5月3日に投開票を迎えるオーストラリアの連邦総選挙は、現首相のアンソニー・アルバニージー氏率いる労働党がリードする展開になっている。食料品や住宅、光熱費の上昇といった生活費の高負担をどう軽減させるかが争点となる中、現政権批判を繰り広げてきた自由党などの野党連合の訴えは有権者にあまり響いていないのが現状だ。自由党のピーター・ダットン党首は、同じ保守系のドナルド・トランプ米大統領に倣った政策を打ち出しているものの、有権者らの反発を招き撤回や謝罪するというドタバタ感が否めない。焦点の一つ、エネルギー政策については電気料金の軽減策をめぐって両党で激しい応酬が続いているが、両者とも歯切れの悪さが目立つ。

「ふさわしい首相」はアルバニージー氏に軍配
豪州の世論調査を担うニュースポールは4月7日~10日にかけて1271人を対象に情勢調査を実施した。議会の二大勢力に絞った支持率は、労働党が52%、自由党を中心とする野党連合は48%となり、現政権が4ポイント差でリードした。この2週間前に実施した調査では勢力の差が2ポイントだったが、1週間前では4ポイントに差が広がり今回でもその差が縮まらなかった。労働党が4ポイント差をつけたのは昨年5月以来となった。
一方、「好ましいリーダー」の項目では、アルバニージー氏は49%と前回調査より1ポイント改善し、逆にダットン氏は2ポイント下げ38%となった。選挙戦が進むにつれ両者の差が開いてきている。
アルバニージー氏は経験値の高さと重要課題に理解があるという点でダットン氏よりも評価を高め、ダットン氏は「決定力と力強さがある」と評価されている。
両者は豪州全土をくまなく遊説しているが、アルバニージー氏はポロシャツ姿で地域のイベントに参加するなど親しみやすさを売りにしている。ダットン氏は常にジャケットに襟付きのシャツを装っているためか、世論調査では「思いやりがある」「感じがいい」「傲慢(ごうまん)さが少ない」など人柄の評価では、アルバニージー氏に軍配が上がっている。
野党のダットン氏はトランプ効果が裏目に
政権奪還を目指すダットン氏率いる野党連合は、政治的信条が近いトランプ氏に倣った政策を打ち出している。しかし彼らの思惑通りにいかず、有権者らの反発が強まり支持率低下の原因になっている。
その典型が政府職員のテレワーク廃止公約だ。野党連合は「テレワークが労働の非効率を招いている」とし、政府職員を対象に廃止する方針を打ち出した。トランプ氏が政府の効率化を図る目的で省庁を削減するなどの手に打って出ているが、スケールは小さいものの約37万人いるとされる政府職員を約4万人削減するという公約と併せ、「非効率」を悪とする似た政策だった。
だが国家公務員の職員組合が一斉に反発した。「労働者の実態に合っていない」「デジタル社会に反する」などという声が日増しに強まり、ついには労働党が民間企業への波及に懸念を表明し、有権者の野党連合への不信感が増幅した。
今月7日、ダットン氏は「われわれは過ちを犯した」と謝罪し、テレワーク廃止方針を撤回することになった。職員削減も採用抑制などで対応するといい、一気にトーンダウンする形に追い込まれた。
豪州政治に詳しいある専門家は「トランプ効果を狙ったが、悪評が目立つトランプ大統領になぞらえる有権者が多く存在していることに気づくのが遅かったのが支持低下の一因だといえる。世論の動向を見て謝罪や公約撤回でドタバタするダットン氏を見た有権者は、彼に求めていた強いリーダーシップに疑問を持ち始めている」と評する。

















