環境価値を付加した多様なサービス カーボンニュートラル実現にまい進


【北陸電力】

地域のカーボンニュートラルをけん引する北陸電力では、多様化・高度化する脱炭素化ニーズに応える。

豊富な水力発電を生かした電気料金メニューの提供や、太陽光・EV関連のサービスを拡充させている。

 北陸電力は、2019年4月に掲げた長期ビジョンの中で、30年度の再生可能エネルギー発電量を18年度対比で約3割(年間20億kW時)増加させる目標を掲げている。大手電力の水力発電比率は約1割程度のところ、北陸電力の水力発電比率は約3割を占め、従来より再エネ比率は高いが、水力発電所の新設やリプレース時の出力増を進めている。「近年、気候変動問題を中心に脱炭素化への関心が高まっており、その中で、当社の強みである水力発電をしっかり生かしていく重要性が増している」と松田光司社長は話す。

この北陸地域の豊富な水資源を生かした、電気料金メニューの一つが「アクアECOプラン」だ。

このプランは、水力発電100%の家庭向けの電気料金メニューとして20年7月に開始したもので、電気料金メニューとして全国で初めてエコマーク認定を取得。再エネ電気を使いたいといった環境に関心の高い顧客のニーズに応えている。

法人向けにも水力発電100%でCO2排出量ゼロの価値を付加したメニュー「グリーン特約(アクアグリーン)」や、富山県営水力発電所から産み出される電気を活用した「とやま水の郷でんき」の提供を開始。「とやま水の郷でんき」は、富山県内の水力発電所で発電された電気を使用していることを示す証明書を交付しており、再エネを地産地消することで企業価値の向上を図りたいといった顧客ニーズに応えている。

RE100に対応した電気料金メニューや、新規の再エネ発電所の開発を組み合わせた電気料金メニューなど、環境価値を付加したメニュー拡充の検討を進め、今年4月から販売を開始する予定だ。「お客さまの脱炭素化ニーズは多様化・高度化している。これらのニーズにしっかり応えることで地域のカーボンニュートラルをリードしていきたい」と営業本部室の森永知範課長は意気込む。

注目が集まる 太陽光第3者所有モデル

北陸電力グループは、カーボンニュートラルの実現に向け、顧客と共に、再エネ電源を開発する取り組みも進めている。

太陽光PPAサービス導入事例(福井鋲螺株式会社)

その一つが、法人・家庭向け、それぞれに実施している太陽光発電設備の第3者所有モデルによるサービス(太陽光PPAサービス)だ。このサービスは、グループの北陸電力ビズ・エナジーソリューション(北電BEST)が顧客の屋根や敷地に太陽光発電設備を設置し、初期投資ゼロで、発電したCO2排出量ゼロの再エネ電気を顧客に使用してもらうもの。設備のメンテナンスもサービス料金に含まれており、顧客は長期間にわたり安心して利用できる。

また、家庭向けの「Easyソーラー」については、10年間の契約期間満了後、太陽光発電設備は無償譲渡されるため、継続して再エネ電気が使用できる。法人・家庭向け共に、サービス開始から多数の問い合わせや申し込みがあり、顧客の注目を集めている。

また、オフサイトでの太陽光PPAサービスも展開しており、福井県坂井市に新設する太陽光発電所の再エネ電気を、今春から北陸地域のセブンイレブン約300店舗へ供給する。

EVの普及促進など 次々と新サービスを展開

至近ではカーボンニュートラルの実現に不可欠となる電化シフトに向け、EV(電気自動車)の普及サービスも展開している。

「EV導入トータルサービス」のイメージ

21年4月に、EVなどのエコカー購入者向けの電気料金割引特約「環境・エコカー割」を開始。同年6月には、家庭向けに「EV充電設備工事サービス」を、同年7月には、自治体や法人向けに、「EV導入トータルサービス」を開始するなど、次々とサービスを打ち出している。「EV導入トータルサービス」は、初期導入費用負担なしでEVが利用可能で、稼働状況を踏まえた所有車両の最適化、専用アプリによる利用者の利便性向上や車両管理業務の効率化を図ることができる。また、EVを蓄電池として活用することにより、顧客の電力需要のシフトや停電時の非常用電源としても利用可能となる。  北陸電力グループは、引き続き顧客の脱炭素化ニーズにしっかりと応えてお役に立てるよう、さまざまなサービスを提案し、顧客や地域のカーボンニュートラルを推進する企業をこれからも目指していく。

北陸電力グループが展開するカーボンニュートラルに向けた各種サービス

【覆面ホンネ座談会】乱開発問題を克服できるか!? 太陽光発電の真価を問う


テーマ:太陽光発電の生きる道

再生可能エネルギーの筆頭格でありながら、悪質事業者による乱開発が絶えない太陽光発電。規制に及び腰の政府や現状認識に欠ける野党、縦割りで連携不足の省庁など太陽光を巡る問題点に加え、地域共生や技術開発など今後の「生きる道」について議論した。

〈出席者〉  A NGO関係者  B太陽光関係者  C元経産官僚

――太陽光発電の乱開発、悪質事業者の問題が全国的に多発する現状をどう見ているか。

A 昨年9月に開かれた内閣府の第15回再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会合で、反対運動を展開するNGOの代表が出席し、当時の規制改革担当相だった河野太郎氏に「悪質事業者が全国で違法伐採を繰り返している」として法改正の必要性を訴えた。これに対し河野氏が「一部の病理的な事象」との認識を示したことには、あきれて言葉もなかったね。そもそも再エネTFは現状認識が正確性に欠け、危機感も弱いことが問題。そうした中、今通常国会では自民党の高市早苗政調会長や公明党の山口那津男代表が、太陽光の乱開発に関する問題提起をしたことで動きは進んできたが、まだまだ認識の低い政治家、官僚の皆さんも多いと思う。

B 2012年から14年ぐらいにFIT(固定価格買い取り制度)で認定された、買い取り価格が高い時代の案件が問題だ。当時は、森林を伐採しても経済的にはペイできたと思うが、今の買い取り価格では伐採開発していたら経済的に合わない。つまり、新規認定の太陽光発電だと乱開発は起こりようがない。自治体側でも条例を整備しており、新規案件は地域と共生するのが大前提。悪質な事業者は厳しく取り締まる一方、真面目に取り組む事業者をサポートする仕組みが必要だ。

C 屋根の上に付ける小口は別として、いわゆるメガソーラーなどの大規模太陽光については、大手エネルギー事業者に集約しインセンティブ規制を作るべきだ。私が知る限りエネルギー系以外では金融屋さんがほとんど。ファンドを組成して、ある程度手数料を得た瞬間に興味がなくなる人たちなので、電気事業の世界にはふさわしくない。既設のものは大手に集約し、新設も大手に限定するような事業許可制を敷くべきだよ。

A 電力は日本経済、国民生活に直結するライフライン。東京電力や関西電力などの大手が国の事業法の下で、その基盤を支えてきた歴史がある。今はFITで金融商品化してチンピラのような企業が雨後のたけのこのように生まれてきて、日本全国で乱開発し地元住民らとトラブルを起こしている。その原因は各種関係法令の違反行為だ。昨年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流のような災害が全国的に多発する危険が高まっている。地域共生とよく言われるが、その共生が果たせていないから問題が起きるわけだ。

一罰百戒の効果に期待 警察庁との連携も必要

――山口壮環境相は1月25日に埼玉県小川町のメガソーラー計画に対し、「抜本的見直しが必要」とする環境アセスメントに基づく異例の意見を発表した。

B 環境省が科学的根拠に基づいていると考えると、駄目と言われて当然なのだろう。事業者は計画を全面的に見直すか、中止するということになる。法令上の範囲で取り締まられて駄目だと言われたわけなので、事業者としては従うべきだ。全国にどう波及するかは分からないが、法令違反、条例違反になる開発行為はそもそもあってはならない。

C これは、皆さんご存じの通り結構やばい案件だ。産業廃棄物の関係で熱海の盛り土のような問題も絡まって「いくらなんでもこれは駄目だ」と、環境省は厳しいことを言っていた。いくら自然エネルギーとはいえ、やり方が悪ければ、石炭火力の時と同じような環境アセスの意見書が出される。再エネ開発事業者へのある意味、一罰百戒的なものになればいい。今後この手の問題を事前に認識するという点で効果は期待できる。

A 環境省の対応は当然だ。環境省、経産省、林野庁とそれぞれ意見交換する中で感じるのは、関係省庁との連携と言いながら、実はあまりできていないことだ。FITは経産省が始めた事業。もっとリーダーシップを取って、悪質事業者の排除に取り組んでほしい。また再エネ利権を巡っては反社勢力が介在している。その意味では、警察庁とも連携すべきだ。今は無法地帯になっているので、やはり警察庁がこの問題に介入しないと、この再エネ地獄は収まるどころか、まだまだ大きくなって国民が被害を受ける。再エネTFは規制緩和ありきの組織だが、今後は方向性を修正して国民の命と暮らしを守るという視点に立って、再エネ規制改革を推進してもらいたい。

降雨で土砂崩れが発生した山間部の太陽光発電所(茨城県笠間市)

――再エネ開発問題に対する政府の姿勢をどう見ているか。

C 再エネという言葉に幻想を抱いている人が多いよね。30年ぐらい前の原子力や天然ガスと似ているかも。私が若いころ、原子力や天然ガスには魔力があった。つまりは善。今は太陽光、風力が善。EUのタクソノミーやウクライナの危機で、少し見直しの機運が出ているが、再エネの名目が付けば何でも許される風潮は相変わらず。政府も2050年カーボンニュートラルの御旗の下で、再エネ関連の予算や補助事業を展開しているわけだ。その方向修正は容易ではないと思う。

B 私はややCさんと違うかもしれない。太陽光にしても風力にしても、期待し過ぎはもっての外だが、ただ過小評価してもそれはそれで不幸になる。特に太陽光の場合はずっと過小評価されてきた。今でも太陽光に関しては、国内で過小評価されているという認識で、森林開発しなくても、建物の上だとか空き地とか、未利用の土地・場所は日本に数多くある。そこに導入すれば現在の60‌GWの5倍も6倍も入る。コスト的には10円を切る水準になってきたわけだから、この実力を適正に評価して日本のエネルギーの中に組み入れていく方策を考える必要がある。

A 野党が「再エネ100%を目指す」と、実現可能性のない話を平気ですることも問題だよ。国会を見ていても、与党が進めている再エネ政策の問題点を、野党が誰も指摘できない。野党のある党首に、原発の再稼働はやむを得ないという話をしたら「絶対駄目だ」。じゃあ火力を増やすのかと言ったら、「火力も駄目」。それでは日本のエネルギー供給を支えられないと言ったら「そんなこと言っても、駄目なものは駄目」と、全く議論にならない。こんな政治家が国会の中で一定の規模の活動をしていると思うと悲しくなる。エネルギー問題はヒステリックに議論するのではなく、冷静にベストミックスの解を見つけていくという姿勢が極めて大事だね。

原子力復権へ動く自民議連 再エネ議連との攻防も?


自民党が原子力政策の「復権」に向けて動き出した。欧州での原子力再評価など、状況の変化を受けて、議員連盟などが原子力の規制政策やリプレースなどの提言を活発に行う構えだ。

原子力で国民の支持は得られるか

「突破力があるとして会長に選ばれた。状況を変えたい」。稲田朋美衆議院議員は1月の民間団体のシンポジウムで、自身が会長を務める「最新型原子力リプレース推進議員連盟」の活動に意欲を見せた。同議連は安倍晋三元首相ら大物議員を顧問に据え、昨年春に発足。エネルギー問題に取り組む議員の世代交代が進みつつあり、「滝波宏文参院議員や石川昭政衆院議員ら50歳前後で実務が分かり、弁の立つ議員が中心」(関係筋)とされる。

自民党内には「電力安定供給推進議員連盟」、党組織としての「自民党原子力規制に関する特別委員会」がある。参加する有力議員が重複しているため「活動を融合させて、さらに発信力を強化していく」(前出関係筋)動きも。

これと一線を画すのが、脱原発派の河野太郎前行政改革相や小泉進次郎前環境相が加わる再エネ普及拡大議員連盟だ。こちらも洋上風力落札問題などで再び存在感を高めている。今後、原発を巡る党内の攻防が激しさを増しそうだ。

【マーケット情報/3月4日】原油急伸、供給不安一段と強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急伸。対ロシア経済制裁が強化される可能性が出てきたことで、供給不安が一段と強まった。

米国原油の指標となるWTI先物は4日時点で、前週から24.09ドル上昇して115.68ドルとなり、2008年9月下旬以来の最高を記録した。北海原油を代表するブレント先物も20.18ドル高で118.11ドルを付け、2013年中旬以来の最高値となった。また、中東原油の指標となるドバイ現物も、3日時点で112.66ドルの上昇となり、2014年6月末以来の最高となった。

米国と欧州連合は、ロシア産原油の出荷に対して直接、制裁を加えることを検討。ウクライナでの戦闘が依然激化しており、ロシアに対してさらに圧力をかける必要があるとしている。これにより、供給が逼迫するとの懸念が一段と強まり、価格を押し上げた。

また、OPECプラスは4月、当初の計画通り日量40万バレルの増産で合意。ロシアのウクライナ侵攻にともなう需給逼迫感に関する言及はなかった。

一方、米国、日本、韓国など国際エネルギー機関の加盟国は、合計6,000万バレルの戦略備蓄の放出を決定。そのうち半分は米国が供給する計画だ。また、米国政府は、国内生産者に増産を呼び掛けている。ただ、いずれも価格上昇を抑制するには至らなかった。

【3月4日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=115.68ドル(前週比24.09ドル高)、ブレント先物(ICE)=118.11ドル(前週比20.18ドル高)、オマーン先物(DME)=108.87ドル(前週比16.19ドル高)、ドバイ現物(Argus)=109.22ドル(前週比12.36ドル高)

選手村の給湯器が全国へ 品薄状況改善に期待


全国的なガス給湯器の品薄に対応するため、2月上旬、東京五輪・パラリンピックの選手村から取り外される給湯器約1400台のうち第一弾として300台余りが、全国の都市ガス会社に届けられた。故障しているにもかかわらず、買い替えや修理ができない家庭に順次貸し出される。

選手村から運び出される給湯器

この問題は、電子部品の世界的切迫に追い打ちをかけるように、主要生産国の一つであるベトナムが新型コロナウイルスの感染対策によりロックダウンを実施し、半導体やハーネスなどの生産が停止、供給が不足したことに端を発する。

ガス会社は機器の貸し出しなどで対応してきたが、設置するまでに2~3カ月待ちを強いられるケースも。給湯器メーカーによる調達の工夫や現地での生産再開などにより、状況は改善傾向にあるものの、「全ての需要を賄いきれる水準まで回復する見通しが立っていない」(都市ガス業界関係者)のが実情だ。

メーカー関係者は、「今後、調達先の一層の多様化や、調達しやすい仕様への変更を進めていくが、これまでの在庫最適化の前提条件を見直しサプライチェーンを再構築する必要があるのかもしれない」といい、混乱終息後も難しい課題に直面することになりそうだ。

【イニシャルニュース】 和歌山製油所閉鎖の影に 二階氏の影響力低下も


 和歌山製油所閉鎖の影に 二階氏の影響力低下も

「こつこつと必死で努力して企業誘致を成功させ、何十人単位で新しい雇用をいくつも積み重ねてきたのが、いっぺんに吹き飛ぶような大打撃」

和歌山県の仁坂吉伸知事が1月29日に危機感あらわのコメントを発表した、ENEOSホールディングスによる和歌山製油所(有田市)の閉鎖問題。1941年、当時の東亜燃料工業和歌山工場として操業を開始し、和歌山経済の一翼を担ってきた古い歴史を持つ製油所だけに、仁坂知事は「次の展望も示さず閉めるというのは、地元に死ねというのと同じ」「地元に相談もなく、一方的に製油所機能の停止を決定するやり方は大変遺憾だ」などと怒り心頭の様子だ。

とはいえ、同製油所を巡っては、2010年代に入り石油元売り再編が加速する中で、事あるごとに閉鎖がささやかれてきた。経緯を知る業界関係者の間では「既定路線」(元売り関係者)と見る向きも。それが、ここにきて来年10月の閉鎖発表に踏み切ったのは、なぜなのか。エネルギー関係の有力学識者K氏は「地元で圧倒的な政治力を保持してきた二階俊博・元自民党幹事長の影響力低下が関係しているのではないか」と指摘する。

製油所は地元経済の一翼を担ってきた

昨年10月の岸田政権発足を受け、自民党の中枢から姿を消す形となった二階氏。最近は表舞台に顔を出す機会も少なくなった。一部報道などでは、二階氏の公設秘書を務める三男、伸康氏への世代交代が取りざたされている。

二階氏といえば2000年代半ばの経済産業相時代、和歌山県の関西電力・御坊発電所近隣に「日高港新エネルギーパーク」が鳴り物入りで開設されたのは、知る人ぞ知る話。「今や閑古鳥が鳴いている」(地元関係者)そうだが、こちらも世代交代の影響を受けるのか、どうか。

洋上風力の落札失敗組 再エネ系議員に接近

三菱商事グループの洋上風力3地点総取りという入札結果の波紋は収まる気配がない。第2ラウンドとなる秋田県八峰町・能代市沖については、昨年末から公募がスタート。三菱陣営はこの案件にも応募する意向で、今度はどの程度のFIT価格をつけるのか、注目が集まっている。

そうした中、今回落札できなかった事業者の一部が、自民党の再生可能エネルギー系議員にすり寄る動きを見せている。三菱陣営の他社を寄せ付けない価格の実現可能性や、価格重視の採点配分への疑問、さらには入札のやり直しまで訴えているようだ。

議員側も、こうした意見に同調する様子を見せる。重鎮議員S氏は、資源エネルギー庁に対し、「今回の結果には納得がいかない」と不満をぶつけたという。また、党の再エネ普及拡大議員連盟は、非公開の会合で入札結果についてヒアリングを実施し、採点配分の見直しを求める意見も挙がった。いずれも現岸田政権で概ね冷や飯を食わされている人々だ。

本来は再エネコストが下がることは国民にとって望ましいこと。先述の議員らもかつては「再エネは安く買えるようになってきた」などとメリットを強調していたのだから、むしろ洋上風力の「価格破壊」を歓迎してもおかしくはないのだが……。

発電と消費は等価? M教授発言が物議

「あれは単に論理をすり替えて、現状の問題の根本をごまかそうとしているだけだ。第一、デマンド・レスポンス(DR)事業者がどれだか苦労して需要側を束ね、調整力を供出しているか、現実が見えてるのか」

こう、学識者N氏が憤るのは、1月25日に開催された経済産業省の有識者会合「電力・ガス基本政策小委員会」におけるM教授の発言に対してだ。M教授は、直近の電力需給と卸電力の動向について意見を求められ、「電力システム改革のひとつの大きなポイントとして、電力の発電と消費は等価だということを貫徹させていくことがあった。つまり、供給量を1単位増やすことと需要を1単位減らすことは、安定供給の観点から見ても等価なはずだ」と述べた。

これについて大手電力関係者のS氏も、「電気自動車(EV)や給湯器などを自動制御することにより、需要をコントロールできるという考えは一見まともなようだが、需要家は機器を使った結果としてエネルギーを消費するのであって、例えばテレビを見たいのに、エネルギー消費を抑えるために見ないという選択をするわけがない。M教授の主張は現実的ではないよ」と切り捨てる。

電力システム改革の進展により、発電所建設の投資回収の予見性が低下し将来の安定供給確保への不安は高まるばかり。経産省も、大手電力会社が余剰電力を市場に供出する際の「限界費用」に、一定の条件下でLNGスポット価格を反映することを容認するなど、これまで「システムの歪み」のしわ寄せを受けていた発電側にお金が回るような政策へとかじを切りつつある。

電力業界関係者の中には、予見性低下の責任の一端はM教授にあると考える人も一定数いて、それにもかかわらずさらに発電の「価値」を下げるような言動を繰り広げることに、「ありもしないものを使って大手電力会社を悪者にし、電力システム改革の失敗をなすりつけようとしているのではないか」と危惧する声も聞こえてくる。

将来の安定供給確保にどのような手を打つべきなのか。現実に即した議論を求めたい。

早くも「敗戦」ムード 自民・青森県連の憂うつ

7月に行われる参議院選挙。青森県の自民党関係者は、「今回は不戦敗」とささやいている。自民党は公募による候補者選びを行い、伊吹文明元衆議院議長の秘書、其田寿一氏と県議の斉藤直飛人氏が立候補。一方、立憲民主党は現職の田名部匡代氏が出馬を表明している。

田名部氏は、農林水産相を務めた田名部匡省氏の次女。衆院当選3回を経て参院に転じ、再選を目指す。2世議員として県内では知名度が高く、「当選は間違いない」(事情通)と見られている。

自民党関係者の一部は、早くから田名部氏に勝てる候補を探していた。白羽の矢が当たったのは、青森県S町のY町長。曾祖父から3代にわたり国会議員を務めた家系で、17年から県内初の女性首長としてS町長に就任している。父親の元参院議員が昨年病没したためとむらい合戦にもなる。「Y氏なら勝てる」。こういう声が高まっていた。

しかし、S町のY氏支持者が「町長に就任してまだ4年。国会議員への転出などとんでもない」と猛反発。「出馬を促す声は強く、Y氏はぎりぎりまで考えたが断念した」(同)。この時点で、自民党にとって今夏の参院選は事実上、「不戦敗」になった。

県連関係者の間では、敗戦を見越して責任者探しが始まっている。候補者の調整に当たったのは、O元衆院議長とT参院議員。O氏は政界から引退しているため、「T氏の責任が追及されるのでは」(同)といわれている。

核燃サイクルに黄信号!? 規制委員長にY氏浮上

「核燃サイクルは大丈夫か」。今年行われる原子力規制委員会の人事を巡り、原子力業界関係者がこう漏らしている。更田豊志委員長の後任として名前が浮上しているのが、規制行政の事務方トップを務めたY氏。経産省に在籍時から規制行政に携わり、原子力発電についての知識は折り紙付き。福島第一原発事故の際、当時の原子力安全・保安院幹部の説明下手に政権首脳は業を煮やしたが、Y氏が官邸に駆け付け詳しく解説すると、すぐさま納得したという逸話がある。

ただ、業界関係者にとっての懸念は、Y氏の核燃料サイクルについての「前歴」だ。03年ころ原子力業界を騒然とさせた「19兆円の請求書」。膨大な額の費用負担から、核燃サイクルからの撤退を求めたものだ。執筆者は3人の経産官僚とされるが、「当時、エネ庁担当課長だったY氏の了解の下で作成した」(業界関係者)といわれている。六ヶ所再処理工場はいま、規制委の審査に苦労しており、「Y委員長となったら、稼働後も厳しい指摘を受けるかもしれない」(同)。

もっとも次期委員長には、更田氏の再任説や委員の昇任説も流れている。核燃サイクルは今後、どうなることか。関係者の心配は尽きない。

規制委の核燃サイクルへの対応はどうなる

明暗分けるメガソーラー 大手参入も乱開発は「待った!」


メガソーラーの自立化と事業規律強化に向けた動きが、官民で加速している。

乱開発が横行する太陽光ビジネスが転換期を迎えつつある

2月上旬、国内太陽光発電事業には未参入だったJERAが、太陽光開発大手のウエストホールディングス(HD)と業務提携すると発表した。脱炭素化の実現には工期の短い太陽光の活用が必須だと判断。JERAがウエストHDに資本参画し、ウエストHDはJERA向け案件を優先開発する。想定規模は2026年度に110万kWで、実現すればJERAは国内最大手の太陽光発電事業者になる見込み。環境に配慮し小規模事業も積み重ねる方針だ。

設備はJERAが所有し、非FIT(固定価格買い取り制度)型の電力販売を検討している。太陽光だけの電力は当然ながら、夜間も供給できるよう「ガス火力と太陽光を組み合わせた形で電力を売る計画もある」(矢島聡・JERA事業開発本部副本部長)。実証中のゼロエミ火力の将来的な活用も視野に入れ、新たな事業モデル確立を目指す。

他方、乱開発への政府対応も強化され始めた。環境省が1月下旬、埼玉県小川町の計画(3万9600kW)に対し、事業の再検討を含めた抜本見直しを求めた。必然性が不明瞭な大量の土砂搬入、大規模森林伐採や土地改変などの影響を懸念した。メガソーラーへの環境アセスメント義務化は20年4月からで、こうした厳しい環境大臣意見が示されるのは初めて。

山口壯環境相は会見で「環境配慮が不十分な事業には今後も厳しい態度で臨み、地域と共生する再エネの導入を促進していきたい」と強調した。長らく続いた不適切太陽光の野放し状態に、ようやくメスが入ろうとしている。

九州から日本の脱炭素をけん引 カーボンマイナスの実現を目指して


【九州電力】

九電グループは、カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプランを策定した。

需要側と供給側の双方の取り組みを通じて、九州から未来を創ろうと動き出している

 2021年4月に「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」を策定した九州電力は、同年11月、「九電グループカーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を発表した。この中では30年の環境目標を大きく上方修正した。

従前の目標は、九州のCO2削減必要量3800万tの70%、2600万t(九電の排出量の50%相当)を削減するとしていたが、カーボンニュートラル(CN)の実現に向けてさらなる高みを目指し、エネルギーの供給側・需要側の双方で目標を設定。

供給側の目標は、サプライチェーン全体のGHG(温室効果ガス)排出量(スコープ1+2+3)を13年度比で60%削減することだ。このうち国内事業では65%削減するとしており、これは政府が21年に示した目標である46%削減を大きく上回る。

需要側の目標については、九州の電化率向上への貢献を掲げる。50年の家庭部門・業務部門の電化率100%を目指し、30年の家庭部門70%、業務部門60%の実現に貢献する(13年時の実績は家庭部門58%、業務部門48%)。

供給側のGHG排出削減と、需要側のGHG排出削減への“貢献”といった双方の取り組みにより、グループの事業活動におけるGHG排出量を実質マイナスにする「カーボンマイナス」を50年よりできるだけ早期に実現したいとしている。

2030年の経営目標(環境目標)

ポテンシャルを生かす 供給側と需要側の取り組み

供給側の具体的な取り組みとして、①再エネ+蓄電、②原子力、③火力+新技術など―の活用を掲げる。

①は、21年11月末現在で国内外に247万kWある再エネ開発量を、30年には500万kWまで拡大することを目指す。この想定電力量は九州の全世帯数の約7割に相当する。九電グループの強みである地熱や水力の開発に加え、導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマスなどについても積極的に取り組み、再エネの主力電源化を推進する。また、世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所などを活用し、再エネを最大限受け入れながら、電力の安定供給を達成する。

②は、安全性の確保を大前提に、現在稼働中の玄海・川内原子力発電所を最大限活用する。また、設備利用率の向上に向けた検討を早期に本格化する計画だ。

③は、再エネの導入拡大への対応と電力の安定供給に大きく貢献する火力発電について、高効率化など低炭素化に向けた取り組みを推進する。非効率石炭火力については国のエネルギー政策を踏まえつつ、電力安定供給やエネルギーコストの観点、立地地域の事情などを勘案しながら30年までのフェードアウトを目指す。燃焼時にCO2が発生しない水素やアンモニアの混焼、CO2回収技術の適用検討などにも取り組む。

需要側については、九電グループのリソースを活用し、電化のポテンシャルが大きい九州エリアを中心に最大限の電化に挑戦する。

家庭・業務部門の電化では、家庭部門については住宅関連事業者との連携強化などにより、オール電化を推進していく。

業務部門については設備の運用状況やエネルギーの使用状況に基づき、エネルギー効率が高いヒートポンプ(HP)システムを提案するなど、空調・給湯・厨房設備の電化を推進する。

産業部門でもHPなど熱源転換機器の技術研究を行い、生産工程における温水や蒸気、加熱といった幅広い温度帯の熱需要に対する電化に挑戦する。

運輸部門では、30年に特殊車両を除く社有車の100%EV化を目指す。EVの普及促進に向けて、シェアリングサービスや充電インフラの拡大、EVを活用したエネルギーマネジメントなどのサービスも提供していく。

供給側と需要側をつなぐ送配電ネットワークについても、国のマスタープランを踏まえた連系線・基幹系統の整備や強化、送電容量の最大限の活用などを行い、送配電ネットワークの広域的な運用に取り組む。

デジタル技術を活用し、需給運用や系統安定化技術の高度化も推進する。

九電の目指すゴール

地域・社会の課題解決に貢献 ゼロカーボン社会を共創

21年11月末現在、九電は九州の11の自治体とエネルギー分野の連携協定を結んでいる。具体的には、地域のCN推進やレジリエンス強化などのニーズに対して、再エネ電力の供給や省エネ、電化を中心としたエネルギーシフトの推進など、トータルソリューションを提供する。

また、自治体などが所有する森林からのJ—クレジット創出支援や、創出したクレジットの活用による、CO2排出ゼロが困難な排出源のカーボンオフセットにも取り組む。

低・脱炭素の業界トップランナーとして、政府の目標を大きく上回るGHG排出削減に取り組むとともに、社会のCN実現に大きく貢献し、カーボンマイナスを50年よりできるだけ早期に実現させるべく策定したアクションプラン。

九電グループは、地域と共に「九州から未来を創る」ことを目指し、持続可能な社会の実現に向けさらなる進化に挑戦する。

エネ価格上昇が家計直撃 政府追加対策も手詰まりか


原油価格高騰の影響が家計を直撃し始めている。埼玉県内のある家庭の1月の電気代は前年同月比で約2000円値上がり、都市ガスや石油製品などを含めると月5000円近い負担増になったという。米ニューヨーク市内では月の電気代が3倍以上に。英国やドイツ、イタリアなどでも光熱費高騰が深刻さを増している。

高止まりを続けるガソリン価格(東京都内のサービスステーション)

ウクライナ情勢の切迫に伴い、原油先物価格(WTI)は7年ぶりの高値水準にある。日本政府は2月10日に関係閣僚会合を開き、現在の石油元売りへの補助金に加え追加対策の検討を指示した。しかし原油高の基調は変わらず100円突破の可能性も否定できない。松野博一官房長官は10日の閣議後会見で「これまでの対策が一定の効果を上げているものの、原油価格が高値水準となる中で、引き続き苦しい状況が続いている」と発言。原油価格高騰に打つ手なしの状況が続いている。

今後の焦点は、補助金の効果が価格抑制にどれだけ効果を上げるかだ。萩生田光一経済産業相は燃油を値上げする小売業者への現地調査を指示したが、有力学識者の一人は「補助金自体が『アベノマスク』のようなもの。票にはつながるが効果はない」と指摘。トリガー条項の凍結解除など抜本的な解決策が必要としている。

エネルギーや食品・日用品の値上げラッシュにより、1月の企業物価指数は前年同月比で8・6%上昇した。上昇率が5%を超えるのは8カ月連続だ。「いい要因でない物価の値上がり。憂慮すべきだ」(自民党の甘利明前幹事長)。国内の需要や給与水準が低迷を続ける状況下で、現実味を帯びるインフレ不況をどう回避するか。政府の手腕が問われる。

EUタクソノミーの深層 天然ガス認定も厳しい条件に


ガス火力を「グリーン」としたEUタクソノミー案だが、額面通りには受け取れない厳しい条件が付いた。

日本にとっても人ごとではなく、業界の技術者らは素案の行方にやきもきする。

 欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会(EC)が1月に発表した、投資などの基準とする「タクソノミー(分類)」法案が波紋を呼んでいる。原子力発電の利用と天然ガス発電への投資を持続可能な「グリーン」投資と認定したためだ。日本では原発について関心が高いが、天然ガスの認定も原理主義がはびこる欧州では大きな方向転換と受け止められている。日本では歓迎するムードが先行するが、天然ガスについては厳しい現実を突き付けられた形となっている。

あるガス大手の技術者はタクソノミーの素案を見てがくぜんとした。「(素案の基準に従えば)最新のガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)で年間1700時間しか稼働できなくなる」。タクソノミーはEU内での基準とはいえ、機関投資家がグローバルでの投資指標として参考にしており、このまま素案が通れば日本にも影響してくることに危機感を募らせたのだ。

EUタクソノミーは、気候変動対策に貢献する持続可能な経済活動を列挙する基準だ。投資家らが株式などを売買する際の指標ともいえる。日本の事業者が直接的な影響は受けないものの、事業者に関係している大手金融機関や、機関投資家が敏感に反応する。事業計画や融資、株主への説明などに影響をもたらすこともあり、決して対岸の火事ではない。

GTFCのみ基準クリア 実現可能性に疑問の声

今回、ECが示した素案は、温暖化ガス排出のライフサイクルアセスメント(LCA)で1kW時当たり100g未満にするという大前提は残した。その上で、①2030年までに建設許可を得た施設で1kw時当たりの温暖化ガス排出量を270g未満、②もしくは20年超の平均で1kW当たり550㎏未満、③バイオマスや水素の混焼率を30年までに55%以上、35年までに100%――と継続する場合の条件を付けた。

現状、最新鋭のGTCCは発電効率が57%で、1kW時当たりのCO2排出量は約300gだ。現在稼働中の天然ガスプラントは年間6000~7000時間稼働している。該当する②の基準を適用すると、稼働時間が4分の1程度になるということだ。

これに③の条件が加わるわけで、バイオマスや水素などの混焼を進めなければならない。ガス業界の関係者は「時系列で混焼率を高めるのは困難だ」とお手上げだ。

では新設したらどうか。新設の場合は①の基準に当てはまるが、GTCCでは満たせない。そこでガスタービンと燃料電池を合わせた「GTFC」と呼ばれる新機種を導入する必要が出てくる。

GTFCなら発電効率63%で、1kW時当たり280gのCO2排出量になり、これに混焼すればタクソノミーの基準を満たすことになる。しかしGTFCの技術確立は25年とされており、想定通りに実現できるかは未知数だ。

仮に実現できたとしても「巨額な設備投資が必要になり、いずれなくなるものに投資する必要があるのかという難しい選択を迫られる」(業界関係者)と懐疑的な見方が強い。

今回示されたタクソノミーの素案は荒唐無稽の代物だということが分かる。EU内でもこの基準を満たす国があるかも怪しい。「グリーン」「持続可能性」といえば耳触りよく聞こえるが、「相当なハードルでECも誰もできるとは思っていない。アリバイ的に素案に載せたが、本当の狙いは事業者や国が降参するのを待っているのではないか」(外交関係者)という見方も出ている。

一層のガス依存体質へ ドイツが直面する現実

他方、トランジションでの天然ガス利用の突破口を開いたという評価もあり、これを仕掛けたのはドイツではないかとの観測が広がっている。脱石炭、脱原発をテーゼとするドイツは、天然ガスの依存度が相対的に高くなっている。しかもウクライナ情勢を巡って対立するロシア産天然ガスの依存度が高い。

ドイツはガス依存を強めるが「グリーン」な基準は相当高い

昨年から欧州を襲った再生可能エネルギーの稼働減で、天然ガスの存在が一段と増している。連立与党の一つ、自由民主党(FDP)出身のリントナー財務相も、原発を盛り込むことには反対姿勢を示しながらも、天然ガスについては好意的だ。リントナー氏は現地メディアの取材に「(脱炭素への)移行期間の技術として天然ガスを燃料とする現代的な発電所を現実に必要としている」と述べた。

一方で、FDPと同じ連立与党の「緑の党」は原発も天然ガスも「グリーンには当たらない」と主張する。ドイツ政権内でも意思統一ができていない。ただ、ドイツのフラウンホーファー研究機構は、22年末までに原発全停止、30年までに石炭全廃を掲げていることにより、30年までの間にガス火力の容量を現状から30%以上増やす必要があると指摘する。天然ガス発電に頼らざるを得ない現実を示している。

ドイツ事情に詳しい専門家は「全量再エネというのも現実的ではなく、原発を封印してしまった以上、化石燃料でも石炭よりはましな天然ガスを『グリーン』としてくれることに意味を見いだしたのかもしれない」と語る。

タクソノミーの素案は今後、加盟国でつくる理事会と欧州議会に送られる。最長6カ月かけて内容を精査して、最終的な議決に向かう。オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデンの4カ国や環境保護団体、投資家などは見せかけだけの環境配慮を指す「グリーンウォッシングだ」と反発を強めているが、今のところ反対国は少ない。天然ガスについては東欧から輸入するEU加盟国は支持するとみられ、大きな修正はなく素案が議決されるとの見方が強い。

とすれば、日本にとっても影響が出てくる可能性がある。資金調達や金融機関の融資判断の基準にされることがあるからだ。ただEUの分類に合わせることは現実的ではなく、日本の事情に沿った独自の投資分類を早急に確立する必要がある。

「洋上風力落札」もう一つの裏事情 デジタル・海底送電を狙う三菱陣営


洋上風力開発の常識を一瞬で覆した三菱商事・中部電力グループによる3海域総取り。

その背景を巡りさまざまな憶測がささやかれる中、より政治的な動きがあると見る向きもある。

 「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「同県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」は、国が再生可能エネルギー大量導入の切り札として進める洋上風力プロジェクトの第1ラウンド。昨年末に事業者公募の結果が公表された。

大手から新興まで多くの国内エネルギー企業と、外資系再エネ事業者がコンソーシアムを組みこぞって参加した今回の公募。どこが洋上風力事業着手へのチャンスをつかむかに、大きな注目が集まった。その結果は、多くの業界関係者の予想を裏切るものだった。というのも、銚子沖は、2013年から洋上風力の実証試験を行ってきた東京電力ホールディングス子会社、東電リニューアブルパワー(RP)と洋上風力世界最大手のオーステッド(デンマーク)連合が、由利本荘市沖は、早い段階から海底・風況調査を実施し、地元対策にも力を入れていたレノバ・東北電力連合が有力視されていたからだ。少なくとも3海域全てを1グループが取るなど、誰も予想していなかったに違いない。

三菱商事・中部電力グループによる3海域総取り、そして1kW時当たり11・99~16・49円という「破壊的価格」(大手エネルギー関係者)に、年末年始休暇を控えたエネルギー業界は騒然。「なぜこの価格を提示できたのか」という明確な答えを見いだせないまま、今もなお、さまざまな憶測がささやかれ続けている。

日本の洋上風力の将来は?

地元との関係強みにならず これまでの不文律を覆す

大手エネルギー会社の再エネ開発担当者は、「今回の件で、地元企業が強い、もしくはいち早く地元調整に着手し協力関係を築いた企業が有利―というこれまでの不文律が覆った」と語る。FIT(固定価格買い取り)制度による高額買い取りに支えられ、地元での雇用創出など地域活性化への貢献が期待された風力だが、洋上風力は、いかに安く大量導入できるかを重視するステージへと早々に移行を果たしたわけだ。

入札上限価格はIRR(内部収益率)10%を前提に29円に設定されていたため、3海域ともそれを大幅に下回ったことになる。銚子市沖を除く2海域は、次点の事業者も10円台で応札している。「次点の事業者も、確実に取りにいくための戦略的な価格だったはず。それよりも4~6円も安いとは、普通の感覚ではありえないとしか言いようがない」という再エネ事業関係者の言葉には、三菱商事側の価格がいかに衝撃的だったかが表れている。

では、三菱側はどのようにこの低価格を実現したのか。①GE製の風車を3地点で大量に採用するため、破格の値段で交渉できたのではないか、②アマゾン、NTTアノードエナジー、キリンが「協力企業」として名を連ね、将来、こうした大口需要家に対し環境価値を上乗せして売電できることを織り込んだのではないか―などと、エネルギー業界関係者も報道もさまざま分析するが、三菱側としては、「あくまでもコストを精査し積み上げた結果。洋上風力を手掛ける蘭エネルギー企業のエネコを中部電力と買収し、その技術を内製化したことが決め手だ」との主張だ。

こうした中、表に出てこない一つの可能性が業界内で取り沙汰され始めている。「三菱商事は、洋上風力単体ではなく、通信インフラ構築に絡む国家プロジェクトを見据え、組織的に動いているのではないか。今回の落札では、戦略的価格付けをしたと考えている」(電力関係者)というのだ。

その国家プロジェクトとは、総額5・7兆円を投じて海底ケーブルと大規模データセンター、光ファイバー、5Gなどを組み合わせて通信インフラを整備し、その上にさまざまなサービスを実装していくという岸田政権肝いりの「デジタル田園都市国家構想」だ。

実は、三菱側が落札した千葉、秋田両県は、一大データセンター拠点になっている。今回の「協力企業」であるNTTは秋田市、アマゾンは千葉県印西市にデータセンターを保有。また三菱商事自ら印西市で巨大データセンター事業を推進しており、秋田でも地元協力としてデータセンターを建設する可能性がある。そしてデータセンターをグリーン化するには、洋上風力の電気が必要という構図が浮かび上がってくるのだ。

再エネはコスト重視へ FITは役割終える

一方で、現在、太平洋側に集中している国際通信の重要インフラである海底ケーブルを、日本を一周するように敷設し各地に陸揚げ拠点を設ける計画も、洋上風力開発と密接に関わってくる。この通信用ケーブルと、洋上風力から陸上の送電網をつなぐ海底直流送電線を同時に敷設できれば、インフラ整備全体のコスト抑制につながるからだ。岸田文雄首相が年頭あいさつで言及した「通信とエネルギーインフラの一体的整備」とも合致する。三菱商事は海底送電線の分野でも海外で知見を有しており、この巨大事業への関与を狙っていても不思議ではない。

落選に不満を持つ再エネ事業者らが、結果を覆そうと有力政治家などに対し水面下でさまざまなロビー活動を繰り広げているようだ。だが、今後再エネ大量導入や電力コストの増大で国民の電気料金負担が2倍以上に膨れ上がろうとする中、FITに固執しようとする動きを批判的に見る関係者は多い。

地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾・システム研究グループリーダーは、「価格が安いということはエネルギーとして重要。運開が他社より1、2年遅れたとしても価格の安さが評価されたということであり、過去にさかのぼって結果を見直すという議論はいかがなものか」と語り、再エネの価格、そして産業をどうしていくのか、改めて議論するべきだと強調する。

第1ラウンドで起きた事象が、第2ラウンド以降の事業者の応札行動や結果にどのような影響を与えるかは今のところ未知数。だが少なくとも、FITが再エネ導入を支える役割を終えたことを物語っているのは間違いないだろう。

ウクライナ危機の表層深層 米国が「ノルド2阻止」のワケ


 2月17日にウクライナ政府軍と親ロシア勢力の衝突情報が駆け巡るなど、軍事的緊張が続くウクライナ情勢。北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナ加盟問題を巡る欧米とロシアの溝が埋まる気配がない中で、危機は長期化の様相を呈しつつある。

ドイツ・ルプミンにあるノルドストリーム2のガス受入・遮断設備

海外メディアや専門家の見解を踏まえると、プーチン大統領らロシア政府側はウクライナへの軍事侵攻を繰り返し否定しており、米国・NATO側が危機をあおる構図が浮かび上がってくる。ロシア外務省のザハロワ報道官は2月中旬、米国がウクライナ危機を扇動しているとして、「彼らの狙いは(ロシア産ガスをドイツに供給する新設導管)ノルドストリーム2の稼働阻止だ」と主張した。

米英とEUは、ロシアが侵攻した場合の制裁パッケージを検討しており、とりわけノルド2の稼働阻止に焦点が当たっている。ロシアの天然ガス輸出に制限を加えることで経済制裁を課そうというわけだが、欧州の一部にとっては諸刃の剣となる恐れも。「原発が停止するドイツを中心にガス不足が発生し、エネルギー安定供給上のリスクが高まる」(大場紀章・ポスト石油戦略研究所代表)ためだ。結果として「ドイツのエネルギー政策は転換を迫られる」(橘川武郎・国際大学大学院教授)ことになりかねない。

そもそもロシアのエネルギー収入に占める天然ガスの割合は石油の5分の1程度に過ぎず、効果を疑問視する向きは多い。その石油に対する制裁が話題に上らないのは、「欧米への打撃が大き過ぎるためか」(大場氏)。またノルド2が稼働しなかった場合、「ロシアは日本へのLNGの売り込みを強めてくる」(橘川教授)可能性も。そのロシア産が、米国側の要請で日本が実施する「欧州向けLNG融通協力」に回されることにでもなれば何のことやらである。

米国の欧州向け輸出急増 シェール生産も過去最高へ

にもかかわらず米国がノルド2阻止にこだわるのはなぜか。「昨年12月に欧州向けのLNG輸出が過去最高を記録した中で、ノルド2を阻止できれば一層の輸出拡大が見込めることになる」(大手商社関係者)。現在、米国内ではシェール増産が加速。政府当局によると、国全体の産油量は3月に日量11万バレル増の870・7万バレルと2年ぶりの大幅増へ。天然ガス生産量も3月には日量5億立方ft増の917億立方ftに達し、過去最高となる見通しだ。原油高騰も相まって、脱炭素どこ吹く風の好況ぶりである。

米ブルームバーグ通信は14日、「米国による警告が現実となり、ロシアがウクライナに侵攻すれば、欧州では第二次大戦以降で最悪の安全保障上の危機に発展し、ロシアによるクリミア併合やウクライナ東部での紛争でもたらされた危機とは比較にならない可能性がある」と報じた。

歴史を振り返れば、1941年8月に米国が石油禁輸措置を発動したことがきっかけとなり、太平洋戦争へと突入した。80年後もエネルギー資源が戦争の火種となる構図は変わらないようだ。

「再エネ100%地域」の実現へ 脱炭素時代を見据えた新港工業団地


【石狩市のエネルギー基地を訪ねて〈前編〉】草野成郎(株式会社環境都市構想研究所代表)

全国に先駆けて「再生可能エネルギー100%地域」の実現を目指す石狩市。

工業団地における最先端の取り組みを、環境都市構想研究所の草野成郎代表が報告する。

 北海道の中心地・札幌から北西へ約15㎞、あの「石狩挽歌」に歌われたサケとニシンのふるさとでもある石狩市は今、まさしく「再生可能エネルギー100%地域」の誕生に向けた胎動の中にある。そして、これを側面から支えるのが石狩湾新港地域。総面積約3000haを擁し、進出企業数が北海道最多を誇るこの工業団地はここ数年の間に大きく変貌してきている。

同地域は、1970年に当時の北海道開発庁による開発計画が閣議決定されて以降、今日まで苦難な時期もあったものの、都市圏に位置する利便性もあって企業誘致が進み、現在では、750社超の企業が進出している。どのような企業誘致であっても難渋するのが一般的であるが、同団地における開発率は全国でも一定の評価を受ける水準になりつつあり、これは全市を挙げた石狩市の積極果敢な取り組みによるものであろう。

LNG基地に大型火力 道内の供給安定性を強化

工業団地の海岸側には、大規模なエネルギー供給基地がある。2012年には北海道ガスが道内初のLNG基地(年間受入量150万t)を運開させ、札幌市など都市圏に都市ガスを供給するとともに、今では電力小売り向けの約10万kWの発電所も併設している。次いでその隣接地に、18年には北海道電力が最終規模で約170万kW(56万kW×3基、現在はそのうち1基が稼働中)の大型LNG火力発電所を運開させており、このLNGの受入基地は効率的に北海道ガスとの共同利用となっている。

このLNG基地と北海道電力の発電所の完成によって、北海道のエネルギーは、従来の太平洋側の苫小牧周辺地域からの供給に加えて、日本海側の石狩地域からの供給の体制となり、エネルギーの供給安定性は構造的にも、量的にも一段と強化された。さらに、小規模ながら太陽光発電所の建設や陸上風力発電所の建設も着実に進んでいる。

一方、エネルギー需要側においては、電力多消費産業であるデータセンターが建設され、寒冷地の低気温を活用したいくつかの省エネルギー技術を世に提案し、データセンターのさらなる進出を容易ならしめている。さらに、最近、必要エネルギーをすべて再エネによって賄うという画期的な建物の建設が決定されるなど、石狩湾新港地域ではエネルギーの需給両面にわたる際立った動きが出現している。

北海道ガスの石狩LNG基地(上)と構内にあるガスエンジン発電所

注目の石狩湾新港地域 エネルギー施策の集大成

世界に目を転ずれば、20年4月、米国のバイデン大統領は、就任直後に地球温暖化防止戦略を180度転換させ、「カーボンニュートラル戦略」を打ち出した。わが国でも当時の菅政権が、①30年の温室効果ガス排出量を13年比で46%削減すること(21年4月)、②50年には排出量実質ゼロとするカーボンニュートラルを実現すること(20年10月)―を国内外に表明した。

そして昨年秋には、これらの温室効果ガス排出量削減計画を受けて、第六次エネルギー基本計画を閣議決定させ、その中で電源構成をはじめとするエネルギーの需給計画を組み込んだ。そこでは、従来からのエネルギー政策の命題である、「S+3E」(S=安全性+E=供給安定性+E=経済効率性+E=環境適合性)を遵守するとともに、とりわけ温室効果ガス削減を実現するための環境適合性の確保を前面に打ち出した。

なお、この計画については、筆者はいろいろただしたいことがあるが、これはさて置くとして、再エネの大幅な拡大を織り込んだ意欲的な目標数値が計上されている。

こうした情勢の中で、石狩湾新港地域に拠点を有する各企業が、安定的なエネルギーの確保と共に、いち早く温室効果ガス排出量の削減を目指したエネルギー使用に関心を寄せることになったのはごく当然の成り行きであって、石狩市も同工業団地を振興する地元の自治体として、これらの企業活動を支援する観点も含めて、カーボンニュートラルの実現に向けた諸施策の導入を検討中である。

これが、本稿の主題である「石狩市を再エネ100%地域へ」の実現につながっている。詳細は後述するが、これは決して最近の流れの中での思いつきや夢ではなく、これまでに石狩市が取り組んできたエネルギーに対する姿勢の集大成とみるべきであって、そういう意味において、それまでの経緯をひもといてみるのも重要な作業であろう。

30年・50年に大きな溝 両目標は異なった局面に

その前に論じておきたいことがある。それは、誰もがある程度は感じているように、「カーボンニュートラルの実現」は、極めて難しい課題であって、簡単に解決できるものではないということだ。特に明確にしておかねばならないことは、目標年次である30年と50年との間には確実に段差があり、しかもそれはいくら注意しても踏み外しそうな大きな溝だ。

もとより両者は時系列という観点からは延長線上にあるが、30年は「低炭素化時代」、50年は「脱炭素化時代」と位置付けられ、前者は、温室効果ガスを排出するエネルギーの使用量を極力抑制する時代、後者は、基本的には温室効果ガスを排出するエネルギーそのものを極力使用せず、仮に使用した場合でもそこから排出される温室効果ガスを森林吸収のレベルにとどめて実質排出量をゼロにしたいとする時代である。

つまり、30年と50年の目標年次は、実はかなり異なった局面にあることに留意しなければならない。従って、これらの目標の実現に資する諸施策も大きく異なることになる。

まずは、30年を目標年次とする「低炭素化時代」に向けた施策である。そこでは、温室効果ガスの排出量を可能な限り削減することが重要となる。そのためには、エネルギー使用量を可能な限り縮小することが必要であり、それが最も単純で、最も実現性の高い方法である。

ごく当たり前の表現で恐縮だが、省エネルギーをはじめとするエネルギーの効率的な利用が絶対的に必要であり、仮にエネルギーを利用するにしても、可能な限り温室効果ガス排出量が少ない燃料などへの転換が必要となる。

つまり、まずは無駄な使用の排除、節約、効率的な機器やシステムの開発と使用によって温室効果ガスの排出量を減少させ、加えて原子力や太陽光・風力利用など温室効果ガスを排出しないエネルギー源への転換を図ることが必要であり、一方では天然ガスなど、温室効果ガス排出量が比較的少ないエネルギーへの積極的な転換なども武器となる。

今日、石炭火力発電におけるアンモニアの注入など新しい技術の実用化が期待されているが、要するに、この時代は天然ガスも石炭も制限付きで使用しながら、「低炭素化」に向けた努力をする時代といえる。しかし、時間は今からわずか8年しかない。

次に、50年を目標年次とする「脱炭素化時代」に向けた施策はどのようなものか。基本的には温室効果ガスを排出するエネルギーは使用しないという時代を迎える。そこでは水素の利用が大きな課題となろうが、製造過程で温室効果ガスを排出する、いわゆる従来型のエネルギー由来の水素では駄目だというのだから、かなり厄介だ。

【マーケット情報/2月25日】欧州、中東原油が急伸、供給不安が強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。ロシアのウクライナ侵攻にともなう供給不安を背景に、北海原油の指標となるブレント先物、および中東原油を代表するドバイ現物は急伸した。24日時点で、ブレント先物は99.08ドル、ドバイ現物は99.75ドルを付け、2014年9月上旬以来の最高値となった。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、米国や欧州連合(EU)、日本、豪州、カナダなどが相次いで、ロシアに対する経済制裁を表明。米国、EU、日本は国際銀行間通信協会(SWIFT)から、ロシアの一部金融機関を締め出すことで合意した。ロシアのエネルギー輸出に対する直接的な制限ではないものの、決済に影響が出た場合、結果的にロシア産原油の供給が滞る可能性がある。

一方、米国、豪州、日本および韓国は、国際エネルギー機関と協調し、必要に応じて戦略備蓄を放出する意向。また、米国の週間在庫は、前週から増加。さらに、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表する同国の石油リグ稼働数は、前週から2基増加して522基となり、米国原油の指標となるWTI先物の上昇を、幾分か抑制した。

【2月25日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=91.59ドル(前週比0.52ドル高)、ブレント先物(ICE)=97.93ドル(前週比4.39ドル高)、オマーン先物(DME)=92.68ドル(前週比1.79ドル高)、ドバイ現物(Argus)=96.86ドル(前週比6.76ドル高)

【省エネ】空気熱を再エネに EUの冷房CO2削減


【業界スクランブル/省エネ】

地球温暖化および温熱快適性への要求の高まりから、冷房のエネルギー消費およびCO2排出量は増大し続けており、当該分野のCO2削減策は世界全体における重要課題である。昨年12月に、EUの行政執行機関である欧州委員会が「冷房および地域冷房における再エネ利用量の算定方法規則」を世界で初めて決定した。規則案は欧州議会と欧州理事会で審議され、早ければ2カ月程度で成立する見込みである。

欧州でも、ヒートポンプが利用する周辺環境熱(Ambient Heat)である空気熱や地中熱、河川水熱を再エネと定義しており、当該再エネの利用促進によるCO2削減に積極的に取り組んでいた。日本でもエコキュートなどで、「空気の熱を集めてお湯を沸かす」という表現が使われているが、エアコン冷房では、室内熱をヒートシンクである外気に運ぶことにより、室内を冷やしている。外気の温度は、「宇宙空間への熱放射」と「太陽光で温められた地表面からの熱伝達」で一定の温度に保たれており、人類が熱を捨てても、熱を取り出しても回復する再エネである。

一方、EUでは温熱利用の算定方法を定めていたが、冷房利用の算定方法が未確定だったため、冷房の再エネ利用量を定量的に評価できなかった。今回、エコラベル最低認証効率のヒートポンプによる算定再エネ利用量をゼロ基準として、より機器効率が高くなるほど算定再エネ利用量が増大する計算方式を採択した。よって、冬季において、外気熱を熱交換して冷熱を製造するフリークーリングとも呼ばれる、システムの算定再エネ利用量を相対的に大きく評価している。これは、機器の省エネ性能を表示するエコラベル制度を超えた効率向上・エネ消費削減・CO2削減を促進させるための施策でもある。

欧州ではCO2排出量55%削減の目標達成に向け省エネ促進制度と再エネ促進制度をうまくリンクさせて、冷房分野のCO2削減施策を講じている。日本でも、既存の諸制度群の縦割りを超えて、最終的な全体最適で目標を実現させる力が必要だ。(M)