関西電力は福井県の原発で発生する使用済み燃料の一部をフランスに搬出する方針を示した。
今年末に期限を迎える中間貯蔵施設の候補地提示を巡り、事態は正念場を迎えている。
「福井県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と『同等の意義』がある」
物議を醸す見解だった。関電は6月12日、使用済みMOX燃料約10t、使用済みウラン燃料約190tを使用済みMOX燃料の再処理実証研究のためフランスに搬出する方針を発表。リリースで冒頭の表現を用い、杉本達治福井県知事に言明した「今年末までに中間貯蔵の候補地提示」との約束を「ひとまず果たされたと考えている」と結んだ。同月19日、経済産業省で杉本知事と面会した西村康稔経産相も同様の見方を示した。
福井県側の反応は厳しい。事実として、今回の方針は中間貯蔵の候補地を提示したわけではなく、搬出量は福井県内の原発で保管する全量の5%程度(約200t)に過ぎない。こうした理由から、6月13日の県議会全員協議会では議員から「関電の詭弁」との声も挙がった。福井県は本稿執筆時点(7月21日)で国に再説明を求めており、杉本知事は「国からの回答、立地市町の意見、県議会の考えを聞き、総合的に判断する」としている。

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立地自治体は一定評価 サイト内貯蔵の可能性は
その後、7月に入り、桜本宏副知事が高浜、おおい、美浜の各町長、美浜町に隣接する敦賀市長と次々に面談。この際、関電の原発が立地する高浜、おおい、美浜の3町長は今回の方針を「一歩前進」との表現で評価したが、「同等の意義」や約束が「果たされた」との見解には「違和感を禁じ得ない」(おおい町長)など苦言を呈した。杉本知事は7月13日の予算決算特別委員会で、「厳しい。一歩前進との声はあるが、今までの約束に至っていない思いがにじみ出ている」と述べ、「四半世紀以上の課題を解決しないといけない山場の時期が来ている」と強調した。
最終決着は、①サイト内での乾式貯蔵、②むつ中間貯蔵施設の共同利用―二つのシナリオが考えられる。だが、どちらも実現へのハードルは相当に高い。
使用済み燃料の貯蔵には、プール貯蔵のほかに金属製容器(キャスク)に入れ空気で冷やす「乾式貯蔵」がある。プール貯蔵よりも安全性が高く、中部電力、四国電力、九州電力はサイト内に乾式貯蔵施設の新設を計画し、運用開始に向け準備を進めている。
関電が所有する福井県内の原発は、稼働が続けば5~7年で貯蔵プールが満杯になる試算だ。21年2月、「23年末」を約束した関電の森本孝社長(当時)は「計画地点を確定できない場合には、確定できるまでの間、美浜3、高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたい」と語ったが、実際に稼働停止した場合、立地自治体の損失は計り知れない。このため、立地自治体では運転継続や安全性の観点から、サイト内での乾式貯蔵の検討を求める声がある。それでも、福井県全体に受け入れられるかは不透明だ。
立地自治体は県南部の嶺南地域に密集するが、人口比は嶺北地域の4分の1程度に過ぎない。関電との約束の主体が県である以上、嶺北地域の理解が欠かせないが、今回の方針でむしろ反感を買っている状態だ。
宮下知事の態度軟化は 共同利用は「虫がよすぎる」
むつ中間貯蔵施設の共同利用にも、「宮下宗一郎」なる一人の男が立ちはだかる。20年12月、電気事業連合会は共同利用の方針を発表し、説明のために青森県へ幹部を派遣。三村申吾知事(当時)は「全く新しい話だ。本日は聞き置く」と回答を留保する中、むつ市の宮下市長(当時)が「あり得ないことだ」と強く反対して棚上げとなったのだ。
当時、電力業界と激しくやり合った宮下氏は、6月の青森県知事選で40万票を獲得して圧勝。再び共同利用を巡るキーマンとなった。就任会見では共同利用について「市長時代に申し上げたことと何ら変わらないので、同じスタンスで臨んでいきたい」と従来の姿勢を固持したが、宮下氏の決意は揺るがないのか。
宮下氏は原子力政策に理解がないわけではない。いや、むしろ「小野寺氏以上にしっかりとした信念を持っている」(後援会長を務めた末永洋一・青森大学元学長)。選挙公約でも、「国策としてのエネルギー政策に協力し……電源立地県としての責任を果たしていきます」と掲げた。
こうした宮下氏の姿勢もあってか、宮下氏が反対を貫くのは、関電をはじめ電力業界の対応に問題があったからと見る向きが少なくない。「中間貯蔵施設の運営主体である東京電力と日本原子力発電が方針を伝え、関電のトップが頭を下げればいい」(宮下陣営の関係者)など、電力側が筋を通すことで事態は打開できるのではないかというのだ。
加えて、青森県側には県やむつ市の財政状況から、核燃料税と使用済み核燃料税を求めて共同利用に積極的な声も存在する。宮下知事が県知事選で打ち出した県政改革を実現するためにも、核燃料税は予算確保策の一つだ。確かに「筋」や「金」の面から見れば賛成に傾く可能性もあるのだが、事はそう単純ではない。宮下知事のみならず、青森県側には共同利用への拒否感が根強くあるのだ。
福井県が県外搬出を求めたのは、使用済み燃料は消費地で引き受けるべきだとの理屈だった。しかし、都市部を中心とする消費地では貯蔵が難しい。「福井がダメ、消費地もダメ、だから青森」というのは唐突で、あまりに乱暴ではないか―。これが共同利用に反対する青森県側の理屈だ。異例の40万票を獲得した宮下知事が、簡単に首を縦に振るとは思えない。
関電は使用済み燃料の搬出容量を確保するため、引き続き「あらゆる可能性を追求」するとしている。今後はこうした関電の姿勢や核燃料サイクルの実現に向けた国のコミットを再確認するなど、国と福井県が協議した上で「方向性の整理」が行われる見込みだ。福井県側の違和感を払しょくし、納得感を得られるかが焦点だが、最終決着にはほど遠い。










