【マーケット情報/10月28日】原油上昇、品薄感強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。米国原油の指標となるWTI先物、および北海原油を代表するブレント先物は10月28日時点で、それぞれバレルあたり前週比2.85、2.27ドル上昇した。 

OPECプラスによる11月からの減産計画に加え、欧州連合によるロシア産原油に対する制裁措置の強化が近く実施される見通し。さらに前週末に発表された米国の2022年第3四半期の経済成長率が年率換算2.6%に転じたことも価格を持ち上げた。

世界経済の停滞、とりわけ中国政府によるゼロ・コロナ政策が来年まで解除されないとの見通しから、石油需要は伸び悩むとの観測が広がっている。ただ、供給の減少が、需要後退の影響を上回るとの見方が強いようだ。

中東原油を代表するドバイ現物も、需給の引き締まりを映して、前週比で2.35ドル上昇に転じた。

【10月28日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=87.90ドル(前週比2.85ドル高)、ブレント先物(ICE)=95.77ドル(前週比2.27ドル高)、オマーン先物(DME)=92.25ドル(前週比3.49ドル高)、ドバイ現物(Argus)=92.68ドル(前週比2.35ドル高)

「日本一速い男」が設立 モータースポーツの最前線走る


【carenex TEAM IMPUL】ホシノインパル

 IMPUL(インパル)は、元レーシングドライバーで「日本一速い男」と呼ばれた星野一義氏が立ち上げたブランドだ。1980年に母体となる「ホシノインパル」を立ち上げ、83年にレーシングチームを設立。国内トップフォーミュラ、全日本GT選手権(現SUPER GT)などに参戦し、国内モータースポーツの最前線を約40年走り続けている。

逆転でのタイトル獲得を狙う(提供:TEAM IMPUL)

今年8月に栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた「全日本スーパー・フォーミュラ選手権」第8戦では「これぞTEAM IMPUL」というレースを見せた。所属する2人のドライバー(関口雄飛選手、平川亮選手)がレース中盤で1位、2位に立つも、安全策のチームオーダーを取らず真剣勝負を繰り広げた。担当者は「これまで厳しいレースが続き、特に2人は悔しい思いをしてきたと思う」と話す。最後は関口選手が1位を守り、平川選手が2位。14年ぶりのワン・ツーフィニッシュを果たした。

チームを支えるパートナーとしては、伊藤忠エネクスが2015年からスポンサー活動を開始。16年にはスーパー・フォーミュラ部門でメインスポンサーに参入した。TEAM IMPULは今年から、ピットの照明などを動かす発電機に、同社の「リニューアブルディーゼル」を導入。廃食油や動物油などを原料としており、レース関連で国内初の試みという。ホシノインパルの冨永正志氏は「伊藤忠エネクスと共にレースを盛り上げ、環境問題への取り組みに賛同してくれるファンを増やしたい」と将来のビジョンを語る。

環境問題に対し積極的に取り組む理由を「モータースポーツと脱炭素は相反すると思われがち」(冨永氏)と話す。これまでモータースポーツは、レースによる脱炭素に関わる技術、安全性などの開発や、市販車へのフィードバックで貢献してきた。さらにチームで直接的な脱炭素への取り組みを行うため「IMPULでんき」の販売を開始した。100%再生可能エネルギー由来の電気を提供し、脱炭素実現に貢献する。「モータースポーツの活性化とは切り離せない環境問題への取り組みとして行う」(冨永氏)とモータースポーツ業界が行う意義を強調した。

現在は鈴鹿サーキットで10月29日、30日に行う第9戦、最終戦に向けて調整を続ける。チームランキングで2位につけるTEAM IMPULは「最終戦までチャンピオンを諦めずに戦う」と逆転でのタイトル獲得へ、これからも突き進む。

ホシノインパル(carenex TEAM IMPUL):1980年、母体となるホシノインパル設立。2016年よりスーパー・フォーミュラ部門で、伊藤忠エネクスがメインスポンサーを務める。22年9月末時点のチームランキングは2位(113ポイント)。

次代を創る学識者/小宮山涼一・東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻教授


数百もの要素からエネルギーシステムの最適解を導く研究がライフワークだ。

足元の危機も踏まえ、脱炭素化シナリオの判断材料となり得る研究を意識する。

 エネルギーをはじめ社会全体の変革が求められるカーボンニュートラル(CN)では、シナリオを誤ると自国経済を傷めかねない。そして目下の〝世界同時エネルギー危機〟はトランジションの難しさを際立たせた。先行きが一層混沌とする時代、小宮山教授の専門はまさに今求められる研究分野の一つと言える。

主題はエネルギーシステムの分析だ。「要素技術だけを見るのではなく、多様なシナリオを展望し、システム全体を最適化する」(小宮山氏)。電気、ガス、石油のあらゆる技術を対象に、CN実現のシステム、その構成技術のベストミックスを分析。開発したツールの一つは300以上もの要素を加味する点が特徴だ。例えば電力では、系統を考慮した上でどんな燃料や電源を活用すべきか。原子力では新増設をするか否か、運転期間はどの程度か。マスタープランに基づく系統増強は再エネ主力化のベストな道なのか。そして電気料金の行方は……。中立的視点で経済合理的なシステムを模索する。

とはいえイノベーションには不確実性がつきものだ。水素・アンモニアやCCUS(CO2回収・利用・貯留)、DAC(CO2直接空気回収)など以前はあまり注目されなかった技術への関心も高まっている。小宮山氏は主題を数理モデル化し最適解を導く「数理計画法」を用いるが、手法の特性上、不確実性の数理的な対処が課題となる。政策面の不確実性も大きい。さらに数値化が難しい雇用状況や産業政策、国民の受容性などの要素を別途検討する必要もある。「政策に役立つ研究を意識し、より実用的で効率的な手法への見直しを進めていく」考えだ。

謙虚さ常に忘れず 理論の理解も重要

文部科学省「原子力システム研究開発事業」に採択され、共同研究として小型モジュール炉(SMR)を活用したシステムの分析も手掛ける。ただ、SMRは話題先行感が否めず、具体的な活用方針は定まっていない。「まずどこに建設するのか。大型炉跡地なら次世代軽水炉の方が現実的だ。米国では石炭火力跡地での小型炉建設が提案されたが、日本でも検討の余地はあるだろう。ただ、SMRの安全規制がなければその判断もできない」。事業化の課題をあらかじめ列挙した上での戦略でなければ、SMRをはじめ次世代炉戦略は絵に描いた餅になりかねない。

修士課程で当時珍しかったエネルギーシステム全体の分析研究に興味を持って以降、一貫してこの分野に従事。最近になって注目度が高まってきたと実感する。モデリング技術だけでなく、活用するモデルにまつわるさまざまな理論を理解することも欠かせない。他方で「モデルはあくまで理論に基づき構築したもの。予期しない結果が出ることもある。この研究では主観を持たず、常に疑問を抱き、謙虚に結果と向き合うことが重要だ」と強調する。

常に自問自答しつつ、引き続きCNの最適解を探る道を歩む。

こみやま・りょういち 2003年東大大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了、博士(工学)。日本エネルギー経済研究所主任研究員、米ローレンスバークレー国立研究所客員研究員、カリフォルニア大バークレー校客員研究員を経て、13年東大大学院工学系研究科准教授。22年より現職。

【メディア放談】GX会議での首相発言 「原発回帰」宣言に期待と諦観


<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名

首相はGX実行会議で原発再稼働に意欲を見せ、次世代革新炉の検討も要請した。

業界内には期待する声がある一方、実現性を疑問視する向きもある。

 ―岸田文雄首相が8月24日のGX実行会議で、「原発回帰」と受け止められる発言をした。再稼働を国が前面に立って進めるとし、次世代革新炉の新増設・リプレースの検討を要請している。電力業界は「ようやく政府が動いてくれる」と思ったはずだ。

電力 まぁ、ありがたいと思っている。だが、どこまで本気で政権が取り組むかだ。首相が言う冬までの9基の稼働はほぼ確実だった。ただ、来年夏以降に運転開始を目指す7基は分からない。

 特に柏崎刈羽6、7号機と東海第二は、地元同意のハードルが高い。首相が現地を訪れて、地元の人たちに再稼働の必要性を訴えるしかないと思っている。

―次世代炉についても首相発言で関心が高まった。

電力 新増設・リプレースもSMR(小型モジュール炉)や高温ガス炉に期待する声が強まりそうだ。経済産業省も原子力小委員会を開いて革新型炉の開発を打ち出している。だが、役所と業界の本音はABWR(改良型沸騰水型炉)、APWR(改良型加圧水型炉)を改良した大型次世代軽水炉の開発を加速させて、国内に建設することだ。

マスコミ SMRが海外で建設されるようになれば、製造に参加している日本メーカーも潤う。それは歓迎だろう。しかし、原子力産業の将来を考えると、屋台骨の三菱重工、東芝、日立とそれらの傘下企業が生き残ることを考えなければいけない。

 そのためには実績があるABWRと、美浜1・2号のリプレース、敦賀3・4号増設に計画があるAPWRを軸にした原子炉の建設を優先すべきだ。経産省の判断は間違っていない。政策的な支援も当然、考えているはずだ。

―朝日、毎日などは新増設・リプレースなどに反発しているが、国際大学教授の橘川武郎さんもプレジデントオンライン(9月11日)で「どれも雲をつかむような話ばかり」と批判していた。

石油 大分反響があったようだ。橘川さんは、革新炉について「誰が何をどこで造るか決まっていない」と指摘している。確かにその通りだ。言いたいことをいう性格だから、思っていることを書いたのだろう。ただ、電力さんの言う通りならば、業界、メーカーが国内に造るのはABWRとAPWRの改良型になる。

マスコミ 影響力のある人の主張だけにインパクトがあった。「『次世代革新炉の開発・建設』を本気で行うのであれば、『既設原発の運転延長』を行う必要はなく、両者を同時に掲げるのは論理矛盾」と指摘している。これには首を傾げた。本気でカーボンニュートラルを目指すならば開発・建設と延長を同時に進めないと、とても間に合わないと思うよ。

毎日の目立った記事 首相発言の舞台裏を暴露

―首相発言についての記事はほかにもあった。

ガス 一連の記事で際立ったのは、毎日の「原発こそ新しい資本主義、首相の原発回帰宣言、舞台裏と打算」(9月6日)だ。首相発言を聞いて、これは経産省のいつもの文章と書きぶりが違う気がした。

そう思っていたら、首相が自ら「『政治決断が求められる項目を明確に(私に)示してもらいたい』と指示。原発を所管する経産省幹部さえ『寝耳に水』のサプライズだった」と書いてあった。それで合点がいった。

マスコミ 複数の記者が政府関係者に突っ込んだ取材をしている。「気候変動対策とは資本主義の在り方自体を見直すこと。政権中枢には早くからこうした問題意識が共有されている」との経産省幹部の話しは、是非は別にして参考になった。

―政府と歩調を合わせたのか、日経新聞が編集方針を見直したようだ。社説「エネ・環境戦略を問う」(8月18日)で、「原発新増設へ明確な方針打ち出せ」と主張している。

ガス 日経新聞のトップは連日のように財界幹部と顔を合わせている。その場で、「(再エネ偏重の)最近の紙面はなんだ」と言われることが多いらしい。それで、トップダウンで原発について方針の見直しを指示したようだ。

石油 編集・論説委員クラスも「最近、『脱炭素新聞』とやゆされる」とこぼしていた。ただ編集の現場のマインドは、そう簡単には変わらないと思うよ。

―日経は社説の後、連載「原子力政策転換の行方」(9月6日)を始めている。

マスコミ よく取材して原子力政策を巡る課題をまとめていると思う。ただ、「基本的なスタンスは前と変わってないな」と思うところもある。

日経の連載に違和感 基本的立場変わらず

―例えば。

マスコミ 「政府・与党内には規制を緩めれば、再稼働を早められる原発はあるとの見方もある」と書いている。特重(特定重大事故等対処施設)の完成が原子力規制委員会が定めた5年間の猶予期間に間に合わず、そのために止まっている原発を動かすことだ。

 テロや自然災害などに対応する特重は、万一の場合に備えるもので原発の安全運転に不可欠ではない。工事の現場での不可抗力に近い理由で工期が遅れる場合に、稼働させることは、決して「規制を緩める」ことではない。

電力 原子力に理解のある与党議員や電力業界は、規制委に審査の効率化を求めるが、「規制を緩めてほしい」とは絶対に言わない。そんなことを言えば、世間から袋叩きになることは分かっている。ただ、マスコミに書かれたら仕方がない。

―結局、電力業界は泣く子とマスコミにはかなわないんだよ。

食品廃棄物をリサイクル バイオマスプラントで課題解決へ


【リレーコラム】熊谷智孝/ビオストック代表取締役社長

 食農分野における脱炭素(カーボンニュートラル)や循環経済(サーキュラーエコノミー)を実現していくにあたり、日々大量に発生している食品廃棄物を有効に活用することは重要なテーマの一つである。食品廃棄物を単純に焼却処理するのではなく、資源として利活用することは、資源の有効活用という観点に加えて廃棄物処理に関わる社会コストの削減という観点でも効果的である。

これまで食品廃棄物のリサイクル手法としては、「飼料化」「肥料化」の二つの手法が一般的であったが、昨今どちらの手法も事業環境は厳しい状況にあり、近年注目を集めているのが「メタン化(バイオガス)」である。

メタン化は、有機物をメタン菌の作用により発酵・分解し、その過程において創出されるメタンを主成分とするバイオガスを回収する技術である。回収したバイオガスは、専用の給湯器・ボイラーにて燃焼し温水として熱利用できるほか、発電機を通じて電気としても利用できることから、リサイクル後の製品需要に困ることがないことが最大の特徴である。FITにおける優遇や、カーボンニュートラルに向けた官民の取り組み強化の追い風を受け、昨今急速に活用が進みつつある。

超小型プラントで廃棄物を資源に

ビオストックは、ヴァイオスと共同で、超小型バイオガスプラントを開発した。この超小型バイオガスプラントは、①コンテナ格納で取り回しが容易である上、②遠隔監視システムが備え付けられており無人運転が可能であるという二つの特徴があり、食品廃棄物排出量が1日当たり1tから対応可能である。

食品工場などでは、1工場当たりの食品廃棄物排出量が1~5t程度であることが多く、従来は原料や設置スペースの確保の観点から、工場内にオンサイトでバイオガスプラントを設置することは困難であったが、本プラントであれば可能である。

従来外部へ委託していた廃棄物処理を工場内で完結することで、食品リサイクル率を向上させながら廃棄物処理コストを削減できる上、再生エネルギーも回収できることで、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献をPRすることも可能である。

また、廃棄物処理施設や下水・し尿処理場の維持運営費増加に悩む自治体においても、本プラントは有効なソリューションになると考えている。超小型バイオガスプラントは、再エネ創出・リサイクル・廃棄物処理の分散化(廃棄物輸送削減)の観点から、まさに時流に即したソリューションであり、今回の実証を契機に、全国への普及拡大に努めていく。

※次回はフォレストエナジー執行役員の勝山猛さんです。

【需要家】既築住宅の省エネ化 設備の技術開発支援を


【業界スクランブル/需要家】

 4月に建築物省エネ法の改正案が可決され、2025年から全ての新築住宅に省エネ基準の適合が義務付けられることとなり、それ以降は断熱水準の乏しい住宅は新築市場から退場することとなった。

一度建てた住宅は何十年もストックとして残るため、性能の乏しい住宅を将来に残さないためには、このような政策の効果は意味があると考える。しかし同時に、性能の乏しい既築住宅にも目を向ける必要がある。

21年に開催された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」の資料を基に計算すると、13年時点で省エネ基準以上の断熱性能を有する住宅がストックに占める割合は戸建に2・4%、集合住宅3・7%、そこから対策を講じ、30年には戸建に28・5%、集合住宅30・7%と見込む。

見方を変えると30年時点でも70%程度の住宅は断熱水準が低いままということになるが、断熱改修は費用の観点から実施は容易ではない。住宅側だけでなく、設備側も既築対策は容易ではない。特に既築集合住宅での設備更新はスペースなどに制約が多く、ヒートポンプ給湯機は設置のハードルが極めて高い。こうしたところには新たな設備開発が求められる。

先日ニューヨーク市住宅局は、公営住宅向けに低コストで設置が簡単な新型ヒートポンプの技術開発と3万台の供給を行うメーカーをコンペで選定し、集中投資を行うと発表した。

この方法であれば初期需要が確保されるため、メーカーの開発リスクを小さくできる。同市は過去にもこの方法で集合住宅用冷蔵庫も調達した。困難はあるだろうが、わが国でも既築住宅向け設備の技術開発のための政策が必要だろう。その際にこのような事例は参考になるのではないか。(O)

【中野洋昌 公明党 衆議院議員】「エネルギー安定供給、災害時も」


なかの・ひろまさ 2001年東京大学教養学部卒。同年国土交通省入省。米コロンビア大学国際公共政策大学院修了。12年衆議院議員初当選(兵庫8区)。19年~20年経済産業大臣政務官。当選4回。

防災・災害対応を専門に新潟県中越沖地震や東日本大震災など、現場の最前線を走り続けた。

経産大臣政務官として電事法改正に携わり、災害とエネルギー安定供給で存在感を示している。

 東京大学卒業後の2001年、中央省庁再編で誕生した国土交通省に1期生として入省した。「国交省は生活に身近なインフラや街づくり、地域に密着した政策が多く、魅力を感じた」と入省の決め手を話す。省内のチームワークや省庁再編後の風通しの良さも後押しし、国交省でインフラ政策のほか防災、災害対応で活躍。世界初の地震予報「緊急地震速報」の導入などに携わった。

政治家を志すようになったきっかけは、国交省在籍時代に国交相を務めていた冬柴鉄三氏との出会いだ。「東日本大震災後の政治の混乱を役所の中で感じていた。そのタイミングで縁があり、冬柴先生に声をかけていただいた」。冬柴氏の後継として出馬し、12年に34歳の若さで初当選を果たした。以来、専門分野の防災、災害対応だけでなく大学生などへの給付型奨学金創設など、若者を対象にした政策も進めている。自身も大学時代に肉体労働のアルバイトと勉学との両立に苦労した過去があり「教育や若い世代向けの政策は、日本の未来のために必要だ」と語る。

地域活性化の活動にも尽力し、選挙区のある兵庫県尼崎市では中小企業の支援、商店街の空き店舗対策などに奔走。尼崎市内の各種団体と意見交換を行い、地域との共生に取り組んできた。「政治家として、応援をしていただいた皆さんのためになる仕事をしたい」。経済安全保障や税制度改革など、与党内で意見が分かれ、決断力が問われる政策にもしっかりと声を上げる。

電力自由化に伴う旧火力発電廃止 大手電力会社の予備率低下を危惧

現在は衆議院の経済産業委員会や原子力問題調査特別委員会の理事を務める。エネルギー分野に関しては「脱炭素社会の構築と日本の経済成長、エネルギーの安定供給を両立させるのは政治家の仕事」と話す。東日本大震災ではガソリンなど燃料を輸送、被災地に届けるなど、防災の専門家としてエネルギー安定供給の重要性を熟知。電力自由化で、大手電力会社が経営合理化を図り、古い火力発電などを休廃止し、それに伴う予備率低下を危惧する。岸田文雄首相による今冬までの最大9基の原発再稼働については、「エネルギーの安定供給という意味では、当面の手として(再稼働を)しっかりやるしかないと思う」と理解を示している。

エネルギーの安定供給と自身の専門である防災との関わりについて、18年9月に襲来した台風21号による大規模停電が印象深いと話す。関西電力によると、当時は管内で延べ約220万件が停電。自身も被災した中で「実際に停電や被災しなければ分からないことがあった」という。電力会社の停電情報システムでは、高圧線が復旧し停電解消と表示されても、高圧線から個別需要家をつなぐ低圧線や引込線が破損した場合、認識できず隠れ停電が発生することを目の当たりにした。解決にはスマートメーター導入など個人情報を含むデータの活用が必要だが、当時の電気事業法では「情報の目的外利用の禁止」が定められていた。経産大臣政務官として電気事業法改正に携わり、20年6月にデータを有効活用する制度を整備する改正案が成立。「エネルギーの安定供給は災害時でも重要。有効な対策のブラッシュアップをしなければならない」と話す。

再生可能エネルギー導入については「太陽光発電は国土の狭さから、既に面積当たりで世界1位になっている」と無秩序な再エネ乱開発に警鐘を鳴らす。地域と再エネの付き合い方についても、当初はうまくいっていたが、現在は事業者と開発に反対する地元との軋轢が生まれていると指摘。環境省とも協力して「いかに地域で再エネを受け入れてもらうか、新しいフェーズに入っている」と、再エネ促進のためには地域社会との共生が不可欠との認識を示した。また、燃料価格高騰を原因とする電力のスポット価格の高値推移により、新電力の経営が圧迫されていることにも触れ「エネルギー価格は非常事態だ。電力自由化の在り方も含めて、今の状況を変えていくのは政治の力だ」と訴える。

電力ひっ迫問題に対しても、まず今冬の電力危機を乗り切るために、火力発電の重要性を改めて提唱。追加供給公募による火力発電稼働と予備率の確保、ロシア産石油・天然ガス輸入の対策を臨時国会で議論を進めるとしている。一方で中長期的な視点では「革新炉の開発、原発新増設・リプレースなど、原子力政策の在り方は非常に大事になる。エネルギー政策全体の議論として、経済産業委員会でも話し合っていく」とエネルギー問題の解決に意気込む。

座右の銘は「基本は力、持続は力」。災害現場の最前線で、国民の幸せに尽くす信念を貫き通してきた。これからも国民の安心安全、国土を守るため走り続ける。

【マーケット情報/10月21日】米国、中東原油が続落、需給緩和感強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、米国原油を代表するWTI先物、および中東原油の指標となるドバイ現物が続落。米国の供給増加、中国の経済減速見通しで、需給がさらに緩んだ。

米国は、エネルギー価格低減のため、さらに1,500万バレルの戦略備蓄放出を計画。また、米エネルギー情報局は、主なシェール層からの11月産油量が、前月比で増加すると予測した。また、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表する先週の原油リグ稼働数は、前週から2基増加で612基となり、WTI先物、ドバイ現物を下押した。そんななか、中国政府が、7~9月GDPの発表を延期。同国経済の先行き不透明感と、石油需要減少の懸念が一段と強まった。

一方、北海原油の指標となるブレント先物は上昇。足元の需要回復見通しが上方圧力となった。フランスでは、一部製油所でストライキが終了し、原油精製が再開する見込み。また、中国では、10月の海上原油輸入が前月比で増加。ブレント先物の支えとなった。

【10月21日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=85.05ドル(前週比0.56ドル安)、ブレント先物(ICE)=93.50ドル(前週比1.87ドル高)、オマーン先物(DME)=88.76ドル(前週比3.30ドル安)、ドバイ現物(Argus)=90.33ドル(前週比1.43ドル安)

【再エネ】洋上風力公募の変更 欧州企業が事業見直し


【業界スクランブル/再エネ】

 ロシアのウクライナ侵攻により、石油やガス供給をロシアに依存し、サプライチェーンを有する国々が、燃料費、輸送費の高止まりで多大な影響を受けつつある。

また、サプライチェーンの9割近くを中国に依存する大部分の欧州風車メーカーは、セキュリティーの関係から中国国内の工場閉鎖やサプライチェーンの見直しを進める事を決定し、その結果、風車販売価格、販売方針への影響が予想されている。

一方、昨年末の第一回洋上風力発電占有公募3海域は、商社1社の独占になった結果を受けて、業界関係者を中心に、公募条件の見直し、審査状況公表などの要望が出た。その結果、国の洋上風力促進ワーキンググループでは、運開時期の評価、事業者の規模要件などの評価基準変更を進めている。主要欧州洋上風車メーカーはそれによる規模縮小を理由に、国内に計画していた工場建設の中止、あるいは日本での事業見直しを進める状況になった。

また、主要二大風車メーカーは米国特許訴訟を繰り広げており、バイデン政権の対応方針が注目されているが、総じて国内向け洋上風力発電設備の供給に影を落としつつある。

2030年までに陸上約15‌GW(1GW=100万kW)+洋上約5GW、50年には陸上約30‌GW+洋上約60‌GWの導入を見込む日本は厳しい状況ではあるが、国内メーカーの再立ち上げや欧州メーカーとのアライアンスなどを通して、安定的に風車供給形態を確保することを期待したい。

併せて、風力発電の導入拡大と発電コスト低減を進めるために、政府には陸上の許認可(風車認証、土地利用、環境アセスなど)、洋上の占有海域規制などの一層の規制緩和策(沿岸域での建設など)の対応を期待したい。(S)

さまざまなタイプが優劣競う 選択される革新炉に必要なことは


【多事争論】話題:革新炉の開発

カーボンニュートラル実現の切り札として、高温ガス炉やSMRなどの開発が進んでいる。

それぞれ一長一短があり、予算制約がある中、安全性に加え費用対効果なども問われる。

〈 高温ガス炉・高速炉に優れた利点 再エネとの統合システム構築に貢献 〉

視点A:大島宏之 日本原子力研究開発機構理事 高速炉・新型炉研究開発部門長

高温ガス炉や高速炉のような次世代革新炉(革新炉)は、その優れた特性からカーボンニュートラル(CN)達成への貢献が期待されており、導入に向けての検討が進められている。7月の総合資源エネルギー調査会第4回革新炉ワーキンググループでは革新炉の開発工程を示す技術ロードマップ案が提示され、8月のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議の会合では、岸田文雄首相から革新炉の開発・建設などに関し年末までに具体的な結論を出せるように検討が指示されている。

革新炉は、持続可能性、安全性・信頼性、経済性、核不拡散性・核物質防護について従来よりも高い要件を満たす第4世代原子炉である。このような新しい原子炉の開発には国際協力が不可欠として、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)がその研究開発を開発国間で協力・推進することを目的に2001年7月に発足した。現在、日、米、仏、EUなど13カ国1機関が参加している。

GIFでは、第4世代炉として、高温ガス炉やナトリウム冷却高速炉など六つの炉型を選定し、研究開発協力を進めている。中でも第4世代炉に適用する安全基準の確立は重要な課題の一つであり、原子力機構はこれまでの経験を基にナトリウム冷却高速炉の安全設計を行う際の基準となる安全設計要件と、それを満足するための具体的な手順を示す安全設計ガイドラインの構築を提唱し、開発をリードしている。これら安全設計要件とガイドラインは、経済開発協力機構原子力機関(OECD/NEA)や国際原子力機関(IAEA)、各国規制機関によるレビューを経て公開され、GIFの枠を超えて活用されている。また高温ガス炉など、他の炉型についても同様の取り組みを進めている。

高温ガス炉は、化学的に安定なヘリウムガス冷却材や耐熱性の高いセラミック被覆粒子燃料、黒鉛構造物を用いることにより、固有の安全性を有する原子炉で、高温熱を用いた高効率発電のみならず、水素製造、高温蒸気供給など、発電以外のさまざまな分野での熱利用が期待されている。原子力機構では、高温ガス炉の試験研究炉である高温工学試験研究炉(HTTR、熱出力3万kW)を大洗研究所に設置し、高温ガス炉の基盤技術の確立と安全性の実証試験を進めてきた。

HTTRでは東日本大震災までに、原子炉出口ヘリウムガス温度950℃での連続50日運転を通じて安定的に高温熱を供給できることを確認するとともに、出力30%から炉心の冷却材流量を停止する炉心流量喪失試験(OECD/NEAの国際共同プロジェクト)などを実施し、高温ガス炉の優れた性能と安全性を実証してきた。東日本大震災後、HTTRは新規制基準への対応を進め、設置変更許可取得に係る審査において、設計基準を超えるような事故を想定した場合でも、被覆粒子燃料の優れた高温耐性や大量の黒鉛構造物の熱容量による温度上昇の緩和などにより事故の進展に伴う燃料破損(炉心溶融)が生じないことが確認された。その結果、施設の大幅な変更なしに21年7月に運転を再開した。22年1月には炉心冷却喪失試験を再開し、冷却材流量停止に加えて、圧力容器外側からの冷却を停止しても安全性を保つことを示した。

原子力の熱利用実現の第一歩として、高温ガス炉の熱を利用した水素製造実現のためには、高温ガス炉と水素製造施設の接続に係る安全性を確認する必要がある。そのため21年6月の「50年CNに伴うグリーン成長戦略」に沿って、HTTRに水素製造施設を接続して30年までに水素製造を実証するHTTR-熱利用試験を開始した。高速炉もまた、運転温度が既存の軽水炉より高く、蓄熱を含む熱利用のポテンシャルを有している。

再エネの時間的変動を補完 システム全体の最適化を図る

CNの実現には統合的なエネルギーシステムを検討するアプローチにより、エネルギーシステム全体としての最適化を図ることが重要である。原子力、再生可能エネルギーといった個々のエネルギー技術を組み合わせ、電力、熱、水素といったエネルギーの需要に応じて効率的・持続的に供給していく統合システムの観点が重要となる。革新炉には、安定的な電力供給と出力調整が可能な点、電力のみならず熱、水素製造での利用可能性を有する点などにおいて、再エネの時間的変動を補完する役割が期待されている。原子力機構は、高速中性子を利用することでウランの利用効率が高く、高レベル放射性廃棄物の減容化にも寄与できる高速炉、熱利用の幅広い可能性を持つ高温ガス炉と再エネを組み合わせ、エネルギーの持続的かつ安定供給に向けたシステムの検討にも着手している。

おおしま・ひろゆき 東京大学工学部卒。2021年4月原子力機構理事。高速炉・新型炉研究開発部門など大洗拠点に関する業務を統括。

【火力】kW・kW時・⊿kW 電気の価値どう測る?


【業界スクランブル/火力】

 今夏の東京では猛暑日の日数が過去最高の14回を記録した。過去をひも解くと1995年と2010年に13回だったとのことで、こうして見ると10年に一度程度の厳気象を考慮するというのは経験則としては妥当であると思える。だが、来年さらなる猛暑にならないとの保証があるわけではなく、需要想定を元に適正な供給力を導き出すのは容易なことではない。

電力の安定供給には、kW、kW時、⊿kWのそれぞれを確保する必要があるという点は、世間にも広く知られるようになってきたが、具体的な中身になるといまだ曖昧な理解のままだ。

kWは発電設備量の問題、kW時は一次エネルギーの量、主に燃料確保の問題という理解は概ね合っているが、揚水発電や二次電池でkW確保を考える場合には注意が必要だ。これらは短時間の需給調整にも有効な設備ではあるが、事前にためておいた電力分しか使えない。燃料さえあれば、持続的に出力調整が自由自在な火力発電とはおのずから使い勝手に違いがある。このことは、電気自動車が航続距離や充電時間の問題で現状ではエンジン車に及ばないことに類似している。また、充電元を何に求めるのかとの観点で、kW時不足の懸念に拍車をかける恐れがあることも考慮する必要がある。

一方、需給調整力の扱いは、系統側あるいは市場側のニーズから細分化される方向で検討されているが、電源側の視点としてそれでよいのだろうか。火力発電は、あらゆる周期の時間軸に対し一つの設備で対応でき、刻々と変化する系統側のニーズに随時対応することで貢献している。市場の細分化は、その利便性をスポイルしないだろうか。火力発電は、短期限界費用というkW時の価値を表す物差しだけでは測りきれない点を忘れないでもらいたい。(G)

【原子力】六ヶ所工場の稼働 延期を気にせずに


【業界スクランブル/原子力】

日本原燃は六ヶ所再処理工場の完工時期について、これまで2022年度上期としてきた。だが、新規制基準に工場を適合させるための追加工事や、工事に必要な詳細設計の認可(設工認)の審査、原燃自らが行う使用前検査など各種手続きに予想以上に時間がかかり、進んでいないために予定通りの完工を断念した。

原燃は原子力規制庁から工程の変更を示すように求められているが、完工に向けた手続きには十万点以上といわれる機器・設備を対象とする規制側の設工認の審査をはじめとして、事業者側では期間を見定められないことも少なくない。そこで完工時期について「未定」とした上で、設工認の認可の目途がついた段階、すなわち規制庁へ設工認の「補正」を提出できた時点で、新しい完工時期を見通して、それを織り込んだ新しい工程を公表することになる。

結果として26回目の工程の延期となり、今後は延期の幅がどのくらいになるかが話題の焦点になってくる。しかし、この際、少々期間が余計にかかってもいいという割り切りが必要ではないか。少々の遅れを防止するよりも、むしろしっかりと安全性の高い、地元をはじめ国民の期待に応えられる工場を造り、完成してもらいたい。その上で、操業に向けて、地元自治体との間で、きちんと説明義務を果たし、住民との間でウィンウィンの関係を築いてもらいたい。

再処理工場が完成すれば、イランのアザデガン油田程度の小さな油田を国内に有することに相当する意味がある。ウクライナ戦争で、エネルギー安全保障の重要性が高まる中、再処理工場がS+3Eというエネルギーの要諦を確保する上で大きな意義を発揮することを期待したい。日本にとっては、それは夢の実現になるはずだ。(S)

【特別寄稿】追悼:故 領木新一郎氏を偲んで~阪神・淡路大震災で見せた胆力 卓越した手腕でガス業界をけん引~


大阪ガスのトップを務めた領木新一郎氏が8月1日に死去した。

阪神・淡路大震災では社長として、約86万戸のガス供給停止を決断した。

 領木さんは、大阪生まれの大阪育ち、昔の良き時代の大阪人の雰囲気を漂わせた人でした。はにかんだ笑顔が印象的で、怒った顔を見たことがありません。どこかつかみどころがない雰囲気はありましたが、エネルギー業界での業績たるや素晴らしいものでした。

日本ガス協会会長として、エネルギー分野での自由化議論が始まった中で、大ロガス事業分野の参入規制の緩和、接続供給制度の導入、料金引き下げ時の届出制度への移行、選択供給約款制度の導入、兼業規制の廃止など、業界が一変するような重要な課題に解決の道筋をつけられました。

また、地方ガス事業者の天然ガスを同一の天然ガス種へと集約することにも尽力され、ガスの市場規模の拡大、生産コストの低減とサービス水準の向上を図るとともに、一酸化炭素を含まない天然ガスヘの転換により保安水準の向上を図る「IGF21計画」を推進されました。

ガス業界が大手から中小まで多種多様な事業者で構成される中で、協会としてまとまって活動することができたのも、領木さんの卓越した手腕と人間性の賜物です。

大阪工業会の会長としては、大阪商工会議所との統合を主導され、経済界の効率化を成し遂げた大阪を代表する財界人でした。

大阪ガスの経営者としての業績も数え切れません。大阪ガスの歴代社長は在任中に一つ大きな決断を迫られると言われていましたが、領木さんの場合は、まさにあの阪神・淡路大震災時のガス供給停止の決断でした。被害が甚大な阪神地区を中心に約86万戸のガス供給を停止しましたが、その一方で大阪市内のガス供給は止めないという判断、これが大正解でした。この判断のおかげで、大阪市や隣接する尼崎市が被災地のガス復旧に向けた支援基地となり、また大阪経済の活力にブレーキをかけずに済んだのです。

ガスの完全復旧まで3カ月を要しましたが、その間、危機に動じない胆力のある領木社長の下、社員は一丸となって復旧活動に励むことができました。

地震後にあらためて領木社長のお姿を見ると、すっかり痩せておられ、やはり並大抵のご苦労ではなかったのだと思い知りました。以降、雲上に蒼天あり―「そのときは苦境であっても、努力して困難を乗り越えれば、素晴らしい世界が待っている」という信念を周囲に語っておられました。

社長、会長を退かれた後も、現役時代と変わらぬ、ゆったりとしたお人柄に接することができたのは、私にとっても、社員にとっても大変幸せなことです。

これからは、どうかゆっくりとお休みください。ご冥福を心からお祈りいたします。

文/岩井博行 (岩井レポート・アドバイス代表元大阪ガス理事・本社支配人)

【石油】不都合な真実? 製品価格の抑制


【業界スクランブル/石油】

原油価格の先行きは、ますます不透明になってきた。9月5日、OPECプラスは最近の油価軟化に対応して、小幅増産から減産に転じた。

ウクライナ侵攻直前、1バレル当たり92ドルだった原油価格(NY先物)は、経済制裁とその対抗措置で、一時125ドルまで高騰していたが、6月下旬以降は世界的な景気減速懸念で軟化。8月には90ドル割れの日も出てきた。そのため、油価は侵攻以前の水準に戻ったとする見方もあった。しかし、OPECプラスの政策転換で分からなくなってきた。

ところが、この原油価格の高止まりと円安進行にもかかわらず、このところ、ガソリン小売価格(国内平均)はℓ当たり170円前後で落ち着いている。これは、明らかに「燃料油価格激変緩和補助金」の効果である。経済産業省が原油価格・為替水準の変動、小売価格の動向を勘案しつつ、毎週、補助金額を調整している成果である。国内燃料油価格の抑制という当初の目的を達している。

しかし、この事実を国民の大多数は知らない。マスコミが報じないからである。大手新聞の担当記者にどうしてこのことを書かないのかと聞いたら、補助金効果と書いたら、デスクを通らないと答える。どうやら、マスコミにとって「不都合な真実」らしい。時の政権や経産省の功績は書きたくないらしい。

確かに、9月30日(延長検討中)までで1兆8000億円の巨額の予算措置がなされ、市場に直接介入する筋のよくない補助金ではある。しかし、補助金がなければ、200円を超えてているであろうガソリンが170円前後で買える。ドライバーだけでなく、農林水産業や物流業、一般家庭など国民全体が大きく受益している。これを報じないマスコミは怠慢だ。(H)

【検証 原発訴訟】伊方最判から忠実に判断 後付け理論での規制に妥当性なし


【Vol.7 もんじゅ最判②】森川久範/TMI総合法律事務所弁護士

8、9月号で中断していたもんじゅ最高裁判決(最判)に関する考察を再開する。

前回7月号ではもんじゅ最判の概要などを解説。今回は重要論点を取り扱う。

 もんじゅ最判では、2次冷却材漏えい事故に係る安全審査について伊方最判の判断を踏襲し、「規制法の規制の構造に照らすと、原子炉設置の許可の段階の安全審査においては……基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解するのが相当である」と判断した。さらにどのような事項が原子炉設置許可段階における安全審査の対象となるべき基本設計に該当するかという点も、基準の適合性に関する判断を構成するものとして、主務大臣に専門技術的裁量があることを指摘した。

これを受け、もんじゅ最判では、「2次冷却材漏えい事故が発生した場合に事故の拡大を防止するために、漏えいしたナトリウムとコンクリートとの直接接触を避けるため床面に鋼製のライナを設置する対策を行う方針」を原子炉設置許可段階における基本設計の対象事項とし、「床ライナの板厚・形状等の細部にわたる事項」は、後続の設計・工事方法の認可(設工認)段階の詳細設計および工事の方法とする判断に合理性を認めた。どのような事項が原子炉設置許可段階での基本設計に該当するか、という点も、専門技術的裁量内との原子炉等規制法の法解釈からすると、妥当な解釈であろう。

その後もトラブルが続いたもんじゅ

ナトリウム漏えいを巡る審査 事故後の知見をどう扱うか

また伊方最判が示した「行政判断の統制の枠組み」を踏襲し、「現在の科学技術水準に照らし、具体的審査基準に不合理な点があるか、判断過程に看過し難い過誤、欠落があった場合には、原子炉設置許可処分が違法となる」との判断基準を示した。すなわち、もんじゅの安全審査(本件安全審査)後の1995年12月のナトリウム漏えい事故原因などの解明過程で判明した、条件次第で床ライナを急速に腐食させる溶融塩型腐食が起こるとの知見(ライナに貫通孔が生ずれば漏えいナトリウムとコンクリートとの直接接触防止という本来の機能が果たされない)を検討した。

具体的には、本件安全審査時点ではこの知見は関係者に知られていなかったため、床ライナの健全性については熱膨張によって機械的に破損するかということに重点を置いた審査がされたことに対して、「本件安全審査後に判明した知見(現在の科学技術水準)に照らして、本件安全審査が不合理といえるか」を検証した。

ここでは、当該知見を前提とした場合でも、漏えいしたナトリウムとコンクリートとの直接接触を避けるため床面に鋼製のライナを設置する対策を基本設計とすることが不合理といえるか否かを具体的に検討。①ライナに溶融塩型腐食が生じても、板厚などの具体的形状次第では漏えいナトリウムとコンクリートの直接接触を防止することが可能・有効、②板厚などの具体的形状は、後続の設工認以降の段階で対処することが不可能または非現実的であるとは言えないことから、床面への鋼製ライナ設置を基本設計とすることが不合理なものと言うことはできない―と判断した。

さらに、控訴審がライナ板厚の程度などを含む腐食対策、ライナの膨張率を左右する温度が基本設計に含まれることを前提に、本件安全審査に過誤、欠落があると判示したことに対して、いずれも設工認段階における審査対象であることなどを指摘し、控訴審の判断を退けた。

要するにもんじゅ最判は、設置許可段階の基本設計の判断事項と、設工認可段階の判断事項を峻別し、安全審査後の知見によっても床面にライナを設置する対策を行うことを基本設計とした判断は不合理ではないと判断した。

もんじゅ最判は、専門技術的裁量を尊重する原子炉等規制法の趣旨から伊方最判が示した「行政判断の統制手法」に忠実に、「どのような事項を原子炉設置許可段階における基本設計とするかという点に専門技術的裁量がある」との判断や、「具体的審査基準に(積極的に合理的といえるかどうかではなく)不合理な点があるか、判断過程に看過し難い過誤、欠落があるか」という判断基準を踏襲している。

つまり、最新の知見に照らして後付けの理論の追加により基本設計を事後統制するのではなく、具体的な検証により行政の基本的な判断の誤りの是正・改善を行う司法統制の立ち位置を示したものといえよう。

控訴審との判断の違い ほかの事故の審査でも

蒸気発生器伝熱管破損事故に係る安全審査については、同事故に係る安全評価の解析条件が、伝熱管破損伝ぱの機序としてウェステージ型破損(水酸化ナトリウムに起因する隣接伝熱管の破損)が支配的であるという考え方を基に設定されていた。これを受け控訴審では、高温ラプチャ型破損(高温の反応熱に起因する隣接伝熱管の内部圧力破損)の可能性が調査審議の対象とされなかったことや、設計通りの操作によって「絶対的な」高温ラプチャ型破損発生防止の効果が期待できるか疑問があることなどを理由に、本件処分を無効とした。

対してもんじゅ最判は、控訴審判決の認定でも、設計通りの操作が無事に進めば、高温ラプチャ型破損の発生の抑制効果を相当程度期待することができる仕組みとなっていることなどから、先述の解析結果の設定は合理的と判示した。つまり、一連の設計内に高温ラプチャ型破損の発生抑制効果もあるので、司法が行政の判断を否定するまでもないとした。

控訴審判決は、安全評価結果に絶対的な効果を求めるものである点で、そもそも賛同し難い。

1次冷却材流量減少時の反応度制御機能喪失事象に係る安全審査については、控訴審判決が安全審査に看過し難い欠落があるとした判断に反論する形式で、安全審査の不合理性を否定した。これについては紙面の関係上、両判決の違いは、審査基準であった「高速増殖炉の安全性の評価の考え方」での同事象の位置付け、あるいは評価の違いによるものであることを指摘するにとどめる。

・【検証 原発訴訟 Vol.1】 https://energy-forum.co.jp/online-content/8503/

・【検証 原発訴訟 Vol.2】 https://energy-forum.co.jp/online-content/8818/

【検証 原発訴訟 Vol.3】 https://energy-forum.co.jp/online-content/8992/

・【検証 原発訴訟 Vol.4】https://energy-forum.co.jp/online-content/9410/

・【検証 原発訴訟 Vol.5】https://energy-forum.co.jp/online-content/9792/

・【検証 原発訴訟 Vol.6】https://energy-forum.co.jp/online-content/10115/

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もりかわ・ひさのり 2003年検事任官。東京地方検察庁などを経て15年4月TMI総合法律事務所入所。22年1月カウンセル就任。17年11月~20年11月、原子力規制委員会原子力規制庁に出向。