東電がユーラス株売却 豊通がトヨタの取得阻止


東京電力ホールディングス(HD)が保有するユーラスエナジーHDの株式全てを豊田通商に売却する。14カ国で再エネ事業を手掛け国内風力1位のユーラスが、豊通の完全子会社となる。

関係筋によると、同じグループのトヨタ自動車も株式取得に動いていたが、豊通の旧トーメン勢力が阻止した格好だ。もともとユーラスはトーメンの電力事業から始まり、その後トーメンは豊通と合併し消滅した経緯がある。一方、トヨタは脱炭素戦略として再エネ権益獲得に本腰を入れているが、ENEOSが取得したジャパンリニューアブルエナジーの買収に続き、今回も逃してしまった。「トヨタが獲得すると思っていたが、この時期に逆パターンでの決着は意外だった」(再エネ企業関係者)

東電の事情に目を向けると、リニューアブルパワーやJERAなどグループ各所で再エネ事業に取り組んでおり、ユーラスとのバッティングが懸念されていた。とはいえ「長期で考えればグローバルでも上位のユーラスを手放すのは惜しいはずだ」(同)。今回の売却金額は1850億円。この判断が将来吉と出るか凶と出るか。

大阪・関西万博が2025年開催 エネルギー業界もパビリオン出展


【大阪・関西万博】

 日本国際博覧会(大阪・関西万博)が2025年4月13日~10月13日に、大阪府で開催される。日本での開催は「愛・地球博」から20年振り。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「People,s Living Lab 未来社会の実験場」というコンセプトのもと、SDGs達成への貢献と、リアルとバーチャルの融合により経済発展と社会課題の解決を両立する「Society 5.0」の実現を目指す。

万博に民間パビリオンを出展する企業・団体の構想概要が、5月30日に公表された。今回公表されたのは、出展が内定している企業・団体のうち12者の構想概要だ。エネルギー業界からは、電気事業連合会と日本ガス協会が参加する。

各企業・団体が個性を生かした展示を行う
提供:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

技術や特色を生かす展示 未来社会を体験可能

電気事業連合会のパビリオンは「電力館(仮称)」だ。テーマは「エネルギーの可能性で未来を切り開き、いのち輝く社会の実現へ」、コンセプトは「可能性のタマゴ」。エネルギー分野における「可能性のタマゴ」と、それらが集まることで開かれる未来を体感するパビリオンを予定している。パビリオンを通じて、共にいのち輝く未来へ進んでいくきっかけづくりを目指す。

日本ガス協会は「ガスパビリオン」を出展する。来場者のうち、特に子供たちの記憶に残り、豊かな心を育む原体験となるような「来場者参加型エンターテイメントパビリオン」を構想中だ。いのち輝く未来社会へ踏み出すために、カーボンニュートラルという地球規模の課題に対し、考えるきっかけになることを目指している。

ほかにも、NTTは「Natural 生命とITの〈あいだ〉」、パナソニックホールディングスは「解き放て。こころとからだと じぶんとせかい。」、三菱は「いのち輝く地球を未来に繋ぐ」をテーマ・コンセプトとし、各企業・団体の特長である技術やノウハウを用いて、未来社会を体感できる展示・演出が行われる。

これまでの万博では新しいアイデアや技術、商品が生み出され、われわれの生活を豊かなものにしてきた。具体的には、エレベーターやファミリーレストラン、ワイヤレステレフォン(携帯電話)、電気自動車、動く歩道、ICチップ入り入場券、ドライミストなどだ。今回の万博でも、世界中の最先端技術が結集し、交流が活性化することで、新たなイノベーションの創出が期待される。

建築物省エネ法改正案の審議中断 国交省の不誠実な説明を追及


【永田町便り】福島伸享/衆議院議員

5月20日の国土交通委員会において建築物省エネ法改正法案の審議が止まった。止めたのは、私だ。同法改正案は、全ての新築の建物に省エネ基準への適合を義務付けることを柱とするもので、当初は参院選前の窮屈な国会日程を配慮して今国会に提出されない予定だった。しかし、エネルギー基本計画に定める省エネ目標の実現を確実にするため早期の法案成立の声が高まり、4月22日に閣議決定され国会に提出された。

審議の焦点となったのは、省エネ性能の表示の義務化だ。改正法案の中では、建築物の販売事業者等は「販売等を行う建築物について、エネルギー消費性能を表示するよう努めなければならない」と規定されている。この条文の書き方は「努力義務」と言われるもので、違反に対して直ちに罰則がかけられる「義務」とは異なる。

私は同委員会で、罰則はない旨を確認したところ、国交省の住宅局長は「ルールに反した場合に即違反となるような強い規制措置ではなく、努力義務を課し、自主的な努力を促した上で、省エネ性能の表示を一切行わない場合や、省エネ基準に適合していない建築物を適合しているものと偽って販売、賃貸した場合などに勧告等を行うことができる規制的な制度としている」と答弁した。

表示は「自主的な努力」なのだから、表示を行わない場合に罰則がかかることは論理上あり得ない。そこで私は「一切の表示を行わない事業者は罰則の対象にはならない。答弁を取り消すか、その人に罰則を加えたいなら、この場でもう一度理事会を開いて条文修正をしましょうよ」と提案した。結局、住宅局長は答弁に行き詰まり、この日予定されていた法案の採決は流れてしまったのである。翌週に再開した委員会で、淡野局長は答弁を修正し、省エネ性能の表示は罰則がかかる「義務」ではないことが明確化された。

言い繕いが混乱招く 立法府に相応しい議論を

私は、今回の改正で全ての新築の建築物に省エネ基準の適合を義務付けた以上、本来は販売業者等にも省エネ性能の表示を義務付けすべきだと考える。一方、販売事業者等は大手のハウスメーカーから街の不動産屋まで、全国津々浦々に膨大な数が存在する。いきなりそれら全てに義務付けることは行政執務上困難という事情も分かる。だからと言って、法文上は義務ではないものを義務であるとして罰則がかかるように説明するのは、あまりにも不誠実だ。国交省が、あたかも省エネ性能表示義務化を実現したと言い繕おうとしたことが、今回の国会審議での混乱を生んだのである。

法律は一つの言葉の違いで効力が変わったり、影響を受ける者が変わるものである。立法府は言葉通り法律を作る唯一の機関。その立法府の名に恥じない議論を、国会で今後も行ってまいりたい。

ふくしま・のぶゆき
1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

ガスの需給ひっ迫対策 使用制限に規制的措置も


資源エネルギー庁は、LNGの需給ひっ迫に備えた都市ガスの需要抑制対策の検討に着手した。需要家への節ガス要請に加え、それでは対応しきれない場合に、国による使用量削減指示を可能とする規制的手段の新設を視野に入れる。早ければ秋の臨時国会にガス事業法改正案を提出する方向で、今後詳細を詰める。

これまで都市ガスは、需給ひっ迫に伴う需要対策を行ったことがないが、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえ、万が一の大規模な原料調達リスクに備え、電気と同様に何らかの手立てを講じる必要があると判断した。ただ電気と違いガスは、導管網が全国大で接続されておらず、小売り事業者ごとにLNGの調達先が異なるため、全国一律ではなく、供給ネットワーク、もしくは小売り事業者単位での対策を想定している。

深刻な電力不足時は、経済産業相が電気事業法に基づく「電気使用制限令」を発令し大口需要家の電気の使用を制限できる。ガスでも同様の仕組みが検討される見通し。「自家発への供給が停止すれば電力不足につながる」(ガス業界関係者)懸念もあり、どういった場合に誰を対象に指示を出すのか、難しい判断となりそうだ。

ロシア依存度ゼロもLPガス高騰 複層要因で値下がり要素なく


【業界紙の目】古見純一郎/石油産業新聞社 編集局長

ロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰を続ける中、LPガス価格も同様の動きだ。

さらにパナマ運河の通峡料値上げなどの課題も抱え、依然不透明な状況になっている。

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から4カ月が経過した。多くの尊い命が失われたことに加え、世界経済にも深刻な影響を与えている。欧米のロシアに対する厳しい制裁により原油や天然ガス価格が高騰。原油市場に連動する形でLPガス価格にも影響が及んでいる。

ウクライナ侵攻後のサウジアラムコCP(契約価格)の推移を見ると、3月積みCPは、原油市況が一時1バレル100ドルを突破し2014年9月以来の高値を更新する中、原油価格高騰に伴いプロパン1t895ドル(前月比120ドル高)、ブタン920ドル(同145ドル高)と上昇した。

さらに4月は原油価格がロシアへの経済制裁措置の実施で急騰し、08年8月以来の高値を更新。CP価格はプロパン940ドル、ブタンは960ドルと連れ高となり、14年1月ぶりの1000ドル突破も見えてきたが、その後原油市場の極端な乱高下は収まり、5月、6月は下落に転じている。

5月のLPガス市場は、欧州では温暖な気候でプロパン需要は減少、中東市場も不需要期を迎える中、中国はコロナウイルス感染拡大に伴う上海のロックダウンなどにより需要が落ち込んだ。サウジアラビアなど産ガス国の在庫高や米国玉も含め供給は潤沢なこともあり、需給緩和で市況は軟化し、CP価格は年初水準に戻ってきたものの、20年6月のプロパン350ドルと比べると約2倍だ。

タクシー事業者支援は奏功 調達多様化で供給不安なし

LPガス輸入価格高騰に対応すべく、国土交通省は4月からタクシー事業者に対する燃料価格激変緩和対策を実施している。これは国民生活への影響を緩和し、今後の需要回復局面にタクシーの供給が順調に回復するための下支えが目的で、LPガスを使用するタクシー事業者に対して燃料高騰相当分を支援するものだ。ガソリンなどに対する補助金と同様の措置であり、ガソリン価格は3月以降、横ばいが続く。輸入価格の上昇分は政府の補助金などで賄うため大きく値上がりはしていないが、いつまで継続されるかは不透明だ。

OPEC(石油輸出国機構)プラスは、6月2日に開かれた閣僚会合で、従来堅持していた日量43万バレルという月間増産ペースを、7、8月は65万バレルに引き上げる追加増産を表明。原油価格抑制に作用するかと思われたが、その後も原油価格は上昇傾向を示し、LPガス価格も再び上昇局面に入ることが懸念されている。

調達面からロシアへの依存度を見ると、石油4%、天然ガス9%、石炭11%に対し、LPガスはロシアからの輸入はゼロとなっている。LPガス輸入は、米国や中東からの安定した供給に加え、近年カナダ、オーストラリアのシェアが拡大するなど多様化が進む。LPガス輸入の中東依存度は07年度に過去最高の91%に達したが、LPガス輸入元売りの努力とともに、シェールガス革命に伴う米国からの輸入本格化などで、中東依存度は16年58・6%から21年には8・9%に低減されている。逆に米国産輸入は、16年31・8%から69・5%に拡大、カナダ12・6%、オーストラリア7・2%となっており、供給面については安定的であるといえるだろう。

パナマ運河が大幅値上げ 日中韓の元売りが反発

4月の総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会で、日本LPガス協会はウクライナ危機について、「LPガス価格は高騰しているが、量的な意味での供給不安は発生していない。日本のLPガスの輸入量は約1000万tだが、ロシア産のLPガス輸入はここ20年ゼロで全く依存していない」としている。

パナマ運河通峡料大幅値上げの影響も大きい

LPガス価格上昇のもう一つの懸念事項が、パナマ運河庁が4月付で通告してきた料金システム変更と規定改定だ。16年に拡張工事を終え開通した新パナマ運河は、米国メキシコ湾から日本着まで、従来は喜望峰周りのルートで約45日かかった輸送日数を30日以下に短縮するとして大いに期待されていた。これまで10~20%程度の通峡料値上げはあったものの、今回は全船種平均で3年間のうちにそれぞれ22年と比べ30%、40%、60%と大幅な値上げとなる。その中でもLPG船の場合は194%と約2倍近く大幅に値上げする内容だという。

これらを受け、日本のLPガス元売り会社5社(アストモスエネルギー、ENEOSグローブ、ジクシス、ジャパンガスエナジー、岩谷産業)から成る日本LPガス協会と、韓国のSKGas、中国のオリエンタルエナジー、ワンファケミカルの四者は、パブリックコメントに共同で意見書を提出した。四者はパナマ運河経由で年間約2000万t、約900航海に相当する米国Gulf湾産LPGを極東アジアに輸入しており、今回の通峡料などの大幅値上げについて受け入れ難いと表明。さらにLPG船の通峡予約タイミングの改善についても要望した。パナマ運河到着2週間前の予約では、米国FOB(本船渡し)船積みおよび日本、韓国、中国での荷揚げスケジュールに適切なスロットの確保が困難であると主張する。

現在のような不確実性の下、本船を早めにパナマ運河に到着させねばならないことや、運河混雑時はさらに状況が悪化すると指摘。現在の通峡予約タイミングを80日前に変更することを要請した。実際に6月のフレート市況を見ると、パナマ運河の滞船が一時1~2週間に達し、タイト化に拍車を掛けたとの報告もあり、市況は昨年1月以来の高値となっている。意見書では、「日本、韓国、中国にとってLPGは産業向けだけでなく、商業・民生用として一般の人々にとって欠かせないエネルギー源であり、米国からのLPG輸入量は非常に多くを占め、パナマ運河のスムーズで安定した通峡は必須の条件」と見直しを求めた。

ロシアのウクライナ侵攻から4カ月、原油市況が乱高下する中、LPガス輸入価格も不透明感を増している。さらに、米国からのLPガス輸入量が多くを占める状況下で、パナマ運河の安定した通峡は必須条件だといえるだろう。

〈プロパン産業新聞〉石油産業新聞社発行〇1960年創刊〇購読者数:1万5000部〇読者層:LPガス元売り・卸売り・小売り事業者、ガス機器メーカー、官公庁、団体など

燃料・原料費の上昇続く 「値上げ改定」待ったなし


電力・ガス会社が調達する燃料・原料費の上昇に歯止めが掛からない。5月下旬に各社が発表した7月分の標準料金の状況を見ると、電力の燃料費で東北、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄の7社が上限に到達。ガスの原料費では東京ガスが上限に達した。石油、LNG、石炭の超高値推移に加え、為替でも約24年ぶりに1ドル135円を付けるなど円安が加速。調達費のさらなる上昇は避けられない見通しだ。

「上限を超えた分については、事業者の持ち出しになっており、このままだと収益への悪影響が避けられない。石油製品分野では国の補助金が投入されているが、電気・ガス分野でも何らかの対策が必要だ」(エネルギー関係者)

正攻法の手段として考えられるのが、値上げ改定の実施だ。とりわけ大手電力の規制料金は認可を受けてから10年前後経過しているものが多く、中には燃料構成が大幅に変わっているところも。「早急に燃料費の洗い替えをしないといけないレベル」(学識者)だという。自由料金部門の上限廃止も含め、参院選後には電気・ガス値上げが一段と加速するのか。

【コラム/7月8日】太陽光発電の新たな問題 水害とテロの危険点検を


杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹

東京都で太陽光パネルの新築住宅への義務付け条例案が検討されている。6月24日までの期限で一般からの意見募集(パブコメ)の受け付けが終わったところだ東京都による意見募集ホームページはこちら

経済性、系統安定性、土砂災害、景観、ジェノサイドへの関与など、ここにきて問題点が噴出している太陽光発電だが、本稿ではさらに最近気づいた二つの問題点について述べよう。

東京都の太陽光パネル 大水害時に感電事故の懸念

火災の際、太陽光パネルに放水すると、水を伝って感電の危険があることはよく知られるようになった。消防庁資料の冒頭だけ紹介しよう(全文はこちら

消防庁が都道府県担当課に発出した太陽光発電に関する消防活動の留意点

消防の放水が問題になるぐらいだから、水害の場合にももちろん感電の危険がある。これは政府機関NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託で太陽光発電協会(JPEA)が作成した資料に説明がある。これも一部だけ紹介する全文はこちら

水害時の太陽光発電システムに関する注意喚起

普通の電気であれば、大水害の時には送電線のスイッチをいったん切れば感電の心配はなくなるが、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けるので感電の危険がある。従って水害が起きやすい場所では太陽光パネルの設置には気を付けねばならない。東京都で特に心配なのは江戸川区だ。

江戸川区資料では、最悪の場合、最大で10m以上の浸水が1~2週間続くと警告されている。この資料は「ここにいてはダメです」という衝撃的なメッセージで話題を呼んだものだ。一部だけ紹介する全文はこちら

江戸川区水害ハザードマップでは広域避難などを呼び掛ける

さて、大規模な水害が起きた時に、太陽光パネルは感電で二次災害を起こさないのだろうか。それによって復旧が遅れたりすることは無いのだろうか。

問題はもちろん江戸川区だけに止まらない。洪水が起きかねない場所は東京都の至る所にある。太陽光パネル導入を急ぐ前に、まずは安全性の確認が必要なのではないか。

問題は再エネの「規律」だけか 悪意ある事業者が停電を起こす危惧  

「再エネ発電の一部で規律に課題、停電に至ったケースも」と、電気新聞が6月7日付で報じている。

記事によると、「送配電網協議会は6月6日、経済産業省などが開いた再生可能エネルギーの事業規律を強化するための有識者会合で、一部再エネ発電事業者の運用や工事面の問題を提起した。運用面では、給電指令を受けた再エネ事業者の認識不足と機器の誤操作で、系統が停電したケースがあったと報告」としている。

これについて説明しよう。再エネ事業者は、送電線・配電線を管理する送配電事業者の指令に従って、発電した電気を送電する。工事中の時などは、指令があれば、スイッチを切らねばならない。この電気新聞記事は、その指令に誤って従わなかった事業者がいて、停電が発生した、としている。

今回は再エネ事業者の「規律」の問題として扱われているが、もしもこの再エネ事業者が「悪意」を持っていたらどうするのか。

かつての電気事業者は日本の大企業ばかりだから、そんな心配は無かった。だが電力自由化と再エネ大量導入によって多数の事業者が参入した。中国系の企業も多い。

現代の戦争は「ハイブリッド戦争」であり、武力による攻撃に並行してインフラを攻撃するのは世界の常識になっている。

太陽光・風力を大量導入した結果、いまや日本の多くの地域で、瞬間的ではあるが電力供給の半分以上、九州に至っては7割を太陽・風力が占めることがある。経産省資料の図の最下段の赤枠がそれに当たる。

再エネ比率は九州が突出するが、他のエリアでも高くなっている

このうちのいったいどれだけが中国系の企業なのか。それが一斉に悪意を持って、送配電事業者に従わず、本国の命令によって送配電網のかく乱を試みたらどうなるのか。

例えば一斉に出力を落とす、あるいは過剰に出力する。他にも電気的にかく乱するさまざまな方法がありうるのではないか。同時多発的に各地で停電を起こしたり、その復旧を妨害したりすることで日本を混乱に陥れ、それに乗じて武力攻撃をしてくる可能性は無いのか。 杞憂であることを祈りたいが、早急に、再エネ事業者の実態の調査と対策が必要ではないか。

【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「中露の環境問題工作に騙されるな! 」(共著)、「脱炭素は嘘だらけ」、「15歳からの地球温暖化」など著書多数。

エネルギー安全保障と脱炭素 両立へ新たな首脳会議創設を


【論説室の窓】竹川 正記/毎日新聞 論説副委員長

ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の経済制裁はエネルギー危機を招来した。

エネルギー安全保障と脱炭素の両立に向け、新たな首脳会議を創設し国際協調を強化すべきだ。

「戦争を終わらせるためにロシアに最大限の圧力をかける」―。ロシア産石油の輸入禁止で合意した5月末の欧州連合(EU)首脳会議。マラソン協議を終えたミシェルEU大統領は、こう強調した。欧州はロシア産石油の最大の輸出先で、ウクライナや国際社会から「プーチン露大統領に軍資金を提供している」と厳しい批判を浴びてきた。

今回の合意により、年末までにロシアからの輸入の9割が止まるという。専門家は「ロシアは中国やインドなどとの取引拡大に動いているが、EUの禁輸分を完全に穴埋めするのは難しい」と解説する。追加制裁に一定の効果ありというわけだ。だが、ミシェル大統領が言うようにプーチン政権への圧力を最大化するには「石油より依存度が高い天然ガスの禁輸に踏み込む必要がある」(米証券アナリスト)。

「脱ロシア化」を進める欧州 中東産などアジアと争奪戦に

天然ガス調達の半分以上をロシア産に頼るドイツでは、産業界から「製造業への打撃が深刻で、大量の倒産や失業を生む」と懸念する声が出ている。だが、「法の支配に基づく国際秩序維持」を掲げる欧州各国は、ロシア軍によるウクライナでのさらなる大規模な人道被害や、生物化学兵器の使用などが明らかになれば、ロシア産ガス禁輸に踏み切らざるを得なくなるだろう。逆に、ロシア側が報復措置としてガス供給を削減・停止するシナリオも指摘される。

このため、欧州各国は代替調達先の確保や、電源構成の見直しを急いでいる。ただし、欧州の「脱ロシア」化は国際エネルギー市場で大きなハレーションを引き起こしている。結果的に、中東産などの原油・天然ガス調達を巡り、日本を含むアジア各国との争奪戦を招いているからだ。市場では「歴史的な相場の高騰が長期化する」との見方が大勢となっている。

温暖化対策の後退も懸念される。EUは表向き「再生可能エネルギーの導入による脱炭素化の手は緩めない」(フォンデアライエン欧州委員長)と強調するが、実際は化石燃料への回帰が進む。環境政党である緑の党と連立を組む独シュルツ政権が、二酸化炭素(CO2)を多く排出する石炭・褐炭の火力発電の全廃時期を大幅に先延ばししたのは象徴的だ。

エネルギーの供給不安やインフレ急進を前に、他の西側諸国も「背に腹は代えられない」として、環境よりもエネルギー安全保障を優先する姿勢を鮮明にしている。昨秋の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議長国を務めた英国は、北海油田での石油・天然ガス増産に動く。脱化石燃料が看板公約のバイデン米政権も11月の連邦議会中間選挙に向けてエネルギー価格抑制に躍起で、国内シェール業界に石油・ガスの増産を求めている。

また、温室効果ガス排出量が世界1位の中国と3位のインドは、ロシア産石油の調達を拡大するほか、国内での石炭生産や石炭火力の発電量を大幅に増やしている。先進国がウクライナ支援や軍備増強への支出を拡大させる中、温暖化防止を巡る国際支援が滞れば、東南アジアなど途上国の脱炭素化政策が停滞するのも必至だ。

ミシェルEU大統領は最大限の圧力をと訴えた
出所:EUウェブサイトより

化石燃料に回帰する主要国 温暖化対策が頓挫する懸念

一方で、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、各国が提示した現状の温室効果ガス削減策では、2050年までに産業革命以来の気温上昇を1・5度以内に抑えるパリ協定の目標達成は困難という。脱炭素化の取り組み加速が必要な局面にもかかわらず、COPの協調体制はエネルギーショックに直撃されて頓挫しかねない状況だ。

エネルギー安全保障と、脱炭素化のトレードオフに直面する世界。従来のようにエネルギー政策と温暖化対策を「縦割り」で議論していては、難題に対応できない。両政策を統合した新たな国際的コンセンサスづくりが不可欠だ。

本来なら、議論の舞台として、G20(主要20カ国地域)首脳会議がふさわしい。G7(先進7カ国)から、中国、インド、資源国のサウジアラビア、ブラジルやインドネシアなど有力新興国まで網羅しているからだ。だが、ウクライナ危機を起こした張本人のプーチン露大統領もメンバーのため、G20は事実上、機能不全に陥っている。

そうならばエネルギー安保と脱炭素政策の統合にテーマを絞った形で主要国・地域による首脳会議を新たに立ち上げ、国際協調を探るしかない。ウクライナ侵攻で国際情勢が激変したことを踏まえ、エネルギー安保と地球温暖化対策の両立を目指す現実的な解を首脳レベルで見出す努力を行うべきだ。「早期の100%再エネ化」などという野心的すぎる目標を追求するのではなく、当面のエネルギー安定供給確保にも配慮した現実味のある脱炭素時代へのトランジション(移行)シナリオを構築する必要がある。

再エネのバックアップ電源に使われる石炭を含む化石燃料の扱いを巡っては、今後も相当期間、活用し続けなければ経済が回らない現実を直視し、火力発電の低炭素化に協力して取り組まなければならない。金融市場でのESG投資の広がりで、化石燃料の上流部門の開発に投資マネーが回らず、供給不足に拍車が掛かる事態に対処する必要もある。

サウジアラビアなど資源国に石油・天然ガスの増産協力を求めるなら、先進国は中長期的に資源国が化石燃料を活用した水素(ブルー水素)供給国に転換できるよう技術支援を強化しなければならないだろう。途上国対策も肝要だ。天然ガス争奪戦からはじき出されないように配慮するとともに、国際通貨基金(IMF)など国際機関を巻き込んだ大規模な基金をつくり、脱・低炭素発電へのシフトに向けた資金支援を強化することが必須だ。

秩序なき化石燃料の争奪戦による世界経済の混乱を防ぎ、温暖化対策を破綻させないためには、主要国の首脳がエネルギーと環境政策のグローバルガバナンス体制を立て直すことが急務だ。

初の全国大会に約170人が参加 再エネ乱開発防止へ「法規制を」


【全国再エネ問題連絡会】

 メガソーラーや大規模風力発電設置工事に伴う環境破壊に反対する全国ネットワーク「全国再エネ問題連絡会」が、6月4日に初の全国大会を都内で開き、約170人が参加した。大会では「既に取り返しのつかない乱開発は、全国各地で起こっている。国民が一致団結し、これらの問題を一日も早く解決しなければならない」と表明。政府に対し、問題解決に向けた法整備を訴えた。

昨年7月発足の同会には、全国都道府県から約40団体が参加。第一部となるパネルディスカッションには、衆議院議員の福島伸享氏や社会保障経済研究所代表の石川和男氏、環境エネルギー政策研究所の山下紀明主任研究員らが出席し、多発する太陽光発電・風力発電のトラブルの原因について議論を交わした。

討論の中で同会の山口雅之共同代表が、山下氏に「同研究所の飯田哲也所長が、森林を大規模に破壊するメガソーラー・風力発電建設に反対していると聞くが、研究所の公式な見解とみてよいか」と質問。山下氏は「(研究所として)大規模に開発しているメガソーラーを積極的に推進してきたことは一回もないし、これからもないだろう」と回答した。これを受け、山口氏は同研究所に対し、連絡会への協力を呼び掛けた。

山口雅之共同代表(右)らが乱開発への危機感を訴えた

宇久島のメガソーラー事業 佐々木氏が不備を訴える

第二部では、全国各地の再エネトラブルについて、住民団体が現状を発表。長崎県「宇久島の生活を守る会」の会長を務める佐々木浄榮氏は、佐世保市の宇久島全体で行うメガソーラー発電事業について説明した。

この事業は島の4分の1、720haの用地に太陽光パネル約165万枚を設置。完成すれば48万kWの発電性能を持つ国内最大規模のメガソーラー計画だ。佐々木氏は、住民に説明なく乱開発が進む現状を批判。「事業者は720haの用地を準備できていないにもかかわらず、48万kWの事業を掲げ、単純に1・5倍して必要面積を割り出した。とりあえず1円でも高い間に認定だけ取って後から変更すればいい、という考えが見て取れる」と、固定価格買い取り制度(FIT)の点から事業の不備を訴えた。

今回の全国大会では、自民党の古屋圭司政調会長代行らもビデオメッセージで参加した。古屋議員は「真の地産地消・地域共生型エネルギーシステムを構築する議員連盟」の会長として「私たちは自然を守り、国土を守り、再エネの健全な活用を目指していく」と表明。太陽光パネル事業による乱開発に警鐘を鳴らしている。

九電が袖ヶ浦火力計画から撤退 新設投資の難しさ浮き彫り


九州電力は、東京ガスと進めていたLNG火力発電所建設計画からの撤退を決めた。エネルギーを巡る世界規模の混乱が続く中、燃料市場と電力市場を含む諸情勢を勘案した結果、同計画への継続的な経営資源の投入を取りやめるとの判断に至ったという。

袖ケ浦で計画中のLNG火力の完成予想図(提供:千葉袖ヶ浦パワー)

一方東ガスは、「再生可能エネルギーの導入に欠かせない調整力として期待されるLNG火力への投資を通じて、電力の安定供給に貢献し責任あるトランジションを実現する」として、単独で検討を継続する意向を明らかにした。

九電が撤退を決めたのは、千葉県袖ケ浦市の出光興産の所有地を活用した200万kWの大型LNG火力の建設計画。当初は出光を含む3社で石炭火力を検討していたが、十分な事業性が見込めないことから19年に出光が撤退。その後、発電燃料をLNGに切り替え東ガスと検討を進めてきた。

ところが、この数年でLNGを巡る環境は激変。ウクライナ情勢の緊迫化も相まって、燃料価格は高騰、調達リスクが顕在化し不透明感が増してしまった。ある発電事業関係者は、「安い燃料が発電所の競争力の源泉となる以上、今は新たな電源のための燃料調達契約に踏み切れない」と、電源投資判断が難しい実情を語っている

泊原発で運転差し止め判決 危険性の説明に「飛躍」あり


札幌地裁は5月31日、北海道電力泊発電所について、安全性の基準を満たしていないとして運転差し止めを命じた。

運転できない泊原発の「危険性」とは

10年以上の裁判の末、北海道電力が最終書面を提出する前に、審理打ち切りで結審した経緯があるが「この判決は全国の裁判に波及しないだろう」(TMI総合法律事務所、森川久範弁護士)という。北海道電力も「判決は当社の主張をご理解いただけず誠に遺憾であり、到底承服できるものではない」と6月2日に札幌高裁へ控訴したことを発表した。

判決要旨では審理打ち切りに関して「被告(北海道電力)が立証を終える見通しが立たない」ことを理由にしているが、原子力規制委員会による適合性審査が続いた状態での安全性立証は不可能なはずだ。森川弁護士は「規制委による審査終了が見通せず、いつ運転できるか不透明な原発の『運転に起因する被ばく被害の可能性』を示した判決で、具体的な危険性の説明に飛躍がある」と指摘する。

判決について木原誠二官房副長官は「(再稼働に)何か変更はあるということはない」とコメント。「どちらが勝っても控訴審に進む裁判。その間に状況は変わる」(政府関係者)とすれば、この裁判に何の意味があるのか。

【覆面ホンネ座談会】電気料金規制を巡る想定外 電力需給危機で欠陥露呈


テーマ:電気料金規制見直し

 燃料価格の高騰と度重なる電力需給ひっ迫を背景に、経過措置料金規制や最終保障供給約款の在り方が問われ始めている。自由化と需要家保護の間で料金制度はどうあるべきか。

〈出席者〉Aガス業界関係者 B電力小売り事業関係者 C元大手電力関係者 

―電力の需給ひっ迫と卸価格高騰が、全面自由化後の電気料金制度の欠陥を露呈させた。

A 今起こっている事象は、電気・ガスを含むエネルギー自由化を選択した日本が通らざるを得ない道だ。規制と保護よりも自由化を選択したはずなのに問題が起きると制度がおかしいという話になるが、こういうことを経験しながら理想的な制度にしていくべきなのだろう。都市ガス業界は、経過措置規制が解除されつつある。電気の経過措置規制も同様に、競争が促進されていることを前提に経過措置を外すのがあるべき姿だ。

B 自由化されたにもかかわらず、旧一般電気事業者も新電力も横並びになっていることに違和感がある。新電力が提供する料金メニューは、旧一電の規制料金に対して何%割り引くといったものばかり。事業者側のこの横並び意識を変えない限り、制度を見直しても何も変わらないし自由化は失敗する。今、特に通信系の新電力が過去の習慣にとらわれない新しいメニューを打ち出し始めている。この期に及んで、これまでの延長線上で戦おうとする事業者は、大手であろうと新電力であろうと淘汰されていくだろうね。

C 旧一電は、料金改定に伴う原価の洗い替えを極端に嫌がっているようだ。需給計画を立てそれに対応する原価を計算した上で料金を算定し、パブコメにかけて経済産業相の承認を得るというプロセスの多さを考えると、料金見直しは割に合わないというのも理解できる。そうであるならば、極めてスピーディーに改定できるようにルールを変更するべきだ。毎年度の決算で利益とコストを出しているのだから、そのデータを元にできるのではないか。その点、都市ガスでは収支状況が逐次反映されている。

A 確かに都市ガスの託送収支については、決算の数字を踏まえ収支計算の報告書を提出するし、改定時の料金原価との整合を見ている。その結果、超過利潤が出ていたり改定の率が低かったりすると電力・ガス取引監視等委員会の指導を受けることになる。経過措置料金についても同様の事後評価を行っており、電気も同様のはずだが。

C いずれにしても、料金改定に踏み切らなければならないタイミングが来ている。新電力の多くは、旧一電の規制料金と同様に燃料費調整制度を設け調整単価に上限を設けている。上限を外してしまうと、燃料費高騰局面では規制料金よりも高くなってしまうからね。本音では上げたいけど、旧一電よりも低廉な価格であることを訴求しているから上げられない。特に家庭向けでシェアを伸ばしているガス、通信系の新電力は、上限撤廃で集客に歯止めがかかってしまうことは相当な痛手になる。

B 多くの小売り事業者が、そろって燃調の上限を撤廃したい、もしくは独自燃調を取り入れたいと言うけど、やっぱり実現は難しい。需要家に料金体系を説明することが難しくなるし、何より燃調次第で規制料金を上回ってしまうリスクがある。分かりやすさにこだわるばかりに、オリジナル性も失っているわけだけど。

燃料価格高騰局面はしばらく続きそうだ

大幅な赤字決算でも 料金改定に二の足踏む旧一電

―規制料金が残っていることが、新電力のメニュー作りをマンネリ化させているのかな。

A ガスは、2017年の小売り全面自由化に際して、経過措置料金規制の撤廃を判断する四つの基準を設けた。電気は自由化時にはその基準の設定がなかったが、19年に電力・ガス取引監視等委員会が基準を作り、今後はそれに基づいて撤廃が議論されるのだろう。だけど、果たしていつ撤廃が現実のものになるのだろうか。

C エリア内に5%以上のシェアを持つ事業者が複数いて、競争環境もイコールであれば撤廃するという条件を達成するのはほぼ不可能だよ。東京と関西エリアにはシェア5%以上の新電力があるとはいえ、どちらも大手都市ガス会社がかろうじてクリアしているのみ。KDDIはシェアを伸ばしているけど、大手電力会社の代理販売なのでこの条件では考慮されない。規制撤廃には程遠いよ。

B 今、新電力の経営がますます厳しい状況に追い込まれているから、代理販売や取次が増えていけば、ますます規制撤廃できずに競争者がいなくなる可能性がある。

A 旧一電は、戦略として料金を見直さないのではないかと勘繰ってしまう。見直しによって新電力が息を吹き返してしまうくらいなら、多少の取りっぱぐれをしばらくの間耐え、上限バンドを外した新電力から需要家が自社に戻ってくるのを待とうとしたたかに考えている旧一電がいてもおかしくない。確かに21年度の決算は厳しかったけど、単純に燃調の期ずれの問題だとすると、今年度は、さらに燃料調達コストが上がるようなことがない限り回収局面になって利益が出るのではないか。

B 旧一電側の話を聞いていると、昔は無視できる程度の差分だったが、今は無視できるような金額ではないというよ。料金改定したいのが本音だと思う。

―調整単価が上限に張り付いているところはこれ以上価格に転嫁できず厳しいが、北海道、東京、中部あたりはまだ上限に達していないので回収局面というとらえ方ができるかもしれない。

B 欧州の旺盛な需要を踏まえても、そう簡単に燃料コストが下がることはないだろう。電力需給にしても、18年夏に初めて燃料制約による需給ひっ迫が起きて価格がスパイクしたが、LNGの備蓄基地が整備されたわけでもなく何も変わっていない。むしろ火力の休廃止が進んだ分、悪化してしまっている。

C 危機を乗り切ってしまうと、まあいいかと正常化の流れが止まってしまうのがいつものパターン。この2年、同じような事象が繰り返し起きたことでようやく尻に火が付き議論が前に進み始めた。

B 小売り事業者は、24年度に支払い開始を控える容量市場を懸念している。果たして新電力は容量拠出金に耐えられるだろうか。容量分の単価を転嫁できるよう料金メニューを切り替えておかないと、今度は容量拠出金のために需要家を失うことになる。

【イニシャルニュース 】パワハラ問題再燃? 広域機関内部で混乱


 パワハラ問題再燃? 広域機関内部で混乱

5月半ば、エネルギーフォーラムに1通の差出人不明の封書が届いた。中に入っていた手紙は、電力広域的運営推進機関のパワハラ問題を内部告発するもので、このままでは組織が崩壊してしまいかねないと憂う内容が記されていた。その一部を紹介する。

「経済産業省から出向しているX氏のパワハラが日常化している。好き嫌いが激しく、自分に従わない人、仕事が遅い人、自分の思考を理解できない人をいじめまくって出向元に返してしまう。(中略)このままでは誰かが訴訟を起こすか、大きなトラブルが発生してしまうかもしれない」

ただ、あくまでもこれは匿名のいわゆる「怪文書」。真相を探るべく、事情通に聞くと、セクハラ、パワハラのみならず、オフィス内での不適切な行為など、耳を疑うような話が飛び出してきた。その中でも多くの人が深刻に見ているのが、やはりX氏によるパワハラだった。

パワハラ問題で揺れている

「全ての業務を自らの目を通さないと気が済まず、キャパオーバーで業務が滞っているにもかかわらず、その責任を担当者に押し付けて衆目の前で謝罪させる。企業からの出向者は相当参っている」(大手エネルギー関係者A氏)

「社員をメンタル不調にさせられたT社に至っては、この状況が放置される限り、職員を送れないと引き上げさせてしまった」(事情通B氏)

広域機関では昨年8月、理事で事務局長を務めていたT氏が退任したが、これもパワハラが原因だったとみられる。経産省のみならず、民間エネルギー会社からえりすぐりの職員が出向しているはずの広域機関内で、なぜこのようなことが繰り返されるのか。

「新型コロナ禍で多くが在宅勤務をしていて、お互いをよく知らない出向者同士、うまくコミュニケーションが図れず組織の統制が取れていないのかもしれない」(大手エネルギー関係者C氏)

混乱収束の道筋が見通せない中、前任のS氏が再登板するのではないかとの観測も業界内で広がり始めている。今年度夏・冬と厳しい需給が予想されている中で、広域機関に期待される役割は大きいのだが。

NHKの電力危機解説 担当M氏の上から目線

今年度夏、冬の電力需給問題が深刻になっている。政府は停止中の火力発電の稼働などでしのごうとしているが、停電は避けられないとの指摘も出ている。

マスコミも電力不足を問題視し始めた。テレビ各局は朝の情報バラエティー番組で電力危機について取り上げている。その中で、信頼度の点から国民への影響力が強いのは公共放送、NHKだろう。

NHKで情報番組に登場し、電力不足について説明するのはM解説委員だ。専門は科学技術・宇宙・原子力。福島第一原発事故の際は、特別番組で事故原因などの解説に当たっていた。

M氏の原子力についての見解は「かなりのアンチ」(業界関係者)と言われている。だが、その理由からでなく、業界関係者、中でも広報担当者の間でM氏の評判は芳しくない。

「Mさんから『自宅に資料を届けてくれ』と電話があり、休日に自宅へ向かった。近くまで着いたので電話すると、『ポストに入れておいてくれ』の一言。感謝の言葉など全くなかった」

ある広報マンはこう苦々しく話す。視聴者からすれば、正しい説明をしてくれれば人柄は関係ない。だが、「公共」にあぐらをかいた上から目線の人物に、公平な良い解説は期待できるだろうか。

石川県の副知事人事 気になる志賀への影響

経産官僚の西垣淳子氏が7月1日付で石川県の副知事に就任する人事が、エネルギー業界でひそかな話題を呼んでいる。西垣氏は、東大法卒で1991年入省のキャリア組。商務情報産業局生活文化課長、中小企業庁小規模企業振興課長、特許庁審査業務部長などを歴任した。一見、エネルギー畑とは無縁の西垣氏の動向がなぜ業界で話題になっているのか。事情通が言う。

「実は西垣氏は、経産官僚で現在内閣府に出向しているY氏(91年入省)の妻。その影響もあるのか、原発嫌いといわれている。石川県には、北陸電力の志賀原発があり、原子力規制委員会による審査のため長期停止を余儀なくされている。最近明るい兆しも見え始めた矢先だけに、西垣氏の副知事就任が志賀再稼働にマイナスの影響を与えなければいいのだが……」

副知事人事の波紋が広がる(石川県庁)

とはいえ、馳浩知事の期待は高いようだ。女性副知事の登用を知事選の公約に掲げており、県議会でも「私や徳田博副知事とは違った能力、人脈を持つ人が望ましい」と述べている。旧労働省出身の太田芳枝氏以来、28年ぶりとなる女性副知事の誕生で県政はどう動く のか。志賀はともかく、まずは夫の得意分野である再エネの乱開発防止で手腕を発揮してほしい。

選挙後の原子力に注目 自民で推進派が台頭

自民党が原子力の活用にかじを切った。岸田文雄政権が発足した際に、原子力推進派が政権と党の担当に起用され、その人事の影響が出てきた。政治的に難しい問題だった原子力規制改革が、7月の参院選後に動く可能性がある。

原子力を敵視し、再エネを過度に重視するいわゆる「KKコンビ」が、菅政権では党のエネルギー政策を振り回した。そして原子力規制の混乱が放置されてきた。その是正に、今の自民党は動いている。

岸田政権では甘利明議員を当初幹事長にし、高市早苗議員が政調会長になった。岸田首相はエネルギー問題にそれほど関心がないとされるが、この二人は原子力活用を主張し、人事に手を付けた。

自民党の「原子力規制に関する特別委員会」委員長に原子力活用派のS議員、経済産業部会長に高市氏に近いI議員(現在は退任)を据えた。閣僚人事は首相が主導するが、萩生田光一経産相は原子力推進を以前から唱えており、H副大臣は原子力規制改革を党内で主張してきた中心人物だ。

自民党は参院選公約で、原子力の活用を主張。経産省は原子力を減らすという第六次エネルギー基本計画の中身を唱えなくなった。さらに規制特別委では、立地県選出で規制政策批判を重ねたT議員とS議員が幹事長と事務局長に就任。5月に同委員会がまとめた原子力規制の提言では「法改正を視野」という強い言葉が示された。以前に同委員会を仕切ったI議員は環境副大臣を務めた中間派で、法改正は消極的だった。「人事の効果が出た」(自民党筋)とされる。

自民党の原子力規制改革への意気込みは、原子力規制庁、そして経産省も十分認識しているもようだ。7月の参院選後に、原子力規制の改善に向けた、新しい動きがあるかもしれない。

K議員のパワハラ気質 簡単には変わらずか

毛並みの良さと国民への発信力の強さから根強い人気を誇る与党のK議員。これまで政権や党の要職を務め、再生可能エネルギー拡大や脱原発に向けて辣腕を振るってきた。一方、官僚に対する「公衆面前パワハラ」とも取れる言動が物議を醸すこともあり、その気質は簡単には変わらないようだ。

自民党の某調査会にて。その日のテーマであるカーボンプライシングについて経産省幹部が説明をしたところ、出席していたK氏がかみついた。排出権取引について「経産省はやる気がないとちまたで言われているが、どうなんだ」と詰問した。

その一幕をK氏はSNSにも投稿し、「(経産省幹部が)むにゃむにゃと言い逃れ、やる気ありますとは言わない」と不満をあらわにした。ちなみにその投稿後、コアなK氏ファンの間でこの経産省幹部は「むにゃ局長」と呼ばれるようになったという。

ただ、経産省は炭素クレジットの自主的取引を行うGX(グリーントランスフォーメーション)リーグを来年から始め、賛同企業とその詳細な検討を今年進める。また同省は、GXリーグをおいおい義務的な排出量取引に発展させるということも、さまざまな場でおおっぴらに言及するようになってきた。

むしろ排出量取引への積極姿勢を隠さないようになってきたと受け止めるのが自然だが、K氏にはそうは受け止められないようだ。

電力不足の危機感広まる 島根2号機の再稼働に同意


「隕石が原子炉を直撃しても、放射性物質の拡散は防げるのか」「リスクがゼロでないと動かせないというと、隕石や小惑星が衝突したらどうなるのかと荒唐無稽の議論になる。冷静に議論しなければならない」

島根原発は日本で唯一県庁所在地に立地する

島根県の丸山達也知事は6月2日、中国電力島根原子力発電所2号機(82万kW)の再稼働に同意すると表明した。知事の同意は、県議会に設けた原発対策特別委員会の委員長報告に基づくものだ。2021年9月に設置された特別委員会では、冒頭のような議論が県議の間で交わされていた。委員会は7回開催し、さまざまな疑問や懸念に対して、中国電力をはじめ国・県の担当者などが丁寧に回答を行っている。

島根2号機は21年9月に原子炉設置変更許可を取得。島根2、3号機は唯一県庁所在地(松江市)に立地する原発であり、稼働に対して慎重な住民も多いとされる。中国電力は21年10月から松江市と周辺自治体の住民に説明会を開始。既に松江市をはじめ30㎞圏内にある島根県と鳥取県の自治体首長の同意を得ている。素早い対応であり、首長らの同意判断も早い。背景には「電力危機に頭を痛める国の強い意向がある」(業界関係者)とされる。安全対策工事は22年度中に終わるもよう。23年夏までの運転開始を目指す。

西日本では、関西電力美浜3号(82万6000kW)機が運転再開を10月から8月に前倒しする。特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限を過ぎたため昨年10月から停止していたが、工事を早める。これも国の要請によるもの。電力危機に理解を示す自治体関係者などの協力を得ることで、再稼働が進展し始めている。

法人顧客をサイバー攻撃から守る セキュリティーと保険をセットで提供


【中部電力ミライズ】

 企業に対するサイバー攻撃が増加する一方、「対策方法がわからない」「システム担当を雇用する余裕がない」などの課題を抱える企業は少なくない。中部電力ミライズはこうしたニーズを受け、4月22日から中部エリアの法人顧客に「サイバー対策支援サービス」を開始。NTT西日本のセキュリティーサービスと三井住友海上火災保険のサイバー保険を組み合わせ、ネットワークや端末の監視、運用管理サポート、サイバー保険をワンパッケージで提供する。

ワンパッケージでサイバー攻撃対策

選べるセキュリティー 管理運用サポートも充実

中部電力ミライズは、セキュリティー対策として、ネットワーク監視サービスと端末監視サービスを用意している。ネットワーク監視サービスでは、ウイルスやハッキングからネットワークを守るゲートウェイセキュリティー機器(UTM)を設置、不正な通信がないか、一括で監視・保護する。端末監視サービスでは、ネットワークに接続されている端末を守るエンドポイントセキュリティーで、ウイルスの侵入を防ぎ、駆除を行う。これら二つのサービスは顧客の事情に合わせて選択でき、両サービスの利用でセキュリティーの強化も可能だ。

さらに、顧客の管理運用の負担を軽減するため、サポートを充実させている。サポートセンターでは、顧客が気付かない不正な通信やウイルス攻撃に対し、24時間365日監視を行う。インシデント発生時には、メール・電話での通知や遠隔でのウイルス駆除に加え、訪問でのパソコンの復旧なども行う。また、サイバー攻撃を受け賠償損害・費用損害が発生した場合、保険金が支給される。保険料はサービス利用料に含まれているため、新たな料金負担は不要だ。

中部電力ミライズは「サイバー対策支援サービス」の展開に当たり、2月に情報処理推進機構の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の認証について一部を除き取得している。主に中小企業向けのサイバーセキュリティー支援サービスをワンパッケージで提供する企業に関する認証だ。同社は今後、電気とガスにとどまらない「新しい価値」を届けるサービスの展開を目指す方針だ。