川陽子外相

新しい政権は政治とカネ問題、憲法改正、財政問題、経済成長、安全保障問題と外交、社会福祉、労働市場改革、脱炭素化とエネルギー需給など、多くの課題に対処していくことになる。エネルギー(原発)政策については、3年前の総裁戦時には原発にネガティブな姿勢を示していた河野太郎氏、小泉進次郎氏が容認論に転換したとされる。一方、石破茂氏については、(後述のように、それは一部を切り取ったきらいがあると考えるが)「ゼロへ最大限努力」という立場と紹介される。

8月27日段階の日経新聞は〈原発、自民総裁選対立軸に〉という見出しでそうした状況を説明する。

◎日経新聞8月27日付〈原発、自民総裁選対立軸に〉〈比重増す党員票、エネ政策重視〉〈河野氏・小泉氏容認論に転換〉〈石破氏「ゼロへ最大限努力」〉〈9月の自民党総裁選でエネルギー政策が対立軸に浮上してきた。26日に出馬を表明した河野太郎デジタル相、立候補の準備を進める小泉進次郎元環境相原子力発電所を認める立場への転換を鮮明にしている。石破茂元幹事長は「原発ゼロ」に向け最大限努力する考えを示す。河野氏は26日の記者会見で「電力の供給を最大限するためにあらゆる技術に張っておかなければいけない」と述べた。発電手段を多く確保する重要性を強調し、原発のリプレース(建て替え)にも踏み込んだ。従来は「脱原発」を持論にしていた。需要が拡大するデータセンターや生成AI(人工知能)に使う電力をまかなうため、原発の必要性を認識したことが軌道修正につながった。投資が国外に逃げては「経済に影響が出る」と指摘した。小泉氏も脱原発の持論を転換した。9日のラジオNIKKEIの……番組で、原発を稼働させなければ電力が足りなくなるとの認識を示した。……小林鷹之前経済安全保障相は同じ……番組で現行計画を「もう少しリアリティを踏まえて作るべきだった」と批判した。原発を容認しつつ火力や再エネなどとバランスをとる必要性を訴えた。……茂木敏充幹事長は7月に新潟県長岡市の講演で「原発も含めてCO2を出さない電源の確保が極めて重要だ」と発言した。高市早苗経済安保相は小型モジュール炉(SMR)の活用や核融合炉の実現を提唱する。立ち位置が異なるのは石破氏だ。24日の出馬表明で原発について「ゼロに近づける努力は最大限する」と明言した。「太陽光、風力、小水力、地熱の可能性を最大限引き出すことで原発のウエートを減らすことができる」との見通しを示した。石破氏は26日のラジオ番組で、安全性への懸念を挙げた。他の候補も安全性を稼働の前提に置く。石破氏は「原発は可能な限りウエートを下げるべきだが、安定した電源は必要だ」と強調した。安全性を確保したうえで「原発は活用していきたい」と説明した。……エネルギー政策で石破氏が独自の立ち位置を貫けば、総裁選での論戦が活発になる可能性がある。〉

一方、同じ日経新聞の電子版の解説はやや趣を異にする。「エネルギー政策は選択肢があまりない」ため、「現段階で明らかになっている候補者の主張をみると、エネルギー分野は争点になりにくそうだ」とする。

◎日経電子版8月26日付底流:争点乏しきエネルギー政策 暗示する日本の限られた道〉〈「実際のところ、影響はあまりないだろう」。岸田文雄首相が9月の自民党総裁選に出馬しないと表明した。岸田政権のエネルギー政策を支えてきた経済産業省の幹部にその影響を聞いたところ、帰ってきたのは予想外にあっさりした答えだった。岸田政権は東京電力の福島第一原子力発電所の事故以来「可能な限り依存度を低減する」としてきた政府の原発政策を、脱炭素効果の高い電源として「最大限活用する」と180度転換した。エネルギー基本計画の見直しにも着手し、年末にまとめる2040年に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の国家戦略では原発や再生可能エネルギーなど脱炭素電源の活用拡大を盛り込む考えだった。そんな岸田首相が退陣すればエネルギー政策停滞への心配が生まれそうなものだが、先の幹部は「エネルギー政策は選択肢があまりない」と淡々と話す。実際に現段階で明らかになっている候補者の主張をみると、エネルギー分野は争点になりにくそうだ。「原発は安全性を担保したうえで再稼働を進め、今後、リプレース(建て替え)や新増設を検討していくべきだ」。出馬を表明した小林鷹之氏の原発政策は、岸田政権と大きく重なる。3年前の総裁選では河野太郎氏が当面の再稼働は容認しつつも、新増設や建て替えには否定的な立場を取った。原発は争点の一つだった。ところが今回、河野氏は「電力需要の急増に対応するために原発の再稼働を含めて、様々な技術を活用する必要がある」と軌道修正した。小泉進次郎氏も最近は「ここ(原発)を動かしていかなければ日本の経済、国民生活にとって必要な電力を供給できない」と語る。……経産省幹部は「人工知能(AI)普及で電力需要が増える中にあって、脱炭素エネルギーの供給が経済のパフォーマンスを左右する度合いが強まっている。誰もそれに目をつぶれなくなったということだ」と現下の政治情勢を分析する。ただ大方針が争点化しないからといって、原発活用がすんなり進む保証はない。……与野党の代表候補がエネルギーの安定供給の必要性では一致しても、コスト負担を国民に説明して理解を求める覚悟まで持っているかは定かではない。だがそれは次に選ばれるリーダーに間違いなく課される宿題となるはずだ。〉

以下、今回の総裁選において、エネルギー政策(原発)に対する見解を確認しておくべき複数の候補の実際の言動などを確認していく。

【メディア論評/9月12日】報道に見る自民党総裁選とエネルギー政策<中>


◆2021年9月29日 自民党総裁選 戦況の振り返り

21826日 岸田文雄前政調会長 総裁選出馬表明

2193日 自民党臨時役員会 菅首相 総裁選不出馬表明

2198日 高市早苗元総務相 総裁選出馬表明

21910日 河野太郎ワクチン担当相 総裁選出馬表明

21915日 石破茂元幹事長 総裁選不出馬表明

21916日 野田聖子幹事長代行 総裁選出馬表明 

21917日 総裁選告示

21929日 総裁選

21年10月4日 首班指名、組閣

1.21年8月26日 岸田文雄前政調会長 総裁選出馬表明

◎岸田選対本部の陣容 21年9月17日

顧問 甘利明(麻生派 新政権で自民党幹事長)、鈴木俊一(麻生派 新政権で財務相)、石原伸晃(石原派)、中谷元(谷垣G)、塩谷立(細田派)

選対本部長 遠藤利明(谷垣G 新政権で自民党選対本部長

事務総長  根本匠(岸田派)

事務局長  木原誠二(岸田派 新政権で首相補佐官

推薦人 

〇歴代宏池会幹部の親族

鈴木俊一(麻生派←新政権で財務相

堀内詔子(岸田派←新政権でワクチン担当相

加藤鮎子(谷垣G新政権で国土交通政務官

〇エネルギー基本計画における原発議論で苦杯を喫した人たち

山際大志郎(麻生派)自民党総合エネルギー戦略調査会(額賀委員会)事務局長 新政権で経済財政相

高木毅(細田派)自民党電力安定供給議連(細田議連)事務局長新政権で自民党国会対策委員長

梶山 弘志 経産相(無派閥←新政権で自民党幹事長代行)も推薦人に

(1) 甘利明自民党税調会長(麻生派←新政権で自民党幹事長 

21年9月6日 BS日テレ「深層NEWS」での岸田支持表明
出馬表明した岸田文雄前政調会長について「事情が許せば応援してあげたいという気持ちは、正直なところだ」と支持表明。

(2) 梶山弘志経産相 岸田氏の推薦人になった理由

総裁選告示日となった21年9月17、閣議後大臣記者会見で、岸田候補の推薦人になったことを表明し、その理由を次のように述べた。

○21年9月17、梶山経産相閣議後大臣記者会見

〈私はこの2年間、経済産業大臣として、中小企業を含む産業政策、そしてエネルギー政策というものも担当してまいりました。そこに重点を置いてこの総裁選を見てみたいと思っております。その前提となるのが、去年、菅 総理が宣言をされた2050年のカーボンニュートラル、ネットゼロ、そして4月にそれに関連してお話しされましたNDCの46%削減というものがあるわけであります。これにより、大きなエネルギーの転換や産業の転換というものが生じてまいります。場合によっては雇用への影響、個人でいえば所得への影響、支出への影響というものは必ず出てくるものだと思っております。……各産業との対話、労働組合も含めた産業との対話というのは非常に重要になってくると思っております。……そういった対話を重ねる姿勢が見える方を私は応援をしたいという点で、岸田候補の推薦者になったということであります。〉

2.21年9月8日 高市早苗元総務相 総裁選出馬表明

◎高市選対本部 21年9月17日

選対本部長 古屋圭司(無派閥)

事務総長 城内実(無派閥)

事務局長 木原稔(竹下派)  

推薦人 ※保守系がズラリ 衛藤 晟一、山谷 えり子、山田 宏、青山 繁晴

参考=古屋圭司元国家公安委員長 21年11月 

~自民党総裁選 高市早苗陣営 選対本部長~

〈高市早苗が総裁選に出るという話が出てきたので、本人に電話をして「本当に出るのか」と聞くと、「出る」と言うので、「じゃあ応援しよう」となった。すぐに安倍元首相に電話をすると「応援する」という。自分が選対本部長になり、いろいろな人に電話をすると、勝ち馬ではないのに、意外に食いつきがよかった。世の中の2割が右巻き、2割が左巻きという中で、安倍さんの時はその右巻きの9割を押さえていたが、菅さんになって7割しか取れていない状況だった。これを元に戻したいという思いだったが、高市はSNS上の反応も良く、結果的にこれを戻した。……岸田さんは、前回の総裁選で一度失敗して、1年間じっくり考えてきたのであろう、選挙戦へのスタートも早く、見事に乗り切った。〉

3.21年9月10日 河野太郎ワクチン担当相 総裁選出馬表明

◎河野選対本部

選対本部長 伊藤達也(無派閥)

選対本部長代行 岩屋毅 (麻生派)

事務総長 坂本哲志(石原派) 孤独・孤立対策担当相、

事務局長 井上信治(麻生派)科学技術相

推薦人 ※早々に河野支持を打ち出し、石破不出馬の流れを作った石破派議員 古川禎久(←新政権で法相)、平将明

(1)自民党保守派の河野評

 ある保守派の参院議員は次のように語る。21年9月談

〈河野が首相になったらエネルギー業界も困るだろう。河野を絶対に勝たせてはいけない。エネルギー業界も勝たせないよう頑張ってほしい。〉

また別の参議院議員は、かつて次のように語っていた。20年10月談

~菅政権発足時にあった河野官房長官説について~  

〈菅内閣発足に際し、河野太郎官房長官説があったが、自分は最初からそれはないと思っていた。ご承知のように、河野防衛相は秋田と萩で予定していたイージス・アショア計画を突然止めた。自分は、萩の地元対応を担当していたが、秋田のような地元対応の不手際等もなく、秋田ほど反対が強くなかった。それなのに連絡もなく止めるとなった。そして、河野は責任も取らずに防衛相を替わっていった。〉

4.21年9月15日 石破茂元幹事長 総裁選不出馬表明

21年9月15日。立候補を見送り、河野氏を支持する考えを明らかにした。

~石破氏に近い元官僚の話~

自分は退官後も折に触れ、種々のレクや相談に応じてきたが、石破さんはあまり役所に親しい人がおらず、防衛大臣もしていたが、その時の秘書官もほとんど来ない。「小石河連合」は、第二次世界大戦の「日独伊三国同盟」みたいなもので、3人が全然連携していなかった。石破さんは河野さんに、「総裁選の経験は豊富だから、聞いてくれたらいろいろアドバイスできますよ」と言っていたようだが、河野さんは石破さんの所に2回しか来ず、しかも挨拶程度。結局、一度も聞かれなかった。 河野氏と進次郎氏もそんなに会っていなかった。「小石河連合」は、第二次世界大戦のドイツはドイツ、日本は日本で戦っていた「日独伊三国同盟」のようなもの。石破さんにそう言うと、「じゃあ河野さんと私がドイツか日本で、イタリアは決まりですね。なんの役にも立っていなかった」とすごく喜んでいた。5.総裁選 結果

(1)事前の調査

党員データを持つ共同通信読売新聞党員票調査結果を報じた。

共同 河野48.6% 岸田18.5% 高市15.7 91718日調査)

読売 河野41%   岸田22%   高市20 91819日調査)

・「小石河」の連合効果不発 過半数超えず

・高市が追い上げ

議員票の動向 (←河野の議員票は100票を超えていた)

ex) 毎日新聞 議員票 924日調査   ( )内の数字は本人確認分

河野105103  岸田135120 高市8275 野田2121

(2)選挙結果

一回目投票

岸田 議員票 146票  党員票 110票 計 256

河野 議員票 86  党員票 169票 計 255

高市 議員票 114票  党員票 74票 計 188

野田 議員票 34票  党員票 29票 計   63

決選投票

岸田 議員票 249票  党員票 8票 計 257

河野 議員票 131票  党員票 39票 計 170

◎自民党総裁選 岸田派の戦い

宮沢洋一自民党税制調査会長・元経産相  21年11月談

〈われわれは総裁選への取組が早かったので、業界団体等にお願いに行けた霞が関の役人もそうだが、業界団体のほとんどは、河野だけはイヤだと言っていた。党員調査で表向き出ている数字より良い数字が出ると踏んだ。それに加えて、河野は準備不足だった。勉強不足が表れた。原発についてもそうだし、年金のアイデアは相当古くて、20年前に勉強したものというレベルで、すぐにボロが出てきた。〉

【メディア論評/9月12日】報道に見る自民党総裁選とエネルギー政策<上>


自民党総裁選(9月12日告示、9月27日投票)が近づいてきた。本稿は、<上>編にて前回の総裁選前後のエネルギー政策に関する動向を振り返り、<中>編にて原発政策などについて今回総裁選の有力候補とされる議員が当時どのような言動をしたか、そして<下>編にて今回はどういうスタンスに立つか、を見るものである。

【前回自民党総裁選(2021年9月29日)前後のエネルギー政策議論】21月9月29日、前回の自民党総裁選が行われた。その1年前に発足した菅義偉政権では、発足時の所信表明演説(20年10月26日)での「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」に始まり、21年4月には気候変動サミット前の地球温暖化対策推進本部(21年4月22日)で「2030年度温室効果ガス削減目標46%減表明」があった。以降、エネルギー政策は、より明確な形で脱炭素化に向けて舵が切られた。そのための方途として、再生可能エネルギー拡大、火力の脱炭素化、次世代燃料技術など、多岐にわたる課題への対応が掲げられたが、その中で自民党内において議論が分かれたのが原発政策であった。原発については、従来のエネルギー基本計画では「可能な限り依存度を低減」とされてきた。20年秋から3年にかけては、第6次エネルギー基本計画の策定に向けての議論が進んでいたが、それは「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」を踏まえつつ、21年4月22日に表明された「2030年度温室効果ガス削減目標46%減」に対処するものとなった。21年前半には自民党内で、カーボンニュートラルに貢献するものとして、原発の位置づけ、政策の方向性を変えていこうという動きが盛り上がり、新増設・リプレースなど、「原子力発電の最大限活用」に向けて提言などが活発化した。しかし21年5月の大型連休後、エネルギー基本計画策定作業はいったん止まり、21年7月21日の「素案」の提示では、原発に関する記載は大きくは「可能な限り依存度を低減」という第5次エネルギー基本計画レベルに「巻き戻し」された。21年9月29日の自民党総裁選後、10月4日に発足した岸田政権は、10月22日、第6次エネルギー基本計画を上記の「巻き戻し」の動きを反映した形で閣議決定した。しかしその後、岸田政権は、国際的な脱炭素化の進展や、ロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー安全保障の懸念などを受けて、22年12月22日、「GX実現に向けた基本方針」で原発政策などについて大きな転換を表明した。 

 

◆20年10月26日、菅首相所信表明演説「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」

20年10月26日、菅義偉新首相の国会での所信表明演説では、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」が表明された。

参考=20年8月28日に安倍退陣表明、9月14日に菅新総裁誕生、9月16日に首班指名、組閣

◎20年10月26日、菅首相所信表明演説 

「グリーン社会の実現」の部分 

〈菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。わが国は、50年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち50年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。……省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。〉

◆21年4月22日、気候変動サミット前の地球温暖化対策推進本部で温室効果ガス削減目標46%減表明 

〇21年4月16日の日米首脳会談共同声明で「世界の気温上昇を1.5度までに制限する努力」と表明              

〇21年4月22日の気候変動サミット前の地球温暖化対策推進本部で温室効果ガス削減目標46%減表明 

【記者通信/9月10日】自民総裁選候補の有力3氏 原子力政策で対応割れる


候補者の乱立で過去に例を見ない盛り上がりを見せている自民党総裁選挙の告示まで1週間を切った。これまでに立候補表明しているのは、青山繁晴参院議員、小林鷹之前経済安保相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相、林芳正官房長官、茂木敏充幹事長、小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安保相、加藤勝信元官房長の9人だ。これに上川陽子外相、斎藤健経済産業相、野田聖子元総務会長が出馬を模索している。本命不在の混戦模様だが永田町や霞が関周辺によると、最終的に石破氏、小泉氏、高市氏の3人に絞られるとの見方が浮上している。この3氏を軸に現時点での情勢分析とエネルギー政策への対応を整理してみた。

選挙の顔」は誰だ?

今回の総裁選は年内にもあるとされる衆議院の解散・総選挙で、誰が「選挙の顔」になり得るかが最大のポイントだ。そもそも岸田文雄首相が辞任に追い込まれたのは国民の支持が低迷し、選挙のシンボルになり得ないということが背景にある。有権者の支持が盤石ではない党内の当選4回以下の若手議員、多くの党員らを抱える地方議員らの危機感は強く、「多くの国民から支持を得られる人が総裁になるべきだ」(東日本のある県議会議員)という声が挙がる。

その観点からいうと国民的人気が高い石破氏、小泉氏に支持が集まるのは至極当然と言える。日本テレビが9月上旬に実施した党員・党友調査によると、石破氏を支持すると答えた党員・党友が28%でトップ。次いで小泉氏が18%と続いた。ある選挙コンサルタントの分析でも「党員・党友票で石破氏が3割を獲得する」との見方だ。

こうした党員・党友の意向は選挙が近ければ近いほど重みを増し、議員の投票行動にも多大な影響を与える。今回は総選挙が視野に入るだけに、国会議員も党員・党友の意向を無視するわけにはいかず「流れは石破氏や小泉氏に有利に働く」(自民党関係者)との見方だ。

知名度や刷新感というのもポイントだ。自民党は政治資金の裏金問題でダーティーなイメージを持たれてしまった。今回の総裁選では「刷新感」というキーワードが盛んに出てきた。これまでの自民党のように長老やベテラン男性議員が出てきては刷新のイメージはない。女性の高市氏、若手の小泉氏が浮上する背景には従来の知名度に加えて、刷新感を国民に強調できるところがある。

前出の日本テレビの党員・党友の調査では、高市氏が17%と石破、小泉氏に次いで支持されている。保守派の支持に加え、女性というイメージが支持の高さを裏打ちしているとも言えよう。ちなみに数字の上では3氏に大きく離されているが高市氏の次は上川氏を支持する割合が多い。

石破氏「依存度下げる」 高市氏「最も理解」 小泉氏「歯切れ悪い」

さてエネルギー政策についてだが、今回の総裁選では今のところエネルギー政策が大きな争点になる様子は見られない。ただ岸田政権は年内に第7次エネルギー基本政策を取りまとめ、年度内には閣議決定する方針を示しており、新総裁も否応なく政策対応を余儀なくされる。

エネルギーの中で3氏の考えが割れているのが原子力発電への対応だ。最も踏み込んだのがエネルギー政策では存在感がなかった石破氏だ。8月24日の立候補表明の記者会見で突如、「原発をゼロに近づけていく努力は最大限行う」と原発ゼロについて言及した。しかし9月6日の外国人特派員協会での記者会見では、地熱発電などを掘り起こすことで「結果的に原発の依存度を下げる。原発ゼロとは考えていない」と軌道修正した。

当初は原発ゼロを明言することでエネルギー政策での他候補との違いを鮮明にする狙いだったのかもしれない。霞が関のある官僚は「原発ゼロ発言は勇み足でしたね。エネルギー政策への素人感が出てしまったのでしょう。総裁になれば現実的な選択をとっていくのではないか」と分析する。

原発に最も理解があるのは高市氏だ。かねて関西電力などが開発する革新炉や小型モジュール炉(SMR)には期待している向きの発言をしている。前回総裁選でも公約で電力需要が増えることを懸念し、電力の安定供給のために「SMRの地下立地などクリーンエネルギーへの投資を後押しする」と公言した。2050年カーボンニュートラルを達成するために「原発のリプレースは必要だ」とも発言しており、岸田政権並みに原発政策を推進していくと考えられる。

最も歯切れが悪いのは小泉氏だ。6日の立候補会見では自らエネルギー政策に言及することはなく、記者からの質問でようやく口を開いた。小泉氏は「原発については電力需要が増えて電力が足りなくなる。使える電源は使っていく。脱炭素と強調して、化石での富の流出を減らす」と語った。

当たり障りのない発言ともとれるが、霞が関筋は「会見では農水、厚労、環境と自分がこれまで携わってきたところの政策が打ち出せていない。突っ込まれて中身がないボロが出るのを防いだのでしょう」と指摘する。またある有識者は「彼自身に明確な政策ポリシーがあるわけでない。小泉氏が仮に総裁になって総理になっても脇を固める閣僚が重量級になる。彼はその重量級に抑え込まれてリーダーシップを発揮できないのではないか」と見通す。

逆に言えば小泉氏の場合、コントロールしやすいわけで現実路線に引き込むことは容易といえる。その一方で環境相時代のように一部の活動家などに取り込まれてしまえばおかしな方向に行くようなことも考えられるだけに、ギャンブル的な要素が強い候補者だと言える。

傀儡政権か、挙党体制か

石破、小泉、高市の3氏のいずれかが新総裁になった場合、石破、高市氏の場合は挙党体制になるとみられる。両氏とも支持基盤が薄く、旧派閥の顔色を伺いながらの政権運営にならざるを得ないだろう。閣僚人事も旧派閥均衡になりやすく、2人の色が出にくいことになりそうだ。エネルギー政策については岸田政権同様、経産省の路線を継続していく可能性が大きいとみる。

一方の小泉氏は菅義偉前首相の傀儡政権的な色合いが濃い。菅氏も支持を明確にし、横浜市の街頭では2人で並んで見せた。党内では菅氏が暗躍して、小泉総裁誕生にねじを巻いているという。小泉氏に期待する刷新感とは程遠くなり、長老の院政という国民が最も嫌う政権が誕生することになりそうだ。

【目安箱/9月9日】自民総裁選候補6人はエネ政策をどう考えるか!?


次の首相を事実上決める上で関心を集める自民党総裁選挙で、エネルギー政策を巡る各候補の考えはどうなのだろうか。その立候補表明会見、過去の発言からその考えを整理してみよう。

◆小泉、河野、石破3氏は政策転換を主張

9日までに出馬を明らかにした、6人の候補についてまとめてみる。出馬表明順に小林鷹之氏、石破茂氏、河野太郎氏、林芳正氏、茂木敏充氏、小泉進次郎氏だ。このほか、青山繁晴氏(参院議員)、高市早苗氏(現国務大臣)が出馬を表明しているほか、加藤勝信氏(元官房長官)、斉藤健氏(現経済産業大臣)、上川陽子氏(現外相)が出馬を模索中だが、9月9日時点で推薦人20人の確保がまだ未定のようで、出馬宣言はしていない。

現在の岸田政権の「GX」の是正、またこれまでの「エネルギー自由化」の是正は全員が政策にしていない。岸田政権の政策から、エネルギー面では、小林、林、茂木氏は大きく変わらなさそうだ。石破、河野、小泉の3氏は、再エネ、脱原発の方に舵を切りそうな状況だ。

これまでエネルギーフォーラムの報道を見ると、高市氏の原子力、特に新型炉への異様な関心、また河野太郎氏の原子力への反感、経産省と既存電力への敵意、小泉進次郎氏の奇妙な行動が出ている。それに加えた情報を述べてみよう。

◆石破氏はリベラル色強め 原発に消極的

小林氏は財務官僚出身。財務省色を消すためか「経済が財政に優先」と出馬会見で述べ、新しい産業を産む「シン・ニッポン創造計画」を打ち出す。エネルギーは「自給戦略」を唱え、あらゆるエネルギー源を開発し、エネルギー産業を強化する姿勢を打ち出した。

石破氏は総裁選常連の候補だ。ただ、最近はリベラル色、弱者救済色を強め過ぎている。物価を上回る賃金の実現、金融所得課税強化(のち見直し)、異次元緩和批判をしている。原発については以前から「限りなくゼロに近づける」というスタンスで変えていない。

河野氏は、エネルギー関係では、これまで脱原発を鮮明にしてきたが、今回はその言及を積極的にしていない。「私は反原発ではない」と7月に強調した。経済政策では財政規律の回復、そして小さな政府志向だ。ただし仮に首相になったら、どのような行動をするかは不明だ。

◆小泉氏、エネルギー政策で具体策を避ける

林氏は、現職の官房長官でもあり、岸田文雄首相の批判はせず、原子力の安全性確保とその上での活用、さらにGX政策の継続を掲げている。

茂木氏は、自民党幹事長であるが、出馬表明の時に増税批判をして岸田首相が不快感を示したという。彼も原子力の活用だが、新増設について言及している。

小泉氏は、環境大臣の時の温室効果ガス削減の高めの数値目標にこだわった。エネルギーについては「あらゆる選択肢を追求」として、明確な言及を避けた。

◆エネルギー問題が主要争点から消える?

各候補の主張を見ると、エネルギー問題はすでに主要な議論ではなくなっているようだ。日本の選挙報道にありがちな、「イメージ」ばかりが伝えられ、さらに政策論も安全保障、そして増税の是非が議論になっている。

エネルギー業界は、東京電力の福島第一原発事故の後で、電力だけではなく、ガス、石油、LPガスの各業界は、世論と政治が影響した「エネルギーシステム改革」に振り回された。政治に過度に関わる必要はないが、それが与える影響、また政治家に影響を与える世論の動向は関心を持ちながら向き合う必要がある。

【記者通信/9月9日】原子力閣僚会議でKK再稼働の対応確認 花角知事の判断材料に


政府は9月6日、原子力関係閣僚会議を開き、岸田文雄首相が柏崎刈羽原子力発電所(KK)の再稼働に向けた対応について確認した。新潟県が6月、自民党新潟県連が7月に防災対策などの要望を政府に提出していたが、今回打ち出した対応方針はおおむね両者の要望に沿う形となった。だが新潟県の花角英世知事が再稼働を容認するかは依然不透明だ。

原子力閣僚会議で柏崎刈羽再稼働の重要性に言及した岸田首相(9月6日)

特定の発電所の再稼働を巡って閣僚会議が開かれるのは初めて。参加者も官房長官や経済産業相など従来のメンバーに加えて、首相や避難道路の整備を担当する国土交通相などが出席した。岸田首相は柏崎刈羽原発の再稼働の重要性について、「東日本の電力供給構造のぜい弱性、電気料金の東西の格差、今後の産業競争力や経済成長を左右する脱炭素電源確保などの観点から高まっている」と説明。その上で、地元の不安の声や地域振興も含めた要望を踏まえ、再稼働への理解が進むよう政府を挙げてさらなる具体的な対応を行うよう指示した。

避難道路の整備については、経産省・内閣府・国交省で整備促進に向けた「協議の枠組み」を新たに立ち上げる。地元が求めていた6方向へ放射状に避難する経路は、関係府省庁で整備する。国が前面に立った取り組みとしては、政府が厳しいエネルギー情勢や再稼働の必要性について、新潟県内のみならず電力消費地である首都圏での広報活動を展開する。また発電所のガバナンス強化のため、海外の専門家やほかの事業者など「外部の目」による気づきを改善につなげる新体制を構築すべく指導・監督するとした。

県民の意思が固まるまで2年?

再稼働に向けては新潟県の同意が最終ハードルとなっている。花角知事は8月、再稼働の是非を判断する時期について「遅くとも2026年6月の2期目満了に伴う県知事選まで」と一部首長に伝えたとされる。この発言の真意について、8月29日の定例会見では「あと2年弱ぐらいの間には県民の意思が固まるのではないかという趣旨」と説明した。花角知事の発言を受け、すでに再稼働を容認している柏崎市の櫻井雅浩市長は9月4日、「スピード感に隔たりはあるが、いたずらに早く物事を決めたいとは考えていない」との発言。しかし過去には「いたずらに時間を積み重ねることだけが安全に資するとは考えていない」(3月21日)と語っており、トーンダウンした感は否めない。

今後焦点となり得るのは、①「経済的メリットを感じられる取り組み」の実施、②避難計画の実効性──の二点か。①については閣僚会議では取り上げられなかったが、地元が要望している。立地自治体とその隣接自治体に限られる電源立地地域対策交付金の対象拡大などを念頭に検討が進む見込みだが、ほかの立地地域との公平性の観点で課題が残る。②を巡っては能登半島地震を受けて、原子力規制庁が屋内退避の運用の再検討を行っている。規制庁は今年度中の取りまとめを予定しており、「避難計画にも影響を及ぼすので議論の材料」(花角知事)となる。

県議会で過半数を占める自民党には、再稼働に否定的な見方をする議員も少なくない。また反対姿勢を示す首長も一定数いることが、花角知事の消極姿勢につながっているとの指摘もある。解散総選挙や参院選の足音も近づいており、再稼働がどのように位置づけられるのか、期待と不安が交錯している。

【書評/9月5日】『間違いだらけの電力問題』 複雑なエネ問題の全体像を読み解く


「ようやく落ち着いた」――。こんな感想を電力関係者からこの1年、電力問題についてのメディアや世論の動きで聞いてきた。東京電力の福島第一原発事故の後で、反原発の意見が広がり、政治やメディア、世論の中での電力をめぐる議論は混乱した。それがようやく静かになったという感想だ。岸田政権が22年末にGX(グリーン・トランスフォーメーション)で、原子力の活用を打ち出した時に、確かにおかしな反発は起きなかった。

ところが原子力規制委員会はこのほど、日本原子力発電敦賀2号機を事実上廃炉にする判断をしてしまった。その地下の断層が活動する「疑いがある」という曖昧な理由によってだ。これに対して、「おかしい」「電力供給に悪影響を与える」「行政の横暴だ」という、私から考えると「当たり前」の反応はなかった。エネルギー・電力を巡る問題の理解は、政治家、メディア、一般の人の間で、深まっていたわけではなかった。飽きられ、忘れられただけで、実は薄っぺらいままだったのだ。

エネルギー問題は奥深い。ビジネスの規模が大きく、関わる人が多いために、多様な論点を考えることが必要になる。残念ながら、そうした情報を総合的に学べる機会は少ない。

奥深いエネルギー問題を簡潔にまとめる

国際環境経済研究所(IEEI)所長の山本隆三氏が今夏にこの新著を発売した。エネルギー問題で、そうした深い議論のできる論客として、私は注目している。山本氏は商社マンとしてエネルギー問題の実務経験が長い。加えて経済学・会計、技術の知識、外国での仕事や生活の経験がある。問題を語る際に、立体的、総合的にエネルギー問題を分析する。

『間違いだらけの電力問題』(発行元:ウェッジ、定価:1650円=税込み)

この本でもその手法が貫かれ、問題が簡潔にまとめられ、現代の日本を取り巻くエネルギーの状況を俯瞰できる。エネルギー問題は奥深い。20年の商社マンの経験で、山本氏も「「そんなことがあるの?」と驚くことがしばしばあった」(本の「はじめに」)と言う。この奥深さが、時々、問題をめぐる分析や議論を混乱させる。

エネルギーでは一つの問題だけを考えても、その問題は解決しないことだらけだ。日本では、原発の是非とか、再エネの導入を増やせと、単体の問題を声高に叫ぶ人たちがいる。しかし、それらの問題は、簡単な解決策などない。他のエネルギーとの比較、エネルギーの原料調達から供給法などの物流など、問題を深く、幅広く考えなければ、政策においても、企業活動においても、消費者としての購買活動でも、適切な答えは導けない。

この本の「はじめに」に書かれていた例だが、エネルギーと車の関係を考えてきた自動車会社の経営者が、日本では現在石炭火力を使っていることを知らないこともあったという。深く、幅広い視点で問題を分析する山本氏の視点は貴重なのだ。

世界と日本の問題は、「足りない」電力

本書はエネルギーの歴史から解き起こし(第1章「エジソンの時代から変わらない発電方式」)、世界情勢を概観する(第2章「世界と日本の発電事情」)。その上で現状の問題を4テーマ、第3章「増える電力需要、上がり続ける電気料金」、第4章「少子化にも影響を与える電気料金」、第5章「停電危機はなぜ起きる」、第6章「脱炭素時代のエネルギーと電気」に分けて、複雑な問題を簡潔に解説する。

本を読んで、印象に残ったのは、世界と日本のエネルギーと電力の状況が、ここ5年で大きく変わったことだ。

エネルギー・電力の需要面で、わずか数年前は日本では少子高齢化、産業空洞化で、電力は長期的に減り始めると予想されていた。ところが需要は長期的に増加する可能性が高まっている。他の先進国と同じように水素の製造、EV(電気自動車)、AI(人工知能)とデータセンターの拡充などで、電力が必要になった。

「日本が目標とする2050年2000万トンの水素を電気分解で製造すると、必要な電力需要量は、今の発電量とほぼ同じになる」(3章)。2050年の電力需要について電力中央研究所は、低成長の場合は現状の横ばいの8280億kW時だが、高成長の場合には1兆750億kW時 と予想している(3章)。

ピントのズレた議論を続ける日本

一方でウクライナ戦争の後で資源国ロシアと自由陣営の関係が縮小し、世界の天然ガス・原油の供給体制は不透明になった。その上に日本では、電力自由化、原発の稼働の遅れ、また脱炭素政策が同時進行し、電力供給が不安定になっている。特に政府の行う再エネ振興策は「自由化市場のなかで進めれば安定供給は遠のく」(5章)。この事実を山本氏は論証しているが、なかなか一般にも広がらず、政治的な議論にならない。

日本の主要政党やメディアは、2011年の東日本大震災と東京電力の福島第一原発を引きずって、脱原発の是非、再エネの振興をいまだに中心の議論にする。日本も世界も変化している。その中で原発を無くすなど、あまりにもおかしな議論だし、世界の趨勢から遅れている。

そしてエネルギーシステムの設計の失敗は、日本人の給料を抑制し、少子化の進行や経済成長の低下に影響を与えてしまうかもしれない(3章)。山本氏の結論は、「日本が引き続き、欧米諸国と国際競争を行うエネルギー・電力価格を追求するのであれば、現在の電力価格の見直しが必要だ」というものだ(6章)

イメージ先行で脱炭素などの空論が語られ、経済的損失を生んでいる今のエネルギー・原子力政策を不思議に思っていたので、この主張には共感した。エネルギーをめぐる議論は、重要論点その英語の頭文字をとり「3E 」、「経済性」「安定供給」「環境性能」で論じることが欠かせない(はじめに)。

浅い議論が産む、日本のエネルギー政策やビジネスの問題

実際に総合的な視点を提供できる議論は少ない。全体像での考察がとぼしいゆえに、日本のエネルギーでは、政策でも、ビジネスでも、問題が後から次々とわき上がり、仕組みがつぎはぎだらけになったり、行き詰まったりしてしまう。

著者のような、複眼的な、そして奥の深いビジネス感覚が中心となり、エネルギーが語られるようになってほしい。そのためにこの本「間違いだらけの電力問題」を読むことを勧めたい。

【記者通信/8月30日】来年度予算の概算要求 GX事業で1兆2500億円計上


エネルギー・環境分野の2025年度予算の概算要求が出そろった。

経済産業省は合計で2兆3596億円(24年度当初予算比24%増)を計上した。うち、エネルギー対策特別会計は7818億円、GX(グリーントランスフォーメーション)推進対策費が9818億円となった。事業のうち特に規模の大きさが目立つのがGX・脱炭素エネルギー関係だ。1兆2487億円と、24年度当初予算より3000億円弱増額。GX関連には国庫債務負担行為を活用し複数年度(3~5年間)にわたる事業があり、これらの設備投資が増えるステージに入ったことなどから、額が積みあがった形だ。

省エネ投資などに注力 引き続き全方位の取り組み推進

GX2040ビジョンやエネルギーー基本計画の改定が進む中、エネルギー価格上昇や供給途絶リスクに対応するための取り組みを引き続き展開する。GX・省エネ投資、再生可能エネルギー・原子力などの供給拡大、産業分野の燃料転換支援、火力の脱炭素化・CCUS(CO2回収・利用・貯留)、低炭素水素等の実装、資源・燃料の安定供給確保などに資する取り組みを進める。

中でも額が大きいのが省エネ関係だ。「省エネルギー投資促進・需給構造転換支援事業費」に1743億円、「省エネ設備への更新を促進するための補助金」に350億円、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」に580億円などを計上し、足元の省エネの着実な推進を促す。

このほか同省は、①産業競争力強化・経済成長・排出出削減の効果が高いGXの促進、②AI・半導体分野の重点的投資支援、③物価高騰の中で中小企業・小規模事業者の成長の下支え、④福島復興――などの六つの重点分野については事項要求を行う。

環境省は8700億円計上 地域脱炭素など拡充

環境省は、8704億円(24年度当初予算比49%増)+事項要求とした。5月に閣議決定された第6次環境基本計画を踏まえ、炭素中立、循環経済、自然再興などの政策を横断的に実施するための重点施策を提示。また、8月に閣議決定された第5次循環型社会形成推進基本計画に基づき、循環経済への移行を国家戦略と位置づけ取り組む方針だ。

同省がここ数年注力する「地域脱炭素推進交付金」は、エネ特+GX推進対策費で762億円と、24年度当初+23年度補正に対して200億円ほど増額した。これは、100カ所での実施を目指す「脱炭素先行地域」や、脱炭素の基盤となる「重点対策加速化事業」が進み、実施主体の増加やそれぞれ事業の執行が進んでいることを踏まえたためだという。

また、同省もGX推進対策費を活用した事業を引き続き展開。特に規模が大きいのが「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業」で1300億円とした。このほか、「業務用建築物の脱炭素改修加速化事業」で266億円、「商用車の電動化促進事業」で444億円を計上している。

エネ特関係では、「民間企業等による再エネの導入及び地域共生加速化事業」(119億円・新規)、「Scope3削減のための企業間連携を含む省CO2設備投資支援」(69億円・新規)、「地域における再エネ等由来水素利活用促進事業」(41億円・新規)、「住宅のZEH・省CO2化促進」(115億円)などがある。

【記者通信/8月29日】バイオ燃料で営業列車を運行 JR西が国内初の試験


廃食油や廃動植物油などを原料に製造された次世代バイオディーゼル燃料を100%使用した営業列車を長期で運行――。JR西日本は9月3日から主に山口県内を走る岩徳線の一部列車で、そんな走行試験を始める。燃料供給は伊藤忠エネクスが担う。JR西は試験結果を踏まえて、2025年度以降に本格導入することを目指す。燃料転換で鉄道の脱炭素化を促す取り組みとして注目を集めそうだ。

会見に臨むJR西日本広島支社長の広岡研二氏(左)と伊藤忠エネクス執行役員の千村裕史氏

伊藤忠エネクスの燃料供給で長期走行

乗客を乗せた営業列車の燃料を今回のバイオディーゼル燃料に全面的に切り替える試みは国内で初めて。具体的には、岩国駅(山口県岩国市)と徳山駅(周南市)を結ぶ岩徳・山陽線の一部列車に新たな燃料を導入する。25年1月末までの走行試験で、新燃料を長期で使用してもエンジンや各種部品などの車両性能に影響がないことを確かめる。

走行試験で利用する新燃料は、フィンランドの再生燃料世界大手ネステがつくる「リニューアブルディーゼル(RD)」だ。RDは伊藤忠商事がネステから調達し、伊藤忠エネクスがJR西に供給する。試験で使う列車の前面と側面には、環境にやさしい燃料とイメージさせるシールを張り付ける計画だ。

バイオ燃料搭載車両に貼り付けるシールのイメージ

コストを抑えながらCN実現へ

RDは軽油の代替燃料として使用できるため、既存の車両や給油関連施設をそのまま生かすことが可能だ。加えて、原料となる植物などが成長過程で吸収した CO2と燃焼時に排出する CO2がイコールとなるため、CO2排出量が「実質ゼロ」とみなされる。試験に先立つ8月23日の記者会見で、伊藤忠エネクス執行役員産業ビジネス部門長の千村裕史氏は「100%再生可能な原料を使用しているため、カーボンニュートラル(CN)を実現できる」と強調。JR西もエネルギー転換でCNの達成を狙うことに意欲を示した。

JR西グループは21年に環境長期目標を策定し、50年にグループ全体のCO₂排出量を実質ゼロにするという目標を掲げている。目標を視野に22年度からは、鉄道車両へのバイオディーゼル燃料導入に向けた実証実験を推進。エンジン性能試験や試運転による走行試験で良好な結果が得られたことから、営業列車による試験に取り組むことにした。将来的には、保有する全てのディーゼル車両の燃料を新燃料へ置き換えることも視野に入れている。

国土交通省は「鉄道技術開発・普及促進制度」を活用し、鉄道総合技術研究所とJR7社を構成員とする共同技術開発体への委託で、次世代バイオディーゼル燃料の導入に向けた技術開発をJR西エリア中心に進めている。一連の実験は、そうした取り組みの一環だ。

【目安箱/8月29日】小泉進次郎氏の環境相としての奇妙な行動を振り返る


小泉進次郎衆議院議員が、9月27日に行われる自民党総裁選で有力候補の一人になっている。エネルギー関係者は彼の行動に戸惑ってきた。彼は環境大臣を務めた。そこでの言行を振り返ってみよう。

天の声で政策決定?異様な発言をする小泉氏

小泉氏は安倍内閣、菅内閣で2019年9月から21年10月まで、環境大臣を務めた。日本政府は21年4月22日、関係閣僚会議を開き「30年度までに温室効果ガスを46%削減する」と決定した。気候変動サミットに合わせた国際公約のためだ。この公約は今でも生きている。

同23日放送のTBS系の『NEWS23』で小泉氏がインタビューに応じた。「46%に設定した根拠」について、小泉大臣は両手で「浮かび上がる」輪郭を描きながらこう語った。

「くっきりとした姿が見えているわけではないけど、おぼろげながら浮かんできたんです。46という数字が」

取材に答える環境大臣当時の小泉進次郎氏(TBSから。21年4月)

一人で数値目標を決めたとテレビの前で豪語

この発言は三つの問題をはらむ。

第一に、つまり国の政策、その数値目標を、神がかった個人の妄想で勝手に水準にしたと主張した。異様という感想しか抱けない。

第二に、彼は誤ったことを言っている。

46%の削減は、当時の菅義偉首相の主導した「2050年までにカーボンニュートラル」の政策を反映したものだった。政府の合議で決まった。小泉氏と同じく、目標設定を担当した梶山弘志経産相は「総理の決断で発表されたもの」と説明。その水準についても、これまでの政策アプローチでは下限から上限(今回は40%~45%)の間の中央値をとるところ、できるだけ上限に近い数値をとり、欧米とそん色のない野心的な目標に設定したと強調した。ちなみに、梶山氏はエネルギー問題に精通し、かなり有能な政治家・大臣だったと、私は評価している。

取材によると、梶山氏は46%に固執する小泉氏と閣内で対立し、それより下の水準を主張した。しかし菅首相の上積みの示唆もあり、渋々認めたという。

つまり、この国家目標は、小泉氏一人で決めたわけではない。彼が影響を与えたとしても、言わぬが花だろう。それを一人で決めたようにいうのは、菅首相をはじめ、他の政治家のメンツを潰す発言だ。そういう空気の読めないところが彼にはある。

気候変動問題の複雑さを理解している形跡なし

第三に、気候変動問題での温室効果ガスの削減数値目標の問題の重さ、複雑さを小泉氏は全く理解していない。

温室効果ガスの発生はエネルギーの生産、経済活動と絡んでいる。経済活動が活発になれば、電力や輸送用エネルギーは増えてガス排出は増え、経済成長の中で削減は難しい。温室効果ガスの削減を国内対策で行えば、雑な試算だが1%の削減につき1兆円前後のコストがかかるという研究もある。46%の削減のコストは国内対策だけで行えば、数十兆円単位だ。海外から排出権を買って、それをカウントする方法もある。税金を「ガス」のために、外国に流すのは馬鹿馬鹿しい。

このように重大な問題であるにもかかわらず、小泉氏は温室効果ガスの削減のコスト、日本経済への影響を真面目に考えていない。温室効果ガスの削減問題は、経済のルール作り、国際的なパワーゲーム、主導権争いの問題だ。そもそも各国は、かなりずるいことをして、温室効果ガスの削減目標を膨らませている。日本の経済・政治面での競争相手である中国は、そもそも削減目標を定めていない。「2030年までにピークを迎え、2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する」という曖昧なものにしている。経済への悪影響を真剣に中国共産党の政治指導者が考えているのだろう。

日本だけが真面目に削減目標を設定し、負担を引き受けるのは、あまりにも愚かしい。1997年に合意した京都議定書体制は、日本が過剰な負担を一国だけ負い律儀に履行したのに、2010年に崩壊した。この経緯を小泉氏は全く知らないようだ。

勉強せずにかっこいいことばかり

彼は、環境大臣就任直後に、19年9月22日に開かれた国連の気候行動サミットに参加した。その際、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールでセクシーに取り組むべきです」と発言し、騒ぎになった。「セクシー」という言葉に誰もが違和感を持った。そして内外の記者との懇談会で、「その具体策はと」聞かれると、きょとんとした顔をしてその方法を答えられなかった。

彼は福島原発の処理水問題でも何もしなかった。これは環境省と経産省が主務官庁で、彼は行政の責任者だ。

その前任の原田義昭環境相は、政治リスクを背負って、処理水の海洋放出を政治議題にした。ところが小泉氏は。就任直後の会見でその放出を「いかがなものか」と言い。その後沈黙してしまった。小泉氏は同時期に温暖化問題で、メディアに頻繁に登場しているのに、意識的にこの問題から逃げていたとしか思えない。この問題は、菅首相が主導した。菅氏はその首相在任中に小泉氏をかわいがったが、小泉氏の仕事を肩代わりした。

彼が国民的人気を落としたのは、小売店での買い物用ビニール袋の無料提供を撤廃をしたことにある。これも、環境保全上、あまり意味がないと指摘されたのに、彼はその中心になった。

発信力はあるが、重職を任せて大丈夫か

温暖化問題は「かっこいい」が、一方で汚染水問題は批判必至の「政治的に難しい問題」だ。つまり、小泉氏は「かっこいい」ことだけに熱心だ。それでいて問題を深く勉強していない。彼の人間性、そして政治家としての資質を疑う。父親の小泉純一郎元首相は変わった人だったが、政局と政策のポイントを押さえる異様な勘の鋭さがあり、膨大な読書で勉強していた。進次郎氏にはその凄さもない。

日本の大臣職は、官僚機構がきっちりあるので、それほど自由に動けない。しかし、小泉氏は政治主導でこれだけ任期中に行動した。彼には目立てる力は確かにあるが、その行動のピントは外れていた。

残念ながら、小泉氏はエネルギー問題のこれまでの行動では評価できない。発信力はあるものの、必要のないことで無駄な働きをして、周囲を混乱させている。そして必要なところでは働かない。

小泉氏がその態度を改めなければ、これ以上、公的な仕事をさせない方が良いだろう。もし首相になれば、彼による混乱は、エネルギーだけではなくあらゆる分野に広がる。

【記者通信/8月28日】敦賀2号が新規制基準「不合格」へ パブコメ後決定も原電は不服


原子力規制委員会は8月28日、敦賀原子力発電所2号機が新規制基準に適合しないとする審査書案を取りまとめた。今後はパブリックコメント(意見公募)を実施した上で、最終決定する見込み。正式に「不許可」が通知されれば、日本原子力発電は行政不服審査請求や取消訴訟といった選択肢があり、その判断に注目が集まる。

規制委では焦点となったK断層について、「活動性」と原子炉建屋直下までの「連続性」が否定できないとする審査書案を審議。委員から異論は出ず、「かなり丁寧に時間を掛けて1年間審査をしてきた。技術的に判断ができる状況になったと考えている」(山中伸介委員長)として了承した。

パブリックコメントの実施を巡っては、「今回の審査はK断層に限定しているが、これまでの審査全体についての意見が寄せられると思うので、意見募集を行うのが良い」とする意見が出た一方、ある委員は「結論に対して一番異を唱えたいのは日本原子力発電だろうが、今回の審議では当事者と議論を積み重ねて結論を導き出した。積極的に意見募集を行う意味はない。ただ大局的見地に立てば、これまで『不許可』という決定はなかったので、意見募集に賛成する」と述べた。

パブリックコメントの実施後、原電に対して規制委から「不許可」が通知されれば、行政不服審査請求や取消訴訟といった選択肢が出てくる。原電は設置変更許可の再申請に向けて現地調査を積み重ね、不服審査請求や「最終手段」とされる取消訴訟に打って出るのかを検討するとみられる。地震・津波の審査を担当した石渡明委員の任期は9月いっぱい。原子力業界関係者は「判決文を起草したところで裁判官交代という感じか」と漏らす。「原電の捲土重来を期待する」(同)

【メディア論評/8月26日】「ルール形成型市場創出への国際標準戦略」の動向と報道


1.「ルール形成型の市場創出に取り組む企業」(経産省発表)

経済産業省が4月に「ルール形成型の市場創出に取り組む企業」、すなわち「サステナビリティー(持続可能性)など付加価値を重視した、世界や業界で共通するルールづくりを通じて市場を拡大する力のある企業」(日経新聞)を発表した。発表当日、先がけて日経新聞が報道した。

◎日経新聞4月17日付〈ルールづくりがうまい企業〉〈経産省 ダイキンなど10社〉〈経済産業省は世界や業界で共通するルールづくりを通じて市場を拡大する力のある企業10社を選定した。省エネ分野で新たな国際規格を作ったダイキン工業などを選んだ。17日にも公表する。サステナビリティー(持続可能性)など付加価値を重視したルールづくりでビジネスを拡大する企業について、約1300社を対象に行ったアンケート結果に基づき選定した。専門家の意見を踏まえ、収益性や政策提言力なども調査項目とした。具体的な企業は、IDEC、インフロニア・ホールディングス、川崎重工業、コニカミノルタ、小松製作所、塩野義製薬、積水化学工業、ダイキン工業、ヤマハ、ユニ・チャーム。〉

◎経済産業省4月17日プレス〈ルール形成型の市場創出に取り組む企業を公表します〉〈……昨今のマーケットでは、規制、標準、業界基準等のルールを自らリード・形成し、市場を創出することが有効です。ルール形成を通じて新たな市場を創出する力を「市場形成力」と定義し、それを可視化する「市場形成力指標」を……公表しました。2021年度から23年度には、ルール形成に取り組む企業の現状を把握するため、「社会課題解決型の企業活動に関する意識調査」を実施しました。……調査の結果、市場形成力指標のスコアが安定的に高い企業のうち、ルール形成による市場創出の取組が確認できた企業を公表します。

●エネルギー関連

〇ダイキン工業:インドなどにおいて安全規制の改正と省エネ法の基準強化を働きかけ、省エネ基準値が競争指標となるエアコンの市場を創出

〇川崎重工業:技術開発段階からの国際標準化によって他国製品との差別化を図り、日本優位の水素サプライチェーン関連機器市場を創出

・その他の企業

IDEC、インフロニア・ホールディングス、コニカミノルタ、小松製作所、塩野義製薬、積水化学工業、ヤマハ、ユニ・チャーム〉

◎経済産業省22年3月22日公表ルール形成型市場創出の実践に向けて「市場形成力ガイダンス」―社会課題解決でビジネスを創る経営の手引き―〉より抽出

ルール形成型市場創出」とは、「社会課題解決活動とルール形成を組み合わせることで新たな市場を創出するもの

「ルール形成型市場創出」パターン別企業事例

1)政策リードによる規制デザイン

各国の産官学キーパーソンとの適切なリレーションを構築し、市場創出に資する規制の策定/改革をリード

例)ダイキン工業 インバータ・エアコン市場(中国)

社会課題解決活動:

エネルギー効率の高いインバータ・エアコンを製造販売

ルール形成:

・現地トップ企業を巻き込み、省エネ推進に苦慮する中国政府の政策形成をリード

・インバータ・エアコン実現に有利となる省エネ基準改定を実現

2)標準化によるイノベーション連携の促進

標準化・規格策定や技術のオープン化を通じて、多様な事業者が新市場に参入/貢献しやすくなる技術的基盤を構築

例)ソニー キャッシュレス決済サービス市場

社会課題解決活動:

キャッシュレス社会の実現に向け、セキュアな非接触IDカード技術方式「Felica」を提供

ルール形成:

・近距離無線通信規格としてFelica方式の国際標準化を実現

・ソフトウエア開発キットを公開し、Felicaアプリケーション開発への新規参入を容易に

3)業界コンセンサス形成による新たな「モノサシ」開発

アジェンダ/問題意識を提起して企業を巻き込み、新たな「価値」を定義する認証基準等を策定

例)雪ケ谷化学工業(東京都品川区) フェアトレード天然ゴム市場

社会課題解決活動:

フェアトレード(途上国との公正な取引)で調達した天然ゴムを用いた製品を製造

ルール形成:

・強制労働などがなく、公正に取引された天然ゴムを用いた製品を証明する「フェアトレード天然ゴムマーク」を創設

・同業他社や取引先と連携して枠組みを拡大

~ダイキン工業のルール形成力~

このように、今日的な「ルール形成型の市場創出」とは、『政策や法的な規制の枠組、あるいは規格化・標準化を自らリード・形成し、社会課題の解決につながる新たな商品市場を創出すること』をいう。経産省のリストで「ルール形成型の市場創出に取り組む企業」として挙げられたダイキン工業は、「インドなどにおいて安全規制の改正と省エネ法の基準強化を働きかけ、省エネ基準値が競争指標となるエアコンの市場を創出」しているとされた。同社のこうした「アドボカシー(支持)活動」は重要な事業戦略の一つとされる。筆者は以前、経産省の産業政策担当の幹部やブリュッセル駐在経験のある幹部から、同社のルール形成力への高い評価を聞いていた。同社の井上礼之会長(当時)は22年8月、日経新聞の取材に、欧州でヒートポンプ暖房を再エネに認定するルール形成への参画について述べている。それは、長年のキーパーソンへの丁寧な情報提供脱炭素時代の環境技術という共感、そして技術力と商品力の裏付けで実現したもので、逆にルール形成に関与しないことのリスクを指摘した。

◎日経新聞22年8月31日付〈省エネ暖房、独り勝ちの理由は? ダイキン会長に聞く〉

Q:欧州でヒートポンプ暖房が拡がっています。

A:ヒートポンプ暖房は空気中の熱を集めて、その熱を移動することで暖められる技術だ。必要なのは小さな電気だけで、二酸化炭素(CO2)排出量は燃焼暖房に比べてとても少ない。 カーボンニュートラルに向けて欧州で環境規制が厳しくなる中、「地球に優しい」ヒートポンプに急速に変わりつつある。ロシア産天然ガスの依存度を減らすためにEUが決めた政策の中にも、ガスボイラーからヒートポンプ暖房への置きかえを加速する項目が入った。ヒートポンプ暖房は08年に再生エネルギーとしてEUに認められた。ダイキンはルール形成から参画してきた。今は絶好のチャンスだ。

Q:欧州では外資になるダイキンが、なぜヒートポンプ暖房が再エネに認定されるといったルール形成に参画できたのでしょうか?

A:欧州には地場の空調メーカーがない。ダイキンは欧州で50年も事業を展開し、冷房で欧州委員会やキーパーソンとつながり、丁寧に情報提供してきた。培った人脈をすべて生かせる有利な立場にいる。ヒートポンプの最先端にもいる。ルール形成には一企業のエゴでなく共感できる大義名分と、技術力や商品力の裏付けが必要だ。環境技術は脱炭素の時代に納得性が得られる。

Q:日本企業はルール形成が得意ではありません。

A:企業にとって、戦略を実行する手段のひとつにルール形成がある。ルールに関わらないリスクは昔より大きい。規制が決まる前に、先に先に動かないといけない。企業は業績向上だけでなく、環境にどう貢献するか、社会的責任をどう果たすかの比重が大きくなった。企業の盛栄を決めるひとつの要素になっている。……〉

電気新聞は、〈欧州政策に見るヒートポンプ普及の鍵〉と題して、拡大する欧州ヒートポンプ市場について、シリーズで特集している。

参考=電気新聞 シリーズ〈欧州政策に見る ヒートポンプ普及の鍵〉

8月14日(1)〈販売急増、脱炭素後押し〉〈導入に手厚い補助金/ボイラー規制を強化〉

8月15日(2)〈日本の技術 存在感〉〈地産地消で需要取り込む〉〈省エネ性や再生可能エネルギーを利用する環境性の観点から脱炭素政策の後押しを受け、急拡大を続けてきた欧州ヒートポンプ(HP)市場。日本メーカーも大きな存在感を示しており、近年の急拡大をけん引してきた機器の生産能力増強などにも注力をしている。HP機器のメーカーとして名を連ねる日系企業は、ダイキン工業やパナソニック、三菱電機など。これら日系メーカーは、HP機器の要となる圧縮機や高効率化に貢献するインバーター、低環境負荷な冷媒といった基幹技術に強みを持つ。欧州でも大きなシェアを占めており、近年の市場拡大を踏まえ、22年頃から次々と欧州におけるHP機器の製造能力増強に向けた戦略も打ち出し始めた。各社に共通するのは、欧州周辺で拠点を整備・強化し、地産地消で需要を取り込もうとする点にあると言える。代表例が、ダイキンの欧州・中東・アフリカ事業を担うダイキンヨーロッパの計画だ。同社はベルギーの……北海に面する港町・オステンドに本社を構える。中核となる生産・開発拠点もあり、同地のオステンド工場では主に店舗やビル向けのエアコンといった大型業務用製品を生産している。設立は1972年。翌73年にオステンドで空調機の生産を開始した同社は現在、売上高約7735億円、従業員数1万3000人超、生産拠点18カ所、販売会社約49社、開発拠点13カ所の規模までに成長した。……現在取り組んでいる計画が新たな生産拠点の整備だ。3億ユーロ(着工発表時の為替換算で423億円)を投じ、ポーランドに新工場の建設を進めている。 生産を予定しているのは、主に家庭で使用されるHP式給湯暖房機。欧州市場の急拡大をけん引してきた機器だ。……〉

8月20日(3)〈コストと意識の壁〉〈「行動計画」示し再加速へ〉

【目安箱/8月16日】次期首相の座を狙う河野氏 脱原発封印の真意とは


岸田文雄首相が9月に予定される自民党総裁選挙への不出馬を8月14日に表明した。それに伴い次の首相候補として河野太郎デジタル担当相の動きが注目されている。首相の座を狙うためか、河野氏は原子力活用に理解を示すような行動をしている。しかし私はエネルギー業界にいるものとして、考えを変えたとは思えない。これまでの、彼の電力業界、原子力への長い敵視や嫌がらせの蓄積、それによる不信感があるためだ。洋上風力を巡る受託収賄罪で逮捕・起訴された秋本真利衆院議員の著書の帯には、「俺よりすごい、自民党一の『脱原発』男だ」という河野氏のコメントがでかでかと掲載されている。そんな彼の変心を私は信じられない。

2020年12月に発刊された秋本氏の著作『自民党発! 「原発のない国へ」宣言 』(東京新聞刊)

河野太郎氏は7月31日、茨城県東海村にある日本原子力発電と日本原子力研究機構の関連施設を訪問した。デジタル担当、行政改革担当の大臣という立場からの視察だが、自分の「反原発」のイメージを変えようとする政治利用の意図が見えた。

彼はこの訪問で原子力の新技術に感心する姿勢を示した。そして視察後に書いた自分のブログ、また同行した記者団の囲み取材で、膨大な電力を必要とする人工知能(AI)やデータの時代になり電力需要の急増に対応するために「原発の再稼働を含め、さまざまな技術を活用する必要がある」と語った。そして自分の考えは「反原発・脱原発」ではないことを強調した。

ただし河野氏はしたたかだ。今回の視察では、高速増殖炉の実験炉である「常陽」が含まれていた。これは高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)が潰された後で、核燃料サイクル政策と研究を進める上で重要な役割を持つようになった。ただ河野氏は視察後も常陽については何も発言していない。河野氏は、エネルギー・原子力政策を巡る活動で、特に核燃料サイクル政策を敵視してきた。その点については、現時点で考え方を変えたかどうかをあいまいにしている。おそらくは変えていないだろう。

◆敵を作って攻撃する河野氏の手法

これまでも河野太郎氏は「自分は反原発、脱原発ではない」「再エネは最大限に活用すべき」「核燃料サイクルは合理性がないので潰す」と公言していた。しかし自民党に多い原子力発電の推進派、経産省・資源エネルギー庁、大手電力会社を敵視する態度が目立った。

河野氏は騒ぐだけの政治家と違う賢さがある。世論を動かし、行政機構や政治家、自民党を動かす方法を知り、効果のある方法を考えながら行動する。そして河野氏は、これまで敵を作り、問題を世の中に訴え、世論を味方に敵を攻撃することで、政治目的を達成し、自分の存在感を高めてきた。原子力やエネルギーでもそのように行動し、彼にとっての正義である脱原発を進めてきた。

直近の彼の起こした「内閣府の再エネ総点検タスクフォース」(TF)騒動も、その行動の典型だ。大臣の権限で、特別委員会を作り、自分の主張に近い専門家を集め、その意見を経産省や電力会社批判に使った。しかしその構成メンバーが、中国企業のロゴを使った資料を提出したことが今年6月に発覚した。しかし河野氏は、そのメンバーと中国企業の関係が、中立的な第三者機関によって明確に解明されない中でこの委員会を解散させてしまった。そこに責任を取らない、ポピュリズム政治家としてのずるさを感じる。

そうした中での7月末の急な方針転換だ。ある電力幹部の考えだが、「首相の座を狙うための方針転換で、原子力やや既存電力会社への敵視の姿勢が変わったとは思えない」との見方は当然だろう。そして、これまでの彼の行動の反動が押し寄せている。

◆反原発の主張の反動 立地地域の反感を買う

河野太郎氏は2021年の自民党総裁選挙で、岸田氏に敗れた。敗因の一つは、原発とエネルギーだった。原子力発電所の立地する道県は12になる。自民党総裁戦は、党員票、都道府県連、そして衆参の国会議員が一票になる。しかし、その12の道県で、河野太郎氏は票が取れず、それらは岸田氏に流れた。

河野氏は麻生派に属するが、同派はグループとして河野氏を推薦せず、属する重鎮議員の甘利明衆議院議員などは河野太郎氏のエネルギー政策を強く批判している。

総裁選で有力候補の一人になりそうなのが高市早苗衆議院議員だ。彼女は原子力、電力安定供給、安全保障に関心を持つ。反原発、また中国との友好を掲げる河野氏の反対勢力の支持を集めそうだ。

河野氏はその後、自分の敗因を分析するコメントを出してはいない。しかし、反原発を続ければ、自分が首相になれないことを十分承知しているだろう。

◆河野氏が国家権力を握るとどうなるか!?

河野氏が急に原子力を容認するような姿勢を見せたのは、こうした事情を考えてのことのようだ。しかし、私は彼が今よりも大きな権力を持つことを警戒している。そして彼が理想とする、そして実務家にとっては危惧の多い再エネを主力電源とし、原発を使わないエネルギーシステムは、多くの問題を日本の未来にもたらす。

どんな産業も、社会の中でビジネスをするために、世論や政治に振り回される。しかし、電力業界は東京電力の福島第一原発事故以来、その振り回され方が異様だった。そしてその流れの中で、日本原電敦賀2号機について、原子力規制委員会という一行政機関が、今年7月に事実上の廃炉判断を示してしまった。

私はこれを不当で異様な決定と思うし、これによって電力業界関係者の多くは行政への信頼をなくした。そうした状況下で、河野太郎氏が国家権力を握ることが加わったら、ますます先行きの政治リスクが高まってしまう。エネルギー政策の観点から、河野首相の誕生はあり得ないと思うのは、決して私だけではないはずだ。