開いた口がふさがらない。今度こそ止めると思われていた燃料油補助金が、またもや延長される方向になったことだ。これで一体何度目の延長だろうか。政府は3月24日の経済財政諮問会議で、物価高対策としてガソリンなど燃料油への補助金を4月以降も当面継続する方針を打ち出した。同日の資料には「全国平均で185円/ℓとなるよう支援を継続」「今後の原油価格の状況を丁寧に見定めながら適切に対応」とある。この問題を巡って聞こえてくる関係者の声を紹介する。

「誤解を恐れず言えば、燃料油市場では国家公認のカルテルが行われている。この愚策を、原油価格が安定している現状でも続けていくなど、政治の無能ぶりをさらけ出しているようなものだ。実際には、185円よりも安く販売できるにもかかわらず、ターゲット価格が提示されているため、あえて値下げしないSS(サービスステーション)も少なからずあるようだ。いつ止めるの?今でしょ!というタイミングはこれまでに何度もあったが、専門家による検証作業も行われないまま、ことごとく政治側の勝手な都合で延長に次ぐ延長が行われている。原油価格がどこまで下がれば補助金をやめるのか。何兆円もの税金を投じてきた政策だけに、その指針を示すのが国の責任だが、『状況を丁寧に見定めながら適切に対応』という言葉で逃げ回っている。出口戦略は完全に見失われた」(石油アナリスト)
「国が燃料油の価格指標を示し、そこをターゲットに補助金を投入する。いまや多くのSSが同じような水準の値付けを行っており、SS間の価格競争はほぼ起きていないに等しい。円安傾向は相変わらず続いているが、原油価格はWTIで70ドルを割り込んでおり、とても高騰とは言えない状況。おかげで、石油元売り会社や特約店の収益はかつてに比べ安定している。本来なら、SS間の価格競争によって小売り相場が形成されるところ、市場の価格決定メカニズムはもはや崩壊したと言っていい」(大手石油元売り会社OB)
「そもそもの問題は、燃料油補助の直接的な恩恵が車保有者に限られることだ。そこに何兆円もの補助金を投入したところで、全国民的な物価高騰対策にはならない。まだ、国民の大半が利用している電気・ガス代への補助の方が生活安定面での効果はあると思う」(大手電力会社幹部)
「補助金継続の一方で、ガソリン税の暫定税率廃止問題が議論されている。立憲民主党と国民民主党はすでに4月から暫定税率を廃止する法案を提出したし、同様の法案を独自提出した日本維新の会も自民党や公明党と来年4月の廃止を視野に協議体で議論を深める方向だ。各党は、国民の生活安定のために暫定税率を廃止すべきというが、実質的には『ガソリン車に乗っている一部の国民の生活安定のために』と正確に主張すべきだ。少なくとも大手マスコミは、こうした問題点をもっと掘り下げて報じる必要がある」(エネルギージャーナリスト)
「カーボンニュートラル政策の観点から見て、燃料油代を国の補助金で安くする政策は、化石燃料価格を引き上げることで消費を抑制しCO2削減につなげるカーボンプライシングの政策目的と完全に逆行する。これは暫定税率の廃止も同様。石油特約店の人に話を聞いたら、補助金が燃料油販売を下支えしているのは間違いなく、EVシフトにも歯止めを掛けているのではないかという。国は脱炭素化に向けて、アクセル、ブレーキどちらを踏みたいのか、全く分からない」(環境NPO関係者)
永田町筋によれば、石破首相による商品券配布問題が予想以上に政権に打撃を与えており、今後の都議選や参院選への影響を懸念する声が与党内で高まっている。燃料油補助延長の裏には、支持率対策という隠れた狙いも見え隠れする。いずれにしても、止め時を完全に見失った燃料油補助はいつまで続くのか、また今の国際市況に基づく適正な燃料油価格は一体いくらなのか、もはや誰にも分からない。税金だけがひたすらだらだらと注ぎ込まれ、負担は後世に付け回されることになる。














