【新電力】複数年の相対卸契約 事業安定化に期待

【業界スクランブル/新電力】

8月8日の総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会において、昨年度から議論になっていた「内外無差別で安定的な電力取引を実現する仕組みの構築」の一環として、旧一般電気事業者・JERAからの複数年契約の相対卸の販売の計画の説明がなされた。

これまで、公の形で単年契約以上の相対卸が促進されたケースは非常に少なく、発電事業を営んでいない小売電気事業者にとっては、事業ポートフォリオを安定化させるために有効な取り組みになることが期待される。供給力全体の不足が課題として残る中、どの程度の取引水準となるかが注目である。

6月末の電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合で発表された内外無差別な卸売りの評価結果は、北海道・沖縄電力が内外無差別な卸売りを行っていると評価された。この評価の中で、半数以上のみなし小売電気事業者の小売料金が調達価格を下回っていることが明らかになった。

規制料金を中心に小売料金が抑えられてしまっていること、既出の長期相対卸へのアクセスが無差別的でないことが要因と考えられるが、ここが解消されることが競争環境の適正化の前提となるところであり、監視・制度の設計の強化を期待したいところである。

とはいえ、発電事業者からすると、固定収入が予見できていたところが、リスクを高める方向になるわけで、制度による制御はより難しくなる。審議会の委員からも、発販双方に分散的になっていく中で、全体の最適解は一意に定めるのは不可能に近いという声もある。供給力の確保・電源構成の入れ替え・諸外国と比較した電気料金の推移を見ながら、操縦するように制度を設定していくことが求められる。(S)

不調のG20環境・気候相会合 両論併記議長サマリーの真意

【ワールドワイド/環境】

7月28日のG20環境・気候・持続可能大臣会合は予想されたとおり、共同声明を採択できす、議長サマリーを発出して終了した。5月のG7サミットでは中国、インドを念頭に「30年目標や長期戦略が1・5度の道筋や50年ネットゼロ目標に整合していない国に対し、COP28に先立って目標の強化、50年ネットゼロへのコミットを求める」との共同声明が採択された。

しかしG20では「パリ協定の気温目標にNDC(国が決定する貢献)を整合させていないすべての国に対し、各国の異なる事情を考慮しつつ、23年末までに、必要に応じて30年目標を再検討し、強化するよう求める」との過去、合意済みの文言を繰り返すにとどまった。「パリ協定の気温目標」は産業革命以降の温度上昇を1・5~2℃に抑制するものであり、1・5℃よりも求められる削減スピードが緩やかであるため、中国、インドの目標引き上げのプレッシャーにはならない。

議長サマリーでは「IPCCの最新報告書の見解や世界的なモデル経路など、緩和に関する問題が取り上げられた。一部のG20メンバーは、遅くとも25年までに排出量を世界的にピークアウトさせ、19年比で35年までに排出量を60%削減する必要性を強調した。(中略)一部のG20メンバーは、パリ協定の気温目標を達成するためには、排出削減と除去の両方が重要であると述べた。一部のG20メンバーは先進国が40年までにネットゼロを達成する必要性を述べた」と異なる見解が両論併記された。言うまでもなく世界全体の削減目標を主張しているのがG7の先進国であり、先進国40年ネットゼロを主張するのは新興国である。

G7諸国はIPCC第6次評価報告書に記載されている25年ピークアウト、35年マイナス60%をグローバルストックテイクに関するCOP28の結論文書にも入れようと目論んでいるが、途上国のシンクタンクは、IPCCシナリオは気候変動枠組み条約の「公正だが差異のある責任」や衡平性の原則を考慮しておらず、先進国と途上国の一人当たり所得や一人当たりエネルギー消費の格差縮小につながらないとの理由で上記の数字を受け入れていない。

G20の結果を見れば、G7諸国とG20の新興国が温暖化防止を巡って「同じページ」にいないことは明らかである。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

【電力】異常さが際立つ 処理水放出を巡るデマ

【業界スクランブル/電力】

東京電力は8月24日、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。社会調査研究センターが9月3日に実施した全国世論調査では、54%が「問題はあるが、やむをえない」、29%が「妥当だ」と合計83%が容認しているとのこと。

懸念されていた水産業などへの影響は、国内では「食べて応援」のムードがむしろ高まっているようだ。政府と東電が、IAEAの協力を得ながら入念に準備をしてきたことが奏功したことは間違いなく、関係者の粘り強い努力に頭が下がる。

近隣国では中国が、処理水放出に反発して日本産水産物の輸入を全面的に停止したが、日本政府がかつてないほど精力的かつ毅然とした外交対応をしているので、科学的根拠を欠いた暴挙であることがかえって浮かび上がっているように見える。WTO提訴も毅然と行うべきだ。前政権が東京五輪を放射能五輪などと揶揄していた韓国の現政権が、今回は日本側に立っていることも大きかろう。

中国政府は、国内経済が不動産バブル崩壊で雲行きが怪しい中で、政治的に利用できると思って国民を煽ったのかもしれないが、その結果が日本への電話殺到では、日本国民のみならず他国に対しても異常さを際立たせてしまったのではないか。

一方国内では、「トリチウムは生体濃縮する」という説を広めた社会学者や、東電が以前から公開しているトリチウム以外の放射性物質のデータを隠しているかのようにコメントしたTBSのキャスターなど、少し調べればわかるデマを流布した人たちが炎上している。彼らが確信犯なのか本当に無知なのかは定かでないが、昭和の時代にはオピニオンリーダーと目されていた人たちが実はポンコツだった。処理水放出はこんなことも明らかにしている。(Ⅴ)

英国で進む需給ひっ迫対策 電力調整促すサービスを導入

【ワールドワイド/経営】

再生可能エネルギーの導入が進む英国では近年、電力の需給状況に応じて消費の調整を促すサービスの導入が進む。

きっかけとなったのは、2022年度冬季に想定されていたエネルギー危機への備えである。英国としては初めて、一般家庭も対象とした補償付きの節電による負荷削減サービスを導入。エネルギー料金の高騰が背景にもあるが、一般家庭も電力消費の調整に関心を持っていることが示され、この取り組みは成功を収めた。

一方、夏季は風力や太陽光の発電が増加し、出力抑制の頻発が近年の課題だ。昨冬の節電の成功もあり、今夏は、再エネ発電量が多い時間帯や電力需要が低い週末に電力消費を促す新たなプログラムが導入され始めた。

エネルギー小売大手ブリティシュガスの新プログラムでは、23年6月25日から同年9月24日までの毎週日曜日、午前11時から午後4時までに使用した消費電力量にかかる電気料金を50%割り引く。同社は期間中の割引総額について最大500万ポンド(約9億円)に達すると予想している。

主要新電力のオクトパスエナジーが8月に導入した新プログラムでは、英国内の一部の対象地域において、電力供給が需要を上回ると予想される時間帯の単価を無料にする。配電事業者と提携することで対象地域の需給予測情報を取得。前日までに需要家に電力消費が無料となる時間帯を通知する。特徴的なのは、電力消費を促す時間帯を需要家ごとに個別に割り振り、配電系統の細かなエリアごとに混雑および再エネの出力抑制の低減につなげる点である。

消費調整を促す料金メニューとしては、従来はベースロード電源の運転を考慮した、夜間の単価割引といった時間帯別料金が主流だった。現在は市場連動型プランがあるが、価格高騰のリスクもある。こうした中、小売市場におけるデジタル技術の活用が進み、よりピンポイントに地域の需給状況や需要家の生活に合わせた消費調整が可能になりつつある。電気自動車所有者向けのスマート充電プランの普及も代表的な例である。

英国エネルギー省や規制機関も、一部の事業者で進むイノベーションによる新サービスを多くの需要家が利用できるようにしていく考えを示している。割安な電力単価の自動適用や、需要家によるアクティブな消費調整は、コスト上昇を抑えるだけでなく、電力部門のネットゼロ達成にも欠かせない。今後も英国の小売市場での革新的な取り組みが注目される。

(宮岡秀知/海外電力調査会・調査第一部)

UAEの野心的な脱炭素戦略 COP28控えアピールか

【ワールドワイド/資源】

11月30日~12月12日にドバイで国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)を開催するアラブ首長国連邦(UAE)が、脱炭素への取り組みを強化している。

UAEは7月3日、新たな国家エネルギー戦略、国家水素戦略など、エネルギー関連の重要政策を閣議決定した。新国家エネルギー戦略では、クリーンで持続可能なエネルギーの供給能力強化を目指し、2030年までに約400億~545億ドルを投資して、再生可能エネルギー発電設備の容量を3倍にするとともに、31年までにエネルギーミックス全体に占めるクリーンエネルギーの割合を30%まで引き上げる。国家水素戦略では、国内企業の支援、投資誘致などにより、31年までにUAEが世界有数の水素生産国になるという目標を掲げた。

さらにアブダビ国営石油会社(ADNOC)は7月31日、従来目標から5年前倒しとなる45年までに排出ネットゼロを達成するとの目標を発表した。サウジアラムコなどほとんどの国営石油会社が50年以降のネットゼロ達成を目指す中、ADNOCは野心的な排出目標を設定した。ADNOCは1月、30年までに脱炭素化プロジェクトに150億ドルを投資すると発表したが、ADNOCの低炭素ソリューション責任者は8月、同社の新たな目標設定を受け、脱炭素化予算が150億ドルから増額となる可能性が高いと表明した。脱炭素戦略に関する発表は、COP28開催を控え、率先して気候変動対策を進めるUAEの姿勢を国際社会に向けて積極的にアピールする狙いがある。

ADNOCは脱炭素への取り組みを強化する一方で、石油生産能力を27年までに日量500万バレルに増強する計画を推進している。欧米の環境活動家や環境派の議員から、ADNOCのCEOを兼務するスルタン・ジャーベル産業・先端技術相はCOP28議長として不適格であるという批判が出ているが、ジャーベル氏は主要国政府の支持を取り付けており、同氏の議長としての活動に影響は出ていない。

ジャーベル氏は最近、「化石燃料の段階的廃止は不可避かつ不可欠である」と、国営石油企業としては踏み込んだ発言を行っており、前回のCOP27エジプトで産油国の反対で決議されなかった「全化石燃料の段階的削減・廃止」が今後、COP28の正式議題となり、先進国や発展途上国、産油ガス国など立場の異なる各国間で合意を形成できるかが注目される。

(猪原 渉/独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構調査部)

【マーケット情報/10月13日】原油急伸、中東産の供給不安が背景

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急伸。中東地域の情勢悪化を背景に、供給不安が台頭した。

イスラエルは、米軍の支援とともに、ガザ地区を拠点とする武装組織ハマスに対して大規模な軍事行動を計画。中東地域の治安が一段と悪化するとの予測が広がった。これにより、中東産原油の供給不安がさらに強まった。ただ、米国はイスラエルに、パレスチナ市民に対する無差別攻撃は控えるよう進言しており、紛争の激化を防ぎたい意向だ。

また、サウジアラビアとロシアは12日、それぞれ日量100万バレルと日量30万バレルの自主的追加減産を、年末まで続けると強調。供給が逼迫するとの見通しが強まった。

加えて、供給面では、国際エネルギー機関が、今年の石油需要予測を上方修正した。中国、インド、ブラジル需要が強まるとの見方が背景にある。


【10月13日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=87.69ドル(前週比4.90ドル高)、ブレント先物(ICE)=90.89ドル(前週比6.31ドル高)、オマーン先物(DME)=88.89ドル(前週比4.14ドル高)、ドバイ現物(Argus)=88.75ドル(前週比4.10ドル高)

「問題の根源は日本にあり」 中国の代弁者に落ちた東京新聞

【おやおやマスコミ】井川陽次郎/工房YOIKA代表

事実誤認に加え、論理も破綻している。東京9月2日社説欄「〈ぎろんの森〉ナショナリズムをあおらない」である。

東京電力福島第一原子力発電所からの処理水放出に対する中国発の日本への嫌がらせ電話などを論じる。異様なのは、朝日、毎日、読売、産経、日経の社説の見出しだけを並べて、「中国側の責任のみを問うことの是非」を問題視した点だ。読解力さえ怪しい。

例えば、朝日8月29日社説「中国と処理水、冷静な対話こそ必要だ」は、「中国の市民が懸念を抱くことは理解できる。朝日の社説は、安全確保と風評被害対策で日本政府と東電が負うべき重い責任を指摘し、国内外で説明と対話を尽くすよう訴えてきた」とした上で、「一方、科学的な議論に応じないだけでなく、正確な情報を国内に伝えず、不安ばかりをあおる中国政府の対応も、極めて責任を欠いたもの」と指摘する。

読売同日社説「処理水放出、中国は嫌がらせを放置するな」、翌日の日経社説「中国は理不尽な迷惑行為をやめさせよ」も、それぞれ「日本政府は、中国の宣伝戦に冷静に対処し、安全性を客観的なデータに基づいて国際社会に説明し続けることが重要」「対中感情の悪化も否めない。だが、いま必要なのは冷静さだ」である。

東京の記事は「問題の根源が日本側にあることは明白」と日本の責任のみを問う。中国政府と同じだ。そして「『迷惑』電話の多さは尋常でありませんが、敵意で応じ、ナショナリズムをあおる報道や振る舞いは厳に慎まねばなりません」。論理飛躍だ。迷惑行為への抗議が、なぜナショナリズムになるのか。福島県の旅館などは深夜の電話に苦しむ。病院や学校も標的だ。台風、地震など災害時なら人命に関わろう。思い込み記事が、当事者を一層苦しめる。

NHKも同類だろう。山口放送局がネット配信した8月26日「(山口県)上関町に使用済み核燃料『中間貯蔵施設』、建設反対派が講演会」は、「環境破壊が避けられない」「周辺では被ばくする可能性」と、反対派の講演内容を引用して恐怖をあおる。

読売8月18日「使用済み核燃料中間貯蔵、上関町、調査受け入れ、中国電に伝達」から経緯を確認する。「中国電力が原子力発電所の使用済み核燃料を一時的に保管する『中間貯蔵施設』を関西電力と共同で建設するため、上関町に申し入れた地質などの調査を巡り、西哲夫町長は18日、受け入れを表明」「町では原発2基の建設計画があるが、準備工事が中断。今年2月、中国電に新たな地域振興策を求め、中国電は中間貯蔵施設の設置案を示していた」「(18日の町議会臨時会で)西町長が『町は急速に疲弊が進んでいる。調査を受け入れる』と考えを示し、議長を含む10人が意見を述べ、賛成7人、反対3人」だった。そこに至るまで自発的、民主的に決めたことは明白である。

当事者の西氏が電気新聞9月4日で語る。安全性は「(使用済み核燃料を保管する既設の)乾式貯蔵施設を視察し、リスクが非常に低いと理解」とし、反対運動について「(登庁時に)車を取り囲んで揺らし、閉じ込められた」と批判、やったのは「半数以上が町民ではないと思われる。部外者にかき回されている」と困惑する。

民意はどうか。「(昨年の町議選、町長選で原子力推進派が伸び)賛成が多い。町長選は70.4%の得票率。(施設が)立地すれば財政も安定し、人口増にもなる」。一方的な報道の被害者はここにもいる。

いかわ・ようじろう  デジタルハリウッド大学大学院修了。元読売新聞論説委員。

国を滅ぼす再エネ政策 目を覚ませ! 日本よ

【オピニオン】大高未貴/ジャーナリスト

エネルギーに関して大きなエポックは、やはり福島第一原発事故とウクライナ戦争だ。大半の日本人は価格高騰に辟易している。エネルギー価格のみならず全ての物価に影響を与えているのだから庶民の痛手は大きい。

まず福島事故。原発の危険性が顕在化したことは確かだが、人間のつくるもの全てに絶対はない。万が一何かあった時にはその影響を拡大させない事が大事だ。そういった対処方法をはじめ、原子力規制庁には原子力の再稼働が遅れると社会にいろいろな影響を与え、社会全体の安全性を脅かす結果になることも踏まえてほしいものだ。

ともあれ福島事故後、菅直人政権は何をやってきたのか? を問いたい。東京電力たたきに終始し、あのFITを孫正義氏とともに導入しただけではなかろうか。当初、家庭の負担額はひと月当たりコーヒー1杯程度とうたいながら、今や標準家庭で年間1万円突破の負担にもなっている。これをペテン師と言わずになんと表現すればいいものか。しかも私は関東に住んでいるので関西の倍額の支払いをせねばならず不公平感満載だ。

さらに2012年のFIT導入後、安価な「ウイグル・ジェノサイドパネル」を再エネ事業者が導入した結果、日本の産業も潰してしまった。これではわが国が半導体や精密機器製造で世界と勝負していこうとしても無理筋だ。安定した電力がベースにないと品質の良い製品は作れない。震災後、菅氏はお遍路の旅に出たそうで、さぞかし自分で音頭をとった脱原発の愚の罪滅ぼしかと思いきや、現在に至っても性懲りもなく原発反対を世界に出かけて吹聴しているとは驚きだ。

一帯一路に原発を売り込み、原発覇権大国への道をまい進する中国からはさぞかし感謝されているであろう。加えて菅政権の脱原発政策に起因し、FIT初期の太陽光買い取り価格バブルでぼろ儲けした人々や、昨今週刊誌をにぎわせている再エネ議連の秋本真利氏の贈収賄に象徴される、再エネ利権屋の売国政策が中国を喜ばせ、そのツケを日本国民が背負わされているのは理不尽極まりない。

またシリコンバレー銀行破綻を皮切りに、意識高い系のSDGs投資バブルもはじけ、したたかな欧米はSDGsから静かに後退している。ウクライナ紛争勃発から1年半にも及び、世界はエネルギーを獲得し生き残るための熾烈な戦略を打ち立てている。にもかかわらず、日本政府はGXに官民挙げて150兆円投入とは。資源のない日本はこれから何を目指してやっていくのか。まさに軸も芯もない外交では太刀打ちできない。ましてや宗教のようにCO2削減至上主義に踊らされ、いずれ気が付いて周りを見回すと、脱炭素やSDGsをそのまま律義に守っているのは日本だけとなりはしないか。世界の30%のCO2を出す中国、それに比べて3%しか出さない日本。中国は50年ではなく60年に達成するとの戦略的宣言をしながら、ほくそ笑んでいるはず。いい加減に覚醒せよ! 日本。

おおたか・みき フェリス女学院大学卒。世界100カ国以上を訪問。チベットのダライラマ14世、台湾の李登輝元総統などにインタビュー。タリバン全盛の1998年にアフガニスタン・カブールに単独潜入し、西側諸国ではじめて同国の崩壊の予兆を報道。

【インフォメーション】エネルギー企業・団体の最新動向(2023年10月号)

【東京ガスエンジニアリングソリューションズ/独自の水処理技術で排水ソリューション提供】

東京ガスエンジニアリングソリューションズの子会社である東京ガスケミカルは、日本金属の板橋工場に、東京ガスグループ独自の水処理技術による排水処理ソリューションの提供を開始した。排水回収率の約60%向上を可能とし、大幅な節水により省コスト化・省資源化する。同工場では老朽化していた設備を更新し、フッ素含有排水回収システムと汚泥返送制御システムの導入により、排水回収率や排水処理効率の向上と、薬剤使用料の削減を目指す。加えて、中央監視システムの導入により、工場オペレーションの省力化や運営管理の高度化も実現。東京ガスグループは顧客の幅広い経営課題を解決し、環境価値向上や事業継続性強化、事業生産性向上に貢献していく。


【ベックジャパン/省エネ行動変容の研究成果を一挙紹介】

気候変動・省エネルギー行動会議(代表=中上英俊・住環境計画研究所会長)が主催する省エネシンポジウム「ベック・ジャパン」が都内で開催された。企業や団体が省エネの行動変容に関する研究成果を発表。「環境意識が高い若者の特長分析」(東京ガス)、「ネットゼロゴール達成に向けた電気自動車の役割」(日本オラクル)、「学校向け脱炭素WEBアプリの開発と実証について」(トインクス)など多様な研究成果が紹介された。電力中央研究所は「住宅用蓄電池やVTOHの導入拡大に向けた情報提供手法の模擬実証」を実施。卒FITを控える世帯では、蓄電池による経済的便益の詳報が蓄電池導入への関心度を高める結果となったとの成果を発表した。


【川崎市/地域新電力でエネ地産地消目指す】

川崎市はNTTアノードエナジーや東急グループなど7社と設立発起人会を開き、地域新電力「川崎未来エナジー」を10月に設立すると発表した。地域新電力は全国に60以上あるが、神奈川県内では初となる。これまで売電により市外に流出していた廃棄物発電などの再生可能エネルギー電源を活用し、市内の公共施設や民間事業者、一般家庭などに電力を供給する。年間発電量は国内最大規模となる見通しだ。資本金1億円のうち、市が51%を出資。NTTアノードエナジーが18.5%のほか、東急、東急パワーサプライや、金融機関パートナーとして川崎信用金庫やJAセレサ川崎など四社が出資している。同市は、地域自立型の脱炭素化・再エネ地産地消を実現するとしている。


【九州電力/米国で賃貸集合住宅の開発に参画】

九州電力は米国現地法人Kyuden Urban Development America社を通じて、三菱商事子会社のDiamond Realty Investments社と共同で、テキサス州ダラスの賃貸集合住宅開発事業に参画している。米国のデベロッパー、ウッドパートナーズ社と共同で、木造5階建て、総戸数280戸の賃貸集合住宅の開発を行う。高速道路に近く、ダラス・フォートワース空港や、ダラス中心部へのアクセスも良い。周辺には商業施設や病院、小学校などがある。2024年3月に完成予定だ。


【ENEOS/系統用蓄電池を設置 VPP事業体制に寄与】

ENEOSは8月、大型蓄電池を根岸製油所(横浜市)内に設置し、充放電の遠隔制御を開始した。蓄電池出力は5MW、容量10MW時だ。同社はVPP事業の体制構築に向け、2020年から喜入基地(鹿児島市)と中央技術研究所(横浜市)で産業用蓄電池を活用した実証実験に取り組んできた。これらの知見を基に、同社初となる系統用蓄電池を導入した。蓄電池の制御は、自社開発したAIを活用する。同社は根岸製油所に続き、室蘭事業所(出力50MW)や千葉製油所(出力100MW)でも蓄電池の設置を進めている。


【平田バルブ工業/液体水素用製品を拡充 独自の仕切弁を発売】

平田バルブ工業は、液体水素プロセスライン用仕切弁の独自開発に成功し、液体水素用の製品ラインアップを拡充した。液体水素実液で漏えい試験を行い、ほぼ無漏えいの優れた締切力を持つバルブであることを確認した。今後も高圧化、大口径化、逆止弁開発を含むラインアップを拡充するとともに、供給体制を整備し、拡大する液体水素関連施設への需要に応える構えだ。同社の液体水素プロセスライン用玉形弁は、JAXA種子島宇宙センターのロケット燃料供給設備に採用され、今日まで使用され続けている。


【エクサウィザーズ/中国電力の「広島エコシステム」を構築】

AIを活用したサービスを提供するエクサウィザーズ社は、中国電力が運営する地域特化のビジネスサイト「広島エコシステム」を構築した。広島県内の企業や団体の連携を目的とし、同社の企業検索に特化したAI検索エンジン「exaBase企業検索」を活用することで、自由なキーワードによる意図に沿った、連携先企業などの探索ができる。「コンサルティング」や「生成AI」といったワードによる検索も可能。その結果を活用して中国電力が広島銀行と連携し、地域企業のサポートも行う。


【関西電力/停電費用保険を販売 生保との協業は国内初】

関西電力は日本生命の子会社であるニッセイプラス少額短期保険と協業し、7月に「停電費用保険」の販売を開始した。近年、自然災害は増加傾向にあり停電リスクが高まる中、停電により思わぬ費用が発生したという声から開発された。電力会社と保険会社が連携して個人の顧客に対し停電時の補償をする保険を提供するのは国内では初となる。


【NextDrive/EV充電パターンを推定 ステーション設置に活用】

NextDriveはe―Mobility Power、東京大学と共同で、EVユーザーの自宅での基礎充電行動の推定に関する共同研究を開始した。研究にはスマートメーターのBルートデータの消費電力(W)と累積電力量(kW時)を用いる。家庭での充電頻度や充電量などを把握し行動推定モデルを構築。充電ステーションの設置検討や新サービス開発などへの活用を目指す。


【ヤンマーHD/船舶の脱炭素化実現へ 燃料電池システムを構築】

ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーパワーテクノロジーは、船舶の脱炭素化を実現する「舶用水素燃料電池システム」を商品化した。同社は水素燃料電池を搭載した試験艇での実証運航試験や70MPa高圧水素充てん試験の実施など、水素燃料電池船の社会実装に向けたさまざまな取り組みを進めてきた。こうした技術や知見と舶用エンジン事業のノウハウを融合し、蓄電や電力制御、水素貯蔵などのシステムを含む設計を行い、船舶全体の脱炭素化とデジタル化に対応するシステムを提供していく構えだ。


【凸版印刷/電極部材の量産で水素エネ市場に参入】

凸版印刷はこのほど、水素エネルギー市場への参入に向け、燃料電池などで中核となる重要な部材のCCM/MEAの量産を始めた。世界初となる独自の製造方式で、触媒層付き電解質膜の生産設備を高知工場に導入。8月から販売している。この設備は、同社がこれまで大型カラーフィルターの製造で培ってきた大サイズ均一塗工技術や、枚葉基板搬送技術などの製造技術を活用しており、CCM/MEAを枚葉式で量産できる。年間生産枚数は最大6万枚で、車やドローンなどの移動体用燃料電池向CCM/MEAに換算すると、年間約60万枚分に当たる。同社は今後、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」の全領域にCCM/MEAを展開し、水素社会の実現に貢献する方針だ。

持続可能な都市モデル発信へ G7成果の反映に挑戦

【地域エネルギー最前線】 香川県 高松市

今年のG7会合では、高松の名を掲げた持続可能な都市に関する原則を策定し、世界に向け発信した。

その舞台の地でいかに実行に移すか、またゼロカーボン政策などにどう落とし込むのか注目される。

今年のG7(主要7カ国)都市大臣会合は7月7~9日にかけて高松市で開かれ、成果として共同声明のほか「香川・高松原則」を示した。同会合は昨年から始まり、日本では今回が初。「香川・高松原則」は持続可能な都市の発展に向けた協動指針で、テーマの中には「カーボンニュートラル(CN)・レジリエント(強靭化)」がある。

市の名を冠した原則が発信されたことから、他地域に先駆けてこれを実行に移すことが重要課題となった。ゼロカーボンシティ政策など、市の各種戦略にどう組み込むかが問われている。

市のゼロカーボンシティ政策のコンセプトは、「温暖で災害が少なく住みやすい都市を将来的に維持すること」。四国の太平洋側では南海トラフ巨大地震に伴う津波などさまざまな災害リスクが懸念されるが、瀬戸内海側の被害想定はそれほど深刻ではない。とはいえ、被害を最小に抑えるため、レジリエンスの視点が重要であることに変わりはない。

市としてG7の成果の発信が問われている


日射量生かし太陽光から着手 金融と企業の橋渡しも

ゼロカーボン政策につなげる形で、地球温暖化対策推進法に基づく実行計画を昨年3月に改訂している。その際、環境省補助事業を活用して「地域再エネ導入戦略」を策定し、これを改定計画に反映した。戦略では、市の実情を踏まえ、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを電源種、エリアごとに検証。これを基に課題の洗い出しや、その解決に向けた方策などを打ち出した。

日本一狭い県の県庁所在地である高松は、ほかの都市部以上に再エネポテンシャルが限られる。ただ、日照時間は全国有数であり、讃岐平野は山林が少なく平地が多い。加えて、降雨量が少なく川が短く急なことから、県のため池数は全国最多。実は水上太陽光の取り組みが盛んなのだ。

ただ、「これまではFIT(固定価格買い取り制度)に基づく再エネ事業が多く、地域に恩恵が還元されにくかった。卒FIT、そして地域の地産地消に資する電源の拡大が急務だ」(市ゼロカーボンシティ推進課の坂東真課長)と強調する。

当面の課題は、限られた都市空間を有効活用していかに太陽光発電を拡大できるか。まずは公共施設への設置から始め、環境省事業を活用して採算性を調査した上で、導入を図っている。

住宅向けについては、これまで市が実施してきた太陽光設置補助金を、2年ほど前に地産地消促進型へと条件を見直した。蓄電池、EVなどを家庭のエネルギーマネジメントに活用する「V2H」、断熱改修、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)などの導入費を助成する。レジリエンスへの意識向上や電気代高騰を追い風に、制度への関心が高まっており、昨年以上のスピードで申し込み件数の上限に達した。

これらを足掛かりに、ほかの重点取り組みも順次進める。農業分野での再エネ活用促進、地銀のグリーンファイナンス、災害時拠点施設への再エネ導入、そしてEV・蓄電池を活用したエネルギーマネジメント―。地域のポテンシャルを生かすための方策を検討していく。

なお、空港や港湾の脱炭素化も課題の一つであり、特に港湾では水素・アンモニアの活用が不可欠となる。将来的な次世代燃料の需要予測や、供給体制の確保、事業者の掘り起こしから着手する。

そしてゼロカーボンを加速させる上では、官民連携の拡充がカギを握る。この点では、まず先述の公共施設への太陽光導入を通じて地域の事業者の育成を図る。加えて、脱炭素ソリューションの活用に向けた民間企業のマッチングも始めた。

今春、地銀の百十四銀行など市内事業者をつなげるオンライン会合を開催。6社が、EV導入支援、充電器とセットでのEVリース事業、メタネーション(合成メタン)などの方針を発表した。引き続き、地元企業に対する融資や地銀によるコンサルの活性化に向け、機会を設定していく考えだ。

「2024年問題」を吹き飛ばす 物流の先端イノベーション

【脱炭素時代の経済探訪 Vol.19】関口博之 /経済ジャーナリスト

いわゆる物流の「2024年問題」でドライバーの人手不足が懸念されているが、インフラである物流施設の方は大きく進歩しつつある。もはや従来の倉庫のイメージはない。今回訪ねた日本GLPの「GLP ALFALINK相模原」でそれを実感した。

30万㎡の広大な敷地には4棟の巨大倉庫群が並ぶが、緑も多く開放的だ。入口からゲートも検問がないので誰でも入れる。散歩もできるし、食堂やコンビニが入る共用棟の脇にはフットサルコートがあり、近くの子どもたちが遊ぶ姿もある。“地域に開かれた場所”がコンセプトだ。日本GLPの帖佐義之社長は「物流施設のマイナスイメージを変えたかった」という。周辺道路にトラックの往来が増えるだけ、できれば近隣には来てほしくない、そんな住民感情を覆すには地域との共生がカギだ。ここでは地域住民が集う夏祭りも開かれた。地域に溶け込むことは施設側の人材確保にもつながる。

「賃貸型物流施設」というのも、この会社が取り入れたビジネスモデル。本来、競合相手である複数の運送会社や荷主側の流通企業、需要が拡大する一方のネット通販など、大手から中小まで30社以上が入居している。

先進物流施設「GLP ALFALINK相模原」
提供:日本GLP

ユニークなのは施設の一角に新たに設置された「置き配バース」だ。これは、いわば長距離トラックドライバーのための宅配ボックス。例えば早朝に到着した車は、倉庫側の従業員がいなくても、特定の区画のシャッターを暗証システムで開閉できるので荷下ろしが可能。荷受け、荷待ちなど長時間労働の原因になっている無駄な待機時間をなくせる。正直、今までなぜこの手の仕組みがなかったのだろうと思う。

モノを置いて保管しておくだけ、という倉庫の姿も一変している。例えば、倉庫が「工場」にもなるのが最新の姿だ。PC機器であれば顧客注文に応じてカスタマイズし、組み立てる工程はここで行って発送したりする。わざわざ工場に戻して最終調整する必要はない。アパレルなら直近の売れ筋を見て倉庫でプリントしてしまう、食品加工を倉庫で行うケースもあるという。このため施設には高圧電源やガス、工業用水も引き入れている。さらに、ある倉庫ではゲームセンターにある「クレーンゲーム」を大量に設置しているという。それを全国各地のプレーヤーがオンラインで遠隔操作し、成功すれば景品が発送される仕組みだ。

倉庫には人は要らないというイメージも違う。Eコマースの商品発送には手作業も欠かせない。この施設では5000人が働いているという。ただし、時期によって人手が多く必要だったり余ったり、差も大きい。このため複数の人材派遣会社が常駐の事務所を置き、要員のやり繰りを担う。

かくして、ビジネスは次々と連鎖して広がっていく。新たなビジネスを生みだす結節点として、会社では“オープン・ハブ”をコンセプトに据える。「2024年問題」と心配の種にされがちだが、やり方一つで物流こそイノベーションの可能性に満ちているといえないだろうか。


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せきぐち・ひろゆき 経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。

約500社・3万8千人が幕張へ集結 再エネ電源を支える蓄電池に関心

【スマートエネルギーウィーク秋】

太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及拡大を支える蓄電池への関心が大きく高まっている。

9月13日~15日に開催された、国内外のエネルギー関連団体や企業が集まる世界最大級の総合展示会「第20回スマートエネルギーウィーク秋」。千葉市の幕張メッセで行った展示会には約500社が出展した。会場には約3万8千人が来場、参加者は最先端技術の見学やビジネスの商談を行った。

幕張メッセで世界最大級の展示会を開催

六つの展示ゾーンで構成される展示会で、ひときわ存在感を放ったのが「二次電池展」だ。リチウムイオン電池など再エネ、EVの普及に欠かせないバッテリー技術に関する技術、部品材料、装置が並んだ。二次電池関連商品の検査、品質管理を行う沖エンジニアリングでは、リチウムイオン電池の過充電による焼損事故を防ぐ検査解析サービスを発表。多くの参加者が焼損した製品を前に、リチウムイオン電池の課題や商機を話し合う姿が印象的だった。

その他、およそ100本のカンファレンスも併催。満員御礼となった「次世代電池に関する実用化に向けた各社の動向」では、マクセル・ビジネス開発部の山田將之部長と、京都大学大学院工学研究科の乾直樹特定教授がそれぞれ、全固体電池の実用性と将来性、課題について講演した。

山田氏は「硫化物系電解質を使用した全固体型電池は、気密性に優れ、民生用、産業用に適している」と分析。乾特定教授は、加圧措置せずに電極との接合が可能な「柔固体型電池」の早期実用化に向けた展望と課題を述べた。講演終了後には質問のため参加者が長蛇の列を作り、全固体型電池への関心の高さを伺わせた。


脱炭素経営EXPOも好評 負担からチャンスに変化

同時開催の「第3回脱炭素経営EXPO」も盛況だ。企業の脱炭素戦略の需要に対し、ゼロカーボンコンサルティング、温室効果ガス排出量の見える化、省エネ事業を行う企業が多く出展した。業務用エアコンの室外機を自動制御する節電・省エネシステムを開発したドッドウエルビー・エム・エスのブースには多くの参加者が集まり、展示会事務局も公式SNSで紹介。今や脱炭素経営は「企業の負担」ではなく、ビジネスチャンスとして捉えられている。

太陽光・風力に加えて蓄電池分野や、脱炭素経営がカーボンニュートラル時代の主力ビジネスになろうとしている。この巨大な市場をものにしようと世界各地から出展が相次ぎ、新たな時代のうねりを感じさせる展示会となった。

処理水放出を巡る国会閉会中審査 形骸化した茶番の議論は残念

【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

去る9月8日、国会で福島第一原発のALPS処理水放出をテーマとした閉会中審査が行われ、私もその影響を大きく受ける地元選出議員として、質疑に立った。

私の地元、茨城県は海面漁業漁獲量が北海道に次ぐ全国2位の大水産県。福島県の勿来港と茨城県の平潟港は岩一つを隔てて隣り合わせており、漁をする海域は同じだ。これまで茨城県の水産業は、1999年のJCO事故、2011年の東日本大震災と二度にわたって深刻な風評被害を受けてきたので、もう三度目はコリゴリという思いは非常に強い。

この間、私は地元の漁業関係者と何度も話をしながら、所属の東日本大震災復興特別委員会では質疑の機会ごとにこの問題を取り上げてきた。時には強い口調で政府に物申してきたが、私が一貫して訴えたのは政治家が前面に立って直接関係者とコミュニケーションを取る必要性だ。21年に菅義偉内閣が処理水の放出を決定したのは、遅きに失したとはいえ英断だと思うが、地元には割り切れない思いがあるのは当然だ。なぜこのような決断を下したのか、国全体、復興全体の観点から話せるのは政治家だけで、地元関係者の心に寄り添えるのも政治家だ。

私の訴えもあってか、昨年末から西村康稔経産相、太田房江経産副大臣らが何度も地元に足を運び、対話に応じてくれた。事務方の四角四面の説明では角が立った時もあったが、徐々に関係者の心が融和されていくのが分かった。放出に当たって福島県漁連の専務が話した「(関係者の理解なき放出はしないとの)約束は現時点で果たされていないが破られたとは考えていない」という言葉に、全ての思いが込められているだろう。「決して認めたわけではないが国のことを考えればやむを得ない」という思いだ。


漁業関係者の本音は? 投げやりの農水相答弁

放出後、私は漁業関係者や港の市場でヒアリングを行ったが、日本人は冷静で、魚を求める観光客はいつも通り来てくれ、価格も一部を除き比較的安定しているという。「外国勢力と一緒になってこぶしを振り上げ『汚染水』と叫ぶような一部の政治家は勘弁してほしい」「メディアも政治も騒がずに静かにしておいてほしい」といった本音を多くの関係者が話してくれた。

こうした思いを私は閉会中審査で野村哲郎農水相にぶつけたが、官僚答弁を読み上げるだけであった。そもそも放出時期を最終決断した岸田文雄首相は国会の場におらず、翌週に内閣改造の報道が流れる中で、失言問題で窮地の野村農水相の答弁は投げやりで、早く辞めたがっているようにも見えた。処理水放出のような問題を国民や関係者に代わって議論する場は、国会しかない。このような形骸化した茶番の国会を続けていて国論が割れるような問題を解決できるのか、情けない思いになった。

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ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

政府全体のエネ・環境政策を主導 安保・脱炭素転換へ難しいかじ取り

【巻頭インタビュー】村瀬佳史/資源エネルギー庁長官

国内外のエネルギー情勢が同時に多方面で変化する中、政策当局は難しいかじ取りを迫られている。

資源エネルギー庁長官に就任した村瀬氏が、経産省ペンクラブ主催の会見で自身の考えを語った。

むらせ・よしふみ 1990年東京大学経済学部卒後、通商産業省(当時)入省。96年、米ハーバード大学留学。資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、内閣府大臣官房審議官、内閣府政策統括官などを歴任。2023年7月から現職。

―資源エネルギー庁長官就任に当たっての抱負と、重点方針についての考えからお聞きしたい。

村瀬 まさに50年前、第一次オイルショックで日本経済が危機に陥る中、エネ庁が設立されました。現在、当時と同様にエネルギー安全保障の大きな危機、そして転換点を迎えており、そうした重いミッションを負っていると感じています。

第一の課題が、先ほど述べたようにエネルギーを巡り国際的な構造が大転換する中での安定供給の確保です。これまで、中東依存からの脱却とロシアなどへのシフトを進めてきましたが、ロシア・ウクライナ戦争で、従来の常識では考えられないリスクの存在が明らかになりました。

もう一つの大きなうねりが、カーボンニュートラル(CN)への挑戦です。全世界的な目標としてCNへの挑戦、そして産業構造の転換が求められています。CNでは実際のところ、日本がオイルショックで経験した以上の産業構造、供給構造、そして需要構造の在り方を変革しないといけません。

50年前にエネ庁が設立され、エネルギー安全保障や省エネなど、当時としては新しい挑戦を求められました。そしてこれからも、この二つの大転換を図るため、大胆な政策を進める必要があると考えています。なかんずく、現在は電力・ガス・石油市場が自由化された中で、これらの課題を乗り越えなければなりません。

国家100年の計が求められる中、政策の大転換には政府全体の政策を総動員する必要があります。エネ庁が政府全体のエネルギー・環境政策をリードしていく気概で取り組んでいきます。


システム改革で問われる成果 真に競争に強い企業創出へ

―電力・ガス事業部政策課長や電ガ部長として電力・ガスシステム改革を推進してきた立場として、進ちょくをどう評価していますか。

村瀬 消費者の選択肢が増えるなど、エネルギー事業者が以前では考えられないような切磋琢磨を求められる環境になってきたという点で、一定の進捗が見られます。

一方、まだ道半ばというのも正直な実感です。システム改革の趣旨の一つは、バランスの取れた3E(供給安定性、経済性、環境性)の実現でした。しかし基本的にはバッファーを持つことが求められるエネルギー安保、さらにCNへの対応は、通常であればコストの上昇につながります。必要な仕組みを自由化されたマーケット構造にビルトインし、いかに小さなコストで実現できるかが課題です。特に将来、十分な供給力を確保するため、企業が将来予見性のある形で投資できるよう、多方面で環境整備に取り組まなければなりません。

なお、システム改革での競争は事業者の体力を奪うのではなく、切磋琢磨し、世界の中で戦える強いエネルギー産業を生み出すことが狙い。これが改革の成果として問われる指標だと思います。一部再編の中で新たな挑戦を始める企業も出ていますが、官民連携の下、GX(グリーントランスフォーメーション)で日本企業が強くなるための技術開発を進めることが必要となります。

大阪湾が一大CN拠点に 大ガス・関電の両軸で検討

大阪湾において、水素・アンモニア・e―メタン(合成メタン)といった次世代エネルギーの社会実装を見据えた計画が活発化している。

大阪ガスとENEOSは8月29日、大阪港湾部におけるグリーン水素を活用した国産e―メタンの大規模製造に関する共同検討を開始した発表した。ENEOSが海外の安価な再生可能エネルギー由来の水素を調達し、大ガスが近隣の工場などから回収したCO2と合成。2030年までに、大ガスが供給する都市ガスの1%、年間6000万㎥の製造を目指す。

翌30日、大阪の臨海工業地帯を拠点とする水素・アンモニアのサプライチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結したのは、IHI、三井物産、三井化学、関西電力の四社。アンモニアの受け入れ、貯蔵、供給拠点の整備と、関西・瀬戸内地域での利活用先の拡大に向けた調査を行うという。

次世代エネルギーの製造・貯蔵・輸送、そして利用という一連のサプライチェーン構築が欠かせない、カーボンニュートラル(CN)の実現へ、まずは一歩を踏み出した形だ。