数百もの要素からエネルギーシステムの最適解を導く研究がライフワークだ。
足元の危機も踏まえ、脱炭素化シナリオの判断材料となり得る研究を意識する。
エネルギーをはじめ社会全体の変革が求められるカーボンニュートラル(CN)では、シナリオを誤ると自国経済を傷めかねない。そして目下の〝世界同時エネルギー危機〟はトランジションの難しさを際立たせた。先行きが一層混沌とする時代、小宮山教授の専門はまさに今求められる研究分野の一つと言える。
主題はエネルギーシステムの分析だ。「要素技術だけを見るのではなく、多様なシナリオを展望し、システム全体を最適化する」(小宮山氏)。電気、ガス、石油のあらゆる技術を対象に、CN実現のシステム、その構成技術のベストミックスを分析。開発したツールの一つは300以上もの要素を加味する点が特徴だ。例えば電力では、系統を考慮した上でどんな燃料や電源を活用すべきか。原子力では新増設をするか否か、運転期間はどの程度か。マスタープランに基づく系統増強は再エネ主力化のベストな道なのか。そして電気料金の行方は……。中立的視点で経済合理的なシステムを模索する。
とはいえイノベーションには不確実性がつきものだ。水素・アンモニアやCCUS(CO2回収・利用・貯留)、DAC(CO2直接空気回収)など以前はあまり注目されなかった技術への関心も高まっている。小宮山氏は主題を数理モデル化し最適解を導く「数理計画法」を用いるが、手法の特性上、不確実性の数理的な対処が課題となる。政策面の不確実性も大きい。さらに数値化が難しい雇用状況や産業政策、国民の受容性などの要素を別途検討する必要もある。「政策に役立つ研究を意識し、より実用的で効率的な手法への見直しを進めていく」考えだ。
謙虚さ常に忘れず 理論の理解も重要
文部科学省「原子力システム研究開発事業」に採択され、共同研究として小型モジュール炉(SMR)を活用したシステムの分析も手掛ける。ただ、SMRは話題先行感が否めず、具体的な活用方針は定まっていない。「まずどこに建設するのか。大型炉跡地なら次世代軽水炉の方が現実的だ。米国では石炭火力跡地での小型炉建設が提案されたが、日本でも検討の余地はあるだろう。ただ、SMRの安全規制がなければその判断もできない」。事業化の課題をあらかじめ列挙した上での戦略でなければ、SMRをはじめ次世代炉戦略は絵に描いた餅になりかねない。
修士課程で当時珍しかったエネルギーシステム全体の分析研究に興味を持って以降、一貫してこの分野に従事。最近になって注目度が高まってきたと実感する。モデリング技術だけでなく、活用するモデルにまつわるさまざまな理論を理解することも欠かせない。他方で「モデルはあくまで理論に基づき構築したもの。予期しない結果が出ることもある。この研究では主観を持たず、常に疑問を抱き、謙虚に結果と向き合うことが重要だ」と強調する。
常に自問自答しつつ、引き続きCNの最適解を探る道を歩む。






