<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名
カルテル問題、規制料金の値上げ申請と電力業界は師走もあたふた。
どちらにも関与する消費者庁のトップは〝あの〟河野太郎だ。
―電力販売でカルテルを結んだとして、中国電力、中部電力、九州電力に処分案が通知された。総額1000億円を超える課徴金は史上最高額だ。
石油 各紙が社説で論評していたが、莫大な課徴金の額からすれば、そこまで批判的な論調ではなかった。背景には供給不安と料金値上げがあるのだろう。「自由化に反する」という建前論的な論評で収まっていた。
マスコミ 関電は自らカルテルを呼び掛けておきながら、リーニエンシー(自主申告)制度で課徴金を免除された。大手電力会社を全て敵に回したと言っていいんじゃないか。
石油『選択』や『FACTA』でのエグい記事は免れないだろうね。
マスコミ 関電からはリーニエンシー制度で「逃げ切った」感すら漂う。でも関電に言わせると、最初にやめてくれと言ったのは他社だという説もある。また消費者からすると、関電のコンプライアンスが機能したという評価もある。
ガス カルテル問題はこれからも続く。課徴金を払うことになれば、株主代表訴訟もある。社長の責任問題に発展する可能性もあって、西日本の電力会社は落ち着かない状況が続くだろう。6月に予定される電事連の会長人事にも影響を与えそうだ。
松野官房長官の仰天答弁 河野太郎の〝復活〟に警戒
─東北、中国、四国、沖縄、北陸の5社が規制料金の値上げを経産省に申請した。
ガス カルテル問題が審査に与える影響について、中国電は「課徴金は規制料金の原価に入っていないから関係ない」という認識らしい。驚くべきことに官房長官の松野博一さんも、審査に影響を与えないという見解を示した。どこまで甘い認識なのか……。
マスコミ 消費者担当相が河野太郎さんというのも要注意だ。消費者庁は公正取引委員会を管轄し、値上げ申請の審査にも関与する。外務相やデジタル担当相の頃に比べるとマスコミへの露出度は低いし、カルテル問題や値上げ審査を踏み台にされる可能性もある。
ガス〝対河野〟に関しては、電力会社以上に経産省の危機感が強い。料金改定に向け、ずいぶんと気を遣っていた中でのカルテル問題で戦々恐々としているよ。
マスコミ 一方で、好意的に捉えている省庁も多いらしい。「KKコンビ」のもう片方、小泉進次郎さんはさすがに見限られているようだけど。
電力 小泉さんや石破茂さんが「終わった」という声は聞いても、河野さんでは聞かない。時にパワハラもあるが、省庁からは強いリーダーシップを敷かれた方がラクだという意見もあり、国民も小泉純一郎式の劇場型政治は嫌いじゃない。次の総裁選ではもう一度、有力候補として浮上するだろう。
マスコミ 前首相の菅義偉さんは相変わらず河野さんの改革力を評価しているらしい。菅さんが二階派を巻き込めば〝河野内閣〟の誕生もあり得る。
石油 そうなると、安易な岸田降ろしも考えものだ。
マスコミ ただ管さんは、政調会長の萩生田光一さんも評価している。菅さんと同じ叩き上げで、河野さんよりはよっぽど現実派だ。安倍派をまとめられれば、ポスト・岸田の最右翼に躍り出るかもしれない。
原子力政策は前進 LNG供給不安は変わらず
―原発の運転期間のカウントストップや新たな規制制度を盛り込んだ法改正案が、年明けの通常国会に提出される見通しだ。
石油 日経のコラム「経済教室」は22年12月に3日連続で原発政策を取り上げた。国際大学の橘川武郎さん、龍谷大学の大島堅一さん、日本エネルギー経済研究所の山下ゆかりさん―が担当。特に新増設に前向きな山下さんは、建設費用を電気代に上乗せする英国の制度を紹介していた。政府の原発政策の転換を受けてか、全体的な論調も前回5月の同コラムと比べるとトーンが上がっている。
ガス ただ相変わらず、日経社内は再エネ原理主義者だらけと聞く。2050年の電源構成比で再エネ7割を目標に据え、脱炭素のためなら原発もOKという理屈だ。
―エネルギー危機は23年も続きそうだ。
ガス 電力予備率が3%を超え、冬場の需給は持つと言われる。しかし、これはあくまで机上の計算にすぎない。サハリン2からの供給途絶など、上流のトラブルが重なれば窮地に陥る危険な状況は変わっていない。
電力 3%というのは、通常時の需給変動を調整するための数字だ。老朽化火力の再復帰には限界がある。そう考えると、予備率は7~8%ないと不安だ。私が入社した頃なんて、7%を確保するように言われていた。
ガス 問題は原発が1基も動いていない東日本だ。カウントストップやリプレースは中長期的な対策にすぎない。目の前の問題を解決するには再稼働しかないが、厳しい状況が続く。
マスコミ 原子力政策の転換が明記されたGX実行会議の取りまとめが閣議決定され、第7次エネルギー基本計画にも影響を与える。原発依存度を「可能な限り低減」と記した第6次エネ基からどう変わるのか注目だ。
ガス 天然ガスの位置付けも気になる。今後、LNGの長契の更新時期を迎えたとき、日本は買い負けないだろうか。経産省ではオイルショック時の〝産油国詣で〟ならぬ〝産ガス国詣で〟が始まっていて、23年は首相も足を運ぶかもしれない。
―エネルギー業界は円安の恩恵もほとんどなく、カルテル問題も横たわる。23年も波に乗れない日々が続きそうだ。