【電源開発 加藤社長】大間の工事本格再開へ 現実的トランジションで 次代エネルギーを支える
中計目標を達成見込み 大間は次の段階に
井関 グループ中期経営計画が最終年度を迎えています。進ちょくはいかがですか。
加藤 財務目標として掲げている経常利益900億円については、ほぼ達成できる見込みです。それを踏まえ、5月の25年度決算発表の際に今期の年間配当を前期比5円増の105円とする方針を発表しました。これまで当社は、電源が完成して運転を開始し利益水準が段階的に伸びるというタイミングで増配を行い、一時的な収益増を株主還元に反映することはありませんでした。ただ近年は資源市況のボラティリティが大きく、豪州の炭鉱など、事業の利益が急変動する局面があります。そこで配当に加えて総還元性向30%の指標を導入することで、より柔軟で機動的な還元を可能にしました。昨年9月から今年3月には、総額200億円の自己株式取得も実施しました。
また、この間に大きく進展したのが大間原子力発電所の審査です。基準地震動が決まり、プラント審査も順調に進んでいます。これを踏まえて、第3回長期脱炭素電源オークションに応札し、落札することができました。プラント審査が多少ずれ込むことはあり得ますが、今のところ大きな問題は生じていません。今中計期間中に大きな目標を一つクリアしたことで、次のステージに移ることができます。
井関 次のステージとは。
加藤 いよいよ大きな投資、キャッシュフローが動き出すということです。裏を返せば資金調達が大きな課題となり、バランスシートのマネジメントがより重要になります。合わせて、青森県や30㎞圏内の北海道函館市をはじめとする地域社会の皆さまからのご理解を、引き続き得ていく取り組みの重要性が増していきます。

井関 次期中計に向けた戦略は。
加藤 電力株の中でも当社の株価は、PBR(株価純資産倍率)が0・5倍を切るなど比較的低い評価を受けています。その要因には、大間のリスクが不透明であること、石炭火力が座礁資産化してしまうことへの懸念があります。大間については、審査が進まない中では株主の皆さまにお伝えできる情報がありませんでした。今回、その状況が進展しましたので、工事の本格再開や運転開始時期について、今秋までには会社の目標として公表したいと考えています。
その上で、次期中計については次の3年間の数値目標を示すだけでは不十分であり、大間が完成するまでに何に取り組むのか、建設中にどのように収益を高めるのか、完成後にどのような会社を目指すのか―といった、より長期の計画について、時間軸を合わせてお示しし、ステークホルダーの皆さまと対話していきます。
AI本格活用に挑む DC事業も新たな柱
井関 5月には「第Ⅲ期DX推進中期計画」を策定しました。
加藤 当社グループでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を単なる業務効率化ではなく、事業構造の変革を通じて企業価値を高め、競争優位を獲得するための挑戦と位置付けています。第Ⅱ期までは、とにかく基盤づくりでした。DX人財の育成と全社でデータを共有できる基盤を整備しなければ、データドリブン経営にはたどり着けないからです。次世代ERP(統合基幹業務システム)「JEWEL」の要件定義も完了させました。
第Ⅲ期は、想定以上の速さで生成AIが市民権を得たことを受け、AIが本格的に実装されたDXをいかに早く、深くできるかを踏まえた計画になっています。社内では、「AIを仕事の相棒に」と言っていますが、まだまだ製造業のようなレベルでは活用できていません。公共性の高い商材を扱う事業だからこそ、データの所有権やプライバシーの問題があり、ガバナンスに配慮しながらどこまでチャレンジできるかが問われます。
井関 セキュリティ面の重要性も増しますね。
加藤 用心してもし切れない、恐ろしい領域です。金融機関などに高度なサイバー攻撃の脅威への対処が求められた際、電力事業者にも同様の対策が求められました。どこまで防御し切れるかは分かりませんが、AIを使いながら対応する術を学んでいくほかありません。
一方、当社は日立製作所とAI用データセンター(DC)構築に向けた共同検討を進めています。信頼性の高いインフラ事業者が国内企業と連携して手掛けることで、データソブリンティ(データ主権)を担保できる点をお客さまに訴求できるのではないかと考えています。


