【九州電力 西山社長】包括的なサービスで付加価値を高め 選ばれる企業を目指す

2026年7月2日

原子力の利用率90%へ 需要増に着実に対応

井関 既存の原子力発電事業については、どう取り組んでいますか。

西山 玄海原子力発電所3、4号機の蒸気タービンの更新工事を27、28年度に計画しており、これにより発電効率を向上させることができます。さらに、作業工法の工夫による定検期間の短縮なども検討しており、現在約85%の設備利用率を90%まで引き上げることを目標としています。これらが実現すれば、原子力による供給量はさらに増大します。

井関 国は40年に向けて原子力発電所の新増設・リプレースの方針を示しました。川内原子力発電所の増設についての検討状況への影響は。

西山 原子力は重要な電源であり、後押ししていく方針を国が示したことは、金融機関が融資を判断する上で大きなポジティブ材料になると評価しています。原子力発電所の新増設については、エネルギー基本計画や50年CNを踏まえた国のエネルギー政策の方向性に加え、原子力事業を取り巻く環境整備の動向、電力システム改革による競争の進展状況、将来の具体的な電力需給の推移、さらには次世代革新炉の技術動向など、極めて多角的な要素を総合的に勘案して検討を継続しており、現時点で決まったものはありません。川内3号機の増設については、11年1月12日に原子炉設置変更許可申請書を国に提出していますが、現在は鹿児島県から準備工事にかかわる公的手続きを凍結されている状況です。

井関 再エネ分野でのグループとしての開発状況や今後の計画について教えてください。

西山 九電グループの26年3月末時点における再エネの開発実績は、約300万kW(持分ベースでは約230万kW)に達しています。直近の大きな成果としては、九電みらいエナジーが出資する「ひびきウインドエナジー」が、北九州市響灘沖で開発を進めていた約22万kWの洋上風力発電所が3月2日に稼働しました。大分県の「沈堕水力発電所」では、最大出力を8300kWから9900kWへと増強する更新工事が完了し、4月1日から営業運転を始めています。さらに地熱分野では、鹿児島県の「霧島烏帽子岳バイナリー発電所」の建設工事を進めているほか、大分県の「涌蓋山東部」や「山下池南部」で地熱資源の調査を行っています。

再エネを普及させる上で重要なことは、再エネ由来の電気の価値を認めてもらい、適切な価格で購入していただき、それらを原資に新たな再エネの電源に投資していくという自律的なサイクルを作ることです。まだ環境価値にプラスアルファの対価を支払っていただける需要家は多くありませんが、5年、10年先を見据えて、取り組んでいきます。


全面自由化から10年 変わらぬ安定供給の使命

井関 小売り全面自由化から10年を迎えました。競争状況の進展をどう受け止めていますか。

西山 16年の全面自由化以降、多様な新電力事業者の参入などにより、九州エリア内における市場競争は確実に進展してきたと受け止めています。これはお客さまにとっての選択肢の拡大や、サービスの多様化、利便性の向上という面で、非常に大きな意義があったと感じています。一方で、燃料価格の高騰に伴い、卸電力取引所(JEPX)の市場価格が急騰する中で、新電力事業者が撤退し、お客さまに影響が及ぶ事象も発生するなど、電力システム全体の安定性やサステナビリティに関する新たな課題も浮き彫りになりました。私たち事業者に課せられた最も重要な使命は、いかに激しい競争環境下にあっても、暮らしと産業を支える「安定供給の責任」を果たすことです。その責任を全うしつつ、健全な市場競争が持続可能な形で維持されるような制度設計、そして事業環境の継続的な整備が不可欠であると考えています。

井関 そうした中で5月に新エネルギーソリューションブランド「Enebee(エネビー)」を立ち上げました。

西山 価格だけの競争とは一線を画し、お客さまに付加価値を感じて選んでいただくため、電気を売るだけではなく法人や家庭のニーズに合わせた省エネや脱炭素、設備最適化といったサービスを包括的に提供していくことが新ブランドの狙いです。第一弾として、法人向けソリューションサービス「Enebee DR」の提供を開始しました。これは、法人のお客さまの蓄電池や自家発電設備、空調などの設備を対象に、当社が遠隔制御を行うことでエネルギー利用の効率化を図るデマンドレスポンス(DR)サービスで、同時に、九州エリアにおける再エネの有効活用にも貢献できます。また、お客さまに対しても、設備の最適制御を通じて電気料金の負担を軽減するとともに、市場取引で得た収益の還元を行います。

新エネルギーソリューションブランド「Enebee」を立ち上げた

6月には第二弾として、住宅設備交換ECサイト「Enebee STORE」を開設しました。IHクッキングヒーターやエコキュート、エアコン、食洗機の交換について、見積もり、工事、決済、アフターサービスまでオンラインで完結できます。また、当社の基準を満たす信頼できるパートナー店に取り付け工事を任せることもできます。さらに電気契約の申し込みや問い合わせについて、現在、一人の担当者がワンストップでサービス提供する体制を検討中で、こうした取り組みによりお客さまとの関係性を深化させていくことで、小売りビジネスの競争力強化にもつながると期待しています。

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