【特集2】自動車エンジン技術を応用 非常用発電でLPガスの本領発揮


【レイパワー】

分散型としての機能をさらに高めるアイテムが登場している。レイパワーではLPガス式の発電機を手掛けている。

レイパワーは、LPガスを燃料とした3kVAの非常用発電機(非発)を販売している。

これは60㎏のガスボンベで72時間の連続稼働が可能(300時間稼働時にメンテナンスが必要)、停電を検知してから40秒以内に自動起動するブラックスタート機能を搭載。本体重量が240㎏で同出力の従来製品と比較して約半分~3分の2程度小型で軽量のため、建物の2階やビル屋上にも設置可能だ。

また、遠隔地から本体を操作および稼働状況を確認するリモート監視機能もオプションで搭載しているため、稼働状況などをリアルタイムで確認できる。

国土交通省は「簡易型非常用発電装置機器仕様書(案)」で非発の仕様書を定めているが、これまではディーゼル発電機のみが対象だった。

今年4月にはLPガスを燃料とする非発の仕様書である「ガスエンジン式簡易型非常用発電機発電装置機器仕様書(案)」が策定され、同仕様書に準拠した性能を誇っている。

耐久レースの技術を採用 大型モデルも今期中に発売

開発の経緯について同社の内田洋輔社長は「東日本大震災がきっかけです」と説明する。

震災時には多くの建物が津波や地震で被害を受けたが、被害が軽微だった建物でも1階部分が被害を受けたことで非発がトラブルを起こして起動しない、管理者がメンテナンスを怠っていたためディーゼル燃料が劣化してしまい着火しないなど、非発が稼働しなかった事例も多かったという。

震災後、製品開発を担当するYGK通商は震災の実情を見るべく国交省と被災地の視察を実施。災害のため稼働しない非発を見かけると同時に、復旧したLPガスで煮炊きをする地域も目にした。

そうした経緯もあり、同社は日産自動車でル・マン耐久レースやデイトナ24時間レースなどに参戦するエンジンを開発していた林義正氏とともに、LPガスで稼働する非発の開発をスタートした。

長時間稼働、小型かつ軽量、レジリエンス能力が評価され、高知県中土佐町の避難所や神奈川県の介護施設など、人の命を守る施設で導入されている。現在は3kVAモデルのみだが、今期中には出力50kVAのモデルをリリース予定。同モデルからはLPガスだけではなく都市ガス仕様の製品もラインアップする予定だ。

大規模災害が頻発する昨今、LPガスの非発は大きな力を発揮しそうだ。

レイパワーが販売するLPガス非常用発電機

【特集2】ベトナムでLPガス事業に出資 現地に適応した事業展開を目指す


【レモンガス】

レモンガスは同社初となる海外でのLPガス事業を開始した。現地に合う事業展開を進めるべく、着々と準備を進めている。

レモンガスは4月30日、ベトナムのLPガス事業者・中部ペトロ生産投資(PMG)の株式を24.8%取得したと発表した。PMGには戦略的パートナーとしてレモンガス佐藤良一常務が取締役副社長として赴任する。LPガス分野で海外事業に出資するのは同社初の試みだ。

PMGは2007年に創業し、17年にはホーチミン市証券取引所(HOSE)に上場した新興企業。ベトナム中部の内陸部に広がる中部高原地域を中心に燃料の輸入、貯蔵、充填、卸、小売り、ボンベ製造など上流から下流に至る全工程を手掛けている。

ベトナムの人口は約9762万人(20年時点)で、人口も増加傾向にある。政治も比較的安定しており、国内各地に工業団地を設けて海外企業を誘致するなど、政府を挙げて産業振興を推し進めている。

一方、地方では多くの家庭で薪が使われている。LPガスは運搬が容易かつ高カロリー、燃料の中でも環境に比較的優しい熱源で、今後、LPガスへの燃転需要は増加していくと見込まれている。

とはいえ、ベトナムのLPガス需要について佐藤常務は「日本とはエネルギーの使い方は大きく異なる」と話す。風呂文化のある日本と異なりベトナムのエネルギー需要は少ない。そのため給湯器も電気式の温水器、調理もニクロム線の電気コンロが一般的に用いられており、ベトナムでも電化がLPガスのライバルになるそうだ。

日本でのノウハウを還元 海外事業が成長の鍵に

日本とベトナムは文化・風習は異なるが、LPガスが普及していく過程で日本のガス業界で起きた企業間の競争が発生する可能性は高い。そのとき、日本の技術やサービスが参考になるかもしれないと、レモンガスは考えている。

「LPガスの普及が進めば顧客へのサービス・サポート分野での競争も起きることが予想される。他社との差別化を図るためにもセット販売、安心・安全向けのサービスは有効かもしれない。日本でのノウハウがそのまま使えるわけではないが、ベトナムの風習、法律、市場を踏まえて、日本での経験を還元していきたい」(佐藤常務)。

現地に適応した形で事業展開を行う構えだ。 需要拡大が見込める地域での事業は、企業成長の新たなトリガーになるかもしれない。

PMGが保有する設備

【特集2まとめ】LPガス新機軸への挑戦 原点回帰で分散型の強みを生かす


人口減少や配送員不足など、逆風にあるLPガス業界。
一方で、地域密着型の事業特性や災害からの早期復旧といった強みは変わらない。
特集では、「供給システム編」「ガス機器編」「脱炭素編」「新規事業編」など
自らの事業を見つめ直しながら、時代に即した「古くて新しい」ビジネスモデルで
令和時代に挑む各社の取り組みをクローズアップする。

㊨アストモスエネルギーはカーボンニュートラルのLPガスを調達した ㊧千葉県いすみ市ではLPガスを使ったマイクログリッドに取り組む

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【寄稿/角田憲司】バックキャストで考える LPガス事業の近未来像

【供給システム編/いすみ市・関電工】究極のレジリエンスに挑戦 「マイクログリッド」を構築へ

【供給システム編/レイパワー】自動車エンジン技術を応用 非常用発電でLPガスの本領発揮

 

【供給システム編/I・T・O】激甚化する災害の備えは万全か 電力・都市ガス供給をバックアップ

【BtoB編/ENEOSグローブ】研修プログラムで特約店の人材育成支える 個の力を高めてチーム力向上につなげる

【BtoB編/日本瓦斯】狙うはエネルギー界のBtoB版アマゾン 機器受発注業務をアプリで一括管理

【ガス体営業編/東海ガス】地元静岡で築いた事業ノウハウ 他エリアへ進出し新規開拓に応用

【ガス機器編/パナソニック(エネファーム)】レジリエンス性能さらに高まる 調整力電源としての役目も

【ガス機器編/リンナイ(エコワン)】給湯で圧倒的な省エネ性能 新たなニーズ対応で効果発揮

【ガス機器編/パーパス(エコジョーズ/業務用ハイブリッド給湯機)】エコジョーズがCNの強い味方に ハイブリッドで一次エネルギーを大幅削減

【ガス機器編/リンナイ( 乾太くん)】コインタイマー対応機などで 業務用ニーズを掘り起こす

【新規事業編/サイサン】暮らしを支える各種サービス 顧客満足度を高めて収益力強化

【新規事業編/レモンガス】ベトナムでLPガス事業に出資 現地に適応した事業展開を目指す

【脱炭素編/アストモスエネルギー】LPガス業界が着手する脱炭素 持続可能性を追求し決断

【業界展望編】業界展望編再確認したいLPガスの魅力 優位性を発揮して令和生き抜く

【特集2】「夢の絆」オープンで他業界から注目 ニチガスが取り組むDXのすゝめ


【ニチガス】

デジタル技術の粋が詰まった「夢の絆・川崎」をオープンさせるなど、「データ×エネルギー」の分野でひときわ異彩を放つニチガス。 同社のDX戦略はエネルギー業界を変革させる可能性を秘めている。

3月16日にオープンした「夢の絆・川崎」

3月16日にオープンした「夢の絆・川崎」を筆頭に、IoT機器「スペース蛍」、自社運用クラウドサービス「雲の宇宙船」など、ニチガスはLPガス業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を強力に推進している。夢の絆では容器の仕分け、ガス充填、配送車への積み込み指示、車両の管理―をはじめとしたLPガス充填所で行う一連の業務全てについて、無人かつ自動化を図っている。

配送車やLPガスボンベは全てバーコードによるタグ付けがされており、基地内の各所に設置された赤外線カメラでバーコードを読み取り、その残量に合わせてボンベが自動的に仕分けされる。さらに、配送車にどのボンベを何本積むのか、関東を中心とした各地に立地するデポステーションに何本降ろすのか、デポステーションから各需要家への配送ルート案内など、配送員への指示も全てアプリ上で完結する。設備のDX化を徹底的に図ることで業務効率化を成し遂げているのが、ニチガス最大の特徴だ。

鍵握る10TBのビッグデータ 新技術を織り込み設備設計

3月中旬の夢の絆の運用開始から2カ月弱が経過したが、本基地をはじめとする同社システム設計を手掛けた情報通信技術部の松田祐毅部長は「設備面ではひと段落したところですが、システムや設備が完成したら終わりではありません。きちんと運用し、当初期待していた通りの成果を得ることが本当に重要なことなので、まだまだこれからです」と、今後の運用に気を引き締めている。

配送業務のDX化の鍵を握るのが、各所から集められた多様なデータだ。同社は需要家宅のLPガスボンベに設置する「スペース蛍」で、ボンベ残量、需要家のガス使用量をセンシングしており、収集したデータは「雲の宇宙船」へと転送される。これらビッグデータは、夢の絆や、各デポステーションや従業員向けのアプリで有効活用されている。

スペース蛍(右下)