【市川市クリーンセンター】
一般廃棄物(ごみ)の焼却時に発生する熱を使ってタービンを回して発電するのが、バイオマス発電の一つ「ごみ発電」だ。天候に左右されることなく安定的に発電できることに加えて、化石資源を燃やさないクリーンな発電方式である。発電所から排出される熱を温浴施設などに生かすことも可能で、未利用エネルギーの有効活用を進める発電手法として各地の自治体を中心に古くから利用されている。
そんなごみ発電に取り組んできた自治体の一つが、資源循環型の都市づくりを進める千葉県市川市だ。市内で唯一のごみ焼却施設「市川市クリーンセンター」で、人口49万人、25万世帯数ほどの市の全量の廃棄物処理を一手に担っている。
クリーンセンターは1994年に運営を開始以来、すでに30年近く稼働している古株の施設でもある。3つの焼却炉(焼却能力は1日当たり1基200t)、蒸気タービン(7300kW×1基)などで構成されており、その規模は千葉県内でもトップクラスを誇っている。
「合計三つの焼却炉をローテーションさせ、常時二つの炉を運用しながら安定的に発電させている。発電した電気は施設内で自家消費するほか、隣接する市の温浴施設へ供給しており、余った電気は毎年入札にかけて電力会社に売電している。熱の一部は同様に温浴施設へ供給しており、施設から生み出されるエネルギーを無駄なく活用している」と、市川市環境部の品川貴範次長は説明する。年間の発電量は4000万kW時ほどで、数億円規模の発電収入が市川市の財源を支えているそうだ。
老朽化に伴いリプレース 新たな環境価値創出へ
そうした実績を土台にクリーンセンターは、資源循環型を志向しながらカーボンニュートラルを目指す市の方針のもと、新たな「再生計画」を打ち出す。
計画によると、施設の老朽化に伴い、2031年の運転開始を目指して完全リプレースを実施する。環境負荷の少ない効率的で安定したごみ処理体制の構築に向けて、従来よりも少ないごみの量で発電出力をアップさせる設備を導入する。
具体的には、クリーンセンターを構成する焼却炉やタービンの数は変えずに、焼却炉を1日当たり1基141tへとスケールダウンさせる一方、発電出力を1万1000kWへ引き上げる。メーカーによる技術力の向上に伴い、効率的な設備導入が可能になる。20年間の運転も含め、750億円程度を投資する予定で、市政始まって以来、最大の投資額だという。
市によると、「新施設では、これまでのようにただ余剰電力を売電するのではなく、発電した電気の環境性を最大限に活用していく方針だ。そのため、ごみ発電による環境価値を市内で循環させるようなスキームを構築することを考えている」(品川氏)という。
次期クリーンセンターの詳細計画については、近く公表する予定。発電できるごみ処理施設が生み出す新たな価値に期待がかかる。
