【コラム/5月31日】福島事故の真相探索 第8話
最後に――新たな発見と解決策
福島1号機のペデスタル空洞写真は、1号機の事故がジルカロイ燃焼であったことを証明してくれた。ジルカロイ・水反応の問題は、遠く1970年代にはその重大性が認識されていながら、その後一部が等閑視されて、4機もの軽水炉に炉心溶融、水素爆発という大事故を起こした。だが、その対策は存在しているし、その有効性も実証されているので、恐れる必要はない。ジルコニウムの安全に必要なものは、それを使う人間の注意にある。
この問題解決の副産物として、これまで筆者が疑問に思っていた、①溶融炉心が流れ落ちて圧力容器の底を溶かすとの主張が真違いであること、②ジルカロイ燃焼事故の発熱並びに水素ガス体積は膨大であるため、容積の小さい格納容器内部では高温の水素ガス嵐が吹き荒れたこと――の発見があり、加えて燃料被覆管として掛け替えのないジルコニウムが持つ欠点とその解決策を見いだせたことは、誠に幸運であった。
以上を述べて、「容器内部調査写真からの随想推理」を終える。ここで「随想推理」と付したのは、写真映像は証拠となり得ない事による。だが、振り返ると、写真映像から引き出せた数多い推理考察は大きな楽しみであった。写真映像を公開された東京電力並びにIRIDに対し、再度の御礼を申し上げる。
なお、本連載は著者一人が考察した作品ではない。元日立製作所技師長・牧英雄氏、元原子力発電技術機構理事・川上博人氏と3人で検討討論し、吟味を重ねて作成したものであるが、両氏のご事情により、連名での発表を辞退されたことをお伝えして、連載を終える。