ドイツで原発3基停止 化石依存増大は不可避


元日に発表されたEUタクソノミーの方針では原子力を「持続可能」と認めたが、ドイツは脱原発方針を堅持したままだ。大みそか、エーオンとRWEが稼働中の原発6基のうち3基を停止。ショルツ政権は、メルケル前政権が掲げた2022年末脱原発完了に向けひた走る。中道右派から左派主導政権に交代し、連立には経済界寄りの自由民主党もいるが、環境派の緑の党が存在感を増しており、当然の方針だろう。

力点を置くのはやはり再生可能エネルギー政策で、総発電量の再エネ比率を30年80%、太陽光は同年までに200GW(1GW=100万kW)などと壮大な目標を掲げる。だが、冬場の日照時間が短いドイツで太陽光の発電量をどれだけ積み増せるのかは疑問だ。

米国のある有力環境NGOは、ドイツの発電用化石燃料消費量は22年に増加すると予想している。気象条件や電力需要が21年並みの場合、太陽光・風力発電の追加では原発の損失を補えないためで、結果、22年の電力部門の温暖化ガス排出量は21年と比べ8%程度増加する見通し。

エネルギー危機のただ中で、ドイツはどこまで脱原発方針を堅持できるのか。

脱炭素社会へ正念場の年  「不都合な真実」直視し協調を


【論説室の窓】竹川正記/毎日新聞論説副委員長

COP26で脱炭素化は国際的な合意を得たが、その直後に各国は化石燃料の取り合いを始めた。

浮き彫りになっているのは、カーボンニュートラルという「理念」と「現実」との間の壮大なギャップだ。

 「われわれがこの問題を何かしら解決したなどと勘違いしようものなら、致命的な過ちになりかねない」――。

英国グラスゴーで昨秋開かれた国連気候変動枠組み条約の第26回締約国会議(COP26)。参加した197カ国・地域が「産業革命前からの気温上昇を1・5℃に抑える」「石炭火力発電を段階的に削減する」と合意できたにもかかわらず、議長国・英国のジョンソン首相の記者会見は厳しい発言が目立った。

COPの崇高な理念をよそに、足元では脱炭素化の取り組みの後退を示す「不都合な真実」が露呈していたからだ。

再エネ加速で電力不足 化石燃料依存に逆戻り

象徴的なのが昨年半ばに始まった欧州発の天然ガス価格の歴史的な高騰劇だ。英国を含む各国は近年、風力や太陽光発電を軸に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーシフトを加速させてきた。ところが、皮肉にも気候変動問題を背景とした天候不順で再エネ発電の稼働率が低下。新型コロナウイルス禍からの経済活動再開が重なり、深刻な電力不足に陥った。各国は火力発電で補おうと天然ガスの調達に一斉に走った。

だが、エネルギー企業に対する環境規制の強化や、化石燃料関連への資金提供を敬遠するESG(環境・社会・企業統治)投資拡大による新規開発の停滞も災いし、天然ガス需給は極度にひっ迫。価格が一時、原油換算で1バレル当たり200ドルを超える異常事態となった。天然ガスの代替需要で原油や石炭の価格も跳ね上がった。

欧州と協調して脱炭素化を推進してきた米国のバイデン大統領も「直ちにグリーン経済へ転換するのは困難」と認め、最近は石油やシェールガス採掘規制の緩和に動いている。日本や中国を巻き込んだ異例の原油の国家備蓄放出まで余儀なくされた。「脱炭素に逆行する」との批判もものかは、電気代やガソリンの価格高騰などが国民や企業を苦しめる事態に「背に腹は代えられない」ということだろう。

欧米と同様に風力発電の稼働率低下で昨秋に大規模停電が発生した中国は、温暖化対策上「禁じ手」としていた石炭火力向け国産炭の増産にまで踏み込んだ。

今では世界的な化石燃料高騰がさまざまな原材料価格を押し上げる「グリーンフレーション」が懸念されている。脱炭素の取り組みを示す「グリーン」と、継続的な物価上昇を表す「インフレーション」を組み合わせた造語で、性急過ぎる脱炭素化の流れに実体経済が追い付かないジレンマを示す。

年明けには、電力用の一般炭で世界最大の供給国であるインドネシアが1カ月間、石炭の輸出禁止措置を発動し、業界に衝撃を与えた。国内の電力供給の安定確保を優先するためというが、化石燃料不足が価格高騰にとどまらず、供給停止に発展するリスクが意識された。エネルギーの大部分を輸入に頼る日本が厳しい状況に直面していることは言うまでもない。

COP26が高らかにうたった合意と裏腹に、相次いで表面化した「不都合な真実」が示す教訓は何か。それは2050年のカーボンニュートラルという「理念」と、世界各国が経済活動や社会生活を維持するために当面、化石燃料を使い続けなければならないという「現実」との壮大なギャップだろう。

 欧州委員会が1月1日に、原子力発電と天然ガスを「温暖化対策に役立つエネルギー源」として認め、環境に配慮した持続可能な投資先(タクソノミー)に分類する方針を示したのも、再エネ一辺倒の直線的な脱炭素化の取り組みでは危ういと判断したからだ。実需があるにもかかわらず、理念だけで化石燃料を無理に排除しようとすれば、投機マネーに目を付けられて相場が混乱するのは必定だ。ESGブームの圧力で欧米エネルギー企業が化石燃料の開発・投資から撤退を続けることで中東やロシアなど資源国の影響力が強まり、地政学的なリスクも高めている。

手段だけに目を奪われずに 実効性のある工程表が必要

経済産業官僚時代に京都議定書に関する国際交渉を手掛けた有馬純・東京大学公共政策大学院特任教授は、交渉の実態について「『地球環境を守るために力を合わせましょう』という美しいものではなく、各国は完全に国益で動いている」と解説。「温室効果ガスの削減は、地球レベルでの『外部不経済の内部化』であり、そのコストを各国の間でどう負担するかというゲーム」と喝破する。その上でCOP26の成果を認めつつ「地球全体の温度目標を定めるトップダウンの性格と、各国が実情に応じて目標を設定するボトムアップの性格が微妙なバランスを取っていたパリ協定の性格を大きく変えることになる」と指摘し、先進国と途上国の対立激化を懸念する。

有馬氏が言うように本質が各国の産業競争力や雇用をかけたゲームだとしても、欧米による自国への利益誘導が目立つままなら、世界的な脱炭素化の取り組みは行き詰まりかねない。

電力不足を各国は天然ガス火力で補おうとしている

問題は、COPが石炭火力削減やガソリン車の排除、カーボンプライシングなど脱炭素化の手段にばかり熱心で、世界全体が化石燃料依存からどう脱して、再エネに転換するかという実効性ある工程表づくりを怠ってきたことだろう。脱炭素社会というゴールに到達するには、再エネの安定電源化に不可欠な大容量の蓄電池開発や、水素の活用、メタネーションなど相当の技術革新が必須だが、いずれも発展途上だ。それまでの数十年間は、省エネや火力発電の低炭素化などあの手この手で化石燃料依存を秩序立てて減らしつつ、経済や生活に必要な石油や天然ガス供給は確保しなければならない。

日本は欧米が主導する脱炭素化の国際ルールづくりに乗り遅れまいと焦燥感を高めるが、アジア各国や中東産油国などと連携し世界共通の脱炭素化の工程表づくりにも乗り出してほしい。回り道のように見えても、そうしてCOPの協調を支えることがルールづくりで主導権を取り戻し、国益に資する道につながるはずだ。

関係者を困惑させた 容量市場価格の大幅下落


昨年12月末に公表された、容量市場の第2回メインオークションの結果が関係者を困惑させている。2025年度を実需給年度とする約定価格が、北海道と九州で1kW当たり5242円、それ以外で3495円となり、前回の約定価格1万4137円と比べ大幅下落したためだ。

約定総容量は1億6534万kWで、これにFIT電源の期待容量を加算すると1億8423万kWとなり、追加オークションなく電力広域的運営推進機関が設定した目標調達量を満たすことができる。つまり、この約定結果は、市場に電源が十分にあるため価格が下落したことを示している。

だが、昨今の厳しい需給を踏まえれば、この結果は関係者の実感とは相当かけ離れていると言わざるを得ない。前回よりも、指標価格以上で応札する電源が大幅に減少し、一方でゼロ円入札を行った電源が大幅に増えたわけだが、学識者の一人は「なぜ多くの発電事業者がそのような応札行動を取ったのか」と首をかしげる。果たして、将来の供給力を確保する手段として妥当な制度なのか。是非を問う議論が再燃しそうだ。

【コラム/2月8日】2022年財政を考える~バラ色展望で財政破綻状況脱皮は可能か


飯倉 穣/エコノミスト

1,経済は、コロナ感染ショックで「収束なければ回復なし」である。コロナ前に比し5%程度の水準低下が続く。先行き米金融政策も気懸りである。その現実を直視せず、政策手段・効果曖昧なまま水準回復狙いも込め、22年度予算も高水準の歳出(支出)が続く。

「膨張 107兆円予算案 コロナ予備費5兆円 税収最高見込む 閣議決定」(朝日21年12月25日)、「107兆円予算案 減らせぬ費用多く 社会保障・国債費60兆円超 新規事業1%未満 成長に回らず」(日経同)。

報道も、コロナで諦めの体である。吟味・批判少なしである。そして財政見通しも暗い。

「高成長前提 遠い財政黒字、25年度目標維持、試算に甘さ「賢い支出」欠かせず」(日経22年1月15日)。只今、財政健全化展望なしである。いずれ国民の生活に塗炭の苦しみを招来しないか。今日の財政を考える。

2,22年度予算の経費内訳は、最大の社会保障費36兆円に次いで、国債費24兆円と歳出の23%を占める。一応公債償還原則60年と利払いを維持する。財源は、税収65兆円、借金37兆円(公債依存度34%)である。普通国債残高は、年度末予想1,026兆円で、GDP比184%である。繰言ながら当初予算ベース28年連続公債依存度20%超 (90年代前半10%台、後半20%台、99年以降30%台以上)、96年以降27年連続特例公債(赤字国債)発行となる。

この40年間、米国要求、オイル・円高・金融等ショックに加え直近はコロナ感染対策で、政治主導の「国を食い物に」する歳出を編成して来た。数字は物語る。巨額財政赤字への感覚麻痺である。我が国の長期にわたる公債依存度は、緊急対策、不況対策の位置づけを越える。なぜ消費税率を引き上げたのか、なぜそれまで財政頼りの経済とするのか。

3,この財政状況を憂慮する現職次官の嘆きも登場した。財務省作成「日本の財政関係資料」を見れば、破綻状況は一目瞭然である。他国との比較には、目を閉じたくなる。事務方トップのやや情緒的な論考は「バラマキ合戦の政策論に一言。国の長期債務残高はGDPの2.2倍、歳出と歳入推移が示す「ワニのくち」は拡大傾向、楽観的成長率を前提とした税収期待でよいのか。単年度財政収支をプライマリーバランス内に、社会保障制度持続に消費税は必要、引き下げは論外。財政破綻回避の努力が必要」と訴える(「財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」」文春21年11月号)。

 これに対し次号で積極財政派の異見の紹介もあった。インフレ、財政危機に懐疑的な立場から、低金利・低インフレ・低成長なら財政出動は短期赤字だが、結果的に債務比率引き下げ実現と述べる。つまり財政出動が財政を健全化すると強弁する。L&Gの円天「使っても減らない通貨」を思い出す。

4,過去を振り返る。第一次オイルショック以降、経済低下に伴う財政出動とその後の財政悪化懸念・財政健全化努力の繰返しであった。財政再建の歴史も40年を超える。国民世論や経済の現状認識の読み違いによる失敗や後遺症が目立つ。例えば大平正芳内閣での一般消費税導入の失敗(79年)、中曽根康弘内閣の売上税導入失敗(87年)、細川護熙内閣の国民福祉税導入の失敗(94年)、橋本龍太郎内閣の六大改革に合わせた消費税増税実施と緊縮財政の組合せのタイミングの悪さ(97年)が目に沁みる。他方、不完全ながら前進例もある。竹下登内閣の消費税導入(89年)、村山富市内閣の97年4月実施の消費増税決定(94年)、野田佳彦内閣の財政再建・社会保障・税一体改革の関連法制定(12年8月)である。

5,財政赤字継続の論理は、様々である。まず経済論がある。不況時に財政拡大で需要創造・雇用確保というケインズ効果を狙う。最近登場のMMT(現代貨幣理論)派は、政府紙幣発行・財政支出拡大を是認する。

ビジネス、社会、政治サイドの強欲もある。低成長下、近時の経営感覚は、自立自営の精神を忘却し、苦境を国の助けで乗り切る姿勢が目立つ。国民のモラル崩壊もある。ほいど根性的社会保障の外延的拡大である。働く意欲の低下で、貧しさを国の責任・国頼りとする。朦朧状態のエコノミストの無責任さもある。また日本的思考(科学的精神不足)は、困難なことを回避・先送りし自分で決めない。

6,財政の基本は何か。経済の流れで財政を考えれば、生産、所得、支出で、支出の項目内にある。国民は、所得の一部を必要な公的サービスのために支出(税負担)する。その負担が国民生活の質を向上する。その際、財政支出のうち経常支出を税収で賄うことは、経済の原理、財政の基本原理である。公共投資を賄う建設国債の発行にも限度がある。公債発行に伴う金融市場の影響も無視できない。つまり国債は、金利を税収で賄ううちは、国民の財産で投資対象だが、金利を税収でなく国債で支払うことになれば、紙切れとなる。

各国の姿勢も様々だが、EUは、財政均衡目標(財政赤字GDP×3%以内、国債務残高GDP×60%以内)を掲げる。米国には「節約が第一の徳、公債は恐るべき最大の危険」(トマス・ジェファーソン1816年7月21日)の言葉がある。節度ある経済運営の必要性を示唆している。

7,政府の「中長期の経済財政に関する試算」(22年1月)は、財政破綻危惧もなく、何とか凌いでいけると繕う。現実は、低成長下で国家の借金はますます積み上がる。いずれ選択を迫られる。

第一の道は、縮小均衡後、安定経済の道である。国民負担(適切な増税と歳出の合理化)となる。第二の道は、財政破綻、スタグフレーションの道である。国民負担の先送りは、コストプッシュ等インフレ等の形で付けが回ってくる。第三の道は、財政を語らず、破綻待ちである。破綻後調整という投遣りである。第四の道は、拡大均衡型の経済成長期待路線の継続である。過去何度も挑戦し失敗している。根強い妄念が存在する。最近の民主党政権、安倍政権は名目3%実質2%を打ち出していた(机上の空論か数字合わせ)。いずれ第二の道に合流する。岸田政権はどの道であろうか。今後を見つめたい。

どのような対応を行うべきか。経済への影響を考慮すれば、まず歳入増を行い、その次に歳出削減することが賢明である。財政学は、政治学であることを改めて思い返したい。財政規律の言葉が示すように政治家の知性と理性と倫理観が肝要である。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

「経営ビジョン2・0」を発表 地域・社会の持続的な発展に貢献


【中部電力】

中部電力は事業環境の激変に対応するべく、2050年の社会を見据えた「経営ビジョン2・0」を発表した。
また市川環境HDの株式取得も実施。脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを加速させる。

脱炭素化に向けた政策の加速、新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化、DXの進展―など、ここ数年のエネルギー業界は激しい変化の波にさらされ続けている。

2021年11月、中部電力はこうした事業環境の激変に対応するため、18年3月に策定した経営ビジョンを更新し、「中部電力グループ 経営ビジョン2・0」を発表した。

経営ビジョン2・0は、50年に目指すべき社会像を、「脱炭素」化された「安心・安全」な「分散・循環型」社会と想定。グループの人財一人ひとりの成長・活躍が企業価値そのものであり、その推進が地域・社会の持続的な発展に貢献するとの理念に基づき、「2030年までに実現すること」をより明確化した。

林欣吾社長は、「人財戦略を強化するとともに、技術開発および多様なアライアンス先との連携・共創を一層推進し、全てのステークホルダーの皆さまとともに、持続的な成長を実現していきます」と話している。

社会システムを脱炭素化 再エネ目標を320万kWに

経営ビジョン2・0では、「地域・セクター(インフラ)と共生・連携したエネルギーシステムおよび社会システムの脱炭素化」を新たに掲げている。具体的には、再生可能エネルギーの拡大、原子力の最大限の活用、火力発電における水素・アンモニアの混焼、省エネソリューションの展開など、あらゆる領域で脱炭素化への取り組みを加速していく。特に再エネは、30年ごろに向けた拡大目標として、これまでの目標(200万kW)より一歩踏み込み、320万kW以上を目指す。

30年に向けては、事業領域の拡大とビジネスモデルの変革にも取り組む。具体的には、主力事業であるエネルギー事業に加え、不動産事業、資源循環事業などへと事業領域を拡大する。同時に、これらの事業間を相互につなぐプラットフォーム領域や、データを活用した付加価値の高いサービスの提供を実現するアプリケーション領域での取り組みを加速し、ビジネスモデルを変革する。全ての領域で、地域社会・お客さまの多様なニーズに合ったソリューションをタイムリーに届けていく。

林社長は、「これからもお客さまや社会に必要とされる企業グループであり続けるため、お客さまや社会が求める価値を起点に新たなサービスを創出し、エネルギーとともにお届けするビジネスモデルへの変革に中部電力グループの人財一人ひとりが取り組んでいきます」と意気込んでいる。

連結経常利益2500億円の達成に向けては、21年度から30年度までの10年間で1兆円程度の戦略的投資を実施する方針。グローバル事業に4000億円程度、再エネ事業を中心に4000億円程度を投資するなど、戦略的投資を加速し、バランスの取れた利益ポートフォリオの実現を目指す。

事業環境の変化を踏まえて経営ビジョンを更新

市川環境HDの株式取得 循環型社会実現を推進

経営ビジョン2・0で掲げた「循環型社会の実現」に向け、中部電力は21年12月、大手機械メーカーであるクボタとともに、資源循環事業を展開する市川環境HDの株式の27・8%相当をそれぞれ取得したと発表した。

市川環境グループは、廃棄物処理事業を資源循環事業に高めるべく、バイオガス発電やプラスチックリサイクルなどの先駆的な取り組みを展開しており、業界で高い評価を得ている。

一方、クボタグループも、廃棄物処理に関わる技術・製品に加え、国、地方公共団体などが運営する処理施設の設計・施工や運転、メンテナンスの受託などの事業を有している。

中部電力とクボタは、「両社が有する豊富な経営資源と市川環境グループの資源循環事業に関する豊富な実績・知見などを相互に組み合わせることで、循環型社会の実現に向けた取り組みを強力に推進していきます」としている。

中部電力グループは、50年に向けた「地域・社会の持続的な発展への貢献」のため、経営ビジョン2・0で掲げた取り組みを着実に進めていく構えだ。

資源循環事業に新たに参画 

【覆面ホンネ座談会】脱炭素化実現には程遠い⁉ エネルギー束ね法案を両断


テーマ:エネルギー関連法改正案

1月に開会した通常国会。エネルギー関連では「電気事業法」「エネルギー供給構造高度化法」「省エネ法」「JOGMEC法」の改正案が「脱炭素化法案」として束ね審議される見通しだ。エネルギー業界関係者が、改正案のポイントについて意見を交わした。

〈出席者〉  A電力業界関係者  Bアナリスト  Cガス業界関係者

――エネルギー関連法の改正案について、どんなところに注目しているのだろうか。

A エネルギー供給構造高度化法は、電力小売り事業者に非化石価値の調達義務を課すもの。2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減するという目標(NDC)を政府が掲げる以上、現行の非化石電源比率44%では整合が取れないため、本来なら変えるのが望ましいが、政府目標があくまでも野心的なマニュフェストであるとすれば、制度として法律に落とし込んでしまうのは性急な感じがする。

B 30年度46%削減といった瞬間にエネルギーの供給側だけではなく、需要側に相当手を入れなければならなくなった。需要家側の取り組みをサポートするような制度に変える必要がある。実際、今回審議される法案はそれを実現するための制度改革に力点が置かれはじめているのが分かる。44%は矛盾が生じるけど、供給側の規制でしかない高度化法はむしろ骨抜きにしてしまった方がいい。

C NDC46%と高度化法との整合という点で課題があるのは明らかだが、今回の改正では水素やアンモニア、合成燃料を非化石エネルギー源として位置付けることが一つの大きな狙い。その方向性については歓迎したい。都市ガス業界には、バイオガスの混入比率の目標があるが、今後は供給事業者にメタネーション(合成メタン)などが義務化されていくことになるだろう。裏表の関係にある省エネ法でも、同じような扱いになるはずだ。

今国会でも重要法案審議が目白押しだ

脱炭素化の主役は需要家に 高度化法は形骸化する

――国の政策目標との矛盾、制度間の矛盾がますます顕著だ。

A 高度化法の理念は正しいが、ステークホルダーの意見を聞きすぎて外部から見るとあまりに複雑で訳が分からないものになっている。それに加えて、大企業を中心に脱炭素化の取り組みを加速させるための「トップリーグ」改め「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」が始まる。これは産業技術環境局が所管していて、省庁間のみならず経済産業省内の縦割りも大きな問題だよ。

C それぞれの政策の司令塔が、その人の思いで制度を作っているので全体の整合が取れていないのだろう。カーボンプライシングと同じ文脈で、経産省がGX、環境省は恐らく税制で規制をかけてくるはずだ。

B 昨年11月に非化石価値取引市場に、需要家企業が直接FIT再エネ価値を調達できる再エネ価値取引市場が創設されたが、企業の国際競争力を低下させないため1kW時当たりの下限価格が0・3円に設定された。これに対し、(小売り事業者の)高度化法義務達成市場は0・6円が下限だから、小売り事業者が再エネ価値を売ることはほぼ不可能となる。省エネ法でも、企業の非化石エネルギー導入目標を設定しようとしていて、再エネ価値市場で調達したものをカウントできるようになってしまうと、省エネの取り組みも、再エネ投資も何の意味も持たない。つまり、需要家を助けるための施策が、既存の制度を無意味なものにしてしまっている。

A 高度化法をここまで骨抜きにしてしまうくらいなら、いっそガラガラポンで新しい仕組みを作ってしまえばいいと言いたくもなるね。再エネ価値取引市場はFIT電源が対象なので、FIT電源以外の非化石価値を顕在化させる高度化法義務達成市場の存在意義はなくならないだろうが、おっしゃるような懸念は確かにある。

C 46%目標にどこまで引っ張られてしまうのだろうか。製造業の熱利用分野には電化しにくい領域がある。法改正には、足元からの積み上げが必要で、逆に目標に引っ張られてしまうと、GXリーグにしろ、省エネ法の非化石導入目標にしろ、コミットメントしようとすれば事業から撤退するか海外に出ていくしかない。産業界にそのどちらかを迫っているのだということを自覚して、国が法改正を進めているのか甚だ疑問だ。

B 岸田首相の一声で始まったクリーンエネルギー戦略は、当初は原子力政策も入っていたようだが、会議資料からは、今はとにかく熱分野の電化を進めたいのだということがよく分かる。会議は、産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会の合同会議の立て付けだが、実際は資源エネルギー庁主導で供給側の論理で需要を語っている。供給コストが上がるというが、産業界の国際競争力と資金調達力向上という重要な視点が不足している。

C 将来的に、非化石の導入義務化まで踏み込めるのだろうか。産業部門のエネルギーの7割が化石エネルギー由来の熱。そこで46%削減にひもづいた目標を作れと言われても実現できるわけがない。

B 何を熱として供給すれば産業が残るのか、そういう技術的ソリューションを探りたいとは思っているのだろうけど、そう簡単なことではないよ。

高速炉計画に日本が参画 テラパワーに技術協力


新年早々、原子力業界に明るい話題が飛び込んできた。元日に読売新聞が「米高速炉計画に日本が参加へ」と報じたのだ。ビル・ゲイツ氏が会長を務める米テラパワーの進める高速炉開発計画に、日本原子力研究開発機構と三菱重工業が技術協力する。

原子炉で発生した熱を発電と蓄熱に振り分ける (提供:テラパワー社公式ウェブサイト)

後追い記事に甘んじた他紙は、「出所は経済産業省」とにらんだようだ。しかし記事は、読売の記者がテラパワーへ取材したことで得たスクープ。文部科学省、経産省幹部から裏を取った上で、満を持して元日1面で掲載した。

技術協力の対象となるのは、第4世代のナトリウム冷却高速炉。テラパワーはこれに溶融塩を利用した蓄熱システムを接続し、原子炉で発生した熱を発電と蓄熱システムに振り分けることで、電力需要に応じて発電量を増減する設計を構想している。

高速炉は将来の有望な原子力市場と目されている。その開発は中国やロシアが先行。米国ではエネルギー省も後押ししており、テラパワーは原子力機構、三菱重工業との協力を得て高速炉市場への参入を目指すもよう。だが、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定後、わが国の高速炉開発は腰砕け状態。日本側は相手にメリットのあるパートナーになれるだろうか。

【マーケット情報/2月4日】原油続伸、供給不安が一段と強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。政情悪化を受け、供給不調への懸念がさらに強まり、需給が逼迫した。

米国原油を代表するWTI先物は、4日時点で92.31ドルを付け、2014年10月初旬以来の最高価格を記録。また、北海原油の指標となるブレント先物、および中東原油を代表するドバイ現物も、それぞれ93.27ドルと89.89ドルとなり、2014年10月初旬以来の高値となった。

ウクライナ情勢の緊迫化を受け、米軍が東欧に到着。ロシアのウクライナ侵攻、それにともなう米国の対ロシア経済制裁の可能性が高まっている。ロシア産原油の供給が大幅に減少するとの危機感が一層強まった。

加えて、中東情勢も悪化。アラブ首長国連邦は2日、ドローンによる爆撃を受けた。同国は1月17日以降3度、武装勢力フーシの攻撃を受けており、供給不調の見通しが強まった。

一方、OPECプラスは3月の追加増産を、当初の計画通り日量40万バレルで合意。ただ、新型コロナウイルス・オミクロン変異株による経済活動への影響が限定的だったことから、供給不足になるとの予測が台頭している。さらに、一部加盟国の生産が、計画に追い付いていない状況が続く。イラクの1月産油量は、同国に割り当てられた生産枠を日量12万バレル下回った。

【2月4日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=92.31ドル(前週比5.49ドル高)、ブレント先物(ICE)=93.27ドル(前週比3.24ドル高)、オマーン先物(DME)=90.65ドル(前週比3.23ドル高)、ドバイ現物(Argus)=89.89ドル(前週比2.09ドル高)

【イニシャルニュース】 自民「大物」が落選 パーティー券の行方は


自民「大物」が落選 パーティー券の行方は

昨年の衆議院選挙で自民党では大臣経験もあるI氏、N氏、H氏など「大物」が落選。そのうち、大蔵省(当時)出身のN氏は党税調の幹部を務めた税制通。通商産業省(当時)出身のH氏も国会や党で要職を歴任、環境相も経験している。両氏とも業界団体などの陳情を受けることも多く、「政治資金パーティー券の販売に不自由しなかった」(政界事情通)。

業界団体や企業は、N氏、H氏のパーティー券購入の予算を確保していた。「これにエネルギー関係などの議員が目を付けている」(同)。選挙を勝ち抜くには、政治資金の確保が不可欠。資金難に頭を痛めている議員が、一枚でも多くのパーティー券を売りたいのは当たり前だろう。

一方、党の重鎮クラスになると、政治力に衰えが見えてもパーティー券販売に苦労することはないようだ。エネルギー政策に強い影響力を持つA氏は、小選挙区の落選で党要職を辞任。しかし、「パーティーは満席状態。最近は講師を呼ばず、A氏が一人で落選の理由などを話すことが多い」(同)という。

中立か当事者か 物議を呼んだ論考

昨年12月24日に公表された洋上風力事業者の公募結果を巡り、K大学大学院のY特任教授が「驚愕の洋上風力入札結果がもつ意味/事業化・産業化の実現性に疑義あり」と題した論考を、K大のウェブサイトに掲載したことが物議を呼んでいる。

三菱商事グループの落札に異議が

今回の公募では、三菱商事を中心とする企業グループが「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3区域を総取り。1kW時当たり11・99~16・49円という、FIT価格の3分の1~2分の1という著しく低い提示価格が、ほかの入札者をはじめ再生可能エネルギーかいわいを驚かせた。

Y教授は論考の中で、三菱商事グループの提案を「博打」と呼び、「事業規模、コスト、国内産業育成の3目標を一定の時間をかけて達成する目標を掲げ官民協議会でまとめた『洋上風力ビジョン』が破綻してしまう懸念がある」と強い危機感を示し、「国内産業育成を含む国家戦略を考えたときに、見直しを含めての再検討を要望したい」と述べている。

これに対してSNS上の複数のエネルギー業界関係者のアカウントが、「大学の先生が不正があったわけでもない入札結果に異議を唱えることこそ“驚愕”だ」などと、批判を展開したのだ。

そしてそれを知ってか知らずか、年明けに論考の続編が掲載され、今回落札できなかったN社を含む3社の具体名を挙げ、三菱商事グループよりもこれらが評価されるべきであったとの主張を繰り広げた。実はY教授は、このN社の関連会社の役員でもあり、今回の公募の当事者なのだ。

Y教授を知るX氏は、「要するに、教授の肩書で自分の会社のアピールをしているわけで、それが正論かどうか以前に、ポジショントークを中立そうな肩書で覆い隠しているように見える」と厳しく指摘する。

Y教授本人にとっては、純粋に日本の洋上風力開発の未来を思ってのことかもしれない。そうであればなおのこと、無駄な臆測を呼ぶことがないような形で意見を発信し、日本の再エネの未来に貢献していただきたい。

年末のLP業界が騒然 朝日トップ記事の波紋

「この記事は一体何だ!」

大みそかを控えた昨年12月30日、朝日新聞が朝刊1面トップで報じた記事に、LPガス業界が騒然となった。

「LPガス料金、月数千円を上乗せ違約金20万円請求の業界慣行も」の見出しで、リードには「戸建てやアパートに設置したガス配管や給湯器などの費用を、月々のガス料金に数千円上乗せして徴収する慣行が、LPガス業界で続いている。消費者がガス会社を変更しようとすると高額の違約金を求められることもある。経済産業省は、料金体系を透明化するよう業界に求めている」と書いてある。

要は、古くからLPガス業界の商慣行となっている「無償配管・貸付配管」問題の記事だ。何のことはないと言えば語弊があるが、これまでも散々報じられてきた話題であり、内容に目新しさはない。それだけに、「なぜ今ごろ?しかも1面トップで?」と、多くの業界関係者が疑問に感じたことだろう。

「30日朝、大手販売事業者Z社の幹部から電話があって、朝日はどうしてあんな記事を1面トップに載せたんだとか、記事は誰が書かせたのか分かるかとか、いろんなことを聞かれまくった。なぜZ社の人がこんなに騒いでいるのかと思ったよ」(業界紙関係者)

Z社は、首都圏に拠点を置く優良事業者として知られる。記事中には、北海道の話題は出てくるものの、個社ではなく業界全体の問題、しかもLP事業者に無償提供を要求する不動産業界の問題というトーンで書かれており、Z社が目くじらを立てるような要素は一見なさそう。強いて言えば、LPガスの契約や料金の不透明さを指摘していることぐらいか。

「経産省の関係者は朝日の記事を見て喜んでいた」(事情通)。記事の出所はおおむね想像がつく。LPガス取引に行政のメスが入るのか。

電力市場価格が高止まり 新電力経営に追い打ち


日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格の高止まりが続いている。端境期の10月ごろから上昇しはじめ、12月は連日、24時間平均のシステムプライスが15~20円を付けた。1月は、6、11日に東日本の複数の時間帯で実質的な上限価格となる80円まで高騰し、19日には全国で一律80円を付ける時間帯があった。システムプライスは30円を超え、全く落ち着く気配を見せない。

太陽光発電は積雪で出力が大幅に低下してしまう

価格高騰の背景には、火力燃料のLNG価格が高止まりしているのに加え、過去10年で最も厳しいとされる今冬の電力需給がある。これに、降雪や低温による需要増や発電所トラブルなどが重なり、さらに価格を押し上げていると考えられる。実際、6日には東京電力エリア、11日には北陸電力エリアで需給が厳しくなり、他エリアから電力融通を受けた。

こうした状況が、昨冬の価格暴騰で傷んだ新電力経営に追い打ちをかけている。既に高圧・特別高圧を中心とする新電力が、新規の顧客獲得停止や値上げ交渉に踏み切っていたが、一定の利益が期待できるはずの低圧を手掛ける新電力の間でも、新規の顧客獲得を停止する動きが出ているようだ。まさに、事業継続か撤退かの瀬戸際に立っている。

お客さまや地域の課題解決へ 新規事業で北陸の発展をけん引


【北陸電力】

植物工場事業を行う「フレデリッシュ」、電子回覧板サービス「結ネット」など新規事業が誕生している。

事業領域の拡大を図り、北陸地域の発展をけん引すると共に自社の成長戦略につなげる。

農業従事者の減少や天候不順による野菜の生育不良などの農業が抱える課題への対策の一つとして、屋内で水耕栽培を行う完全人工光型植物工場が注目されている。

「地域の課題解決」、「保有資源と新技術を融合したサービス」を新たな成長事業の開拓分野と定め、事業領域の創出を目指す北陸電力が中心となり、大気社と農林中央金庫と共に、2021年3月に植物工場事業を行う「フレデリッシュ」(福井県敦賀市)を設立した。

敦賀市との包括的地域連携協定締結式の様子

フレデリッシュでは、最新の空調設備や高効率LEDを用いた植物工場システム「ベジファクトリー」を導入。同システムで栽培した野菜は、室内の光や温度、湿度、養液、二酸化炭素などを完全に制御した環境で育てることにより、生菌数が圧倒的に少なく、鮮度が長持ちするため、食品ロスの削減に貢献することができる。

「ゼロカーボン・レタス」 昨冬に敦賀市で初出荷

フレデリッシュでは、21年11月よりレタスの生産を開始した。このレタスは、北陸地域の豊富な水資源により、水力発電が電源構成の約3割を占める北陸電力から調達した「水力発電由来の100%再生可能エネルギー電力」を使用して生産されていることから「ゼロカーボン・レタス」として、同年12月に初出荷された。

セレモニーでプレゼントされたバゲットサンド

初出荷を記念し開催されたセレモニーには、渕上隆信・敦賀市長をはじめ数多くの地元関係者が集まり、初出荷を見守った。参加者には、北陸電力が発案した敦賀市のブランド食材(敦賀真鯛、杉箸アカカンバ、東浦みかん)とゼロカーボン・レタスを使ったバゲットサンドをプレゼントし、地元食材のPRも行った。この取り組みは、21年6月に北陸電力がゼロカーボンシティ宣言をしている敦賀市と締結した包括的地域連携協定に基づくものだ。

今回の初出荷を受けてフレデリッシュ社長の岡義仁氏は「食料の安定供給など社会課題の解決を目指すと共に、敦賀市をはじめとする北陸地域の発展につながるよう、従業員一丸となってこの事業の拡大を図っていきたい」と意気込みを語った。レタスは、業務用としてコンビニのサンドイッチやスーパーの総菜向けに出荷するほか、地元JA(農業協同組合)の直売所でも販売されている。将来的にはレタス以外の野菜の生産も行う予定だ。

初出荷された「ゼロカーボン・レタス」を披露する「フレデリッシュ」の岡社長

地域活動の運営デジタル化 「結ネット」アプリの開始

北陸電力では、創立以来70年にわたり、事業活動を通じて「北陸の発展に貢献する」という思いを脈々と受け継いでいる。長期ビジョンでもありたい姿として「北陸地域と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」を掲げており、地域が抱える課題やニーズに積極的に対応し、お役立ちの精神で地域の発展をけん引している。現在、北陸電力エリアの51自治体のうち23自治体と包括連携協定を締結し、災害対策の強化や観光振興・まちづくり、環境・エネルギー問題への対応など、それぞれの自治体が抱える課題解決に向け、一体となって取り組みを進めている。また、暮らしのお役立ちに貢献するため、21年10月から地域の自治会組織の運営デジタル化を目的とした地域ICT(情報通信技術)プラットフォーム「結ネット」アプリの導入支援・運営事業を開始した。

「結ネット」では、スマートフォンやタブレットのアプリとして、地域自治会の電子回覧板や自治体・店舗からの情報発信ツールとして利用できるほか、災害時には安否確認システムとしての活用が可能だ。クラウド型ポータルサービスで、これまでの自治会・町内会の活動を継承しながら、新しいカタチで活動を維持、サポートしていくものである。

「結ネット」アプリのイメージ

同システムは石川県金沢市にあるCPU社が開発したもので、北陸電力は同社と普及拡大協定を締結し、地元自治体や町内会への提案活動を行っている。また、地域住民の安全・安心な暮らしに向けて「停電情報お知らせサービス」や「住宅見守りサービス」、「AI(人工知能)を用いたクマ出没自動検出システム」といった北陸電力グループ独自のお役立ちコンテンツを順次提供していく。

結ネットのPRを担当する環境・地域共創部の在原真慈課長は、「北陸電力の社員は地域のために何かしたいとの思いが強い。結ネットをはじめ地域のニーズに合ったサービスの提供を通じて、持続可能でスマートな地域づくりに貢献していきたい」と語った。

北陸電力は、電気事業以外においても地域と一緒に発展できる企業をこれからもめざしていく。

燃料費が調整上限を突破 先行する北陸に他電力も追随


エネルギー資源価格が再び騰勢を強めている。1月20日現在の米ニューヨーク市場の動向を見ると、ウクライナ情勢への懸念などから原油先物価格がt当たり86ドルを突破した。石炭先物価格もインドネシアの石炭輸出停止の影響などから同223ドルに。LNG先物については、プラッツ社のJKMが3月分で100万BTU当たり20ドル台半ばと依然高値圏で推移している。

石油火力向けに国家備蓄の放出を求める声も

こうした中、大手電力の規制料金に適用されている燃料費調整額について、北陸電力の2月分の平均燃料価格(21年9~11月の貿易統計実績)が1kl当たり3万4100円となり、基準価格の1・5倍に当たる上限の同3万2900円を突破した。また3月分料金では北陸に加え、関西、中国の電力2社の燃料価格が調整上限を超えた。東北、四国、九州、沖縄の電力4社も上限に迫りつつある。一方、北海道、東京、中部の電力3社については、上限に達するまで比較的余裕がある状況だ。

平均燃料価格が上限を超えた分は電気料金に反映されず、大手電力側が負担することになる。16年4月の小売り全面自由化以降、料金設定の自由度が拡大し上限は廃止される方向だが、経過措置の規制料金では依然として上限制度が残ったまま。全面自由化前に比べ、規制料金の割合が年々減少しているとはいえ、全国の契約口数を見ると低圧部門の約7割を規制料金が占めている。

今後も燃料費の上昇が続けば、大手電力の業績に少なからぬ影響も。北陸は上限超過分の費用について先物の活用など自社努力で吸収する構えだ。以前は値下げ改定によって基準価格を引き上げる裏技もあったが、さすがに今は……。

自治体で相次ぐ太陽光条例 深刻化する乱開発に反社の影


山間部などにおける太陽光発電所の乱開発を巡るトラブルが後を絶たない。一部では反社勢力の影も。

自治体は独自の太陽光条例を制定するなど、規制強化に向けた動きを加速させ始めている。

某県某市の山間部メガソーラーの建設現場。発電所の開発を手掛けている中堅デベロッパーA社の下請け工事会社が、産業廃棄物の不法投棄やずさんな施工を行っていた問題が明るみに出た。消息筋によると、A社は地元住民とのトラブルが絶えない悪質事業者として知られ、反社会的勢力とのつながりが浮上している。何らかの資金が裏社会に流れているのか。建設反対運動を展開するNPOでは、県庁や県警本部などと連絡を取り合いながら、実態の解明を慎重に進めているという。

「FIT(固定価格買い取り制度)に基づく長期安定収入が見込める太陽光事業は、反社にとっても実にうまみのあるビジネスと言っていい。産廃事業の延長線で手掛けることができる上、国のお墨付きを得た『環境貢献』という大義があるので、世間の理解を得やすいメリットもある。資金源の一つになっていても不思議ではない」(元警察暴力団対策関係者)

太陽光の乱開発は年々深刻化している。例えば奈良県平群町では、メガソーラー建設のため山林を伐採して盛り土を造成している土の中から、コンクリート片やガラス片の産業廃棄物が見つかった。災害の誘発を心配する住民側は昨年3月、工事の差し止めを求めて奈良地裁に提訴し係争中だ。7月3日に静岡県熱海市で盛り土崩壊による土石流災害が発生したことも、地元の不安に拍車を掛ける。

愛知県南知多町では、名古屋市内の事業者が太陽光建設のため広範囲の山林を切り崩した。その際、樹木の無断伐採や町道の損傷などが多数確認され、河川への土砂流入なども懸念される事態に。事業者側は「誤伐採」「業務指示の間違い」などと釈明しているが、町の届け出に不備があったことや低圧分割案件として規制を逃れていたことなどが判明し、住民側の不信感は募るばかりだ。

岩手県遠野市、宮城県丸森町、栃木県那須塩原市、茨城県笠間市、埼玉県小川町、山梨県甲斐市、静岡県伊東市、同函南町、長野県諏訪市、兵庫県宝塚市、岡山県岡山市、長崎県佐世保市―。メディア報道を見るだけでも、太陽光反対運動が盛り上がっている地域は、枚挙にいとまがないほどだ。

全国175自治体が条例 実効性には疑問の声も

こうした中、乱開発に「待った」をかける自治体が続々と登場し始めている。地方自治研究機構の調べによると、太陽光など再生可能エネルギー設備の設置を規制する単独条例は、大分県由布市が2014年1月29日に施行したのを皮切りに増え始め、令和時代に入ると加速。昨年末現在、都道府県が5条例(表参照)、市町村が170条例となっている。関係者によれば、今春には宮城県が太陽光条例を策定する見通し。それでも全国47都道府県・1718市町村という分母を踏まえると、9割近くが未対応の状況だ。

太陽光発電の導入・設置に関わる法令は、国土利用計画法、都市計画法、農地法、海岸法、森林法、河川法、道路法、工場立地法、土壌汚染対策法、環境影響評価法、自然公園法、砂防法、FIT法など多岐にわたる。開発規制を抜本強化するには国家レベルの関与が不可欠なだけに、自治体条例にどれほどの実効性があるのか、疑問視する向きも少なくない。

実際、19年6月に再エネ条例を制定した函南町では、メガソーラー計画の事業地が条例の「抑制区域」に位置し、町長が不同意を示しているにもかかわらず、事業者側は計画を継続中。また伊東市では、地元住民の反対を理由に太陽光設置工事のための河川占用申請を却下された事業者が、太陽光条例に基づく市長の同意を受ける義務がないことなどの確認を求める訴えを静岡地裁に起こした。

「確かに条例の効力は弱いとの見方もあるが、重要なのは、自治体の首長が太陽光乱開発は絶対許さないという強い姿勢を対外的に示し、対策を打ち出すことだ。これが住民を勇気付け、国を動かす原動力になる。その意味で、山梨県の長崎(幸太郎)知事の動きは素晴らしい。わが県の川勝(平太)知事もぜひ見習ってほしい」(静岡県の太陽光反対運動関係者)

〝環境犯罪〟と化す乱開発 「法的措置も辞さず」

昨年10月に太陽光条例を施行した山梨県。長崎知事は本誌1月号のインタビューで次のように述べている。「この条例に違反した建設に関しては法的措置も辞さない毅然とした態度で臨みます。最高裁まで徹底的にやり合う覚悟です。そういった事態も想定して条例は入念に設計しています」

都道府県の太陽光条例制定の状況

太陽光が長期安定収入をもたらす金融商品と化した現状に着目し、国に対しFIT認定の取り消しを求めることができるようにした同条例。制定以来、他県からの問い合わせが相次いでいるという。裏を返せば、FIT利権に群がる悪質事業者が全国的に急増していることの証左だろう。

話題はそれるが、環境犯罪に立ち向かう警察関係者の孤軍奮闘を描いた『潜入捜査』シリーズの著者、今野敏氏は『終極』(実業之日本社文庫)の巻末インタビューで、興味深い見解を示している。

〈当時、環境問題と反原発というのは非常に結びついていたんです。私自身も関心がありましたし、それで調べていくうちに環境破壊はそれ自体が犯罪であるという発想が生まれてきた。環境を破壊するような犯罪行為、例えば産業廃棄物の不法投棄だとか違法な森林伐採、野生動植物の不法取引など、そういう犯罪が全国で頻繁に起こっていることも分かってきた。しかもこれらの犯罪は、暴力団の手を借りることで地下に潜って反社会化し、巨悪化している部分もある。(原文ママ)〉

今からおよそ30年前に同シリーズの第一作が世に出たことを考えると、卓見というほかない。

「脱炭素」花盛りの時代、再エネを舞台に環境犯罪が繰り広げられているとすれば、国は「一部の病理的な事象」(河野太郎・前規制改革担当相)として片付けている場合ではない。今こそ乱開発の撲滅に向けた強いメッセージを国民に対し発信すべきだ。悪質事業者を本気で排除しなければ、取り返しのつかない事態になろう。

三菱商事が洋上風力総取り 戦略的安値入札の衝撃


クリスマスイブに衝撃ニュースがエネルギー業界を駆け巡った。経済産業省と国土交通省は、公募していた洋上風力3地点の事業者にいずれも三菱商事グループを選んだ。決め手は破格のFIT(固定価格買い取り制度)価格だ。最安値の秋田県由利本荘市沖では1kW時11・99円、ほか2地点でも他社を寄せ付けない価格で入札し、価格点の評価はいずれも120点満点だった。

三菱商事グループが総取りした事業の実現可能性は(写真は秋田県能代市)

入札上限価格はIRR(内部収益率)10%を前提に同29円に設定していた。「結果は上限の半分以下で、陸上風力の買取価格よりも安い。3地点総取りを前提とした戦略的な値段設定だ」(風力業界関係者)

裏にはいくつかのポイントがある。例えば風車はいずれもGE製1万2600kWで、3地点で計134基を採用する。GEには欧州風力市場のシェア伸び悩みの事情もあり、破格の値段で交渉されたもようだ。「海外でも導入実績のない大型設備を、波が激しい日本海にいきなり使うのは相当勇気のいる決断」(同)と言える。

Amazon、NTTアノードエナジー、キリンが「協力企業」として名を連ねる点も要注目だ。PPA(電力販売契約)などで環境価値を数円上乗せして売電する戦略ではないかとみられている。

ただ、「国内ゼネコンなどのSEP(自己昇降式作業台)船ではこの発電単価は無理。うまくいかなければ事業を売却する可能性も。その際に地元対策などが継続されるか注意が必要」(同)など、産業化の観点での不安材料もある。

いずれにせよ今回の結果がベンチマークとなることは間違いない。経産省が思い描く洋上風力産業化の行方やいかに。

キシダノミクス「一番地」へ CE戦略に有力経産OBの影


 岸田文雄政権が新しい資本主義政策の柱に位置付けている「クリーンエネルギー(CE)戦略」の議論が、官邸主導の色合いを強めている。

官邸で開かれたクリーンエネルギー戦略の有識者会合であいさつする岸田首相(1月18日)

岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、新資本主義の取り組みとして「スタートアップ創出」「デジタル田園都市構想」と並べる形で「気候変動問題への対応」を挙げ、「CE戦略を議論する会議に私自身が出席し、炭素中立型に経済社会全体を変革していくために、関係各省で総力を挙げて取り組むよう指示を行うことにした」と意気込みを見せた。

これを受け18日には首相官邸で、CE戦略に関する有識者懇談会を開催。会合に出席した岸田首相は、「資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題」「カーボンニュートラル(CN)分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていく」「CE戦略では、どのような分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋の全体像を示したい」などと強調した。

第一次岸田内閣発足後の昨年10月8日に開かれた特別国会の所信表明演説では、「2050年CNの実現に向け、温暖化対策を成長につなげるCE戦略を策定し、強力に推進する」という程度の表現でしかなかったことを踏まえると、その変貌ぶりがうかがえよう。

首相演説で戦略の玉出し 気になるNTT・東電連合

国会や会見など公の場で岸田首相が発言した内容を振り返ると、CE戦略の玉出しが官邸主導で進められている様子が浮かび上がってくる。「目標実現には、社会のあらゆる分野を電化させることが必要。その肝となる送配電網のバージョンアップ、蓄電池の導入拡大などの投資を進める」(12月6日の臨時国会)、「カーボンプライシングを最大限活用していく」(1月4日の年頭会見)、「アジア・ゼロエミッション共同体と呼び得るものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指す」(1月17日の通常国会)――。

経済産業省のCE戦略検討合同会合の委員は「送配電インフラ巨額投資の話題は、根回しもなく突然踊り出てきた。官邸主導で物事が進んでいることを実感した」と話す。その意味で業界関係者の関心を集めているのが、1月4日の会見で飛び出した「通信・エネルギーインフラの一体的整備」だ。

「エネルギーインフラが直流グリッドに関係しているとすれば、通信との一体的整備には、NTT・東京電力連合が噛んでくる可能性がある」(大手電力会社幹部)

折しもNTT執行役員事業企画室長は経産省出身の柳瀬唯夫氏。首相秘書官の嶋田隆氏と、元首相秘書官の今井尚哉氏を加えた有力経産OB3人組の姿が、CE戦略の背後に浮かび上がる、しかも演説原稿のドラフトを書いているのは、経産官僚の荒井勝喜・首相事務秘書官という。「キシダノミクス」の一丁目一番地にCE戦略が位置付けられようとしている。