【コラム/5月24日】福島事故の真相探索 第7話
手遅れとなった原子炉はそのまま放置
さて最後は、ジルカロイ燃焼事故の防止対策が全て手遅れとなった時はどうすればよいか。僕の忠告は、手遅れと分かった時は、無責任なようだが、冷水を原子炉に入れずにそのままに放置しておくことだ。なぜなら、水を入れなければ炉心溶融は起きても、水素爆発は起きないから、事故による災害は少なくなるからだ。
1号機に水を入れなければ、炉心溶融も起きなかったであろう。この検証は実験で確かめる以外にないが、原子炉停止後、丸1日を経た1号機の崩壊熱は0.6%に下がっていたから、炉心溶融も起きなかったのではないかと僕は疑っている。粗い計算だが、崩壊熱がこの程度に小さければ、輻射熱で冷やされる炉心の温度は、2000℃を超える程度にとどまると考えたからだ。
停止後3日経った福島第一2、3号機は 崩壊熱は0.4%程度に下がっていた。ここまで崩壊熱が小さくなれば、炉心が出す輻射熱に余裕がでる。水がなくても炉心溶融は防げる。融点2880℃のUO2炉心が放散する輻射熱は、それほど大きい。
福島事故もTMI事故も炉心溶融に到ったのは、崩壊熱で高温になった炉心にジルカロイ・水反応の発熱が加わったからだ。この事実が知られれば、手遅れになった場合には水を入れないのが正しいと、みな納得されるであろう。なお、このアドバイスは大口径破断冷却材喪失事故を除いた事故で、炉心停止後2時間以上経って、炉心温度の異常上昇に気付いた事故についてである。