紆余曲折の原子力政策が大きな転換点を迎えている。
政策議論と研究両面で、将来の原子力に光を当てようとしている。
「原子力は技術だけではどうにもならない社会的な問題がある。カーボンニュートラル社会実現に向け原子力政策の流れが大きく変わろうとしている中、既存原子力の活用、新設・リプレースを合わせ、将来の安定供給に資する政策がより一層重要になる」
こう語るのは、京都大学複合原子力科学研究所の黒﨑健教授だ。1986年、中学生の時に発生したチェルノブイリ原発事故のニュースに触れ、何か大きな仕事を成し遂げられる可能性を感じたことが、原子力の分野で研究者を目指すきっかけに。大阪大学工学部原子力工学科に進学し、以来、助手、助教、准教授と阪大に籍を置き、2019年4月に同研究所教授に就任した。
自他ともに認める山中伸介原子力規制委員長の一番弟子。阪大山中研究室が立ち上がった当初からスタッフとして所属し、核燃料・原子炉材料の研究のほか、排熱を活用して発電する高性能熱電変換材料の開発などに共に取り組んできた。福島第一原発事故後は、事故耐性燃料の開発に着手するなど、より安全・安心な原子力の活用に資する研究に力を注ぐ。
山中委員長の「三つの研究の柱を持つことが望ましい」との教えを受け、京大に移ってからは、情報科学と材料科学を融合した「マテリアルズ・インフォマティクス」を三つ目の研究テーマに据えている。これは、世界に散在する素材に関する情報をデータベース化し、人工知能(AI)が学習し研究者が望む性質を示す材料を予測。材料探しにかけてきた膨大な時間を短縮し、研究の効率化を図るもの。当初は、熱電変換材料と関連してスタートさせた研究だが、今後は原子力材料の研究に活用していくことも目指しているという。
研究所が迎える転機 将来の原子力活用のために
22年4月には、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)原子力小委員会革新炉ワーキンググループ(WG)の座長に就任。多くの人から「大変な役目だ」と激励を受けつつ、原子力産業の未来に向けた政策立案に関与することにやりがいを感じている。
原子力発電所全てを国内でつくることができるという日本の大きな強みが崩れつつある中、優秀な原子力人材を社会に送り出し続けるためにも、原子力の未来を見せる同WGの意義は大きい。一方で、「核燃料サイクルをどう完結させいてくのか、足下の課題解決にもまっすぐに向き合う必要がある」と言い、自身の核燃料研究を通じて貢献することに意欲を見せる。
来年度には、同研究所長に就任することになっている。所有する研究用原子炉が、26年5月にその役割を終え運転を停止することが決まっており、大きな転機に直面する研究所の今後の在り方に道筋を付けるという重責を担うことになる。原子力人材の育成に大きな役割を担ってきただけに、同研究所のみならず、日本の原子力研究の未来がその双肩にかかっているといえよう。








