洋上風力公募の第2弾選定 落札者は「良い形に分散」

結果として、バランスの取れた選定になったと言えるのか。経産省は12月13日、再エネ海域利用法に基づく公募第2弾4海域のうち3海域の結果を発表。①秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖=JERA、Jパワー、伊藤忠商事、東北電力連合、②新潟県村上市・胎内市沖=三井物産、RWE、大阪ガス連合、③長崎県西海市江島沖=住友商事、東京電力リニューアブルパワー(RP)連合―という落札になった。

商社では大手3社が、エネルギー会社では大手5社がそれぞれ選定された格好だ。第1弾3海域が三菱商事、中部電力系シーテック連合の総取りとなったことを踏まえると、「ある意味、良い形に分散された」(大手電力関係者)と見る向きが多い。評価点数の内訳を見ると、①②では応札者の価格がおおむね120点で並ぶ中、事業実現性が決め手に。③については逆に価格点が勝敗を分けた。

気になるのは丸紅、東京ガスが落札できなかったことだ。残る海域の秋田県八峰町・能代沖では、ENEOS系グループが有力視されている。大手の意地を掛け、次の第3弾で勝負に出るのか。

独自の技術力を生かしたソリューション テーブルの利用状況をリアルタイム把握

【ほくでん情報テクノロジー】

北海道電力のグループ企業で、その基幹業務システムや情報インフラの構築・運用・保守サービスを一貫して担うほくでん情報テクノロジーは、安定供給とグループの発展に貢献してきた。その確かな知見と技術力を生かし、開発したのが「ステータスボード」だ。

現場の声をもとに開発 ゆくゆくは道外にも展開

ステータスボードは、ビュッフェスタイルのレストランなどでテーブルの利用状況をリアルタイムに把握し、スタッフの業務を効率化するソリューションだ。

これまでは、表・裏で食事中・食事終了を表す食事札を目視で確認し、利用状況を把握していた。同システムでは、この食事札に置いたときの向き(表・裏・縦・横)を検知するIoTセンサーを搭載し、表・裏に加え縦置き・横置きを判別可能に。食事中と食事終了のほか、テーブルの清掃が完了した準備中と食器のセットも完了した案内可能の4ステータスを設定できるようになった。センサーはクラウド上のアプリと連携しており、パソコンやタブレットなどの端末から確認できる仕組みだ。

画面上では、各テーブルの状況がステータスで色分けされて表示される。また、食事開始からの経過時間や来客予定人数、子連れやアレルギーの有無など利用客ごとの特記事項なども表示。このほか、テーブルの配置などのレイアウト変更や利用しない席を無効とする設定、グループでの利用客をくくるなど、ビュッフェ運営に役立つ機能が多数盛り込まれている。

同ソリューションの開発に当たり、実証実験と評価作業には、北海道内の最大手である鶴雅グループのリゾートホテル「北天の丘 あばしり湖 鶴雅リゾート」に協力を仰いだ。同ホテルがある網走市とほくでん情報テクノロジーがある札幌市は300km以上離れているが、ウェブ会議を有効活用しながら現場の意見や要望事項をタイムリーに取り入れた。利用状況を表す4ステータスや画面上で特記事項を確認する機能などは、現場の声をもとに実装されたという。魚住元社長は「エネルギーインフラを支えてきた技術力が生きた。ただ、同じ技術でも、電力会社とホテルでは使い方が異なる。要望に迅速に対応できないとご採用いただけない」と語る。

「北天の丘 あばしり湖 鶴雅リゾート」メインラウンジ

デジタルソリューション部の開発スタッフは「ステータスボードは、顧客のニーズと当社のシーズがマッチし実現したソリューション。まずは道内の宿泊業のお客様に、予約システムとの連携などニーズに合わせた機能改善を続けていく。将来的には道外へも裾野を広げたい」と展望を語る。

ほくでん情報テクノロジーが培ってきた技術力をもって手掛ける、新たなソリューションに今後も注目だ。

東電RPが包括提携を模索 大手エネや商社が候補か

東京電力リニューアブルパワー(RP)が、大手の商社やエネルギー会社との包括提携を模索しているもようだ。現在、東電RPは水力993万kW、太陽光3万kW、風力2.1万kWを保有。現行の第4次総合特別事業計画では「東電グループの新たな事業の柱として、再生可能エネルギー事業のさらなる成長を実現するため、事業規模・事業領域の拡大、それらを実現するための競争力の強化を見据えた将来の事業体の在り方を検討していく」との宿題が課せられている。

そうした中、原子力損害賠償・廃炉等支援機構は12月1日に発表した東電経営改革評価の中で、年4500億円規模の利益を安定的に創出するため「(JERAに続く)包括的アライアンスの実現などに強い覚悟を持って挑戦していかなければならない」と提起した。

関係筋によれば、東電RPは複数の商社やエネルギー会社と交渉を進めているという。国の洋上風力公募第2弾では、住友商事と組み複数地点に応募、長崎県西海市江島沖を落札したことで、相手先には住商が有力視されているが、「国内最大の水力会社になる」との視点に立てば、大手電力会社など別の選択肢も。23年度内には方向性が明るみに出るか。

「国内最大水力会社」もあり得る?

【イニシャルニュース 】反再エネ乱開発宣言へ S県I地域で進行中

反再エネ乱開発宣言へ S県I地域で進行中

福島市が8月31日に、自然破壊などにつながる大規模太陽光発電の建設に反対する「ノーモア・メガソーラー宣言」を発表し大きな話題を集める中、大規模再エネ開発反対の旗を振る自治体は全国的に着々と増えつつある。とりわけ注目されるのが、S県東部のI地域の動きだ。

現在、再エネ関係者のY氏らが中心となりI地域にある自治体十数市町に対し、「再エネ乱開発反対共同宣言」をぶち上げるよう呼び掛けを行っているのだ。これまでの地道な活動の結果、およそ半数の自治体から賛同への好感触が得られているという。

「I地域では、これまでもメガソーラーや大型風力など大規模再エネ開発を巡って、開発事業者と地元住民のトラブルがたびたび起きており、自然破壊への影響を懸念する声も日増しに高まっている。とりわけ、数年前にA市で豪雨による重大災害が発生したことで、住民側の危機意識は極めて高いものがある」

そんな中、懸念されるのが、肝心のA市がこの宣言活動に消極的な姿勢を見せていることだという。理由は不明だが、そもそも大元であるS県のK知事が大規模再エネ開発ストップに乗り気ではないとみられているのだ。

「現在までに、全国8県(兵庫、和歌山、岡山、山梨、山形、宮城、奈良、長野)がメガソーラー開発を規制する条例を制定している。悲惨な災害を経験したS県では、むしろ率先して太陽光条例を制定すべき立ち場にある。なのに、なぜ及び腰なのか。個人的には、K知事が再エネ推進勢力とのつながりを取りざたされていることに関係があると考えている」(Y氏)

S県が難しいなら、まずはI地域から―。遠からず、実名報道できる時期が訪れることを期待したい。

乱開発ストップが全国的な潮流になるか

東電社長は続投濃厚か 気になる後任候補は?

東京電力ホールディングスの小早川智明社長が来年交代するのではないか―。そんな噂が一時、師走の電力業界周辺を駆け巡った。

「原子力規制委員会が柏崎刈羽原発(KK)の燃料移動制限解除に動き出したことで、再稼働実現への道筋が見えてきた。後は新潟県側の同意が得られれば2024年内の再稼働が可能になる。小早川氏は社長就任から6年がたつので、これを花道に後進に道を譲るのでは。次期社長の有力候補は役員のS氏だ」。電力事情通はこう話す。

ただ関係者に聞けば、事はそう単純ではない。

「まず24年は、現行の第四次総合特別事業計画の見直しの年に当たる。福島第一原発の廃炉問題をはじめ課題は山積みのため、経産省ラインと共に第五次総特の策定に向けた検討を本格化させることが、小早川社長の大きな仕事になる。またKKについても、新潟県の花角英世知事が県民の信を問うと公言している限り、すんなりいくとは思えない。これも現在の小早川体制で責任を持って対応に当たることが必要だ。24年の交代は考え難い」(元東電関係者)

ことは人事だけに何が起きるかは分からないのが世の常だが、現在60歳という小早川氏の年齢を考えても、あと数年は社長業を続けても不思議ではない。

ともあれ、後任についてはS氏が適材という点では、複数の関係者の見方が一致している。一部報道などで取りざたされていた、グループ会社社長のN氏の芽はどうなのかも気になるところだ。

エネルギー最適価値提供へ 東ガスが新ブランド発表

東京ガスと東京ガスエンジニアリングソリューションズは2023年11月30日、ソリューション事業ブランド「IGNITURE(イグニチャー)」を立ち上げた。同ブランドの狙いは家庭、法人、地域・コミュニティー各部門の顧客に対し、レジリエンス、エネルギーの最適化、脱炭素の3点で、新たな価値を提供することだ。

「IGNITURE」を発表した笹山社長(中央)

家庭向けでは太陽光発電や蓄電池、ハイブリッド給湯器などの設備を導入し、自動制御などでデマンドレスポンス(DR)やAIを活用した設備最適管理、卒FITの余剰電力買い取りなどを実施する。法人向けにおいても、省エネ設備や太陽光など再エネの導入、デジタルを活用した設備の最適運用を行う方針だ。

この実現に向け、電力のデジタル取引プラットフォームを構築する予定。LNG火力など自社電源と組み合わせ、市場変動を考慮した需給の最適化を行う。

東京ガスの笹山晋一社長は会見で「住宅やコミュニティーに蓄電池やEVなど分散型エネルギーの導入が進み、需要家も電気をつくる側に回る。イグニチャーの下、どのように使ったらいいか、省エネや低コスト、省CO2の視点からシステム構成を提案していく」とアピールした。

IPCC絶対視の風潮に異議あり 気候変動の半分は「自然現象」

【識者の視点】田中 博/筑波大学名誉教授

地球温暖化防止国際会議のCOPなどでは強力なCO2削減が最重要との共通認識が大前提となっている。

一部の科学者は、昨今の温暖化には自然変動が多分に含まれていると警鐘を鳴らしている。

筆者は2023年春に筑波大学で定年退職を迎えたが、最終講義の演題は「間違いだらけの地球温暖化論争」だった。講演内容は、温暖化懐疑論には間違いがあるし温暖化危機論にも間違いはある、という中立的な趣旨でまとめた。温暖化研究者が一度懐疑論者のレッテルを貼られると、国家プロジェクトから外されたり、論文が受理されなくなったりする。しかし、研究者人生の断末魔の叫びとしてこのタイトルを選んだ。

太陽定数は定数でない IPCC仮説の完全崩壊 

地球温暖化とは、人為起源のCO2などが原因で起こる温暖化と定義されるが、最近は気候変動という表現にすり替えられた。これなら人間活動と無関係な自然変動が含まれてもいいからだ。筆者は、異常気象をもたらすブロッキング高気圧や北極振動の研究をしてきたが、これらは力学的には自然変動だ。気候変動として温暖化が起きていることには同意するが、原因の90%以上が人為起源であるとのIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の説明には反論してきた。長年の研究結果から、気候変動の半分は人為起源ではなく自然変動であり、人間がCO2排出量を抑えたとしても異常気象は発生し、気候変動は起こると考えている。ただ、こうした仮説には納得できる明確な根拠が必要だ。気候変動の数値モデルを開発しても、その結果はあくまで仮説にすぎず、真実の証明にはならない。

国際学術誌に掲載された現役最後の論文は、筆者を含む各国の研究者37人の共著であり、温暖化の大半が自然変動で生じていることの根拠を提示した。結論は二つあり、一つは、地上観測で集計される全球平均気温の上昇には都市のヒートアイランド効果が半分程度含まれていることだ。世界平均で100年当たり0.89℃と観測される気温の長期トレンドは、実はヒートアイランドの影響で62%も増えている。

二つ目は、太陽放射強度(太陽定数)は長期的に変化する点だ。太陽定数は定数であるかのようにかつて教科書で教わったが、これは固定観念である。人工衛星活用以降のデータは、歴代の複数の衛星観測値に1㎡当たり10Wもの平均バイアスがある。作業仮説としてこのバイアスを除去すると、太陽黒点の11年周期の変動が滑らかに表現される一方で、衛星観測データの長期トレンドはなくなる(図)が、これは真実ではない。

太陽放射強度偏差の経年変化(Soon et al. 2023, Climate, 11(9),179, 2023 から引用)

IPCC報告の気候モデル予測では、太陽放射強度がほぼ一定のモデルA (図Solar♯1) が一貫して使われ、1000年スパンの年平均気温はほぼ一定となる。太陽放射強度は一定と仮定したのだから、近年の温暖化はCO2放射強制力のみで説明されることになるが、これは当然の帰結である。数値モデルの結果は真実の証明とはならない。

一方、太陽放射強度は長期的に変動するというモデルB(Solar♯2)がある。18世紀ころの小氷期と呼ばれる寒冷期には黒点が長期間消滅した時期があり、当時の太陽放射強度は低下していたとの仮定に基づいている。モデルAもBも対等な仮説だが、後者が気候モデル予測に使われることはない。本研究では、モデルBの結果として得られる気温変動が、先述のヒートアイランド効果を差し引いた気温変動とほぼ一致することから、モデルBが正しいと結論した。論文査読では、「IPCCの結果と整合的でないので不採用」との回答が一部にあった。IPCCが絶対視され、この論文は受理すべきでないという圧力があったが、一部の好意的な査読者によって受理された。

もし本論文の結論が今後のさらなる研究で検証されれば、過去の温暖化も長周期変動も、太陽放射強度の変動という自然変動で説明でき、CO2放射強制による調整(チューニング)が不要となる。これはIPCC仮説の完全崩壊を意味し、コロナ禍のような厳しいCO2削減を30年続けてネットゼロにしても、温暖化には何の影響もないことになる。そうであれば、引き続き石炭火力は一番安全で安いエネルギー源といえる。

再エネの主力電源化に向けて 適正な制御で系統連系拡大に貢献

【四国計測工業】

四国計測工業は培ってきた技術力で、再エネを適正に制御する「再エネ出力制御システム」を開発。

再エネ拡大の役割を担う同システムは多くの一般送配電事業者に採用され、芦原科学大賞も受賞した。

1951年に創立した四国計測工業は、電力量計、遠方監視制御装置などに始まり、近年では中央給電指令所、系統制御所などの電力ネットワークの需給・系統制御や、給電運用システムの設計、製作、保守を担っている。

同社が「再生可能エネルギー出力制御システム」の開発を始めたのは2016年。FIT(固定価格買取制度)の施行以降、太陽光発電(PV)設備の系統連系が急速に進展していた頃だ。日照条件に恵まれている四国エリアでは、ほかのエリアに比べ、比較的早期に再エネ発電を制御することが必須になると想定したことに始まる。

50万V基幹系統の給電制御から配電系統まで、同社が持つ電力安定供給を担う大規模システムの豊富なノウハウや高度な技術力を生かし、制御システムは約2年で完成。18年度初めに四国電力に納入した。同年10月には、九州エリアで本土初の再エネ出力制御が実施され、全国的に出力制御システム導入の機運が高まっていった。四国エリアでは22年度に初めて出力制御を実施した。

発電出力が需要を上回り、余剰電力が発生すると、電力広域的運営推進機関で定められた「優先給電ルール」に従って、①揚水発電の揚水運転と火力発電制御、②連系線を活用した他エリアへの送電、③バイオマス発電制御、④PV・風力発電制御、⑤水力、地熱などの長期固定電源の発電制御―の順で出力をコントロールする。

再エネが普及すればするほど出力制御は増えることになるが、だからといって再エネはもう十分ということではないと、系統システム部の平尾成良・再エネ制御システム課長は言い、こう説明する。「電力需要の少ない春や秋に一時的に制御しても、年間を通して見ると、再エネ設備の連系が増えれば活用の裾野は広がる。適正に制御すれば、国のエネルギー政策基本指針で、30年に再エネを電源構成全体の36~38%にするという目標達成への大きな役割を担える」。

再エネの裾野を広げたいと話す平尾さん(右)と正岡さん

公平に出力制御 制度改正にも速やかに対応

出力制御で最も重要なのは、「公平性」だ。連系の申し込み時期により、旧ルール(1年間に30回まで)、新ルール(1年間にPVは360時間、風力は720時間まで)、無制限無補償(制限なし)といった個別ルールがあり、この分類に基づいて公平に制御を割り当てなくてはならない。

制御システムは、中央給電指令所から翌日の制御必要量の指示を受けると、どの設備をどのくらいの時間制御するかを計算し、制御対象となる発電事業者に指令を発信する。連系時期が早く、通信で制御システムにつながっていないオフラインの再エネ設備の場合は、発電事業者に電話やメールで連絡し、翌日の制御操作を指示。手動で制御してもらう。出力制御機能付パワーコンディショナー(PCS)がついたオンラインの再エネ設備の場合は、当日、制御システムからインターネットなどを介して制御を行う。

現在、国の制度では原則として10‌kW以上の全てのPVが制御対象となっており、数万~数十万台を管理・制御することが求められる。出力制御機能付PCSはメーカーや機種ごとに仕様が異なる上、制御指示を一斉に取りに来るとサーバーに大きな負荷がかかる。

同社は、数十万台のアクセスに対応でき、インターネット接続時におけるセキュリティー対策など、信頼性の高いシステムづくりに注力し、公平性に加え迅速かつ適正な制御を実現している。

発電事業者の出力制御対応が難しい500kW未満のオフラインのPVについては、新しいルール「代理制御」に対応し、ほかのオンラインの事業者が代わりに制御する機能も備えた。

同社の制御システムは、既に多くの一般送配電事業者に納入済み。この実績について、平尾さんは「電力系統に係る給電運用システムに精通していることと、先行エリアへの納入実績が安心感になり、採用につながった。また、制御システムをパッケージ化して、低コストも実現している。導入までが短納期で、各社のシステム環境に合わせたカスタマイズができることも強み」と胸を張る。

最新技術の獲得に励む 芦原科学賞大賞を受賞

50年のカーボンニュートラル(CN)に向け、再エネ電源の増加とともに系統の混雑処理も始まりつつある。今後は送電線の空いている容量を活用して発電する「ノンファーム型」接続が始まる。

同社は、NEDOの実証事業「日本版コネクト&マネージを実現する制御システムの開発」に参画し、最新技術の獲得に励んでいる。実導入に向け、現在は実系統での実証段階に入ったところだ。 

系統システム部の正岡寿夫部長は「今は需給バランスのみの制御だが、系統制御のシステムも組み合わせることが必要になってくる。電力系統を有効に使うため細やかに制御して、システム面からCNに貢献したい」と話す。 

再エネ出力制御システムはこのほど、かがわ産業支援財団の「第30回 芦原科学賞」で大賞を受賞した。制御システムの開発と納入実績が、香川県内の産業技術の高度化と産業の振興に寄与したと高い評価を受けた。平尾さんは、「今後は蓄電池の普及や太陽光パネルの高効率化などへの対応で、制御システムはますます重要な存在になる。制度改定に継続的に対応し、電力の安定供給と再エネ拡大に貢献し続けたい」と、意気込む。

四国計測工業は、キャッチフレーズ「情熱は制御できない。」をマインドに、計測・制御を中心とする技術で未来に挑戦し、地域社会の発展に貢献していく。

再エネ出力制御システムの概要

西側とサウジを割く強い遠心力 危機と隣り合わせの状況続く

【論点】国際石油秩序に大きな試練/小山正篤 石油アナリスト

ロシア、中東で有事が同時進行する事態は、国際石油秩序に大きな試練を与えている。

今日の世界が石油危機に陥る危険性と隣り合わせの状況が続く。

2022年はロシアの対ウクライナ侵略開始、23年はイスラエル・ハマス戦争勃発。世界は一つの大規模地域紛争が次の紛争を誘発する激しい動揺期にある。

ここで国際石油需給の現状を検討しつつ、それが投げ掛ける課題についても考えてみよう。

OPECプラス 有志8カ国・原油生産(単位:100万バレル/日)
※生産量はIEA推計、23年第4四半期は10月並みと仮定


足元の石油需給は均衡 現状維持のIEA見通し

23年(11月末まで)のブレント原油価格はバレル当たり平均80ドル強、22年平均に比して20ドル弱下がり、また上下の振幅も20年以降で最も穏やかだった。

この安定の最大の要因は、ロシア石油輸出総量の高位安定である。23年1~10月平均で日量750万バレル強。ほぼ22年並みの水準を保ち、21年と比べるとむしろ若干増加している。ただ仕向け地は劇的に変化した。欧州向けは21年対比で日量300万バレル弱減少。そのほぼ同量がインド・中国向けに増大した。インド原油輸入に占めるロシア産の比率は21年の2%から23年4~10月期に4割へと急伸。こうして欧州・西側向けが遮断されながらも、ロシア外の世界全体への供給量は確保され、国際市場を安定させた。

この現実を踏まえた上で、サウジアラビアの主導下、OPECプラスが原油生産量を調整してきた。ここで注意すべきは、21年後半以降の継続的増産が22年8月に完了した時点で、OPECプラスが既に分極化していたことだ。割当量が実生産量と整合するのはわずか8カ国(サウジ、UAE、クウェート、イラク、オマーン、アルジェリア、カザフスタン、ガボン)に過ぎず、ロシアを含む他の12カ国では割当量は生産量に対して著しく過大となって形骸化していた。

従って22年11月以降の減産を担ったのも、この「有志8ヵ国」であり、23年5月以降は自ら生産目標量を日量120万バレル弱、追加で削減。7月以降にはさらにサウジが単独で日量100万バレル引き下げた。23年11月時点のIEA見通しに基き推計すると、23年平均の原油生産量は対前年比で日量約110万バレルの減少になる(23年第4四半期のOPEC各国の生産量を10月並みと前提)。

一方、非OPECプラス諸国の原油生産およびNGL(天然ガス液)などの非原油系供給などが計・日量約300万バレル増。対して石油需要増は日量200万バレル強。すなわち、サウジ主導の有志国による減産効果により、世界全体の需給量は概ね均衡した。

これら有志国の24年の年間原油生産割当量は、22年11月減産時の数量を概ね踏襲している。23年11月末の閣僚級会合後、24年第1四半期は、この割当量対比で日量・計220万バレル抑制と発表された(ガボンを除く7ヵ国分)。つまりは基本的に23年後半の自主目標量の継続、すなわち現状維持である。

GPIが石狩湾で洋上運開 活況呈すも国産不在への不安

NTTアノードエナジーとJERAの傘下に入った、グリーンパワーインベストメント(GPI)が主導して建設を進めていた北海道・石狩湾新港の大型洋上風力(11万2千kW)が、2024年1月に本格的に商用運転を開始する。FIT制度のもと、20年間にわたって北海道電力ネットワークに1kW時36円で販売する。

11万2000kWの石狩湾新港の洋上風力

建設に向けた最終投資決定を下した10年近く前と今とでは、資機材の高騰や円安の進展など、事業環境が大きく変動したが、GPI側によると、工事の進捗に大きな影響を与えるほどファイナンス面での支障はなかったそうだ。洋上のハードルの一つとされている漁協対応については、「約束したことはしっかりやる。できないと思ったら、早めに頭を下げて、(漁協側には)誠意を持って対応した。また、北海道電力側から優秀な技術者を二人派遣してもらい、工事は順調だった」(GPI側の建設責任者)。

一方、国内の洋上事情に目を向けると、国の公募第2弾の対象となった秋田、新潟、長崎の3海域で落札企業体が決定。24年も引き続き複数海域で公募選定が行われるため、洋上大国「ニッポン」への機運が盛り上がる。ただGPIのように、事業者の洋上戦略が順調に進むかどうかは不透明だ。

課題の一つは国産の風車が存在しないこと。「大型台風や地震など自然災害の多い日本の国情に即した設計や施工が不可欠。これは着床式だけでなく浮体式にも言えることだ」(関係者)。国内事情に精通した「純国産メーカー」が不在の日本で今後、安全・安心を大前提に大量の洋上風力を建設・運営できるのか。ちなみに石狩では、外資系設備が採用されている。

激化する核融合の研究開発 関係者が見据えるビジネス機会

【業界紙の目】中村直樹/科学新聞編集長

核融合の研究開発を巡る国際競争が激化し、日本も初となる国家戦略を策定した。

欧米や中国はもとより、日本国内でも新たなビジネスチャンスとして注目が高まっている。

 2023年4月、政府は日本初となる核融合の国家戦略「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定した。核融合の技術開発と産業化を進めて、50年ごろには発電を実現。カーボンニュートラルとエネルギー確保による経済成長の両立を目指す。

エネルギー消費の削減で生活の質や経済を低下させることなく、気候変動問題を根本的に解決する解の一つが、核融合である。

そもそも核融合とは何か。原子力発電で使われている核分裂反応は、重い原子核が分裂する時に出るエネルギーを使って発電するのに対して、核融合では軽い原子核同士が結合して、より重い原子核に変化する際に発生するエネルギーを使う。研究開発が進んでいるのは水素の同位体である、重水素(水素+中性子1個、D)と三重水素(水素+中性子2個、T)のDT核融合反応で、ヘリウムと中性子が発生する。

重水素と三重水素よりも、ヘリウムと中性子の方が軽いため、その重さの差の分だけエネルギーが発生する。例えば、1gのDT燃料からは約8tの石油を燃やした際の熱量に相当するエネルギーが得られる。

ただし、実際に核融合反応を連続的に起こし、発電までつなげていくのは簡単ではない。約1億℃のプラズマを作り続けながら、核融合反応を維持しなければならない。1990年代初めまで、各国は独自に研究開発を行ってきたが、21世紀初頭、国際共同で実験炉ITERを建設することに日米欧露が合意した。その後、中国、韓国、インドも加わり、25年のファーストプラズマを目指して、フランスでITERの建設が進む。

他方、原子力発電と比べると核融合発電は非常に魅力的だ。高レベル放射性廃棄物を出さず、中性子で放射化した低レベル廃棄物も少ない。さらに燃料となる重水素や三重水素は海から回収できるため、燃料不足の心配がない。三重水素は自然存在量が少ないものの、原子力発電所から常に排出されているほか、リチウムから取り出すこともできる。

日本でも超伝導トカマク型実験装置を使い研究が進む
出所:量子科学技術研究開発機構HPより


欧米ベンチャーが資金調達 35年ごろまでの実現目指す

国際協力でITER計画が進む一方、欧米を中心に多くのベンチャーが核融合発電実用化に向けた取り組みを進めている。米国のCommonwealth Fusion Systems社は20億ドル超、TAE Technologies社は10億ドル超、Helion Energy社5・7億ドル、またカナダのGeneral Fusion社3億ドル、イギリスのTokamak Energy社2・5億ドルと、大きな資金を調達している。

こうしたベンチャーは短い時間軸での核融合の実現を掲げており、世界の3社に2社が、35年かそれ以前の初送電を見込んでいる。一方、国際プロジェクトでは、ITERの次の原型炉で発電を行い、その後、各国において核融合の実用化を進めるため50年代の実用化を見込んでいる。

斎藤経産相がリリーフ登板 危機に強い手腕に期待感

政治資金問題に絡んで辞任した西村康稔氏の後任として、無派閥の斎藤健衆院議員が2023年12月14日に経済産業相に就任した。翌15日、初の閣議後記者会見に臨み、「大臣になったという高揚感はない。あるとすれば、厳しい状況の中で重責を担うことになった、身の震えるような緊張感のみだ」と表情を引き締めた。

西村氏から事務を引き継いだ新経産相の斎藤氏(左)

東京大学経済学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。官僚時代の1990年代には、難航した日米間の自動車交渉を主導した。「省出身の政治家の中でも特に有能な人物」(経産省幹部)と古巣からの評価は高く、今回の斎藤氏のリリーフ登板に省内は歓迎ムードのようだ。

09年の衆院選で初当選し政治家としての道を歩み始めると、17年の第3次安倍内閣で農林水産相、22年の第2次岸田内閣では法務相を歴任。「困難な仕事に自ら進んで取り組む政治家」(事情通)で、自民党農林部会長、農林水産相としてTPP(環太平洋パートナーシップ)協定に注力するなど、西村氏が安倍派の主流として頭角を現したのとは対照的に、石破派結成メンバーとしての苦労もあった中、着実に閣僚としての安定感への評価を定着させてきた。

エネルギー業界も、その卓越した手腕に高い期待を寄せる。大手電力会社の幹部は、「斎藤氏は、将来の総理大臣を目指すべき人。ぜひ、その政治手腕を困難化するエネルギー行政にも発揮していただきたい」と望みを託す。

日本経済の長期低迷からの脱却、資源・燃料の安定確保、脱炭素戦略と原発再稼働―など、さまざまな課題が山積する経済産業行政をどうかじ取りするのか。危機に強い手腕に期待が掛かる。

【コラム/1月5日】物価上昇と賃上げを考える~合理的な思考が必要

飯倉 穣/エコノミスト

1,近時の賃金引上げ要求に疑問符

エネ価格上昇による物価上昇の下で、23年は「物価上昇率を超える賃上げの実現」で始まった(首相年頭会見23年1月)。政策面でも「賃上げと経済成長の好循環」の合言葉が踊る。その流れは、勢いを増しているようである。報道は伝える。

「今年上回る賃上げ要請 首相、中小企業減税で支援 来春闘控え政労使会議」(共同通信23年11月15日)、「連合と経済同友会幹部が会談 持続的な賃上げ取り組みで一致」(NHK11月28日)、「連合、春闘「5%以上」決定」(朝日12月2日)等。

連合の賃上げ要求5%に絡み、経済界の持続的賃上げ容認、構造的賃上げによる賃金と物価の好循環を目指す政府の賃上げ期待・誘導等の動きが目立つ。

消費者物価が上がれば、賃金も上げるべきという主張、賃上げが消費と投資の力強い循環を生み、経済を新たなステージに移行させるという経済成長期待論がある。敗戦後経済史の中で、この国は、物価と賃金と成長に関する二つの際立つ経験をしている。そのいずれも適切な見方で賢明に対応し、経済健全化を実現した。今回はどうだろうか。経済成長、賃金水準、物価の見方と、輸入価格上昇に伴う物価と賃金の適切な姿を考える。


2,経済成長なら企業物価安定、消費者物価一定割合上昇

成長と物価の問題は高度成長期に一大論争を巻き起こした。1960~70年の推移は、名目経済成長率年16.4%、実質同10.2%、卸売物価年平均1.3%、消費者物価(東京区部)年平均5.8%だった(名目賃金年平均名目12%、実質6%)。60年代前半経済成長が始まると物価高が新聞を賑わした。高度成長への批判だった。そして物価上昇に見合った賃金引上げを労働組合が強く主張した。

成長(生産性)と物価の関係、とりわけ卸売物価(企業物価)と消費者物価の関係が議論された。マル系の学者、マスコミ等は、高度成長・高物価批判に徹していた。当時下村治博士が、合理的な見方を提示した。

「日本の消費者物価問題には非常に大きな特徴がある。国民一人あたり国民総生産が10年間に3倍近く増加しながら、卸売物価がその間ほとんど横ばいという驚くべき安定である。消費者物価も合理的な水準で推移した。これは高速度の経済成長の姿を背景としている。経済成長の過程で、物の生産部門において生産性の向上があり、それがその部門の雇用の増加と所得の増加をもたらすと、それはやがて経済全体に波及する。物を生産しないサービス部門も、同じような所得上昇が実現される結果になる。これが経済成長である。

 ここで消費者物価問題が登場する。サービス部門のサービスは、所得水準が高くなるとき、当然その部門の提供するサービス価格の上昇が避けられなくなる。例えば植木職人の所得上昇は手間賃の上昇、理容師の所得増加は、理髪料金の上昇がなければ、十分に実現されない。サービス部門と生産部門との間に労働の代替性が存在すれば、国民全体としての労働の値打ちの向上の実現過程で消費者物価は、一定程度上昇する」(下村治「日本経済は成長する(63年10月25日)」から引用・要約)

高度成長期後半でも、庶民味方風の物価高騰批判が継続した。当時の佐藤政権は、安定成長を掲げ、下村の見方を遠ざけていた。高度成長は継続した(いざなぎ景気)。現実の事象に勝てず、政権はようやく物価批判に対する答えで下村論を認める。その報道がある。「ずれた首相の物価感覚「高度成長の下では5%程度の物価上昇は我慢できる水準」(佐藤栄作首相発言)」(朝日69年8月20日)。ずれていたのは報道内容だった。政治・報道は、屡々現実を歪曲し勝手考えで錯綜する。おかしなことである。高度成長は、生産性向上で、働く人の所得水準を引き上げ、日本を豊かにした。

原子力発電所「7基」稼動 安全運転への強い使命感

【電力事業の現場力】関西電力労働組合

規制と司法の「壁」を乗り越え、原子力発電所7基が稼動する関西電力。

新規制基準対応後の稼動には、3.11前とは違う課題も存在する。

社会のために安定供給の重責を果たすだけでなく、収益改善という具体的な「数字」で会社に貢献できることがうれしい―。

原子力の現場で働く作業員の思いだ。再稼働前は新規制基準に対応するため、防潮堤建設などの安全対策に多額の資金を投入した。当時と比べれば、組織に貢献できる喜びはひとしおなのだろう。

関西電力は美浜3号機(定期検査中)、大飯3、4号機、高浜1、2、3、4号機が稼動中だが、7基稼動体制までの道のりは決して平坦ではなかった。

「出口が見えない真っ暗なトンネルをひたすら進んでいるような感覚だった」。関西電力労働組合の藤原正宏本部副執行委員長は、審査対応時の思いをこう表現する。

原子力部門はもちろん、ボーリングが必要なら「くろよん」の伝統を継ぐ土木作業員、再稼動が近づけば火力発電所の運転員など、あらゆる部署から人材をかき集めた。原子力発電所の運転を志し関西電力に入社したのにもかかわらず、1日中、審査資料のコピーを取り続ける社員もいた。想像した仕事内容との違いに戸惑いを感じたことも少なくない。それでも、「オール関西電力」で対応に当たり、再稼動にこぎ着けた。

写真提供:関西電力
研修設備でシミュレーター訓練を行う

ところが、長いトンネルを抜けた先に立ちはだかったのは「司法の壁」だった。裁判所による高浜原子力発電所3、4号機に対する運転停止の仮処分命令だ。「あれだけ苦労したのに……。この時の現場の落胆たるや、相当なものだった」(藤原氏)。それでも需給を安定させ安定供給を実現すべく、地道に処分取り消しの判例を積み重ねた。こうした過去と比べると、いま現場は高い緊張感を保ちながらも明るく、前向きな雰囲気に包まれているという。

高浜原子力発電所の格納容器上部遮蔽設置工事

人員のリバランスに苦慮 新しい環境で試行錯誤

頭を悩ませるのは人員配置の調整だ。安全・安定供給や原子力発電所の運転にかかる技術継承を行った一方で、美浜や大飯の廃止措置を安全かつ着実に実施する必要がある。7基体制実現後も課題は山積している。

3.11前は「美浜3・大飯4・高浜4」の11基体制だったが、現在は「美浜1・大飯2・高浜4」。発電所のサイトごとで稼動する基数が偏っていることも、人員配置を難しくさせている。4基の廃止措置も、着実に進めていかなければならない。3.11前との比較で言えば、シビアアクシデントに備えて通常時に配置すべき人員数も増加した。余剰人員がいない中で現場に余裕はない。原子力発電所が稼動していない期間、技術の継承ができずに人材が空洞化したケースもある。

労使協議において議題となるのは「要員配置」に関わることが多い。部門によって要員構成の差が生まれたことも、運転停止期間が長引いた弊害の一つだ。過去に類を見ない環境下で、将来にわたり原子力の安全・安定供給を確保するための体制確保に向けて、試行錯誤しながら労使で議論を重ねている。

美浜原子力発電所の中央制御室で業務に当たる運転員

関西電力では2023年、カルテル問題や顧客情報の不正閲覧問題など一連の不祥事が発生した。しかし、会社が社会から批判にさらされようとも、原子力発電所の安全運転という使命は変わらない。作業員たちは365日24時間、その使命を果たし続けている。

22年には美浜3号機が日本で初めて40年超運転に入るなど、原子力では国内事業者をリードする関西電力。トップランナーを支える現場の作業員の努力に敬意を表したい。

積年の「無償慣行」と決別なるか LPガス法改正問題の正念場

LPガス業界の不透明な料金体系や商慣行是正に向けた議論が佳境を迎えている。

長らく放置されてきただけに根深いこの問題。果たして、業界体質を変革できるか。

LPガスの料金透明化、取引適正化を目指し、2023年3月に再開した総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)液化石油ガス流通ワーキンググループ(液石WG、座長=内山隆・青山学院大学教授)。これまで4回の会合を開き(12月18日現在)、液化石油ガス法の省令を改正することを含め、不透明な商慣行是正に向けた方策を大枠で固めた。

LPガスの商慣行を巡り、消費者団体などが特に問題視してきたのが、ガス事業者が賃貸集合住宅のオーナーにエアコンや給湯器といった設備を無償で提供し、その費用をガス料金に上乗せして入居者から回収する行為だ。本来、賃貸住宅に付随する設備の費用は、そのオーナーが負担し家賃で回収するのが筋。それをガス事業者に付け回すことで自らの持ち出しを減らせる上、家賃を安く見せ入居率の向上にも寄与するとあって、オーナーにとってはメリットしかないスキームだと言える。

業界関係者の一人は、「賃貸集合住宅が金融商品化したことも相まって、05~06年ごろからこの商慣行が急速に広がった」と指摘。事業者が供給契約を獲得するために、オーナーにガス機器を提供したことが発端となった慣行だが、次第に営業攻勢が過熱する一方で、利用者無視の状態が長年放置されてしまった。

商慣行是正策の実効性が問われている


液石法のみでの対応に限界 求められる省庁連携の強化

こうした状況を重く受け止め、同WGでは、液石法の省令を24年春にも改正し「正常な商習慣」を超えた利益供与を禁止した上で、新規契約や契約更新の際にガス器具以外の設備費用をガス料金に上乗せすることを禁じることが方向付けられた。

一方で、既存契約については、当初は新規と同様、設備料金の計上を禁止する方針だったが事業者の収益性への影響を考慮し見送り。その代わり、利用者に貸与している設備がある場合、基本料金と従量料金とは別建てで設備使用料を算出する「三部料金」を徹底することで、料金の透明性確保を求めることとした。違反事業者に対しては、立ち入り検査や勧告、命令を行い、登録取り消しや罰金を科すことも辞さない構えだ。

施行時期は、改正法の公布から1年後の25年度。「システム対応のための期間が必要」「既存契約において関係者との調整に時間がかかる」といった事業者側の懸念に配慮し、いったんは三部料金制に関わる見直しを公布後3年としたものの、消費者などからの「公布後3年の猶予期間は長い」「早期に施行するべきだ」といった声を踏まえ、2年前倒しした。

「化石燃料からの移行」を明記 COP28が現実路線で決着

アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開かれていた温暖化防止国際会議・COP28が2023年12月13日、合意文章を採択して閉幕した。「グラスゴー気候合意」で1・5℃目標の追求を掲げたCOP26、先進国が「ロス&ダメージ(損失と損害)」基金設立に折れたCOP27に比べ、今回はバランス良くさまざまな主張の間を取った内容と言える。

世界有数の産油国での開催、そして世界全体の気候変動対策の進捗評価を行う「グローバル・ストックテイク(GST)」の初実施など、さまざまな観点から注目されたCOP28。無事、GSTの決定が採択されたが、そのポイントの一つが「1・5℃目標」達成に向けた化石燃料利用の在り方だ。

当初、欧米や島しょ国などは「フェーズアウト」という文言を入れるよう主張したが、産油国などが反発。結局「移行(トランジション・アウェイ)」と、よりマイルドな表現に落ち着いた。日本の方針にも合致する内容であり、現地参加した伊藤信太郎環境相も15日の閣議後会見で「今回の成果文書と、今まで日本が進めてきた環境・エネルギー政策に齟齬はないと考えている」と振り返った。

他方で環境派は、石炭だけでなく、化石燃料全般がターゲットとなったこと、さらに「この重要な10年間にその行動を加速させる」と書き込まれた点を強調。また工業原料ではなく、燃料用の化石資源の削減を優先することにコミットしたともとらえられる。結果、悪く言えば玉虫色、良く言えば現実路線で、いずれの立場からも評価できる「化石燃料からの移行」という表現にたどりついた。

このほか決定文書では、30年までの再生可能エネルギー発電容量3倍、省エネ改善率2倍を掲げつつ、脱・低排出技術として原子力やCCUS(CO2回収・利用・貯留)、低炭素水素などのオプションを明記した。特にネットゼロに向けた原子力の必要性がCOPの成果として示されたことは画期的であり、この点も日本政府や経済界、エネルギー業界にとってはウェルカムな内容と言える。

さまざまな立場を踏まえた合意文書を採択し閉幕したCOP28(提供:新華社)


日本の削減実績をアピール 次期エネ基議論への影響は

今回の日本の主張の一つに、30年度46%減というNDC(国別削減目標)に対し、21年度に約20%削減を達成したという実績のアピールがあった。その点、「日本がオントラックで排出ガス削減を行っていることを説明した上で、立場の違いを乗り越えて合意に達するよう努力した」(伊藤環境相)という。

また、日本政府主導のイニシアチブとして、パリ協定の目標実現に向けた「投資促進支援パッケージ」を公表。目標や適応、対策実施に関するギャップの解消という支援方針に対し、多くの賛同を得られた格好だ。

今回は現実路線を模索する姿勢が垣間見えたが、既定路線となった1・5℃目標の追求は宿題として残る。35年、あるいは40年をターゲットとしたNDC見直し、そして第7次エネルギー基本計画の議論でどのような展開につながるのか、注目される。