【特集1】現実的な安定供給・脱炭素両立へ 大規模投資判断できる環境整備を


エネ基が示した火力のkW時抑制・kW維持と脱炭素化の追求には、継続的な大規模投資が不可欠だ。
発電事業の魅力を高め、多様なプレーヤーが投資判断できるような環境整備の実現が求められる。

【レポート:三宅将矢/みずほ銀行 産業調査部アナリスト三宅将矢】

今年2月、日本政府は第7次エネルギー基本計画を閣議決定し、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化などによるエネルギー安全保障リスクの高まりを踏まえ、エネルギー政策の基本方針として安定供給と脱炭素の両立を追求することを掲げた。

本計画においては、すぐに使える資源に乏しく地理的制約を抱える日本固有の事情に加え、近年のエネルギーの価格高騰や供給不安、カーボンニュートラルの対応などの世界情勢を踏まえ、再生可能エネルギーの最大限の導入を目指す方針を維持しつつも、特定の電源や燃料源に過度に依存せず、バランスの取れた電源構成を目指すことが示された。

火力発電については、脱炭素の観点では発電量(kW時)を減らしていく一方で、安定供給の観点から必要な発電容量(kW)を維持・確保することとしている。その具体例として、長期脱炭素電源オークションを通じて、将来的な脱炭素化を見据えたLNG専焼火力の新設・リプレースが促進されていることが挙げられる。2040年度のエネルギー需給の見通しにおいて、火力発電は3~4割を占めると想定され、主要電源の一つとして改めて位置付けられている。

今後、再エネや原子力などの比率が高まっていくことが見込まれるが、現在の日本の電力需要の約7割は火力発電によって賄われている。22年3月に初めて電力需給ひっ迫警報が発令されるなど、近年では需給ひっ迫がたびたび懸念されているが、火力発電は安定供給の中核として、国民生活や企業活動を支えている。

太陽光、風力発電の発電量は、曇りや無風状態が長引くと大幅に減少し得るため、大量導入時には大規模な調整力が必要となるなどの課題がある。火力発電は、日本の電力需要を満たす供給力、出力をコントロールできる調整力、系統の安定性を保つ慣性力を備えており、安定供給に欠かせない電源と考えている。

【特集1】供給力・燃料調達の維持強化へ 不確実な時代にどう備えるか


脱炭素化のあおりを受けて、安定供給に資する火力発電の立ち位置は揺れている。
資源エネルギー庁、電力広域的運営推進機関の担当者に火力の課題と展望を聞いた。

【インタビュー:和久田 肇/資源エネルギー庁 資源・燃料部長】

新たな供給源確保は一層重要に 環境整備進め調達リスク低減図る

―燃料調達の課題について、どのように捉えていますか

和久田 火力燃料のうち天然ガスについては、第7次エネルギー基本計画の複数シナリオの一つ「技術進展シナリオ」で2040年度の需要が約7400万tに達すると見込んでいます。昨年度の輸入実績(約6600万t)を上回る水準であり、既存の上流権益の減退や契約の満了を踏まえると、新たな供給源の確保が一層重要になります。その際には、供給国における政策変更などのカントリーリスクに備えるため、供給源の多角化を進めるとともに、仕向地条項の有無や複数のシーレーン確保といった契約条件や輸送ルートの多様化により、調達リスクの低減を図る必要があります。政府としは、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)による出資や債務保証といったファイナンス支援を通じ、事業者が新規契約やプロジェクト参画に踏み出しやすくなるよう環境整備を進めていきます。

―今後、LNGは供給過剰の局面に向かうのでしょうか。

和久田 30年に向けては、各国で多くのLNGプロジェクトがFID(最終投資決定)済み、FID取得を目前に控えており、需要を上回る供給量が確保されることが見込まれます。一方で、全てのプロジェクトが計画通り進むとは限らずカントリーリスクをはじめとするさまざまなリスクがあり、想定される程十分な供給が得られるかは不透明です。また30年以降需要が増加すれば、将来的には供給不足になる可能性があります。

―LNGの供給拡大を見越して、スポット市場に傾斜した調達にシフトしようとする動きも出てくるのではないでしょうか。

和久田 その点は極めて慎重に判断すべきです。現在計画中のLNGプロジェクトが全て予定通り立ち上がる保証はありませんし、需要動向も依然として不確実です。IEA(国際エネルギー機関)は、公表政策シナリオで当面は需要が横ばいになると予測していますが、さまざまな要因により、需要が上振れする可能性に言及しています。スポット市場に過度に頼るのではなく、上流権益への参画や、長期契約による調達を基本とし、安定的な確保を志向すべきです。

―石炭はどう見ていますか。

和久田 現時点では安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源の一つです。課題はCO2排出への対応ですが、CCS(CO2回収・貯留)などの技術が進展すれば、それをマネージすることは可能です。そうした中、ダイベストメントの動きがあることは懸念しています。

ダイベストメント広がる 資金の確保が課題

―需要減を上回るスピードで供給が先細る可能性は。

和久田 現時点で直ちにそうした問題が顕在化しているわけではありませんが、今後のマーケット動向については注意深く見ていく必要があります。現在の懸念の一つがファイナンスの問題です。ダイベストメントの動きが広がる中、必要な資金をどう確保していくかが課題です。環境負荷の低減を図りつつ、需要があるところには確実に供給が届くよう、金融面を含めた環境整備を進めていきます。

非効率な石炭火力を中心にkW時を減らしていく方針ですが、石炭の安定供給は引き続き重要として、石炭の自主開発比率については、40年に60%を維持することを掲げています。一般炭の調達環境の変化に伴い、自主開発比率は低下傾向にありますが、比較的長期の複数年ターム契約は安定的な調達に資すると考えており、今後は自主開発比率に加え、複数年ターム契約の比率を、安定供給のための補完的な指標として捉え、必要な施策を検討していく方針です。
 

その一環として、JOGMECの支援制度を見直しています。具体的には、海外企業をジョイントベンチャー(JV)の相手として共同探鉱を行う「JV調査」を導入しました。従来は、日本企業が探鉱の後に権益を取得することが前提でしたが、JV調査の制度改正を行い、探鉱段階でJOGMECが複数年タームの生産物引取権を確保し、それを日本企業に引き継ぐ形を構築しています。これにより、上流権益に加え、生産物の調達を複数年ターム契約で支援対象とする新たなやり方へと移行しました。石炭の開発やファイナンスの在り方が大きく変化する中でJOGMECの支援も柔軟に対応していく必要があります。契約の多様化が進む中、そうした変化に対応できる支援体制の構築も進めているところです。

わくだ・はじめ 1992年通商産業省(現経済産業省)入省。2018年資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長、20年石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現JOGMEC)副理事長などを経て24年6月から現職。

【特集1まとめ】火力復権! 供給力強化へ潮目変わるか


ここ10年ほどで休廃止が一気に進んだ火力電源だが、復権の兆しが見えてきた。

移行期を支える供給力・調整力としての役割が高まるLNG火力は、新設を後押しする制度が徐々に整備され、建設計画が相次いで公表されている。

エネルギー基本計画でも2040年に向けてLNG火力の必要性を強調している。

一方、石炭火力を巡っては非効率設備のフェードアウト以外の方針は打ち出されず、このままではサプライチェーンが維持できずに「第二の石油火力」となりかねない。

設備容量の維持や今後の燃料調達を巡る関係者や有識者、政策当局の問題意識に迫り、これからのあるべき火力政策の方向性を探った。

【アウトライン】計画ラッシュのLNGと退出する石炭 火力発電ブーム再来の舞台裏事情

【レポート】首都圏支える国内最大級の設備 再エネ対応で起動停止の急増も

【レポート】長期軸で政策見直しの羅針盤に 高リスク低利構造にメスを

【レポート】現実的な安定供給・脱炭素両立へ 大規模投資判断できる環境整備を

【インタビュー】供給力・燃料調達の維持強化へ 不確実な時代にどう備えるか

【特集1】計画ラッシュのLNGと退出する石炭 火力発電ブーム再来の舞台裏事情


LNG火力の建設を後押しする環境変化が起きる中、石炭火力はいまだ退出が進むばかりだ。
関係者の問題意識を踏まえ、必要な設備維持、そして今後の燃料調達戦略はどうあるべきか―。

電力システム改革や脱炭素化のあおりで大規模投資が進まず、過度な退出が危惧されるばかりだった火力電源を巡る風向きが変わってきた。

これまで、現行の卸電力市場や容量市場、需給調整市場などでは、火力の長期的な投資回収の不確実性が高く、採算が見込めない発電所の閉鎖が相次いだ。また、再生可能エネルギーの拡大に伴い火力の稼働率が低下する中、今後、未稼働の原子力約2000万kWが動き出せば、火力の採算性を一層圧迫する。政府は、供給力・調整力として必要な規模の火力を維持すべく、長期脱炭素電源オークションにLNG専焼火力の枠を時限的に設け、予備電源制度などを講じたものの、狙い通りに機能しているとは言い難い。

既に数年前から電力需給ひっ迫が現実のものとなり、今後は需要が増加に転じる可能性も出てきた。電力広域的運営推進機関が3月末に公表した2025年度の供給計画でも、火力は32年ごろに向けて休廃止が続き、中長期で需給バランスが厳しくなる見通しだ。

ただ、34年度までの電源開発計画を見ると、LNG火力は新設が18地点945・8万kW、増出力が1地点2・7万kW、廃止が10地点385・7万kWとなり、差し引き562・8万kWプラスとなる。一方、石炭火力は廃止計画のみ18地点あり、446・3万kW減少する。復権の兆しが見えるLNG火力と、フェードアウトばかり目立つ石炭火力との違いが鮮明に表れている。

ではここから、それぞれの設備容量確保に向けた対応や運用面、あるいは燃料調達を巡る現状や課題を掘り下げてみる。

【特集1まとめ】地域エネ衰退の危機 合従連衡で再生なるか


人口減少や過疎化を背景とする地域経済の疲弊に加え、
脱炭素や省エネといったエネルギー政策の要請を背景に、
地方のガス・石油供給事業が衰退の危機にさらされている。
ガス、石油とも経済や生活にとって欠かせないライフライン。
供給網・インフラの存続は地域の将来を左右する重要課題なのだ。
そんな時代に対応すべく、業界ではM&A(合併・買収)をはじめ、
同業者間や異業種とのアライアンスなど合従連衡が進みつつある。
果たして、その実情はどうなっているのか。直面する課題や展望は?
都市ガス、LPガス、SSの3事業の最新事情に迫った。

【アウトライン】地域課題克服し供給体制の再構築なるか エネルギー3事業のアライアンス事情

【ディスカッション】地域インフラの将来像を考える 事業承継に三者三様の課題

【レポート】規制緩和と一体のSS過疎地対策 LP事業譲渡は卸会社優先で検討を

【インタビュー】インフラ間の親和性に着目 あらゆる方策の検討が不可欠

【特集1】インフラ間の親和性に着目 あらゆる方策の検討が不可欠


需要減が避けられない中、エネルギーインフラを維持する上で重視されるのが規模の経済だ。
山内弘隆・武蔵野大学特任教授は、インフラ間の親和性に着目して打開策を提示する。

【インタビュー:山内弘隆/武蔵野大学経営学部特任教授】

―都市ガスやLPガスなど、地域のエネルギーインフラが危機的状況にあります。


山内 エネルギーのみならず、交通や水道といった他のインフラサービスも含めて、人口減少や過疎化の影響で採算が取れる需要水準を満たさなくなっています。特に都市ガスやLPガスといった化石燃料系は、カーボンニュートラル(CN)の実現に向け電化が一層進展すると需要密度が低下し、インフラを維持することがますます難しくなる可能性があります。単位あたりのコストを下げるためにも規模の経済が重要であり、ある程度集約化を進める必要があるでしょう。


―地域や業種を超え連携することは有効でしょうか。


山内 地域を超えたM&Aを進めるべきかというと、地元企業が地域の資本によって事業を運営し、その地域で雇用と利益を生むことが大事であるという考え方もあり、非常に難しい問題ですね。異業種連携については、すでにドイツの「シュタットベルケ」(自治体出資による公共サービス事業者)のような仕組みを構築しようという提案がいくつかありますが、そう簡単なことではありません。とはいえ、同じ導管供給である水道と都市ガス事業は親和性が高く、一体的に運営することで工事の効率を高められる可能性があります。また電力事業では、鉄道線路沿いの空き地の利用によって用地取得の負担が軽減できるかもしれません。いずれにしろ、エネルギーインフラの維持に向けあらゆる方策を検討していくべきです。

地域目線のインフラ再構築 鍵はエネ庁と自治体の連携

―参考になる取り組み事例はありますか。


山内 
交通の分野ではさまざまな試行錯誤がなされています。例えば国土交通省が立ち上げた、「地域公共交通のリ・デザイン(再構築)」構想は、自治体、交通事業者、学校、病院など地域全体が連携・協力して利便性高く、持続可能な公共交通を作ろうという試みです。路線バスやスクールバス、病院の送迎バスなどをまとめて運行することでより効率化できますし、労働者不足にも対応できます。このほか地域協議会を立ち上げ、独占禁止法の適用除外を受けた上で、路線バスや自治体が運営するコミュニティバスの路線が競合しないように調整するといった取り組みもあります。


―地域目線でエネルギーインフラをリ・デザインするには。


山内 脱炭素など自治体のエネルギー政策を所管してきたのは環境省で、資源エネルギー庁はあまり関わっていません。再生可能エネルギーの普及拡大も含め、両者が連携して地域エネルギーの在り方を模索する段階にきています。

やまうち・ひろたか 慶応大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。1988年から2019年まで一橋大学大学院商学研究科教授。現在、一橋大学名誉教授、武蔵野大学経営学部特任教授。ガス事業制度検討ワーキンググループ座長を務める。

【特集1】規制緩和と一体のSS過疎地対策 LP事業譲渡は卸会社優先で検討を


サービスステーションの経営やLPガスの直売・卸などを手掛ける会社を経営する垣見裕司氏。
書籍などを通じて業界情報を発信する同氏は、両事業の生き残り策をどう考えているのか。

【レポート:垣見裕司/垣見油化社長】

ガソリン需要のピークは2004年度の年間6148万㎘。その時のサービスステーション(SS)数は4万7584軒だった。1SS当たり月間107㎘を販売していたことになる。24年度は4381万㎘でピークよりも29%も減少した。SS数は2万7414軒で、1SS当りの販売量は月間133㎘に増えた。今までは残存者利益があったのだ。

今後も①老朽化、②後継者不在、③再投資可能な利益がない、④都心部や駅近SSは不動産の有効利用による積極的撤退―が続き、年間500SS程度減るだろう。根拠のない筆者の予測では40年までに2万軒まで減るが、そこで止まってほしいと思っている。

液体燃料は相当量残る 生き残り策は2万通り

SS業界の勝ち残り戦略は、立地により全く異なる。筆者が済む東京では洗車、コーティング、レンタカー、車検、中古車売買が成功している。特にレンタカーは6拠点約80台を保有すれば年間売り上げとして約1億円をあげられる。仕入れがないので利益率は高いが、世帯当たり保有台数が多い地方では成り立たないビジネスモデルだ。

洗車やコーティングも、軽自動車、まして軽トラックが多い地方や農村部のSSでは難しい。寒冷地や降雪地での冬の灯油は大きな収益源であったが、昨今の温暖化で灯油需要は過去17年で半減している。従って地方では、自治体も巻き込んで、道の駅に共同運営SSを建設するなどの抜本的な意識改革が必要だ。

さらに数が少ないSS過疎地では例えば、①ノズル付き6㎘ローリーなどに灯軽油に加えガソリンも積載し販売可能にする、②遠方の油槽所ではなく近くの大型SSにて給油ノズルからローリーへの給油を可能にする、③ローリー車庫での積み置きを可能にする―。この3点の規制緩和を、自治体や消防警察と共に特区的に実施すれば充分生き残れる。

欧米で先行していたEVの普及は失速した。日本も23年に売れた日産の軽サクラが、24年は前年比62%に落ちた。本格普及には、全個体電池の登場を待つしかないだろう。SS業界の結論としてカーボンニュートラル(CN)比率は不明だが、液体燃料は相当量残ると確信する。そして勝ち残るSSが2万あればその方法も2万通りある。

SSの生き残り策は多様だ

【特集1】地域課題克服し供給体制の再構築なるか エネルギー3事業のアライアンス事情


地域エネルギーは社会課題を克服すべく新たな供給体制への再構築が求められている。
LPガス、都市ガス、SSのエネルギー3事業を巡るアライアンスの行方はどうなっていくのだろうか。

商圏買収が有効なLPガス 都市ガス、SSに秘策は?

これまでも活発に営業権の売買が行われてきたLPガス業界。利益率が高いLPは、営業権の価格が他の商材よりも際立って高水準だ。これまでは事業を手放す際には、卸売りなど取引関係のある事業者に譲渡するのが主流だった。ところが最近では、仲介会社が間に入り、全国規模で展開する大手が株式取得を伴うM&Aを足掛かりに、新たな地域に進出する動きが出てきた。

M&Aを進める上で資本力のある大手が有利であることは間違いなく、進出を許せばそこを拠点に次々と顧客を奪われかねない。地域の中堅・小規模事業者は警戒感を強める。

「LPは引き受け先があるが、こちらは全く受け皿がない」と関係者が危ぶむのは、都市ガス業界だ。供給設備が独立し、M&Aを進めたところで規模の経済を生かして事業効率を飛躍的に高められるわけではない。

実際、これまで公営のガス事業者が民間に事業譲渡するケースばかりで、民間同士のM&A事例がないのはそのためだ。業界の事情通は、「立地制約を受ける都市ガスの小規模事業者をM&Aで救済することはできない。複数の地域で一斉に事業が立ちいかなくなる可能性もある」と、危局を訴える。

最も危機的状況にあるのがSSだ。足元では燃料油補助金に支えられ高い収益を出している事業者は多いが、それでも事業を譲渡する先が見つからない。過疎化やEVシフトに伴う需要減以上に、地下タンクの更新や土壌汚染など将来のリスクが懸念され、投資対象として敬遠されがち。課題を乗り越え事業承継できなければ、やがて地域からSSが消滅してしまうだろう。
それぞれ固有の問題を抱える中で、各事業者のM&A事情ははどうなっているのか。最新動向を追った。

LPガスはエネルギー供給の“最後のとりで”

【特集1】地域インフラの将来像を考える 事業承継に三者三様の課題


地方のエネルギー事業が承継難の渦中にある中、LPガスではM&Aの動きが目立ってきた。
その実態を探りつつ、都市ガスやSSを含めた地域インフラの将来像を、識者3人が語る。

【出席者】角田憲司(エネルギー事業コンサルタント中小企業診断士)、橘川武郎(国際大学学長)、中原駿男(スピカコンサルティング代表取締役)

左から中原氏、橘川氏、角田氏

―自由化や脱炭素、人口減少などを背景に、エネルギーの需給構造が大きく変わる中で、地方の生活基幹エネルギーと言えるLPガス業界ではM&A案件が増えている印象があります。その実態を教えてください。


中原 もともとLPガス業界では商圏の売買が一般的でしたが、最近では株式譲渡によるM&Aが増えてきました。売り手が株式譲渡を選択する理由の一つが、法人格が残ることです。創業家からすれば社名や屋号を残せることは大きな魅力ですし、従業員にとっても就業環境の変化が少なく安心感があります。需要家に契約変更の手間をかけないことからも、事業承継を円滑に進めることができます。

橘川 さらに言えば、業界特有の四つの要因がM&Aを後押ししていると考えられます。一つ目は、需要の減少や後継者の不在、人手不足などを解消する最良な選択肢であることです。二つ目は、エネルギー業界の中でも粗利が高い構造にあることです。シェールガス革命を契機に米国で副産物として生産されるシェールLPガスの輸出が拡大し、サウジアラムコが主導してきたCP(コンタクトプライス)による価格決定の構造が崩れました。それに伴い、輸入価格や卸売り価格は大幅に低下しましたが、日本国内の小売価格はそれに連動して下がらなかった。つまり、小売段階で粗利が生じる構造であり、M&Aの買い手にとっての魅力になっています。三つ目は、大手LPガス事業者による顧客獲得戦略の変化です。一部大手は取引適正化の流れを受けて、かつての「過大な営業行為」に代わってM&Aを重視する動きを見せています。経済産業省は、過大な営業行為に厳しい態度を示す半面、M&Aについては歓迎する姿勢を取っています。これが四つ目の要因です。

角田 昨今の情報開示に対する社会的な要請の高まりで、かつて水面下で行われていたM&Aが可視化された面もあるのでは。

中原 その通りです。件数自体も増えていますが、公開される案件が増えたことが実態だと思います。例えば、当社が仲介の依頼を受けたエネサンス北海道が和光商会に出資した案件では、買い手のエネサンス側が積極的に情報を公表しました。きっかけは和光商会から「エネサンスを候補に考えたいが、株式譲渡での買収事例を聞いたことがなく難しいのではないか」と相談を受けたことです。エネサンスに話すと「M&Aの経験は豊富にあり、もちろん対応可能だ」と即答でした。業界では株式譲渡が一般的ではなく事業者が慎重な傾向にあると伝えると「それなら積極的に開示していこう」と、非上場企業ではあるもののプレスリリースを出すことになりました。

時代が変えた事業承継の価値観 レモンガス買収で浮き彫りに

―SMBCキャピタル・パートナーズがアクアクララレモンガスホールディングスを買収したことは業界関係者にとって驚きでした。

橘川 独立志向が強い会社であるだけに、今回の買収はやや衝撃的でした。業界内では日本瓦斯と親しい企業として知られていますが、同社が主導するプロジェクト「夢の絆・川崎」(川崎市)には加わりませんでした。こうした過去の姿勢を振り返ると、単なる身売りというよりも、プライベートエクイティ(PE)ファンドを活用しながら再生や発展を目指している可能性もあると注目しています。

中原 PEファンドは2000年初期から増えはじめ多くの業界でM&Aを手掛けてきましたが、LPガス業界では全く事例がありませんでした。関心がないわけではなく、むしろ当社への業界についての問い合わせは多かったくらいです。ですが、営業権1件に対して評価額が付く上にその水準が高く、長期的に利益を出し続けるイメージが湧かなかったのでしょう。そうした中でSMBCCPによるレモンガス買収で、ようやくこの業界に風穴が開いたという印象です。ファンドによる買収は、事業承継や成長戦略の有力な選択肢になります。加えて、複数の卸売り事業者と取引している場合、特定の卸売りに売却してしまうと他との関係が悪化するリスクがあります。そうした懸念を払しょくするためにも、ファンドは有力な選択肢になります。

角田 創業家の赤津裕次郎前社長はなぜ、パートナーを求めたのでしょう。経営的に困窮しているわけではなく、むしろ優良企業です。

中原 理由の一つは後継者問題です。今は息子に継がせることが唯一の選択という時代ではなくなりました。また、市場が縮小傾向にあるため、単独での打開は難しいとの判断もあったのでしょう。代々続いた家業であるため、身内で引き継ぎたいという思いはあっても時代は変わりました。さまざまな選択肢を天秤にかけた上で選択したと見ています。

―LPガスとは状況が全く違うのがサービスステーション(SS)です。事業承継が難しく、SS過疎地問題が深刻化しています。


角田 政府は長年、SS過疎地対策を行っていますが歯止めはかかっていません。22年度末時点の国内SSは2万8000カ所弱で、この10年で7000カ所近く減少しました。過疎地SSの地上タンク設置を認めるなど大胆な規制緩和策も講じていますが設備を更新する余裕すらない事業者が多いのが現実です。

橘川 この問題に拍車をかけているのが大型量販店コストコの存在です。昨年、滋賀県に1店舗進出したことで県全体のSS需要の1割が流れたと言います。残念ながら業界と行政は現時点で反論できるロジックを持っていません。とはいえこの環境下で残っている事業者はそれなりに経営体力があるはずですが。

中原 SS事業で利益を出している会社は少なくありません。ただし、M&Aの視点で言うと、買い手を探すのが長期戦になる。瞬間的に儲かっているとはいっても将来「負ののれん」になってしまうとの懸念が強くあり、買収判断のハードルを高くしています。

角田 長野県が3月に立ち上げたガソリン価格の適正化に向けた検討会の中で、会合に参加した王滝村の村長が、「SSがなければ観光需要にも応えられない」と危機感を示していました。SS過疎地問題はもはや、地域住民だけのものではありません。

人手不足は配送業務に直結する

【特集2/座談会】CO2削減に即効性ある選択肢 実用化に向けた官民連携を強化


米国、ブラジルをはじめ、海外ではバイオエタノールの生産・販売が活況だ。
海外事情に詳しい3人が集まり、日本での普及に向けた課題や今後の展望を語った。

【出席者】  

小島正美(ジャーナリスト「司会」)

森山 亮(エネルギー総合工学研究所「IAE」カーボンニュートラル技術センター 新エネルギーグループ部長)

福田 桂(三菱総合研究所 エネルギーサステナビリティ事業本部 GXグループ主席研究員)

左から順に、小島氏、森山氏、福田氏

小島 まずは、低炭素燃料としてバイオエタノールを導入する意義についてお聞かせください。

森山 大きな特徴は、ガソリン車の燃料に入れた量に応じて、CO2削減に寄与できる即効性です。EVの導入だけでは達成できない既販車のCO2削減に寄与できることが挙げられます。

福田 第7次エネルギー基本計画に盛り込まれたことで、政府が予算をつけ、民間企業が投資する機運が高まったと思います。脱炭素燃料政策小委員会では、2030年度までに最大濃度10%、40年度から最大濃度20%の低炭素ガソリンの供給を開始し、30年代のできるだけ早期に乗用車の新車販売に占めるE20対応車の比率を100%とする方針が示されています。目標達成に向け、サプライチェーン全体の構築を含めて石油業界、自動車業界などの産業界による相当な努力や、それを後押しするための政府の支援も必要となります。

小島 あと10年ほどで、E20対応車の販売は実現しますか。

福田 既にアメリカやブラジルといった海外向けには対応車を輸出しており、技術的には可能ですが、日本にまだ試験燃料の規格がないことが課題です。規格を作るためには、通常のスケジュールで3、4年ほどかかります。そのため、30年代前半に間に合わせるには、この数年以内に試験燃料が決まらなければいけません。

小島 石破茂首相とトランプ大統領の会談でもエタノールが話題になりました。

森山 以前の岸田・バイデン会談で出ていたバイオエタノール購入倍増の話を踏襲して、国外に売っていこうというアメリカの戦略が残っていますね。日本にとっても、エネルギーの安定調達、安全保障の面から、液体燃料を選択肢に残しておく上で、安く大量に安定的に手に入るところから購入するというのは大きく変わらないと思います。

福田 アメリカは、トウモロコシから作ったバイオエタノールの輸出に高い関心を持ち、販売先として、日本に大きく期待しています。

米国でトウモロコシの生産効率は向上している

【特集2】供給量と輸出量の拡大に注力 日本のリーダーシップに期待


バイオエタノール大国である米国は輸出拡大を推進中だ。
日本での本格導入による展望や期待について話を聞いた。

インタビュー:セス・マイヤー(米国農務省 首席エコノミスト)

―米国でのバイオエタノールの現状と取り組みについて教えてください。

マイヤー 米国はバイオエタノールの世界最大の生産国であり消費国です。ガソリンへのエタノール混合が義務化されていることで、農村地域のビジネスチャンスになっています。エタノール混合率は2024年に10.4%に達し、エタノールが15%含まれるE15ガソリンの通年販売も許可されました。CO2排出量の低減、生産効率のさらなる向上、供給量や輸出の拡大などを推進するため、米国の関係者は日々努力しています。

―世界のエネルギーを取り巻く環境において、バイオエタノールの果たす役割は。

マイヤー 温室効果ガス(GHG)排出の削減、化石燃料依存度の低減、エネルギー安全保障の促進、世界中の農村経済活性化などをもたらす重要な再生可能エネルギー源です。世界の輸送部門の脱炭素化において、農業が重要な役割を果たします。生産国また消費国にとってエネルギーの持続可能性を高め、エネルギーミックスの多様化に貢献できるウィンウィンの関係を構築し維持することができます。

―日本でバイオエタノールが普及すると、どのような効果がありますか。

マイヤー 低炭素社会実現への移行につながり、バイオ燃料インフラの需要創出が期待されます。その結果、アジアでバイオエタノール導入がさらに進む可能性もあります。GHG排出の削減において日本の環境目標達成にも貢献するでしょう。

―2月の日米首脳会談後の合同記者会見で石破茂首相からバイオエタノールについて言及したことをどう受けて止めていますか。

マイヤー 良い意味でのサプライズでした。両国政府のトップから米国産トウモロコシ由来のエタノールに対する支持表明がなされたことを大変喜ばしく思っています。米国のバイオ燃料を安定的に輸出することで、日本の消費者の皆さんにとって信頼に値するエネルギー源となることを期待しています。

―バイオエタノールの将来をどのように展望していますか。

マイヤー 将来の展望は非常に明るいです。バイオエタノールは、食糧と競合しないセルロース系エタノールやCCS(CO2の回収・貯留)技術などの発達で、さらにサステナブルに進化しています。低炭素燃料を求める世界のエネルギー転換戦略に重要な役割を果たし、日本の動向を注視するアジア諸国に、日本は強いリーダーシップを発揮できると思います。

せす・まいやー アイオワ州立大学で学士号と修士号、ミズーリ大学で農業経済学の博士号を取得。ミズーリ大学食糧農業政策研究所(FAPRI)の研究教授、副所長を歴任。

【特集2まとめ】バイオエタノールの新潮流 燃料の低炭素化で30年目標達成へ


今年2月に閣議決定した第7次エネ基に「バイオエタノール」が盛り込まれた。バイオエタノールの導入で、2030年度までに最大濃度10%、
40年度から同20%の低炭素ガソリンの供給を開始する目標が記されている。一方、日米首脳会談後の会見においても両首脳がバイオエタノールに言及した。
本格普及に向けた企業の投資や取り組みが活発化するのではないか―。
このような期待を寄せる声が関係各所から聞こえてきている。
実用化に向けて急進する次世代燃料の最新動向を探った。

【アウトライン】運輸CN移行期の主役なるか 国を挙げて導入拡大に本腰

【インタビュー】供給量と輸出量の拡大に注力 日本のリーダーシップに期待

【インタビュー】日米首脳会談での言及を評価 価格上昇を見極めた政策を

【座談会】CO2削減に即効性ある選択肢 実用化に向けた官民連携を強化

【レポート】穀物生産大国が存在感を発揮 陸と空の脱炭素化で攻勢かける

【トピックス】新たな調達先としてタイを開拓 国産SAF拡大へ航空会社などと協業

【特集2】運輸CN移行期の主役なるか 国を挙げて導入拡大に本腰


第7次エネ基で具体的な導入目標が示されたバイオエタノール。
導入拡大に向けた制度や行動計画の検討が始まっている。

カーボンニュートラル(CN)の実現には、国内のCO2排出量の2割弱を占める運輸部門での取り組みが不可欠だ。液体燃料(ガソリン)の脱炭素化に向けては合成燃料(eフューエル)に期待がかかる。だが、製造技術の開発や原料となる水素の調達などに課題を残しており、商用化までには相当の時間を要する。こうした状況下で、燃料に入れた分だけCO2を削減できる「即効性」を持つバイオエタノールの導入拡大を官民で後押しする機運が高まっている。

直接混合が世界の主力 供給インフラ整備が課題

昨年6月に資源エネルギー庁や関係企業、シンクタンクなどで構成される「合成燃料の導入促進に向けた官民協議会」による合同WGで合成燃料の導入拡大について検討されたことを皮切りに、議論が本格化した。11月に実施された審議会ではガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針を策定。これを基に作成された第7次エネルギー基本計画では、2030年度までに最大濃度10%、40年度から同20%の低炭素ガソリンの供給を開始するとの目標が明記された。並行して30年代の早期にE20対応車の新車販売比率を100%にすることで「E20レディ」を進める方針が示されるなど、バイオエタノールを巡る状況はこの半年で大きな動きを見せている。 

エネ庁資源・燃料部燃料供給基盤整備課の永井岳彦課長は「バイオエタノールはガソリンのCN化に向けた『移行期燃料』として重要。以前からその重要性を発信していたが、エネ基に明記されたことで導入拡大の機運が高まっている」と説明。続けて「エタノールの製造技術は既に確立しており、E10までであれば燃料規格なども定まっていることから、比較的早期の導入が可能。CO2削減に即効性があることに加え、合成燃料とも併用できるため、長期間にわたってベース燃料として機能する」とそのポテンシャルを強調した。

調達先は依然としてアメリカやブラジルが有力だ。日本の自給率は0%であるため、安定的なサプライチェーンの構築にはこれら関係国との資源外交を円滑に進めることが欠かせない。昨年5月には、ブラジルの首都ブラジリアで岸田文雄前首相とルラ・ダシルバ大統領による首脳会談が行われ、主に自動車分野の脱炭素化に向けて両国が包括的に協力し合うことなどが確認された。また、2月に行われた日米首脳会談後の合同記者会見で、石破茂首相は「LNGのみならず、バイオエタノールやアンモニアといった資源を、(アメリカから)安定的にリーズナブルな価格で提供されることは日本にとっての利益になる」と述べ、安定供給先の確保に向けた連携強化を着々と進めている。

焦点となるのはガソリンへの混合方式だ。これまでは石油由来のイソブテンをバイオエタノールに混ぜたETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)を利用してきた。水と混和しにくいことや揮発しにくい特徴を持つなど、扱いやすさで優れていたためだ。ただ、エタノールを二次加工する必要があり、原料のイソブテンはガソリン製造時などに生じる副産物であることから増産に向いていない。こうした状況下で、政府は「直接混合」を導入する方針を打ち出している。安価での量産が可能なバイオエタノールをそのまま混ぜることで、ガソリンの脱炭素化を効率的に進めていく狙いだ。  

直接混合は近年、フランスをはじめとするEU諸国でもETBEからシフトする動きが活発になるなど、世界的にも主流になりつつある。だが、国内での導入拡大には課題が残る。
中でも懸念事項となっているのが供給インフラの整備だ。水層と油層への層分離を起こさないための水分混入対策に加え、アルミやゴムなどの部材腐食防止策が必須となる。ほかにも、ブレンディングタンクの新設やSS(サービスステーション)内の計量器の改良など、大規模な設備投資が求められる。

ガソリンのCN化イメージ
提供:資源エネルギー庁

【特集2】新たな調達先としてタイを開拓 国産SAF拡大へ航空会社などと協業


海外の調達先を広げながら、SAFへの国産木材の活用を進める住友商事。
研究機関や企業とタッグを組み、本格導入への動きを加速させている。

【住友商事】

住友商事はバイオエタノール事業として、米国とブラジルに続く調達先の確保や日本国内で木質バイオマスを原料とするSAF(持続可能な航空燃料)の開発などを進めている。
同社が新たな調達先として注力するのがタイだ。タイは糖蜜やキャッサバを原料としたバイオエタノールを自国向けに製造する。しかし近年、政策の転換や中国製EVの台頭などの影響で消費量が減少している。グリーンケミカルSBUバイオケミカルチームの巽彩乃マネージャーは「タイの生産者は国内需要の減少分を輸出で補いたい。日本への輸入を目指す当社と考えが一致する」と経緯を話す。

タイ産バイオエタノールの価格や品質は基準をクリアしている。ただ、日本の需要家が留意するのは、本当に環境負荷の低い製品かという点だ。そこで同社はLCA(ライフサイクルアセスメント)の調査を開始した。LCAは製品の原材料の採取から廃棄までの全過程で環境負荷を評価する手法。米国やブラジルでは同データを需要家に提供している。昨年8月、東京大学未来ビジョン研究センターの菊池康紀教授と共同研究契約を締結。タイで取得したカーボンインテンシティ(炭素強度)に基づきLCAの算出を進めている。同部署の津村真生マネージャーは「タイは小規模農家が多く、データ取得に苦労することもある。この成果を論文として発表し信頼性のあるデータであることをアピールしたい」と意気込む。

JALとエアバスが参画 需給に関わる事業者が連携

国産木材によるSAFでは、同社と日本製紙、Green Earth Institute(GEI)が2023年2月に「森空プロジェクト」を立ち上げ、今年2月には3社で製造販売の合同会社(JV)設立に関する合意書を締結した。3月には日本航空とエアバスが同プロジェクトに参画し需給に関わる事業者同士が連携した。バイオマスエネルギー事業ユニット第二チームの阿部亨マネージャーは「同JVで日本製紙岩沼工場(宮城県)にパイロットラインを建設し年間1000㎘規模で生産する計画だ。上流から下流まで一堂に介すことで国産SAFの活用が本格化するアピールにしたい」と語る。

全世界で進む自動車と航空燃料のカーボンニュートラル化。住友商事は新規事業にいち早く挑み、先行することを目指す。

パイロットラインを建設する日本製紙岩沼工場
提供:日本製紙