<出席者>電力・ガス・石油・マスコミ/4名
緊迫化するエネルギー情勢を受けて、日経が「緊急提言」を行った。
原子力推進を盛り込んだが、求められているのは中立・客観的な報道だ。
―原子力発電を巡る風向きが大分、変わってきた。マスコミの世論調査を見ると、再稼働や新増設・リプレースに賛成が反対を上回っている。
ウクライナ侵攻で深刻度を増したエネルギー危機が背景にありそうだ。そういう世の中の風潮を感じ取ってか、新聞も論調を変えつつある。
電力 日経は9月にエネルギー政策について緊急提言を打ち出した。「原発活用の体制を国主導で再構築」しろという。
もちろん歓迎している。だが、別に原発を持ち上げてほしいわけじゃない。再エネ、原発、火力。それぞれ長所、短所がある。どう電源構成のバランスを取れば、最も安定・低廉な電力供給ができるのか。日経は日本を代表する経済紙だ。経済分析専門の研究機関も持っている。再エネや原発を日経なりにきちんと評価して、ベストだと考える方策を示してほしい。
―クオリティペーパーならばそれが役割だろう。
電力 今まではあまりにも再エネに偏りすぎていた。太陽光、風力については何の疑問も持たずに推進側の言い分を記事にしていた気がする。それを真ん中に戻してほしいだけだ。
ガス 提言をつくる際に社内でかなりのせめぎ合いがあったという。再エネは2050年に7割を目指すとしている。この数字をどう見るかは別にして、関係者が「編集局の中にかなりの再エネ原理主義者がいることが分かった」と漏らしていたらしい。
―ほかの新聞は。
石油 東京も、例えば三菱重工業が発表した革新軽水炉のことを余計な論評を付けずにたんたんと載せていた。毎日は記者が上司の意向を忖度しないで自由に記事を書いている気がする。
朝日もそうだが、個人のレベルでは意外に原子力に中立的な記者が多い。ただ社説になると違う。朝日、東京、毎日は反原発の主張を頑として変えない。
マスコミ 朝日、東京の論説を変えるのは、イスラム教徒をキリスト教に改宗させるようなもの。それでいいと思う。日本は中国、北朝鮮と違う。全体主義の国ではない。原発、自衛隊、米軍基地移転に反対する人たちがいるから、その声を代弁するメディアも要る。ある意味で社会が健全な証しだ。
電力 ただ、「うそ」は止めてほしい。よく例に出る「メガソーラー完成、原発1基分」の記事は「うそ」だと思っている。わざと右目をつぶって、左目だけで見えることを書く。太陽光発電で意図的にkW時に触れない記事は、正しいことを伝えていない。
―新聞も商品。朝日、毎日、東京は読者が再エネを「信仰」しているから、そういう記事を載せてきた。
石油 日経はどうだったかな。さすがにもう載せないと思うけど、注意して読んでいくよ。
原発に追い風吹くが…… 投資回収に難題あり
―原子力肯定派が増えていることで、政府が進めようとしている再稼働、運転期間延長、新増設・リプレースに弾みが付きそうだ。
電力 追い風が吹いて環境は整いつつあるが、本当に大変なのはこれからだ。再稼働と運転期間延長はそれなりに進む。問題は新増設・リプレースだ。原発の建設コストは1基1兆円程度になる。しかし、今、それだけの額の投資を回収できる保証はない。金融機関は安易な融資はしない。
―確かに原子力規制委員会の判断、裁判所の決定や判決、自治体首長の考えなどで、原発は突然止まったり、定検中の発電所が再稼働しなくなったりする。
電力 原発の発電単価を低レベルに保つには、そういったリスクを一つずつ消していくしかない。それは水面下での作業になる。
マスコミ 反対派はコストの点を突いていくだろう。そこが原発の「急所」だと思う。リスクを減らすのは面倒な作業になるが、再稼働、運転延長から一歩ずつ進めて信用を得ていくしかない。すると需要家の理解が得られて、「一時的に多少値段が高くなっても、安定した電源が必要」となるかもしれない。
―もっとも原子力も完璧なエネルギー源ではない。
マスコミ むしろ足を引っ張りかねないのは原発推進派の方だ。原子力は優れた技術だが、国や学識者などが「上から目線」で話をしても拒否反応しか起きない。あれだけの被害があったのだから、日本人は福島事故を忘れていない。東京電力の「A級戦犯」は起訴までされたが、国は「無罪」になった。傲慢な態度を取ると猛烈な反発をくらうことになる。
官邸のトップダウンに困惑 問われる首相の「話す力」
―電気・ガス料金の急激な値上がりの激変緩和として、政府は負担軽減策を打ち出す。託送料金の引き下げなどが検討された。
ガス 政権首脳の「需要家に軽減幅が分かるようにしろ」の一声で託送料金の引き下げはなくなった。激変緩和対策は官邸からのトップダウンで、実際に対策を考える経産省は頭を抱えている。
石油 もともとはガソリン価格高騰への対策だった。景気後退の懸念で原油価格は一時的に下落したが、OPECプラスの減産で来年、また上昇するかもしれない。当然、リンクして天然ガスも上がる。しかも円安が進んでいる。するとズルズルといつまでも高騰対策を続けなければならない。
マスコミ では財源をどうする。首相は「聞く力」で総理総裁になったが、エネルギー政策では「話す力」が問われる。時には、できないことはできないと言うことも大切になる。
―せっかくの黄金の三年間。輝いてほしいのだが……。